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その頃、ヨナハンはというと、シスたちがいる場所からほど近い中庭で、道化の格好をしたアンデットのような男と対峙していた。ああ、これはおそらく見世物小屋の男だろう。ヨナハンは、幼い頃に連れて行かれそうになった場所を思い出して、渋い顔をした。
手に持っている鞭と鉈がとんでもなく物騒だ。ジリジリと後退りをしていたが、一向に仕掛けてこないので不審に思っていると、突然上から檻が降ってきたのだ。
「あぶねっ…、なんだ、これ。隠れなかったら死ぬとかそういうのか?」
ヨナハンの呟いた言葉、真相はそれが正解であるのだが、見た目的に死んでしまったシスもカルマも、まだヨナハンは知らない。なんだか拍子抜けだなという具合に腰に刺していた剣を抜く。
「どうせ手合わせするんなら、あんたじゃなくて団長とがいいんだけど。」
ヨナハンの持つ風の属性で練られる鋭い風の刃が周りを侍る。剣の先端を道化師に向けると、ヨナハンは号令を出すかのように剣を一振りした。緑色の光を放つ真空の刃が、瞬く間に対象に向かう。そのまま振り上げられた鞭を弾くかのようにして剣で応戦すれば、四肢を切り刻まれた男がどしゃりと崩れた。
「あっけないな。本性晒すまでも…、」
背を向けて、カルマたちを探そうとした時だった。背後の雰囲気が微かに変化する。ヨナハンは振り向きざまに剣を向けると、そこには確かに四肢を切り落としたはずの道化師がニコニコと歪な笑みを浮かべたまま浮かんでいた。
「な、んだこいつ…っ、」
ザリザリと後退りをする。まるでヨナハンを見下ろすかのようにして、どんどんとその体を風船のように膨らませていく道化師の異常な風貌に、流石に穏やかではいられなくなってくる。振り上げられた鉈を避けるかのように、ヨナハンが慌てて駆け出す。巨大な分、リーチが長い。小さく舌打ちをすると、ヨナハンはその身に緑の風を纏って瞬く間に転化した。
鋭い馬の嘶きと共に、青毛のセントールになったヨナハンが、その体に霧を纏うかのようにして走り出す。美しい青い瞳に朝靄に包まれる山脈を思わせるかのような青い体を惜しげもなく晒すと、その黒曜の蹄で大地を蹴った。
まさか自分が逃げる羽目になったのが悔しい。ヨナハンは腹立たしそうに嘶くと、その肢体をいっぱいに伸ばして飛び上がった。その高さは2階まで一息のしなやかな跳躍であった。青い瞳にシスの姿が映る。なんだ、こんなとこにいたのかと、窓を突き破るように中に降り立った。
「今度は馬ああああ!!」
「馬じゃないよ、これヨナハン!!」
「ーーーーーー!!!!!」
カツンと音を立てて降り立った通路で、ヨナハンは目に入ってきたものの衝撃のあまり、思わず嘶きながらのけぞってしまった。けたたましい馬の鳴き声は、そのままヨナハンの悲鳴である。ただでさえ家具の輪郭は白線のみという視覚情報もバグってしまいそうな状況の中、泣きそうな顔で飛んできたシスは自身の下半身を抱えているわ、カルマの声がしたと振り向けば、首の断面図を晒した姿で、探したよおおと抱きついてきたのだ。
「うわっ、ちょっとヨナハン、腕疲れたから僕の下半身乗せて!」
「なにこれデスライダーみたいでかっこいい。」
「首のないカルマが乗っかったらデュラハンごっこできるね。」
「それだ。」
どれだ!!思わず叫んでしまったが、どうやら喧しくしすぎたらしい。金属の擦れあう音がゆっくりとこちらへと近づいてくる。
その音に顔を青褪めさせたシスと、おそらく青褪めさせたのだろうなあと図ることしかできないカルマが、慌ててヨナハンの口吻を抑える。
「もういいかーい。」
