22 / 111
信徒
しおりを挟む
「残すは北の空き家三件だけだな。少し休ませてもらう」
「アモン、ご苦労様」
市井の灯火を掌握し、探知を終えたアモンがウメノの右目に吸い込まれるようにして消える。
ティティアの捜索はウメノとアモンの力に頼るばかりだ。鼻が効く獣人がいて、なんでそんな不始末が起きたか。それは実に単純で、ご丁寧に特定の獣人だけに聞く嗅覚遮蔽を一帯に施されたからに他ならない。
それに真っ先に気がついたのはヘルグだった。
どうやら間者がこちら側に紛れていたようですよ。そう、ヘルグは鼻を抑えて宣った。
アキレイアスに住む種族は、獣人族だけではない。古くは東の国から流れた、ロクのような鬼族のほか、人間の国で生きるには難しい間引きものも一定数いる。
人の体でありながら、魔力が人の器を超えて魔を引き寄せ、身に宿すものだ。精霊信仰の種族からおわれた魔憑きものや、晒された生きづらいものが、口減しのように国を出され、導かれるようにアキレイアスに辿り着いたものをいう。
黒い髪をなびかせる。静かな夜を彩る灯火を目端に追いやりながら、己もその中の一人であるウメノは難しい顔をした。
「僕も同じだけどね、やっぱりヴィヌスの信徒とは思考が合わないよ」
「お前が入信してないことだけが、俺たちにとっての救いだよ」
景色が横に流れていく。ロクに担がれながら、ウメノはハニと共に市井を駆け抜けていた。
恐れていたことが起きたのだ。唯一のオメガであるティティアが、厄介なものに連れ去られた。
アテルニクス国へ広められた偽りの生贄信仰。ヴィヌスによって生み出された、始まりの人間だと信じる者たちによって、過去に生まれた二人のオメガは王と出会う前に殺されてきた。
だからこそ、ティティアを守るためにアキレイアスまで連れ去ったというのに。
「最悪だよ、ったく。兵士が犬科の獣人で構成されてるってバレてるんなら、間者は最初から城にいたってことじゃん」
悔しそうな顔でハニが宣うのも無理はない。二人の王が死んだのは、人の国にしか生まれないオメガが殺されたからだ。信徒は恐らく最初に番った王の時代から細く生きていたのだろう。
カエレスによって、次代のオメガを守るために集められた暗部ですら、その正体を掴むのにも苦労を強いられた。
「おい、待てなんかいるぞ」
目的の場所まであとわずかであるはずだ。見慣れた大通り、道の真ん中には蹲る女性の姿があった。
ロクの背後で、ウメノの瞳が素早く辺りを巡る。もう北の市街に入ったようだ。アモンの炎が見当たらないということは、この場所全体に結界のようなものが張ってある証拠であった。
「……落ち着いて聞いて、多分罠だ。ここにはアモンの炎がないから、干渉されないよう術がかかってる」
「さっきから同じ場所を駆け巡っている気がしていたが、偶然ではないということか」
「ねえ、それ俺も同じこと思ってたよ」
ささやかなやりとりに、耳のいいハニが反応を示す。蹲る女は、灰色の衣服を召していた。見覚えのある服装に、ハニのオアシスの瞳がスッと細まる。黒い外套の内側で、警戒を示すように腰の短剣に手を添えた時だった。
「お前はカエレス様と共に行け。悪いが俺は機嫌が悪い、あの女に八つ当たりをさせてもらうつもりだ」
「……待って、それって僕も一緒に戦うってこと?」
「話し合いで済むことを祈っておけ」
ギョッとした顔でロクを見下ろすウメノに、ハニが苦笑いを浮かべる。
コランダムの瞳が、じわじわと色を変えていく様子を前に、ロクの本気を見てとった。鬼の力を見せるということは、一時的な身体能力を飛躍的に高めるということだ。
背中にしがみついているウメノに目配せをすれば、諦めたように深いため息を吐いて、ハニを指差した。
「風をきって進め」
「え、おまっうそっ」
「ロクが話聞かなさそうだから、ハニはカエレス様のこと頼んだ。僕はしがみついて振り落とされないようにするから大丈夫」
「いや、邪魔だから降りてくれ」
ロクの言葉を無視したウメノによって、風魔法を行使される。ハニの足にまとわりつくように緑の風が吹いたかと思うと、それは皮膜のように足を覆って消えた。脚力を上げる属性魔法を付与したということは、ここはロクに任せろということらしい。
