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木漏れ日もりにて
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ぎゅ、ぎゅ、という、土を踏み締める音がする。シグムントは買ってもらったばかりのブーツを履いて、土を踏み込んでは足跡をつけて遊んでいた。
ローブをマフラーのように巻き付けて、長い銀髪を一つに結んでいる。今日の服はいつもの裾が長いチュニックとボトムスではない。その代わりに、子供の頃にイザルが着ていた、丈の短いシャツとブカブカのツナギを纏っていた。
一見、農作業に従事しているかのような風体だ。しかし、森へと向かうには確かに適している服装だろう。
「……」
「まーだ機嫌悪いのかお前は」
「むん……」
呆れたようなイザルの声が聞こえた。シグムントは問いかけには答えず、代わりに不服そうに唇を尖らせるだけだ。
不機嫌の理由は、もれなくイザルの無体であった。長い棒で地べたを突き、体を支えるようにして視線を送る。シグムントからしてみれば随分と怖い顔をしているつもりなのだが、イザルには微塵も伝わってはいない。
「昨日散々魔力をくれてやっただろうが。こっから先、魔力無しで行くつもりだったのかお前は」
「……。そうではないが」
「アンアン喜んでたのはどこのどいつだ」
「う、うるさい!」
昨晩の情事を思い出したのか、分かりやすくシグムントの顔が真っ赤に染まる。挿入こそされなかったものの、えらく鳴された。慣れぬ刺激は怖いと言い続けたのに、イザルは楽しそうに笑うだけで聞き入れてくれなかったのだ。
土の小山のその上で、何を照れ腐っているんだか。そう言わんばかりにイザルは溜め息を吐くと、ずんずんとシグムントの元へと歩みよった。細い手首をむんずと掴むと、無言で手を引くように木漏れ日森の入り口へと足を踏み入れる。
森の中はサワサワとした葉擦れの音や、チィチイと鳴く小動物の声があちらこちらで聴こえていた。木々の僅かな隙間から溢れる光が心地よい。
シグムントは、銀髪に太陽の光を反射させながら、ちろりとイザルを見上げる。繋がれた手に意識を向けるだけで熱くなる顔を、見られるのは少し恥ずかしい。
長い棒を片手に持ったまま、ひょこひょこと早歩きでついていく。手を握られるのは、迷子防止の為だ。木漏れ日森までの道中、イザルの顔面の治安の悪さも相まって、見目麗しいシグムントを紐でくくりつけて歩く姿はさながら奴隷商のようにも見えたらしい。ざわつく市井の人々の反応から騎士団へと知らせがいくのも時間の問題だと判断して、仕方なく手を握っている。
「フォレストフォールまではどのくらいかかるんだ?」
「小一時間くらいだな。転移しても構わねえけど、その先で魔物とかち合っちまう方が面倒だ。だから情報収集がてら徒歩で行く」
シグムントは、感心したようにイザルを見上げた。難しい顔をして歩いているので、依頼をこなしに行くのが嫌なのかと思っていたのだ。しかし、存外依頼への取り組みは前向きな姿勢である。
口数が少ないのと口の悪さを直し、最後に愛想をちょっぴりと加えればモテるだろうに。シグムントはそんなお節介なことを思ったが、そうなってしまったらいよいよイザルではなくなってしまうと考えて、口にするのをやめた。
「なあ、ヴィホルダーって、どんな魔物だ」
「む、ああ、イザルなら見たことあるんじゃないか。一つ目の鬼で、土属性魔法が得意だな」
「それってあれか。魔界にもいた緑色の巨人?」
「それはグラスタイタンだな。あれは土だけじゃなくて風も使う上位種だ」
「ほおん、あいつらよく燃えるよな」
イザルの知っている一つ目巨人の魔物は、大抵は火炎攻撃でどうにかしてきた。流石に名前までは興味がなくて知らなかったらしい。魔物に精通しているシグムントに、感心したような声を漏らす。
「ああ、でもこのフィールドだとヴィホルダーは厄介そうだなあ……」
「……ああそうか、森燃やしちまうかもしれねえもんな」
「イザルは火炎以外は持っているのか?」
「一応元勇者だからな。水と闇以外はできる」
イザルに一番適性があったのが火と風だ。なので特技は焼き払うの一択である。一応雷属性も上級魔法以外は使うことはできる。こんなに荒んでいるのに闇は扱えないというのは笑い話にもならないが、雷や光属性を扱うものは闇魔法を扱えないことの方が多い。イザルもまた、特に劣等感は感じていなかった。そんなものは闇属性の魔石でどうにかなるからだ。
