[改稿版]これは百貨店で働く俺の話なんだけど

だいきち

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「ぅそ、だ…!!い、ぃれ、るとこじゃね、っ…」
「うん、」
「ぅ、ンって、ちょ、まっ…」
 
 あれから、柴崎の手によって、思考のままならぬうちにイカされた。旭はてっきりそれで終わりだと思っていたのに、掌で静液を受け止めた柴崎が、そのまま旭の尻の間に塗りつけてきたのだ。
 悲鳴混じりの抗議は、あっけなく唇で宥められる。こうして何度も唇を交わすうちに絆されていっているのは事実だった。
 
「ゃ、…は、はぃ、っちゃ、っ」
「お前、ちょっと静かにしてろ…」
 
 旭のあられもない声色に、先程から柴崎は参っていた。尻に指を沈める前から、もう理性はとうに切れている。男の体だというのはわかっている。だけど、肌に触れて、しっくりきてしまった。口から零れる旭の否定も羞恥からくるのだろう。性器は萎えず、健気に震えていた。

「怖い、から…待ってほし…」
「……すまん、」
 
 薄い胸を上下させ、細い腕で顔を隠した旭が震える声で呟いた。小さく鼻を啜る音に、泣かせてしまったかと少しだけ慌てる。そっと交差する腕に触れて名前を呼べば、ようやく顔を見せてくれた。
 
「平気か、」
「う、うん。」
 
 重たげに腕を持ち上げると、ゆるゆると柴崎の首の後ろに腕を回す。枕の下に突っ込んでいたせいか、なんだか人肌恋しかったのだ。こんなことは口には出せないが、抱かれるならやはりこうしていたい。柴崎は引き寄せられるままに抱きすくめられると、そっと旭が頬を擦り寄せる。衣擦れだけの無言のひと時。そんな時間は艶めくほどに淫猥で、それでいて心地よい。
 
「ゆ、ゆっくり、して…びびる、から、」
「ああ、」
「あ、あと…う、うんってやめて…な、なんかしゃべってて…」
「なんで、」
「さ…」
 
 寂しいだろう、とは言えなかった。
 旭が無言で肩口に顔を埋める。柴崎は何も言わずにそっと耳に口付けると、再び尻に沈めた指をゆっくりと動かし始めた。まだ一本しか入っていない。それなのに、旭はどうにかなってしまいそうだった。
 
「ふ、ぅ…っ…」
「辛い?」
「へえ、き…」
「…わかった。」
 
 チカリと目の奥が光る。節ばった柴崎の指が、優しく内壁を擦るのも変な感じがした。柴崎がゆっくりと旭の腹の中から指を引き抜くと、いよいよ腰が抜けるかと思った。かくん、と思わず揺れてしまい、恥ずかしくなて肩口を甘く噛む。顔の横に腕をついた柴崎が、ベットサイドの引き出しに手を伸ばす。
 柴崎が肘をつき沈んだベットのせいにして、背に回した腕の力をギュッと強めた。かさりと音がした後、かぽ、という蓋を外すような音が聞こえて、顔を上げた。
 
「何それ、」
「痛くねえように使う。」
「へ、」
 
 透明なジェルのようなものが、柴崎の大きな手に垂らされた。それを掌で温める、その手の甲の血管の太さに自然と目が行ってしまった。やがて温まった粘度の高いそれを己の尻に塗られると、旭は思わず脚を跳ね上げて反応した。
 
「ぁ、や、やば…ぅ、うー…っ」
「ン、力抜いてな。平気だから。」
 
 頬に口付けられ、静液なんか比じゃないほどの滑りをまとった指が、先程よりもスムーズに指の侵入を許した。縁に、柴崎の指の根元を感じた。ああ、こんな長い指を収めてしまったのかと、震える脚をゆるゆると動かし、膝を立てた時だった。
 
「あ、っつ…」
「悪戯すんな。」
「ひゃ、うっぅあ、あっ!」
 
 膝が柴崎の膨らみに当たった。たったそれだけで、旭の脳はじんわりと熱が広がった。柴崎の息をつめる音に、ひくんと蕾が収縮する。無骨な指先で、尻の中のしこりをぐっと指で押し込まれると、再び腰が跳ね上がってしまった。
 己の主張した性器を柴崎のスウェット越しの腹に押し付ける形になり、生地にシミができる。謝る間も無く、何度もノックをするように尻の中の気持ちがいいところを蹂躙されるものだから、押し出されるように漏れ出た精液が、誤魔化せないほどにスウェットにシミを広げる。
 
「ぅあ、あ、あぁごっ、ごめ、ぁさ、ひ、ぅっ」
「いいよ汚して。んとに、すげえいい顔するじゃねえの。」
「みんな、ぁっ、やだ、み、んぅ、っ」
「ならくっついてな、指増やすから力抜いてろ。」
「う、ぅあ、も、ゎか…ンぁ、っ…」
 
 わからない、こんなに前後不覚になってしまうような、麻薬じみた快感は怖い。震える掌で顔を覆う。表情を見られたくなかったのだ。荒い呼吸を繰り返す。濡れそぼった股ぐらを見られたくはないのに、柴崎は旭の気持ちなんか汲んでくれなくて、そのまま足を開かされた。
 
「ゃだ、ち、んこみんな、よ…っ」
「好きなやつのなら、見るだろ。」
「へぁ…っ」
 
 端的な言葉に、思わず妙ちくりんな声が漏れた。指の隙間から恐る恐る柴崎を見る。旭が汚したスウェットを脱ぎ、割れた腹筋を惜しげもなく晒した柴崎が、手を伸ばして窓際のカーテンを閉めた。配慮をされたのかもしれない。そう思っただけで、胸が小さく鳴く。柴崎は、何気ない振る舞いで旭を女々しくさせる天才だ。
 
「す、…」
「後でな。」
「ひゃ、め…っ」
 
 腰を引き寄せられ、足の間に柴崎が入り込む。旭の両足が柴崎を閉じ込める形になると、その足を抱え上げられ、体を折り畳まれた。
 
「は、ア…っぁ、」
「ふー…、」
 
 眉間に皺を寄せ、深く深呼吸をした。落ち着こうとしているらしい、柴崎は旭の顔の横に手をつくと、薄い腹にゆっくりと触れた。
 
「旭、」
「ふ、うぁ…っあ、あ、あ、っ」
 
 ぐるりと喉の奥がなる。熱い旭の掌が、すがるかのように顔の横についた柴崎の腕を掴む。取り出した柴崎の性器は反り返って、蕾に増えるだけで火傷してしまいそうであった。それが、押し付けるようにそこに当てられる。柴崎の指によって溶かされたそこに、ゆっくりと先端が埋め込まれていくのだ。驚愕と、僅かな被虐心。己の体が柴崎によって征服されるこの感覚は、毒のように体に染み込んでいく。
 
「ぉ、おれ…ぉとこ、なのに…へん、っ…」

 こんな、腹の中から作り替えられるみたいなの、変だ。
 
 ジクジクと痛むそこが、徐々に疼痛へと変化していく。限界まで押し広げられて、これ以上飲み込めないと頭では思っているはずなのに、旭の腹がその先をねだる。
 
「変じゃねーよ、なんも、変じゃねえ。」
「っ、ふ…ぅ、…」
「泣くのだって、変じゃねえ。」
 
 柴崎のものを根元まで飲み込んだ。腹の中が苦しい。いや、腹だけじゃなくて、胸も苦しかった。柴崎がゆっくりと体を倒して、旭の髪を梳くように撫でる。優しい手つきが何故だか涙腺を叩いて、目の奥から込み上げてくるものを我慢できなかった。
 
「泣きてえなら、おれが理由を作ってやるから。だからお前は、寄りかかってこいよ、不器用。」
「ひど、…」
「甘やかしてるつもりなんだけどな。」
 
 困ったように、柴崎が笑う。きっと、今にも欲求のままに動きたいのだろう。それなのに、労わるように目元に触れては、瞼に口付けられる。その唇で、旭の弱さを受け止めてくれる。
 旭は、何も言えなかった。口を開いたら嗚咽が出てしまいそうだったからだ。それでも、涙を拭う柴崎の手をそっと握ると、そっと指先に口付ける。一杯一杯な旭には、そうして気持ちを伝えることしかできなかったのだ。
 
 
 
 
 
 
 
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