ハニは突然軽くなった足に目を丸くしたが、状況は一刻を争う。ロクの瞳が完全に鬼化したのを確認するなり、渋い顔をして声を荒げた。
「なんかあったら、休みでもニル呼べよ!」
ハニの言葉に、ロクが片手をあげて応える。
細い足にグッと力を入れると、ハニは持ち前の俊足を活かすように地べたを弾いた。たった一歩で女の横を走り抜ける。すれ違いの一瞬。ハニが女の顔へと目配せすれば、ニイ、と笑ったマルカと目が合った。
(っ、こいつ)
駆け抜けたハニの背後から、襲いくるように砂嵐が吹き荒んだ。薄い背中に細かな礫が直撃する。小さく息を詰めると、そのまま押し出されるようにしてハニは飛んだ。
「ロク、ウメノ……‼︎」
降り立ったのは、北市街に設置されている物見台だ。高い場所から見下ろしたのは、先ほどまでいた場所であった。まるで、何かが爆発したかのように砂煙に覆われている。
ウメノとロクは爆発に巻き込まれたのかもしれない。嫌な鼓動が、ハニの指先までもを震わせる。
『ハニ、私だけでいくから残るかい』
「んなわけないでしょ……、腐ってもあんたの部下ですよ」
ハニの影から、金糸水晶の瞳が光る。嗅覚遮蔽を受けない為に、ハニの影に身を潜めたカエレスが問いかけた。
砂煙が、徐々に落ち着いてくる。砂塵の向こうにずろりと大きな影が姿を現すのを認めると、ハニは捕まっていた物見台の梯子から手を離した。敵が魔物を召喚したのなら、きっと二人は無事だ。そう認識したのだ。ハニは落下するままに降り立つと、再び弾かれるように駆け出した。
先程の爆発で、マルカの術の範囲の外まで押し出されたらしい。見慣れぬ道を前に、ハニは静かにに安堵した。
妨害が来たのなら、きっと居場所はすぐそこだろう。ハニを追い越すように影が伸びると、ネメスで人型に変化したカエレスが姿を現した。
「嗅覚遮蔽の術の外だ。もう大丈夫」
「居場所は⁉︎」
「こっちだ」
淀みのない足取りで、カエレスが走る。番いの匂いを嗅ぎ取り、細い糸を掴むようにティティアの元へと向かうのだ。その足は、細い路地へと入っていった。
視界の端を流れていく家々の壁、まるで、迫ってくるかのような細さである。ハニはいいが、カエレスは体が大きい。もとの姿のまま駆け抜ければ、きっと失速していただろう。
出口を抜けた先に、古びた建物が見えた。一見倉庫にも見えるその場所で、二人の鋭い聴覚が小さな悲鳴を拾った。
「アモン、ご苦労様」
市井の灯火を掌握し、探知を終えたアモンがウメノの右目に吸い込まれるようにして消える。
ティティアの捜索はウメノとアモンの力に頼るばかりだ。鼻が効く獣人がいて、なんでそんな不始末が起きたか。それは実に単純で、ご丁寧に特定の獣人だけに聞く嗅覚遮蔽を一帯に施されたからに他ならない。
それに真っ先に気がついたのはヘルグだった。
どうやら間者がこちら側に紛れていたようですよ。そう、ヘルグは鼻を抑えて宣った。
アキレイアスに住む種族は、獣人族だけではない。古くは東の国から流れた、ロクのような鬼族のほか、人間の国で生きるには難しい間引きものも一定数いる。
人の体でありながら、魔力が人の器を超えて魔を引き寄せ、身に宿すものだ。精霊信仰の種族からおわれた魔憑きものや、晒された生きづらいものが、口減しのように国を出され、導かれるようにアキレイアスに辿り着いたものをいう。
黒い髪をなびかせる。静かな夜を彩る灯火を目端に追いやりながら、己もその中の一人であるウメノは難しい顔をした。
「僕も同じだけどね、やっぱりヴィヌスの信徒とは思考が合わないよ」
「お前が入信してないことだけが、俺たちにとっての救いだよ」
景色が横に流れていく。ロクに担がれながら、ウメノはハニと共に市井を駆け抜けていた。
恐れていたことが起きたのだ。唯一のオメガであるティティアが、厄介なものに連れ去られた。
アテルニクス国へ広められた偽りの生贄信仰。ヴィヌスによって生み出された、始まりの人間だと信じる者たちによって、過去に生まれた二人のオメガは王と出会う前に殺されてきた。
だからこそ、ティティアを守るためにアキレイアスまで連れ去ったというのに。
「最悪だよ、ったく。兵士が犬科の獣人で構成されてるってバレてるんなら、間者は最初から城にいたってことじゃん」