「闇魔法なら俺ができるぞ。一応元ゆう、じゃなかった。魔王だからな」
「なんで今勇者って言おうとした。つか逆にできねえ魔法聞いた方が早い気がすんな」
「うむ。今はすべからくできないな。わはは」
呑気に笑うシグムントに、イザルは渋い顔をする。今は体にイザルの魔力を溜めているが、使う魔力の量によってはすぐにガス欠になるだろう。
二人はここにきて、ようやく互いの得手不得手を口にするようになった。依頼がなければ、恐らく一生話さなかったかもしれない。
初日とは違ってまともな会話をするようになったのも、肌を重ねたからだろうか。最初の頃のように、イザルは露骨な警戒心をシグムントへと向けなくなった。
面倒くさいなと思っていた会話が嫌ではない。己の中の僅かな変化に気がつかないまま、他愛もない会話はゆったりと続いていった。嬉しそうな笑みを向けられるのも、存外悪くないものだ。
元来犬気質というか、構われたがりのシグムントだ。魔王として君臨するのが早かったせいか、友人と呼べる存在はいなかった。身長差があるので足並みこそはなかなかに揃わないが、それでもイザルの隣を歩むことを許されたのが、嬉しくて仕方がないようだ。
細い手首を握る大きな手を見やる。気持ち悪がらずに触れてくれるこの不器用な手のひらは、きっと信頼の証なのかもしれない。そんな健気なことも思ったりもした。
「いざ、」
「ストップ」
「む……」
どれくらい歩いただろう。木漏れ日もりは陽光照らす爽やかな雰囲気から、僅かに空気を変えていた。心なしか、辺りに漂う空気が少しだけ重くなる。青い靄のようなものが漂い、じっとりとした空気が肌にまとわりつく。足元をくすぐる草でさえも。意思を持っているかのように思えた。
戸惑うシグムントの口元を、イザルの手が覆う。真剣な顔つきは、何かが起こる前触れだ。緊張を顔に宿したまま大人しく息を殺すと、怯えを誤魔化すようにイザルの服をぎゅっと握り締めた。
「トレントが通る。黙ってたっておけ」
いつもよりも声色を落としたイザルに瞬きで返事をすると、広い背中の後ろに隠れる。
森の奥深くから少しずつ、葉擦れの音が近くなってくる。小鳥が騒がしく鳴きながら飛び立ち、空気の質が一層重くなる。トレントとは木の魔物だ。己よりも弱いものに対して容赦なく襲い掛かり、生気を吸う。
深夜の国では顔馴染みのトレントも、魔力を失ってからは容赦なく襲いかかってきた。木の蔓を鞭のようにしならせ、シグムントの命を奪おうと攻撃をしてきた。あの時の記憶が呼び起こされる。強い魔力の匂いが冷や汗を誘い、イザルの服を掴む手の力が強くなる。
森が揺れている。そう表現した方が適切だろう。大きな大木が、根を引きずるようにして現れた。倒木してしまいそうなほど傾けた頭には、立派な枝葉が広がっている。木漏れ日の森の魔素がよほど体にあっているのだろう、細い木の体を持つトレントが多い中、二人の目の前に現れたそれは見事としか言いようがない。
肺を圧迫するような威圧感に、じわりと涙が滲む。
(俺は、トレントの威圧にも耐えられないほど弱体化してしまったのか)
大型の木の魔物は、火の玉にも似た目でイザルを一瞥する。枝葉を揺らし、地べたを根で引き摺るように。
二人の前を通り過ぎるのを、シグムントは腹に力を入れて堪えていた。魔王だった頃には考えられないほどの緊張感だ。面と向き合ってしまったら、確実に負けてしまう。一人じゃなくてよかった、イザルがいなければ、シグムントはきっと恐慌状態になっていたに違いない。
滲む涙を堪えるように、イザルの背中に顔を埋める。
「……行ったぞ、おい、いつまでそうしているつもりだ」
「す、すまない」
「お前……」
微かに揺らぐシグムントの声に、イザルの表情がわずかに歪む。どうやらシグムントの涙が苦手らしい。己の頭ひとつ分低い体が震えていることに気がつくと、イザルは黙って頭を撫でてやった。
「ぅわ、……っ」
大丈夫かよ。など、そんな気の利いたことを聞くのは苦手だ。だからイザルは行動で示しただけ。それなのに、シグムントはわかりやすく顔を真っ赤に染め上げたのだ。
まるでイザルに恋煩いをしているかのような反応に、頭を撫でていた手が止まる。
「ねえな。うん、ねえねえ」
「なんだイザル、山羊の真似か?」
「ちげえわ。おらいくぞ」
「ぁ、うん」
そんな馬鹿なことがあってたまるか。何せイザルはシグムントの力を奪った張本人である。恨まれはするだろうが……と考えたが、シグムントは恨むことすらしなさそうだと考えを改める。
余計なことを考えたら負けだとでもいうように、イザルは無言のまま手を握ると、ズンズンと森の中を歩き出す。
手首から手のひらへと握る場所が変わったことに、シグムントだけは気恥ずかしそうに耳を赤くしていた。
ローブをマフラーのように巻き付けて、長い銀髪を一つに結んでいる。今日の服はいつもの裾が長いチュニックとボトムスではない。その代わりに、子供の頃にイザルが着ていた、丈の短いシャツとブカブカのツナギを纏っていた。
一見、農作業に従事しているかのような風体だ。しかし、森へと向かうには確かに適している服装だろう。
「……」
「まーだ機嫌悪いのかお前は」
「むん……」
呆れたようなイザルの声が聞こえた。シグムントは問いかけには答えず、代わりに不服そうに唇を尖らせるだけだ。
不機嫌の理由は、もれなくイザルの無体であった。長い棒で地べたを突き、体を支えるようにして視線を送る。シグムントからしてみれば随分と怖い顔をしているつもりなのだが、イザルには微塵も伝わってはいない。
「昨日散々魔力をくれてやっただろうが。こっから先、魔力無しで行くつもりだったのかお前は」
「……。そうではないが」
「アンアン喜んでたのはどこのどいつだ」
「う、うるさい!」
昨晩の情事を思い出したのか、分かりやすくシグムントの顔が真っ赤に染まる。挿入こそされなかったものの、えらく鳴された。慣れぬ刺激は怖いと言い続けたのに、イザルは楽しそうに笑うだけで聞き入れてくれなかったのだ。
土の小山のその上で、何を照れ腐っているんだか。そう言わんばかりにイザルは溜め息を吐くと、ずんずんとシグムントの元へと歩みよった。細い手首をむんずと掴むと、無言で手を引くように木漏れ日森の入り口へと足を踏み入れる。
森の中はサワサワとした葉擦れの音や、チィチイと鳴く小動物の声があちらこちらで聴こえていた。木々の僅かな隙間から溢れる光が心地よい。
シグムントは、銀髪に太陽の光を反射させながら、ちろりとイザルを見上げる。繋がれた手に意識を向けるだけで熱くなる顔を、見られるのは少し恥ずかしい。
長い棒を片手に持ったまま、ひょこひょこと早歩きでついていく。手を握られるのは、迷子防止の為だ。木漏れ日森までの道中、イザルの顔面の治安の悪さも相まって、見目麗しいシグムントを紐でくくりつけて歩く姿はさながら奴隷商のようにも見えたらしい。ざわつく市井の人々の反応から騎士団へと知らせがいくのも時間の問題だと判断して、仕方なく手を握っている。
「フォレストフォールまではどのくらいかかるんだ?」
「小一時間くらいだな。転移しても構わねえけど、その先で魔物とかち合っちまう方が面倒だ。だから情報収集がてら徒歩で行く」
シグムントは、感心したようにイザルを見上げた。難しい顔をして歩いているので、依頼をこなしに行くのが嫌なのかと思っていたのだ。しかし、存外依頼への取り組みは前向きな姿勢である。
口数が少ないのと口の悪さを直し、最後に愛想をちょっぴりと加えればモテるだろうに。シグムントはそんなお節介なことを思ったが、そうなってしまったらいよいよイザルではなくなってしまうと考えて、口にするのをやめた。
「なあ、ヴィホルダーって、どんな魔物だ」
「む、ああ、イザルなら見たことあるんじゃないか。一つ目の鬼で、土属性魔法が得意だな」
「それってあれか。魔界にもいた緑色の巨人?」
「それはグラスタイタンだな。あれは土だけじゃなくて風も使う上位種だ」
「ほおん、あいつらよく燃えるよな」
イザルの知っている一つ目巨人の魔物は、大抵は火炎攻撃でどうにかしてきた。流石に名前までは興味がなくて知らなかったらしい。魔物に精通しているシグムントに、感心したような声を漏らす。
「ああ、でもこのフィールドだとヴィホルダーは厄介そうだなあ……」
「……ああそうか、森燃やしちまうかもしれねえもんな」
「イザルは火炎以外は持っているのか?」
「一応元勇者だからな。水と闇以外はできる」
イザルに一番適性があったのが火と風だ。なので特技は焼き払うの一択である。一応雷属性も上級魔法以外は使うことはできる。こんなに荒んでいるのに闇は扱えないというのは笑い話にもならないが、雷や光属性を扱うものは闇魔法を扱えないことの方が多い。イザルもまた、特に劣等感は感じていなかった。そんなものは闇属性の魔石でどうにかなるからだ。
「闇魔法なら俺ができるぞ。一応元ゆう、じゃなかった。魔王だからな」
「なんで今勇者って言おうとした。つか逆にできねえ魔法聞いた方が早い気がすんな」
「うむ。今はすべからくできないな。わはは」
呑気に笑うシグムントに、イザルは渋い顔をする。今は体にイザルの魔力を溜めているが、使う魔力の量によってはすぐにガス欠になるだろう。
二人はここにきて、ようやく互いの得手不得手を口にするようになった。依頼がなければ、恐らく一生話さなかったかもしれない。
初日とは違ってまともな会話をするようになったのも、肌を重ねたからだろうか。最初の頃のように、イザルは露骨な警戒心をシグムントへと向けなくなった。
面倒くさいなと思っていた会話が嫌ではない。己の中の僅かな変化に気がつかないまま、他愛もない会話はゆったりと続いていった。嬉しそうな笑みを向けられるのも、存外悪くないものだ。
元来犬気質というか、構われたがりのシグムントだ。魔王として君臨するのが早かったせいか、友人と呼べる存在はいなかった。身長差があるので足並みこそはなかなかに揃わないが、それでもイザルの隣を歩むことを許されたのが、嬉しくて仕方がないようだ。
細い手首を握る大きな手を見やる。気持ち悪がらずに触れてくれるこの不器用な手のひらは、きっと信頼の証なのかもしれない。そんな健気なことも思ったりもした。
「いざ、」
「ストップ」
「む……」
どれくらい歩いただろう。木漏れ日もりは陽光照らす爽やかな雰囲気から、僅かに空気を変えていた。心なしか、辺りに漂う空気が少しだけ重くなる。青い靄のようなものが漂い、じっとりとした空気が肌にまとわりつく。足元をくすぐる草でさえも。意思を持っているかのように思えた。
戸惑うシグムントの口元を、イザルの手が覆う。真剣な顔つきは、何かが起こる前触れだ。緊張を顔に宿したまま大人しく息を殺すと、怯えを誤魔化すようにイザルの服をぎゅっと握り締めた。
「トレントが通る。黙ってたっておけ」
いつもよりも声色を落としたイザルに瞬きで返事をすると、広い背中の後ろに隠れる。
森の奥深くから少しずつ、葉擦れの音が近くなってくる。小鳥が騒がしく鳴きながら飛び立ち、空気の質が一層重くなる。トレントとは木の魔物だ。己よりも弱いものに対して容赦なく襲い掛かり、生気を吸う。
深夜の国では顔馴染みのトレントも、魔力を失ってからは容赦なく襲いかかってきた。木の蔓を鞭のようにしならせ、シグムントの命を奪おうと攻撃をしてきた。あの時の記憶が呼び起こされる。強い魔力の匂いが冷や汗を誘い、イザルの服を掴む手の力が強くなる。
森が揺れている。そう表現した方が適切だろう。大きな大木が、根を引きずるようにして現れた。倒木してしまいそうなほど傾けた頭には、立派な枝葉が広がっている。木漏れ日の森の魔素がよほど体にあっているのだろう、細い木の体を持つトレントが多い中、二人の目の前に現れたそれは見事としか言いようがない。
肺を圧迫するような威圧感に、じわりと涙が滲む。
(俺は、トレントの威圧にも耐えられないほど弱体化してしまったのか)
大型の木の魔物は、火の玉にも似た目でイザルを一瞥する。枝葉を揺らし、地べたを根で引き摺るように。
二人の前を通り過ぎるのを、シグムントは腹に力を入れて堪えていた。魔王だった頃には考えられないほどの緊張感だ。面と向き合ってしまったら、確実に負けてしまう。一人じゃなくてよかった、イザルがいなければ、シグムントはきっと恐慌状態になっていたに違いない。
滲む涙を堪えるように、イザルの背中に顔を埋める。
「……行ったぞ、おい、いつまでそうしているつもりだ」
「す、すまない」
「お前……」
微かに揺らぐシグムントの声に、イザルの表情がわずかに歪む。どうやらシグムントの涙が苦手らしい。己の頭ひとつ分低い体が震えていることに気がつくと、イザルは黙って頭を撫でてやった。
「ぅわ、……っ」
大丈夫かよ。など、そんな気の利いたことを聞くのは苦手だ。だからイザルは行動で示しただけ。それなのに、シグムントはわかりやすく顔を真っ赤に染め上げたのだ。
まるでイザルに恋煩いをしているかのような反応に、頭を撫でていた手が止まる。
「ねえな。うん、ねえねえ」
「なんだイザル、山羊の真似か?」
「ちげえわ。おらいくぞ」
「ぁ、うん」
そんな馬鹿なことがあってたまるか。何せイザルはシグムントの力を奪った張本人である。恨まれはするだろうが……と考えたが、シグムントは恨むことすらしなさそうだと考えを改める。
余計なことを考えたら負けだとでもいうように、イザルは無言のまま手を握ると、ズンズンと森の中を歩き出す。
手首から手のひらへと握る場所が変わったことに、シグムントだけは気恥ずかしそうに耳を赤くしていた。
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