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再びのククルストック
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眷属となる云々の話は、ひとまずまとまった。結局シグムントの眷属はゴブリンのイマカのみ、ネーヨ、基イェネドはイザルの舎弟──── ただしイェネドは群れのボスだと認識している──── として行動をともにすることとなった。
魔族であるシグムントだけでも手いっぱいなのに、勇者をやめた今。こうして魔族のお供ができるとは、二年前のイザル自身が見たらなんと言うのだろう。人生とは何が起こるかわからないものである。
「せっかく仲間になったと言うに。まさかイマカとばいばいだなんて寂しいものだなあ」
「これからククルストックに戻るんだ。あいつがいたらまた五月蝿くなるだろうよ」
「仲間、弔ってやんなきゃと言っていた。イマカは立派な雄だ」
イザルが散々弄り倒した他人のインベントリを我が物にしたイマカは、フォレストフォールへと戻る決意をした様だ。無論、シグムントが呼び掛ければ馳せ参じる契約はしっかりと交わされている。手の甲に刻まれたミミズ似の契約印には心底嫌そうであったが。
ただ、イザルはきちんと理解していた。おそらく仲間のために残ると言うのは、シグムントへの建前に違いないと。イザルが捨てた他人のインベントリを抱きしめて、イマカはイザルに言ったのだ。
──── 次、呼バレタ時ノタメニ、チットクライハ強クナッテオク。
「ま、あいつも男だっつーことだよ」
「でもラカントフラワー討伐なんて、イマカ一人でできるのか?」
「男に二言は許されない。シグムント、イマカはきっとまじだよ」
「イザルは二言しか言わなさそうだけどなあっきゃいん!」
イザルの拳がシグムントの後頭部をすかさず叩く。
フォレストフォールの出口まで案内してくれたイマカだ。森の中は知り尽くしているのだろう。ラカントフラワーの討伐をすでにイザルが済ませていることは告げていない。やる気満々のイマカを尊重したあたり、イザルもイマカの男気には思うところがあるようだ。
男は、目標があれば強くなれる。イザルの当面の目標は安定した生活であるが。
「う、うーん……」
ネーヨに担がれたアルベルが、小さく唸った。どうやら覚醒が近いらしい。イザルはまたシグムントが余計なことをいうのではと危惧したが、視線を向けた先の表情が曇っていたので口を噤む。落ち込んでいるというか、怯えているようにも見える。
「シ、……」
「うう、う? ……んん……」
「……イェネド、おろしてやれ」
「うん」
気にはなったが、結局イザルは声をかけなかった。
イェネドによって、少々乱暴気味に下されたアルベルが目を覚ます。気がつけば、シグムントはアルベルの視界から逃れるように、イザルの背後へと隠れていた。
「あり……? なんだ戻ってきてるじゃないか‼︎ ってどへぇえっい、イザル‼︎」
「随分なご挨拶じゃねえかアルベル。命の恩人に向かってよォ」
「よ、よりにもよってイザ、う、ううん、なんでもない。うん、俺ぁ生きてこの森でれたんだなあ……」
呑気にあたりを見回している様子から、あの洞窟神殿での出来事は忘れているらしい。蓄えた髭を仕切に撫でていたアルベルの瞳が、イザルの背後に隠れるシグムントを捉える。ようやくイザル以外にも人がいると認識したのか、感心したように宣った。
「はぁあ、見慣れない別嬪さんがおる。褐色のあんたはどこの人だい?」
「アルベル、詮索するな。それよりも報酬をよこせ。捜索依頼だしたのはてめえだろう」
「そりゃあ俺と一緒にいたルルだ。……あんたルル見てねえか?」
「ルル?」
アルベルの問いかけに、イザルはあえて疑問で返した。おそらく、ルルとは拾ったインベントリの真の持ち主だろう。微かに毛を逆立てるイェネドを窘めるように腕を掴むと、言葉の先を促すように、見ていない。と告げた。
「そうか。いや、いいんだ。俺はあいつに殺されかけたしな……。そんな奴の命なんぞ、心配してやる義理もない」
「殺されかけた?」
アルベルは体を揺らして立ち上がると、苛立ちを大袈裟な身振りで吐き出した。
「ルルのやつ、自分が半魔だってことを隠してやがったんだ‼︎ そのまま言わないでくれりゃあこんなことにはならなかったのによう、全く。半魔を雇ったことがバレたら俺は罪になっちまう!」
「なんで半魔だってわかったんだ。まさか、そいつは自分から明かしたのか?」
「そうだよ、俺は人間だと思ってた。だから仕事だって丁寧に教えてやったつもりだ。それがあの野郎、フォレストフォールについた途端、様子がおかしくなりやがって!」
曰く、ルルは突然魔物へと姿を変えたのだという。きっかけはわからない。アルベルの目の前で魔物に姿を変えたルルは、その咆哮で仲間を喚んだのだという。
ヴィホルダーに仲間を喚ぶ特性を持つものはいないことから、イザルはルルが召喚術を持っていたのではないかと推測した。ヴィホルダーは上位種の魔物だ。主人がいるうちはいいが、おそらくルル自身がヴィホルダーに転化してしまった為に、制御が効かなくなったのだろう。
アルベルを見つめるイザルの目は、予想以上に冷たい。興奮したように喋り続けるアルベルとは正反対に、イェネドとシグムントは静かに緊張をしていた。
「んで、アルベルはなんでフォレストフォールまで行ったんだ」
「なんでって、そりゃあ……」
アルベルの目線がイザルの腰に差している聖剣へと向けられた途端、人が変わったように表情をこわばらせた。
「おま、な、なんでそれ持ってんだあ!」
「お前を助け出した手間賃にもらったんだよ。捜索依頼だけじゃ割に合わねえしな。つっても、処分してくれって頼んだのにこの有様さ。ま、お前のことなんざハナから信用しちゃいねえがな」
「ゲッ!」
遺跡で見せた醜い聖剣への執着を、アルベルはすでに持たないようだった。渋い顔はしているが、どちらかというと悪戯がバレたかのような罰の悪さを感じる。
イザルもまた、神殿の時のようにしつこく追求することはしなかった。ただ、しっかりと報酬を貰うつもりであることには変わりない。
「ん」
「な、なんだよ……」
「はやく依頼料よこせや。てめえの思いつきで迷った挙句、駆り出された俺の身にもなれってんだ髭ジジイ」
「グゥウ……」
アルベルは悔しそうな顔をしたが、それ以上の文句を言うことはせずに懐から金の入った皮袋を取り出した。
「……いいかいお嬢ちゃん。悪いことは言わねえ……付き合う男くらいは自分の目で見定めにゃ行かん。少なくとも老耄から金を巻き上げる様な男はダメだ」
「う、うん」
「そこの若いの、お前もだぞ。いいな」
「…………」
イザルが予想した通り、アルベルは己がシグムントに何をしたのかも忘れている様だ。イェネドは訝しげにアルベルを睨んだだけで、頷きひとつすら応じなかった。
受け取った金をインベントリに突っ込むと、イザルは付け足すようにアルベルへと口を開いた。
「アルベル、お前がこのまま剣を持っていたら、命は奪われていたかもしれない」
「ああ⁉︎」
「この剣は聖剣なんかじゃねえ、どっちかっつうと魔に引き寄せられる剣だからな」
イザルの言葉に、アルベルは推し黙った。思うところがあったらしい。稲穂の眉の隙間から睨みつけるように、イザルの剣を見つめる。
「お、俺ぁ確かに……あん時は俺じゃあなかったのかもしれん」
額に汗を滲ませる。聖剣を手にした時に目に浮かんだ剣の記憶は、アルベルに悪夢を見させた。血生臭い香りと魔物の肉を絶つ記憶。背筋も凍る感覚を植え付けられたはずなのに、自然と足は森へと向かっていたと言う。今は柄を握った感触すら思い出せない。むしろ、聖剣によって操られていたと言われる方が腑に落ちる。
「そ、そんな恐ろしいもんを俺に預けるな‼︎ お前は馬鹿か‼︎」
「俺はてっきりあんたが言いつけ通りに処分してくれると思ったんだがなあ」
「こっちは金払って買い取ったんだぞ‼︎ そもそも曰く付きだなんて誰が思うかあ‼︎」
「そう。だからあんたが勝手に好きにした。やめておけとも俺は言ったがな。はなからてめえに忠告の義務を果たしてあんだよ」
最後までアルベルの記憶が欠けていることを、イザルは伝えないままであった。シグムントもイェネドも、それについては何も言わなかった。
聖剣が手元に戻ってきた今、アルベルが受ける影響は何もない。遺跡にいた時と比べても、今のアルベルは別人の様に感じた。
シグムントは、静かに考え込んでいた。先程イザルが言っていた、魔に引き寄せられる剣という言葉が、頭の片隅から離れなかったのだ。己も、そのうちの一つなのだろうかと考えて、少しだけ落ち込んだ。イザルがこの体を討伐しに来た過去は変えられないが、叶うことならもう二度と経験はしたくないと思ってしまったのだ。
「いやだな」
「あ?」
「ううん、なにも」
イザルのとなりにいると、どんどんと贅沢になっていくような気がする。この気持ちだけは悟られたくないなと取り繕う姿が気にかかったらしい。イザルは妙なものを見る目でシグムントを見つめていた。
結局、シグムントはククルストックの宿に戻っても、一人落ち込んだままであった。
魔族であるシグムントだけでも手いっぱいなのに、勇者をやめた今。こうして魔族のお供ができるとは、二年前のイザル自身が見たらなんと言うのだろう。人生とは何が起こるかわからないものである。
「せっかく仲間になったと言うに。まさかイマカとばいばいだなんて寂しいものだなあ」
「これからククルストックに戻るんだ。あいつがいたらまた五月蝿くなるだろうよ」
「仲間、弔ってやんなきゃと言っていた。イマカは立派な雄だ」
イザルが散々弄り倒した他人のインベントリを我が物にしたイマカは、フォレストフォールへと戻る決意をした様だ。無論、シグムントが呼び掛ければ馳せ参じる契約はしっかりと交わされている。手の甲に刻まれたミミズ似の契約印には心底嫌そうであったが。
ただ、イザルはきちんと理解していた。おそらく仲間のために残ると言うのは、シグムントへの建前に違いないと。イザルが捨てた他人のインベントリを抱きしめて、イマカはイザルに言ったのだ。
──── 次、呼バレタ時ノタメニ、チットクライハ強クナッテオク。
「ま、あいつも男だっつーことだよ」
「でもラカントフラワー討伐なんて、イマカ一人でできるのか?」
「男に二言は許されない。シグムント、イマカはきっとまじだよ」
「イザルは二言しか言わなさそうだけどなあっきゃいん!」
イザルの拳がシグムントの後頭部をすかさず叩く。
フォレストフォールの出口まで案内してくれたイマカだ。森の中は知り尽くしているのだろう。ラカントフラワーの討伐をすでにイザルが済ませていることは告げていない。やる気満々のイマカを尊重したあたり、イザルもイマカの男気には思うところがあるようだ。
男は、目標があれば強くなれる。イザルの当面の目標は安定した生活であるが。
「う、うーん……」
ネーヨに担がれたアルベルが、小さく唸った。どうやら覚醒が近いらしい。イザルはまたシグムントが余計なことをいうのではと危惧したが、視線を向けた先の表情が曇っていたので口を噤む。落ち込んでいるというか、怯えているようにも見える。
「シ、……」
「うう、う? ……んん……」
「……イェネド、おろしてやれ」
「うん」
気にはなったが、結局イザルは声をかけなかった。
イェネドによって、少々乱暴気味に下されたアルベルが目を覚ます。気がつけば、シグムントはアルベルの視界から逃れるように、イザルの背後へと隠れていた。
「あり……? なんだ戻ってきてるじゃないか‼︎ ってどへぇえっい、イザル‼︎」
「随分なご挨拶じゃねえかアルベル。命の恩人に向かってよォ」
「よ、よりにもよってイザ、う、ううん、なんでもない。うん、俺ぁ生きてこの森でれたんだなあ……」
呑気にあたりを見回している様子から、あの洞窟神殿での出来事は忘れているらしい。蓄えた髭を仕切に撫でていたアルベルの瞳が、イザルの背後に隠れるシグムントを捉える。ようやくイザル以外にも人がいると認識したのか、感心したように宣った。
「はぁあ、見慣れない別嬪さんがおる。褐色のあんたはどこの人だい?」
「アルベル、詮索するな。それよりも報酬をよこせ。捜索依頼だしたのはてめえだろう」
「そりゃあ俺と一緒にいたルルだ。……あんたルル見てねえか?」
「ルル?」
アルベルの問いかけに、イザルはあえて疑問で返した。おそらく、ルルとは拾ったインベントリの真の持ち主だろう。微かに毛を逆立てるイェネドを窘めるように腕を掴むと、言葉の先を促すように、見ていない。と告げた。
「そうか。いや、いいんだ。俺はあいつに殺されかけたしな……。そんな奴の命なんぞ、心配してやる義理もない」
「殺されかけた?」
アルベルは体を揺らして立ち上がると、苛立ちを大袈裟な身振りで吐き出した。
「ルルのやつ、自分が半魔だってことを隠してやがったんだ‼︎ そのまま言わないでくれりゃあこんなことにはならなかったのによう、全く。半魔を雇ったことがバレたら俺は罪になっちまう!」
「なんで半魔だってわかったんだ。まさか、そいつは自分から明かしたのか?」
「そうだよ、俺は人間だと思ってた。だから仕事だって丁寧に教えてやったつもりだ。それがあの野郎、フォレストフォールについた途端、様子がおかしくなりやがって!」
曰く、ルルは突然魔物へと姿を変えたのだという。きっかけはわからない。アルベルの目の前で魔物に姿を変えたルルは、その咆哮で仲間を喚んだのだという。
ヴィホルダーに仲間を喚ぶ特性を持つものはいないことから、イザルはルルが召喚術を持っていたのではないかと推測した。ヴィホルダーは上位種の魔物だ。主人がいるうちはいいが、おそらくルル自身がヴィホルダーに転化してしまった為に、制御が効かなくなったのだろう。
アルベルを見つめるイザルの目は、予想以上に冷たい。興奮したように喋り続けるアルベルとは正反対に、イェネドとシグムントは静かに緊張をしていた。
「んで、アルベルはなんでフォレストフォールまで行ったんだ」
「なんでって、そりゃあ……」
アルベルの目線がイザルの腰に差している聖剣へと向けられた途端、人が変わったように表情をこわばらせた。
「おま、な、なんでそれ持ってんだあ!」
「お前を助け出した手間賃にもらったんだよ。捜索依頼だけじゃ割に合わねえしな。つっても、処分してくれって頼んだのにこの有様さ。ま、お前のことなんざハナから信用しちゃいねえがな」
「ゲッ!」
遺跡で見せた醜い聖剣への執着を、アルベルはすでに持たないようだった。渋い顔はしているが、どちらかというと悪戯がバレたかのような罰の悪さを感じる。
イザルもまた、神殿の時のようにしつこく追求することはしなかった。ただ、しっかりと報酬を貰うつもりであることには変わりない。
「ん」
「な、なんだよ……」
「はやく依頼料よこせや。てめえの思いつきで迷った挙句、駆り出された俺の身にもなれってんだ髭ジジイ」
「グゥウ……」
アルベルは悔しそうな顔をしたが、それ以上の文句を言うことはせずに懐から金の入った皮袋を取り出した。
「……いいかいお嬢ちゃん。悪いことは言わねえ……付き合う男くらいは自分の目で見定めにゃ行かん。少なくとも老耄から金を巻き上げる様な男はダメだ」
「う、うん」
「そこの若いの、お前もだぞ。いいな」
「…………」
イザルが予想した通り、アルベルは己がシグムントに何をしたのかも忘れている様だ。イェネドは訝しげにアルベルを睨んだだけで、頷きひとつすら応じなかった。
受け取った金をインベントリに突っ込むと、イザルは付け足すようにアルベルへと口を開いた。
「アルベル、お前がこのまま剣を持っていたら、命は奪われていたかもしれない」
「ああ⁉︎」
「この剣は聖剣なんかじゃねえ、どっちかっつうと魔に引き寄せられる剣だからな」
イザルの言葉に、アルベルは推し黙った。思うところがあったらしい。稲穂の眉の隙間から睨みつけるように、イザルの剣を見つめる。
「お、俺ぁ確かに……あん時は俺じゃあなかったのかもしれん」
額に汗を滲ませる。聖剣を手にした時に目に浮かんだ剣の記憶は、アルベルに悪夢を見させた。血生臭い香りと魔物の肉を絶つ記憶。背筋も凍る感覚を植え付けられたはずなのに、自然と足は森へと向かっていたと言う。今は柄を握った感触すら思い出せない。むしろ、聖剣によって操られていたと言われる方が腑に落ちる。
「そ、そんな恐ろしいもんを俺に預けるな‼︎ お前は馬鹿か‼︎」
「俺はてっきりあんたが言いつけ通りに処分してくれると思ったんだがなあ」
「こっちは金払って買い取ったんだぞ‼︎ そもそも曰く付きだなんて誰が思うかあ‼︎」
「そう。だからあんたが勝手に好きにした。やめておけとも俺は言ったがな。はなからてめえに忠告の義務を果たしてあんだよ」
最後までアルベルの記憶が欠けていることを、イザルは伝えないままであった。シグムントもイェネドも、それについては何も言わなかった。
聖剣が手元に戻ってきた今、アルベルが受ける影響は何もない。遺跡にいた時と比べても、今のアルベルは別人の様に感じた。
シグムントは、静かに考え込んでいた。先程イザルが言っていた、魔に引き寄せられる剣という言葉が、頭の片隅から離れなかったのだ。己も、そのうちの一つなのだろうかと考えて、少しだけ落ち込んだ。イザルがこの体を討伐しに来た過去は変えられないが、叶うことならもう二度と経験はしたくないと思ってしまったのだ。
「いやだな」
「あ?」
「ううん、なにも」
イザルのとなりにいると、どんどんと贅沢になっていくような気がする。この気持ちだけは悟られたくないなと取り繕う姿が気にかかったらしい。イザルは妙なものを見る目でシグムントを見つめていた。
結局、シグムントはククルストックの宿に戻っても、一人落ち込んだままであった。
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