悔しそうな顔でハニが宣うのも無理はない。二人の王が死んだのは、人の国にしか生まれないオメガが殺されたからだ。信徒は恐らく最初に番った王の時代から細く生きていたのだろう。
カエレスによって、次代のオメガを守るために集められた暗部ですら、その正体を掴むのにも苦労を強いられた。
「おい、待てなんかいるぞ」
目的の場所まであとわずかであるはずだ。見慣れた大通り、道の真ん中には蹲る女性の姿があった。
ロクの背後で、ウメノの瞳が素早く辺りを巡る。もう北の市街に入ったようだ。アモンの炎が見当たらないということは、この場所全体に結界のようなものが張ってある証拠であった。
「……落ち着いて聞いて、多分罠だ。ここにはアモンの炎がないから、干渉されないよう術がかかってる」
「さっきから同じ場所を駆け巡っている気がしていたが、偶然ではないということか」
「ねえ、それ俺も同じこと思ってたよ」
ささやかなやりとりに、耳のいいハニが反応を示す。蹲る女は、灰色の衣服を召していた。見覚えのある服装に、ハニのオアシスの瞳がスッと細まる。黒い外套の内側で、警戒を示すように腰の短剣に手を添えた時だった。
「お前はカエレス様と共に行け。悪いが俺は機嫌が悪い、あの女に八つ当たりをさせてもらうつもりだ」
「……待って、それって僕も一緒に戦うってこと?」
「話し合いで済むことを祈っておけ」
ギョッとした顔でロクを見下ろすウメノに、ハニが苦笑いを浮かべる。
コランダムの瞳が、じわじわと色を変えていく様子を前に、ロクの本気を見てとった。鬼の力を見せるということは、一時的な身体能力を飛躍的に高めるということだ。
背中にしがみついているウメノに目配せをすれば、諦めたように深いため息を吐いて、ハニを指差した。
「風をきって進め」
「え、おまっうそっ」
「ロクが話聞かなさそうだから、ハニはカエレス様のこと頼んだ。僕はしがみついて振り落とされないようにするから大丈夫」
「いや、邪魔だから降りてくれ」
ロクの言葉を無視したウメノによって、風魔法を行使される。ハニの足にまとわりつくように緑の風が吹いたかと思うと、それは皮膜のように足を覆って消えた。脚力を上げる属性魔法を付与したということは、ここはロクに任せろということらしい。
ハニは突然軽くなった足に目を丸くしたが、状況は一刻を争う。ロクの瞳が完全に鬼化したのを確認するなり、渋い顔をして声を荒げた。
「なんかあったら、休みでもニル呼べよ!」
ハニの言葉に、ロクが片手をあげて応える。
細い足にグッと力を入れると、ハニは持ち前の俊足を活かすように地べたを弾いた。たった一歩で女の横を走り抜ける。すれ違いの一瞬。ハニが女の顔へと目配せすれば、ニイ、と笑ったマルカと目が合った。
(っ、こいつ)
駆け抜けたハニの背後から、襲いくるように砂嵐が吹き荒んだ。薄い背中に細かな礫が直撃する。小さく息を詰めると、そのまま押し出されるようにしてハニは飛んだ。
「ロク、ウメノ……‼︎」
降り立ったのは、北市街に設置されている物見台だ。高い場所から見下ろしたのは、先ほどまでいた場所であった。まるで、何かが爆発したかのように砂煙に覆われている。
ウメノとロクは爆発に巻き込まれたのかもしれない。嫌な鼓動が、ハニの指先までもを震わせる。
『ハニ、私だけでいくから残るかい』
「んなわけないでしょ……、腐ってもあんたの部下ですよ」
ハニの影から、金糸水晶の瞳が光る。嗅覚遮蔽を受けない為に、ハニの影に身を潜めたカエレスが問いかけた。
砂煙が、徐々に落ち着いてくる。砂塵の向こうにずろりと大きな影が姿を現すのを認めると、ハニは捕まっていた物見台の梯子から手を離した。敵が魔物を召喚したのなら、きっと二人は無事だ。そう認識したのだ。ハニは落下するままに降り立つと、再び弾かれるように駆け出した。
先程の爆発で、マルカの術の範囲の外まで押し出されたらしい。見慣れぬ道を前に、ハニは静かにに安堵した。
妨害が来たのなら、きっと居場所はすぐそこだろう。ハニを追い越すように影が伸びると、ネメスで人型に変化したカエレスが姿を現した。
「嗅覚遮蔽の術の外だ。もう大丈夫」
「居場所は⁉︎」
「こっちだ」
淀みのない足取りで、カエレスが走る。番いの匂いを嗅ぎ取り、細い糸を掴むようにティティアの元へと向かうのだ。その足は、細い路地へと入っていった。