ヒェ…、三人の心の声が揃った瞬間であった。階下から、淡々としたサディンの声がする。この訓練で何が怖いかって、サディンの武器は鋭い聴覚と身体能力、そして相手を痛めつけて苦しませることだけに特化したモーニングスター。そういえば見慣れぬ武器を行き掛けに出していたなと思っていたが、あれで体を叩き潰すのかと思い至れば、ブルリと身を震わせた。
「ヨナハンのせて!!そんでどっか逃げて!!」
乗せるという前にまたがっているじゃないかと思ったが、サディンが上がってくる階段の軋む音が怖すぎる。ヨナハンは立ち尽くしていたカルマの首を加えて背中にほおると、蹄の音を立てながら慌てて駆け出した。その時だった。
「固まるなって教えただろ。」
ふわりと柔らかな風が舞う。後ろを振り向いたシスが何かを言いかけた途端、ヨナハンの胸を貫くように棘のついた鉄球が、筋繊維を纏いながら己の体を突き破る。爆発したかのように散らされる己の肉片を青い瞳が捉える。ベシャリと前足に力が入らないまま崩れたヨナハンが最後に見たのは、静かに金色の眼を輝かせるサディンの悪魔のような姿であった。
「ハン…、ヨナハン…!」
ベチベチと頬を張られるような痛みに、徐々に頭が覚醒してくる。薄眼を開き見上げた天井は見覚えのない物である。ヨナハンはまとまらぬ思考を必死でかき集めると、徐々に自分の身に起きた信じられない出来事がリフレインしてきてしまい、悲鳴を上げながら飛び起きた。
「っぁああああ!!」
「ぎゃっ…いってええこんの石頭!!」
「ぅぐっ…」
ガツンとした衝撃で、目から火が出るかとおもった。どうやら心配して覗き込んでいたカルマのおでこがぶつかったらしい。二人してあまりの痛みにのたうち回るかのようにジタバタすると、パンパンと乾いた手を叩く音が響いた。
「お前らチームワークバラバラ。固まって逃げんのも最悪。何回死んでんだよ、センスないんじゃないのか。」
「うわまだ機嫌悪いじゃん団長…。」
「シス、何か言ったか。」
「はっ、何もございません。」
サディンの声に、痛み逃しを終えたヨナハンが腹筋の力で飛び起きる。慌てて自分の団服の前をはだけさせて傷を見やるが、そこには胸を突き破られた形跡もない。床に転がってうちひしがれているカルマの胸ぐらを掴んで無言で引き上げると、そこにもなかったはずの頭があった。
「一体、何があって…こんな。」
「だああ、胸ぐら掴むなよ馬鹿!」
「ああ…すまん…」
未だ訳がわからないといった顔のヨナハンに、サディンがため息を吐く。どうやらあれが何かを理解していないらしい。とわかると、仕方なく説明をする。
「あれは仮想現実魔術だ。精神を鍛える。俺たち団員はあの極限状態で長い時間生き残れるかの訓練をするんだよ。死んでも死なないし、痛くも何もない。視覚で得た情報を脳が処理をして、リアルだとより強い痛みや焦りを生み出すんだ。他で鍛えられないこの部分は、こうして身を持って体験するに限るだろ。」
「なるほど…、」
「シスなんか初めて体験した時おしっこ漏らしたんだぜ。」
「漏らすだろあんなもん!!こちとら上と下がバイバイしたんだぞ?むしろ漏らさなかっただけ進歩だと思うね僕は!!!」
「うるせえうるせえ。」
わかったから盛り上がんないでくれと、サディンがゲンナリした顔で手を叩く。疲れた顔をして服のポケットから取り出した懐中時計を見ると、小さく舌打ちをする。
「お前ら、今回の尾行の件はチャラにしてやるから、もう俺につきまとうな。それと一応言っておくが浮気なんてする暇もない。」
「…………。」
なんとなく浮気はしていないだろうと思っていたが、それでもシスはこんな訓練を持ち出すまでのお仕置きをしたサディンに思うところがあった。
「なんだ。シス。言いたいことがありそうだけど。」
「…いや、夢渡でのことなんだけどさ…。ちょっと、気になったことがあって。」
あの時の強大な感覚は、間違いなくサディンのものだ。寝ている隙に結界を叩きわり、術中のシスの夢に波長を合わせて干渉するという離れ業を行ったサディンに、シスはどうしても聞きたいことがあった。
「先生、具合悪いとかさ…平気なの…。」
「…なんでお前がそれを気にする。」
「いや、なんでもないなら、いいんだけどさ…。」
シスの頭によぎったのは、ミハエルの妊娠しているという発言だった。想像妊娠ならかまわない、だけど、妊娠薬を研究している手前、何か事故が起きて飲んでしまったのだとすれば、それはサディンに言えていないというのも納得ができると思った。
「…大丈夫だ。気にしてくれてありがとう。」
「あ、うん…。」
シスの言葉にサディンも思うところはあったらしい。小さく頷いて礼をいうと、明日も早いから、早く帰れよと言って三人の前から姿を消した。最近のサディンは輪をかけて定時退社には気を配っている。今まで残業だって気にしていなかったのに、随分な変わりようだなあと思っていれば、カルマがシスの右腕を掴んで諤々と揺さぶる。
「ぅわ…っ!なんだよばか!」
「い、今団長ありがとうって言った!!!」
「は?そりゃいうでしょ。団長だって血は赤いんだから。」
慌てるカルマに、何が言いたいのさとシスが嗜める。しかし、どうやら引っかかったのはカルマだけではなかった。
「…普通、離れている相手の心配をされて、気にしてくれてありがとうだなんて、いうか?」
「なんだよヨナハンまで。」
「だって、気にするのは団長だって同じはずだろう。それなのに、まるでそばにいるみたいに…、」
と口にして、ヨナハンの眉間に皺がよる。カルマは引き攣り笑みを浮かべると、これはあくまでも仮定だけど、と続けた。
「監禁、してたりしないよね…、」
声色を震わしてつぶやいたカルマの言葉に、三人の息がごくりと飲み込まれる。誰か、否定してくれると思ったのに、その言葉が出ることはなかった。
手に持っている鞭と鉈がとんでもなく物騒だ。ジリジリと後退りをしていたが、一向に仕掛けてこないので不審に思っていると、突然上から檻が降ってきたのだ。
「あぶねっ…、なんだ、これ。隠れなかったら死ぬとかそういうのか?」
ヨナハンの呟いた言葉、真相はそれが正解であるのだが、見た目的に死んでしまったシスもカルマも、まだヨナハンは知らない。なんだか拍子抜けだなという具合に腰に刺していた剣を抜く。
「どうせ手合わせするんなら、あんたじゃなくて団長とがいいんだけど。」
ヨナハンの持つ風の属性で練られる鋭い風の刃が周りを侍る。剣の先端を道化師に向けると、ヨナハンは号令を出すかのように剣を一振りした。緑色の光を放つ真空の刃が、瞬く間に対象に向かう。そのまま振り上げられた鞭を弾くかのようにして剣で応戦すれば、四肢を切り刻まれた男がどしゃりと崩れた。
「あっけないな。本性晒すまでも…、」
背を向けて、カルマたちを探そうとした時だった。背後の雰囲気が微かに変化する。ヨナハンは振り向きざまに剣を向けると、そこには確かに四肢を切り落としたはずの道化師がニコニコと歪な笑みを浮かべたまま浮かんでいた。
「な、んだこいつ…っ、」
ザリザリと後退りをする。まるでヨナハンを見下ろすかのようにして、どんどんとその体を風船のように膨らませていく道化師の異常な風貌に、流石に穏やかではいられなくなってくる。振り上げられた鉈を避けるかのように、ヨナハンが慌てて駆け出す。巨大な分、リーチが長い。小さく舌打ちをすると、ヨナハンはその身に緑の風を纏って瞬く間に転化した。
鋭い馬の嘶きと共に、青毛のセントールになったヨナハンが、その体に霧を纏うかのようにして走り出す。美しい青い瞳に朝靄に包まれる山脈を思わせるかのような青い体を惜しげもなく晒すと、その黒曜の蹄で大地を蹴った。
まさか自分が逃げる羽目になったのが悔しい。ヨナハンは腹立たしそうに嘶くと、その肢体をいっぱいに伸ばして飛び上がった。その高さは2階まで一息のしなやかな跳躍であった。青い瞳にシスの姿が映る。なんだ、こんなとこにいたのかと、窓を突き破るように中に降り立った。
「今度は馬ああああ!!」
「馬じゃないよ、これヨナハン!!」
「ーーーーーー!!!!!」
カツンと音を立てて降り立った通路で、ヨナハンは目に入ってきたものの衝撃のあまり、思わず嘶きながらのけぞってしまった。けたたましい馬の鳴き声は、そのままヨナハンの悲鳴である。ただでさえ家具の輪郭は白線のみという視覚情報もバグってしまいそうな状況の中、泣きそうな顔で飛んできたシスは自身の下半身を抱えているわ、カルマの声がしたと振り向けば、首の断面図を晒した姿で、探したよおおと抱きついてきたのだ。
「うわっ、ちょっとヨナハン、腕疲れたから僕の下半身乗せて!」
「なにこれデスライダーみたいでかっこいい。」
「首のないカルマが乗っかったらデュラハンごっこできるね。」
「それだ。」
どれだ!!思わず叫んでしまったが、どうやら喧しくしすぎたらしい。金属の擦れあう音がゆっくりとこちらへと近づいてくる。
その音に顔を青褪めさせたシスと、おそらく青褪めさせたのだろうなあと図ることしかできないカルマが、慌ててヨナハンの口吻を抑える。
「もういいかーい。」
ヒェ…、三人の心の声が揃った瞬間であった。階下から、淡々としたサディンの声がする。この訓練で何が怖いかって、サディンの武器は鋭い聴覚と身体能力、そして相手を痛めつけて苦しませることだけに特化したモーニングスター。そういえば見慣れぬ武器を行き掛けに出していたなと思っていたが、あれで体を叩き潰すのかと思い至れば、ブルリと身を震わせた。
「ヨナハンのせて!!そんでどっか逃げて!!」
乗せるという前にまたがっているじゃないかと思ったが、サディンが上がってくる階段の軋む音が怖すぎる。ヨナハンは立ち尽くしていたカルマの首を加えて背中にほおると、蹄の音を立てながら慌てて駆け出した。その時だった。
「固まるなって教えただろ。」
ふわりと柔らかな風が舞う。後ろを振り向いたシスが何かを言いかけた途端、ヨナハンの胸を貫くように棘のついた鉄球が、筋繊維を纏いながら己の体を突き破る。爆発したかのように散らされる己の肉片を青い瞳が捉える。ベシャリと前足に力が入らないまま崩れたヨナハンが最後に見たのは、静かに金色の眼を輝かせるサディンの悪魔のような姿であった。
「ハン…、ヨナハン…!」
ベチベチと頬を張られるような痛みに、徐々に頭が覚醒してくる。薄眼を開き見上げた天井は見覚えのない物である。ヨナハンはまとまらぬ思考を必死でかき集めると、徐々に自分の身に起きた信じられない出来事がリフレインしてきてしまい、悲鳴を上げながら飛び起きた。
「っぁああああ!!」
「ぎゃっ…いってええこんの石頭!!」
「ぅぐっ…」
ガツンとした衝撃で、目から火が出るかとおもった。どうやら心配して覗き込んでいたカルマのおでこがぶつかったらしい。二人してあまりの痛みにのたうち回るかのようにジタバタすると、パンパンと乾いた手を叩く音が響いた。
「お前らチームワークバラバラ。固まって逃げんのも最悪。何回死んでんだよ、センスないんじゃないのか。」
「うわまだ機嫌悪いじゃん団長…。」
「シス、何か言ったか。」
「はっ、何もございません。」
サディンの声に、痛み逃しを終えたヨナハンが腹筋の力で飛び起きる。慌てて自分の団服の前をはだけさせて傷を見やるが、そこには胸を突き破られた形跡もない。床に転がってうちひしがれているカルマの胸ぐらを掴んで無言で引き上げると、そこにもなかったはずの頭があった。
「一体、何があって…こんな。」
「だああ、胸ぐら掴むなよ馬鹿!」
「ああ…すまん…」
未だ訳がわからないといった顔のヨナハンに、サディンがため息を吐く。どうやらあれが何かを理解していないらしい。とわかると、仕方なく説明をする。
「あれは仮想現実魔術だ。精神を鍛える。俺たち団員はあの極限状態で長い時間生き残れるかの訓練をするんだよ。死んでも死なないし、痛くも何もない。視覚で得た情報を脳が処理をして、リアルだとより強い痛みや焦りを生み出すんだ。他で鍛えられないこの部分は、こうして身を持って体験するに限るだろ。」
「なるほど…、」
「シスなんか初めて体験した時おしっこ漏らしたんだぜ。」
「漏らすだろあんなもん!!こちとら上と下がバイバイしたんだぞ?むしろ漏らさなかっただけ進歩だと思うね僕は!!!」
「うるせえうるせえ。」
わかったから盛り上がんないでくれと、サディンがゲンナリした顔で手を叩く。疲れた顔をして服のポケットから取り出した懐中時計を見ると、小さく舌打ちをする。
「お前ら、今回の尾行の件はチャラにしてやるから、もう俺につきまとうな。それと一応言っておくが浮気なんてする暇もない。」
「…………。」
なんとなく浮気はしていないだろうと思っていたが、それでもシスはこんな訓練を持ち出すまでのお仕置きをしたサディンに思うところがあった。
「なんだ。シス。言いたいことがありそうだけど。」
「…いや、夢渡でのことなんだけどさ…。ちょっと、気になったことがあって。」
あの時の強大な感覚は、間違いなくサディンのものだ。寝ている隙に結界を叩きわり、術中のシスの夢に波長を合わせて干渉するという離れ業を行ったサディンに、シスはどうしても聞きたいことがあった。
「先生、具合悪いとかさ…平気なの…。」
「…なんでお前がそれを気にする。」
「いや、なんでもないなら、いいんだけどさ…。」
シスの頭によぎったのは、ミハエルの妊娠しているという発言だった。想像妊娠ならかまわない、だけど、妊娠薬を研究している手前、何か事故が起きて飲んでしまったのだとすれば、それはサディンに言えていないというのも納得ができると思った。
「…大丈夫だ。気にしてくれてありがとう。」
「あ、うん…。」
シスの言葉にサディンも思うところはあったらしい。小さく頷いて礼をいうと、明日も早いから、早く帰れよと言って三人の前から姿を消した。最近のサディンは輪をかけて定時退社には気を配っている。今まで残業だって気にしていなかったのに、随分な変わりようだなあと思っていれば、カルマがシスの右腕を掴んで諤々と揺さぶる。
「ぅわ…っ!なんだよばか!」
「い、今団長ありがとうって言った!!!」
「は?そりゃいうでしょ。団長だって血は赤いんだから。」
慌てるカルマに、何が言いたいのさとシスが嗜める。しかし、どうやら引っかかったのはカルマだけではなかった。
「…普通、離れている相手の心配をされて、気にしてくれてありがとうだなんて、いうか?」
「なんだよヨナハンまで。」
「だって、気にするのは団長だって同じはずだろう。それなのに、まるでそばにいるみたいに…、」
と口にして、ヨナハンの眉間に皺がよる。カルマは引き攣り笑みを浮かべると、これはあくまでも仮定だけど、と続けた。
「監禁、してたりしないよね…、」
声色を震わしてつぶやいたカルマの言葉に、三人の息がごくりと飲み込まれる。誰か、否定してくれると思ったのに、その言葉が出ることはなかった。
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