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第二巻 第二章 「その巨塔、予測不能につき」
第二章 第八節 ~ 鋏角のプレデター ~
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第9層を抜け、リオナ達は円形の部屋に躍り出た。
季節の概念と遮断されたその空間は、初夏だと言うのに冷たい空気を漂わせ、薄着の肌を震わせる。
中心部から等距離、等間隔に円柱が生え並び、真っ平らな地面が広がる光景は、そこが今までの洞窟ダンジョンと違い、作為的に造られた場所であることを物語っていた。
「……遮蔽物が少ないな。正々堂々、正面から戦う以外にないってわけか」
「ええ。初戦にしては厳しい条件かもしれませんが……」
「ア、アタイ、狙われたりしないよね……?」
静寂の満ちるボス部屋を、警戒しながら眺め回す。
が、部屋の中には、ボスはおろか、猫の子一匹見当たらなかった。
「……中に誰もいないよ?」
「……いいえ、いますよ。この張りつめた空気……間違いなく、アレの気配です!」
そうしてミラが緊張に唾を飲み込んだ――その時だった。
ザザザザザザザザザザ……
「ひっ⁉」
「リィさんは階段まで退避をっ‼‼ リオナさん、来ますっ‼‼」
何かが這いずり回る音と部屋全体に響く振動が一同を襲い、身の毛のよだつ気配が段々と近付いて来る。
ミラが叫ぶと同時、その気配の主が地面の下から現れた。
「ギシャアアアアァァァァァァアアアアアアァァァァアアア――――ッ‼‼‼‼」
土を巻き上げ、茶色い砂埃と共に現れたのは、全長5mはあろうかという巨大蠍だった。
人の身の丈程の鋏をカチカチと打ち鳴らし、鋭い鋏角の生えた口から粘液を滴らせている。
節目のある八本の足を自在に動かし、今にもリオナ達に襲いかからんとしていた。
突然地中から這い出て来た巨大モンスターに驚いたリィは、自分を落ち着かせるように両手を胸元に遣りながら、第9層へ戻る階段まで後退した。
ボスはボス部屋から出られないから、階段まで戻ってしまえば安全である。
改めてモンスターの巨体を観察したリオナは、喜色の笑みを顔に浮かべた。
「ハハ! 漸く会えたなッ‼‼」
「≪ランブの塔≫第10層ボス〝ギガスコーピオン〟‼‼ 巨大な鋏から繰り出される一撃は、城壁すら粉砕する威力と言われています! あの鋏の餌食にだけは決してなってはいけません!」
ムーンダガーを引き抜きながら、スコーピオンと真正面から対峙したミラが言った。
「リオナさん、行けそうですか⁉」
「ハ、当たり前だ! この程度でオレがビビるとでも思ったかよッ⁉」
「ならば結構! 早々に取り掛かりますよっ‼‼」
戦闘態勢を取った二人は、巨大なダンジョンボスに勇猛果敢に挑みかかった。
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