視界の端を流れていく家々の壁、まるで、迫ってくるかのような細さである。ハニはいいが、カエレスは体が大きい。もとの姿のまま駆け抜ければ、きっと失速していただろう。
出口を抜けた先に、古びた建物が見えた。一見倉庫にも見えるその場所で、二人の鋭い聴覚が小さな悲鳴を拾った。
7
お気に入りに追加
399
あなたにおすすめの小説
完結!【R‐18】獣は夜に愛を学ぶ(無垢獣人×獣人にトラウマを持つ獣人殺し)
路地裏乃猫
BL
愛するつもりなどなかった――
幼少期に家族を獣人に殺され、自身も心身を蹂躙されたロア=リベルガは復讐を誓い、最強の獣人殺しとなる。ある日、いつものように獣人の村を滅ぼしたロアは、そこで獣人の子供リクと出会う。いつものように始末しようとして、なぜか逆に助けてしまったロア。そのまま旅に連れ歩くが、成長の早い獣人はあっという間に育ちきってしまう。それでもなお子ども扱いを続けるロアに、ついにリクは、大人の欲望を自覚しはじめる。
だが、それは同時に、リクがロアの敵と化すことも意味していた。
性欲を知った獣人は途端に狂暴になる。かつてロアを蹂躙したのも大人の雄たちだった。それでも大人になり、雄としてロアを求めたいリクと、そんなリクを許せないロア。果たして二人は、種族の壁を越えることはできるのか。
※ハッピーエンド
※冒頭にモブレ描写あり注意
※転生系ではありません
―――登場人物―――
ロア=リベルガ(人間)
最強の獣人殺し。幼少期に家族を獣人に殺され、彼自身も心身を蹂躙された過去を持つ。
世界から獣人を駆逐し尽くすことを自らの使命に生きている。
リク(獣人)
かつてロアが滅ぼした獣人の村の、その唯一の生き残り。獣人の駆逐を悲願とするロアだが、なぜか彼だけは生かし、そして連れ回している。
リクもそんなロアを慕い、彼の背中をついて回っている。が、その本心は……
ゲイン(人間)
かつてロアとともに王立の異種族掃討部隊に属していた男。ロアの強さと、それを裏打ちする純粋な憎悪に焦がれている。
そのロアが、彼が憎むはずの獣人を連れ回していることが耐えられない。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
蒼い春も、その先も、
Rg
BL
高校二年生の春。
自傷癖のある朝比奈穂希は、校内一の優等生として有名な佳澄椿と出会う。
穂希は自分に自傷癖があること、そして自傷をやめようと思っていることを打ち明けるが、椿の反応は穂希の想像とは少し違うものだった。
自身の傷に対する椿の言動に違和感を覚える日々を過ごしていたそんなある日、彼に『君のことを好きになってしまった』と告げられる。
※自傷行為常習の穂希くんが主人公なので、痛々しい描写多々あります。苦手な方、ご注意を!
名無しの龍は愛されたい。−鱗の記憶が眠る海−
だいきち
BL
【名無しの龍は愛されたい スピンオフ】
深海で生きていた変わりものの魔物ラト×群れから追い出された魔族の少年シューロ
シュマギナール皇国の陰謀を暴き、男性でありながらエルマーの子供を孕んだ神の御使いであるナナシと共に、永遠の愛を誓ってから一週間。
美しい海を誇る南の国カストールでの甘やかなハネムーンは、相変わらずのエルマーのおかげで穏やかには終わらなかった。
「海上での魔物討伐、お前も巻き添えで。」
エルマーが持ってきた依頼。レイガンが巻き込まれたのは、海で暴れる巨大な魚型魔物、羅頭蛇の討伐であった。それに加えて行方不明だったニアも、何やら面倒ごとを引き連れて戻ってきた!
エルマー達五人と一匹の前に現れた、孤独な海の魔族。ネレイスのシューロ。彼が大切に抱きかかえていたのは、死んだ番いの卵であった。
海を舞台に大きな波乱が巻き起こる。愛を知らないもの同士の、純粋な家族の形がそこにあった。
ニアの、神様としての本当の姿。そして紫の瞳が映す真実とは。全ての答えは、海の魔族である少年シューロが握っていた。
これは、一つの海の物語。魂の邂逅、そして美しくも残酷な恋の物語。
※名無しの龍は愛されたい読了後推奨
※BLですが、性描写はなしです
※魚型魔物×孤独な魔族
※死ネタ含む
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる