初期レベ廃人ゲーマーと獣人少女の異世界終焉遊戯<ワールズエンド・ゲーム>

安野蘊

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第二巻 第四章 「その異世界人、消息不明につき」

第四章 第二節 ~ 巨塔に待ち受ける脅威 ~

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     ☯

 夜。≪ランブの塔≫第20層。

 昼間の激戦などうそであったかのような静寂が辺りに満ち満ちていた。
 あれ程凶暴だった第30層の主も、今は沈黙し、熟睡している。
 壁に空いた大きな亀裂から、ほのかな月明かりが差し込んでいた。

 その光に照らされながら、ドモスは静かに瓦礫がれきの一つに腰を下ろしていた。

 身体の調子を確かめるように、軽く手を握ったり開いたりしてみる。
 リオナとの戦いで負った傷は、ポーションのお陰でほぼ完治していた。
 再び彼女と相見えたとしても、万全の状態で戦いに臨める。

「傷の具合は如何いかがですか?」

 集中していたドモスの背中に、頭上から声がかけられる。

 ふとそちらを振り向いてみると、ドモスの側近として動いている女性が、第21層から降りて来たところだった。

「……ああ、問題ない」

 ドモスは低い声で返した。
 その声音に若干覚悟のようなものが含まれていたのは、リオナとの再戦を考えていたからだろう。

 「狙った獲物は逃がさない」――ドモスファミリーの掲げる信念である。
 これを守り通すことで、ドモスファミリーは盗賊としての〝はく〟を身に付けてきた。
 多くの団員達を養う為には、そうした名声というのも必要になってくる。

 だが、リオナはその信念から二度も逃げおおせてみせた。
 名をせる盗賊団として、この汚点は何としても払拭しなければならないし、これ以上の失態は絶対に許されない。
 それがこの盗賊団をまとめるからの通達である。

 闘志をたぎらせるドモスのそばに、女性がそっと歩み寄った。

「……彼らは現在、ギルドにて静養中です。こちらから出向くとなると、街中での戦闘となり、かなり目立ってしまうでしょう。影使いのキルフェあたりに暗殺させるのが手っ取り早い方法かと……」

「いや、その必要はない。遅かれ早かれ、奴らはまたここに来る」

「……と言いますと?」

 女性が小首をかしげる。ドモスは顎に手をやりながら、

「……俺はアイツのような瞳を持った冒険者と何度もやり合ってきた。そうして培った俺の直感が言うんだ。――アイツは、一度負けた相手にただで引き下がれるような奴じゃない、ってな。一度は敗走したが、アイツは俺達にリベンジを果たす為、必ずまたここにやって来る……!」

「………………」

「……それに、こっちにはアレもいる。〝アンネームドルーキー〟はかく、あの兎人族アルミラージの娘はアレを放っておかねえだろう」

 そう言って、ボス部屋の片隅かたすみを見る。

 赤褐色のキツネ耳と三本の尻尾を生やした少女が、瓦礫のベッドに横たわっていた。

「……なるほど。では……」

「ああ。奴らが再びこのフロアに現れた時、俺とウォーリアで迎え撃つ。その時こそ――奴らの最期だ!」

 ドモスの殺気が二倍に膨れ上がる。
 ドンッ!と拳をかち鳴らす音が鈍く響き、他の階層にいた低級モンスターまでおびえさせた。

(待っているぞ……〝アンネームドルーキー〟……!)

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