アイデンティティは奪われましたが、勇者とその弟に愛されてそれなりに幸せです。

だいきち

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兄弟の時間 *

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 副団長部屋、基、弟の私室に入ったイザルが真っ先に思ったことは、つまんねえ部屋だな。であった。
 格子窓のせいか、独房のようにも見えなくもない。イザルは一つしかない部屋の扉に防音魔法をかけると、寝心地だけは良さそうなダブルサイズのベットへと視線を向けた。

「ここはヤリ部屋かあ? 一人のくせにベットはダブルとか、やらしいねえ」
「言っておくが、俺はお前の弟だぞ。何もないと思うのか」
「……確かにな」

 しらけた目で見つめてくるルシアンの言葉に、イザルは妙に納得してしまった。ここはむさ苦しい男所帯だ。上官は、変わっていなければおっかない性格の女性だったかと思うが、手を出そうにも返り討ちに会うのは明白である。狭い兵舎の中で抱くのは、やはり見目のいい男というわけか。

「シグムント、今部屋を暖めるから待っていてくれ」
「どうせやるなら、すぐに熱くなるだろう」
「俺はお前とは違う」

 ルシアンが部屋の暖炉に火を灯す。薄暗い室内の中で、チリチリとした火の鳴く音と共に、オレンジ色の温かみのある光が室内を照らした。
 素肌を隠すように、ルシアンによって肩にかけられた毛布で体を温める。ここまでの移動をしたのに、シグムントときたらまともな服に袖すら通していない。
 気恥ずかしさから頬を染めていたシグムントの顔を、イザルは不機嫌そうに見つめていた。
 
「シグムント、こっち向け」
「うん?」
「お前から俺にキスをしたら、優しく抱いてやる」

 備え付けのキッチンでホットミルクを用意するルシアンを差し置いて、イザルは先手必勝とばかりに宣った。
 背後から聞こえた聞き捨てならない言葉に、思わずルシアンはミルクを入れた鍋の火を止めて振り返る。見れば、シグムントが素直にイザルへと唇を寄せている。制止を求めるルシアンの声は間に合わず、シグムントはイザルの頬に手を添えるように──── 
 
「まっ、……」
「ン、っ」
「あ?」

 ふにりとした柔らかさがイザルの頬に触れた。ルシアンが恐れていた唇同士の触れ合いではない。あっけにとられているイザルを置いてけぼりに、頬に口付けたシグムントはそれでもなお照れくさそうにしている。
 キスの場所を指定しなかったイザルに当然文句を言う権利はない。むすりとした表情を前に、きょとんと首をかしげるシグムントは何も理解をしていなかった。

「お前は、本当に油断も隙もないな……そんな子供じみた駆け引きをせずとも優しく抱いてやれ」
「うるせえ、さっさと始めんぞ」
「俺は何か間違えたのか?」
「いいんだ、気にしないでシグムント」
 
 シグムントの頬に触れようとしたルシアンから奪うように、イザルは早々に華奢な体を抱き上げた。定位置が決まっているわけではないが、イザルは己の膝の上に座らせた。

「お前……あっ」
「ん、む……っ」

 今度こそ、イザルはルシアンに見せつけるようにシグムントへと口付けた。柔らかな唇を啄み、薄く開いた口に舌を含ませる。熱いシグムントの舌は肉厚な舌によって容易く解され、唇の重なりの微かな隙間から滲むように唾液が細い顎を伝う。

「ふ、ぅン……、ン、んん、っ……」
「は、……鼻で息しろ、教えたろ。」
「ぁ、ぃ、いざ、る……っ、」

 鼻にかかるシグムントの甘えたな声と視覚情報が、ルシアンの神経を刺激する。掠れ気味の声に宿る色は、触れられることに慣れた者の期待が混ざり込んでいた。
 イザルがどう人を抱くのかを、まざまざと見せつけらている。暴力に長けた無骨な手のひらが、ルシアンの予測に反して労わるように甘やかす。ゾッとするほど丁寧に銀髪を梳く無骨な手のひらは、そのままシグムントの後頭部に周り、ベットへと押し倒した。

「……抜け駆けは許さない。」
「は、……」
「ン、んぁ、っ……」
 甘く吸い付いたシグムントの唇を、イザルは微かな水音を立てて離した。ギシリと音がして振り向く。銀灰色の瞳が捕えたのは、不満気な表情を宿したルシアンが、ベットに乗り上げる姿だった。
 上等な雄が二匹。シグムントの姿を前に腹を空かせていた。ルシアンの指先が赤く濡れた唇にふれ、こぼれた唾液を拭いとり口付ける。
 イザルのように舌を掬いあげるような口付けとは違う。歯列をなぞるような、欲を隠しもしない舌使いはシグムントの身を震わせる。

「ふ、んぅ、……ぁ、っ……」
「はあ、……し、ぐ」
「ル、ルシぁ、っ……」

 かちりと互いの歯が当たった。ルシアンの余裕のなさが、わかりやすくまろびでたのだ。こうしてシグムントに触れることをずっと待ち望んできた。無意識に激しさを滲ませた口付けがその証だ。普段のルシアンなら、当然こんなヘマはしない。
 ずっとこの唇を奪いたかった。熱い舌を絡め取り、甘く感じる唾液を味わう。顔を傾けることで深く重なった唇は、時折漏れるシグムントの嬌声も受け止めた。ぬめる舌で互いの味蕾を摩擦しながら、狙い通りシグムントから余裕を奪っていく。

「ん、んゅ、ふ……っ、ちゅ、ふ……ぁ、っ」
「か、わいい……シグ、ムント……ああ、かわ、いい」
「ふ、ぅ……っ、はぁ、あ、っ……」

 瞳に涙を溜めたシグムントが、逃げるように顔を背けた。名残惜しげに互いの唇を繋ぎ止める唾液がプチンと切れる。
 口端からこぼれた唾液を前に、イザルは唇を寄せるとねとりと舐めとった。これが、忌々しい弟の唾液だろうと構わない。ルシアンへの意識を再びイザルへと戻すことができるのなら、そんなものはどうだってよかった。

「下手くそ、酸欠にさせてどうする」
「……止められるわけないだろう。シグムント、ああ、そんなとけた顔で見つめないでくれ」

 酸素が冷えている。そう体が勘違いしてしまうほどに、シグムントの体温は高まっていた。いつの間にか濡れそぼった下肢は、二人からの口付けを受けて、浅ましく勃ち上がっている。性器が濡れている気がして、震える足を引き寄せた。柔らからな防壁はしかし、二人の雄の前ではあまりにも心許なかった。

「だ、だめだ、み、見ないでくれ……」

 シグムントは、皿の上に盛り付けられた上等な肉そのもののようであった。食欲を誘い、その柔らかさを歯で確かめたくなる。二匹の獣に成り下がった男の目の前で、ただ小さくうずくまることしか許されない。
 イザルとルシアンは、最初から口裏を合わせていたかのように互いの場所を移動した。シグムントを上からも、下からも。余すことなく性感に耽ることができるように挟み込む。

「怯えなくていい、気持ちいいことだけをしような。シグムント」
「そんなんやっても、煽るだけだぞ。学べ」
「へ、……ぁ、っゃ、やぁ、っ」

 ルシアンがシグムントの両腕を一纏めにする。白い胸は惜しげもなく晒され、震える太ももは、肉質を確かめられるかの如くイザルの手によってわり開かれた。
 足の間で慎ましく勃ち上がる、小ぶりなぬれそぼった性器。イザルはシグムントに見せつけるようにボトムスの前をくつろげると、痛いくらいに勃ち上がった己の性器を取り出した。

「ぁ、……っ」
「まだ入れねえ…から、びびんな」
「シグムント、恥ずかしがらなくていい。俺のも、もう随分ときつい」
「ぅ、うぁ、ル、ルシアン」

 ルシアンに膝枕をされるように身を預けていたシグムントの頬に、熱源を感じた。イザルと違い布越しではあったが、たしかに固く張りつめた性器が主張をしている。
 割り開かれた足の間を、イザルが陣取った。シグムントの小ぶりなそれと重ねるように押しつけられた性器はどしりとしていて、興奮を顕著に表していた。
 ルシアンの手のひらが頬に添えられ、イザルは逃げ場を奪うように覆いかぶさる。小さな体はあっという間に雄二匹に隠されて、イザルの遠慮のない唇がつんと尖った胸の粒を口に含む。

「ひぅ、あ」
「シグムント、俺だけ仲間はずれにしないでくれ」
「ぁ、あふ、っ」

 金属の擦れ合う音がして、ルシアンの性器がシグムントの頬に触れる。木の根が這うような幹は固く張りつめていた。無骨な指先が甘やかすようにシグムントの唇に侵入し、うすい舌を誘いだす。

「口でしたことは?」
「あるぜ。盛大にゲロったけどな」

 イザルの言葉はルシアンを不機嫌にさせることに長けている。不躾な行為がシグムントを苦しめたであろうことは、間近で見たわけでもないのに容易に想像できた。

「ふ、んむ、……ぅ」
「シグ、怖くない。無理はさせないから、口でしてくれるか」
「ぅ、うん」
「いいこだ」

 舌の表面を撫でられて、シグムントの背筋が甘く痺れた。腰が重だるく、イザルの唇で翻弄される胸の一点から、性感が流動するように下腹部へ溜まっていく。
 熱い呼気がルシアンの性器に触れる。まるで子猫を愛でるように顎をくすぐられ、シグムントはそっと薄い舌を性器へとのばす。

「……あんまよそ見してんなよ」
「は、んンっ……‼︎」
「イザル、噛み癖はやめろ」
「うるせえ」

 イザルの不機嫌そうな声と共に、シグムントの胸の頂には鋭い痺れが走った。ルシアンへの明確な嫉妬に、弄ばれる体への配慮はない。
 小さな口に押し付けられた性器は、イザルへの返事も拒むようだった。挑発的な二人の態度は、華奢な体を挟んでの牽制へと変わっていく。二人には、間に挟まれたシグムントの瞳から滲む涙を、気がつく余裕もないようだ。
 
「ここを噛まれて、上手にイけるもんな、お前は」
「ひゃ、ん、んぅ、っふ……っ」

 ちゅる、とはしたない音を立ててルシアンの性器に甘く吸い付く。シグムントの声は、イザルの歯が胸の粒を掠めたことで高い悲鳴を漏らしていた。女の嬌声とは違う。それでも、確かにシグムントの声は高く、そして二人を十分に煽った。
 拙い舌使いが必死に声を漏らすまいとルシアンを高めるのも逆効果であった。

「可愛い、シグムント……」
「は、ふ……っ……っぁ、あっン」
「っ、イザル」

 震える細い指が阻むようにイザルの口元に添えられていた。指の隙間から見える犬歯は確かにシグムントの粒を甘く喰んでいる。濡れた舌がシグムントの指の股を舐め上げると、イザルは嫣然と微笑んだ。
 
「シグムント、どうしてほしい」
「ぃ、いた、いのは、いゃだ……」
「なら、力加減はお前が教えろ。俺はそれに合わせてやる」

 イザルの言葉を前に、シグムントは覚束ない思考の中おずおずと頷いた。その小さなおとがいを、労わるようにルシアンが撫でる。
 兄の策略に気が付かぬまま、素直に言うことをきく愚かな姿を前に、憐憫よりも愛しさが勝る。
 イザルもルシアンも、シグムントに執着をしている。この無垢な存在が、自分達の手で堕ちればいいとすら思っているのだ。

「これは……?」
「ぁ、い、いた、ぃ……っ」

 イザルの犬歯が、ゆっくりとシグムントの胸の突起に食い込んだ。ぴり、とした、皮膚の引き攣れるような痛みに小さく肩を跳ねさせると、窘めるかのように、イザルの口元にシグムントの指先が触れた。

「なら、これは?」
「ん、ぅ……、ぃ、いたく、ない」
「こんくらいが、好きか?」
「ぅ、ん……、っ」

 先程とは違った甘やかな刺激に、シグムントは小さく吐息を漏らす。イザルの舌によって、突起だけではなく指先まで唾液で濡らされている。小さな指先での抵抗が、己の突起への刺激につながっているだなんて、気がついてもいないのだ。

「やらしいな、ったく……」
「へ」
「なんでもねえ、感じてな。」
「ひ……んっ、ぃ、イザ、ル…っ」

 濡れた声で名前を呼ばれるのは心地いい。イザルの視線に、自然と熱が宿る。
 二人のやり取りを見つめていたのはルシアンだ。ぺしょ、と時折与えられる性器への刺激に息を詰めながら、その無骨な指先をツンと尖ったもう片方へと伸ばす。

「ぁ、ひゃ、んめ、っ」
「おい、触んな」
「なんだよ。シグの可愛いところ、もっと見たくないのか」
「…………」

 ルシアンの言葉を前に、イザルが黙りこくる。いつもなら文句の一つでも出てきそうな場面ではあったが、どうやら否やは無いらしい。
 イザルはふん、と鼻で笑うと、再びシグムントの胸元へと顔を埋めた。

「ふ、ぅ、っ……な、なん、そこばっか」
「お前の反応が楽しい。」
「んゃ、あ、あっ」
「ほら、俺のも気持ちよくして」
「ちゅ、ふ……っ」

 薄い胸を、手のひらが肉を寄せ集めるように胸の突起を持ち上げる。執拗な胸への愛撫と、口内に性器を招くという背徳的な行為は静かにシグムントの頭を馬鹿にしていった。
 ちゅ、ちゅ、という微かな水音が、弄ばれているからか。それとも自らの意思で音を立てているのかがわからなかった。頬張った性器の熱が脳を溶かし、鋭い刺激が思考を酩酊させていく。
 細い足の間で慎ましく立ち上がった性器からは、まるで水を汲み上げるように先走りを漏らす。それがゆったりと尻の間を伝い、ひくつく蕾の中へと招かれる。与えられる性感に必死で応えようとする姿が、まるで溺れる小動物のようにも見えた。


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