初期レベ廃人ゲーマーと獣人少女の異世界終焉遊戯<ワールズエンド・ゲーム>

安野蘊

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第二巻 第二章 「その巨塔、予測不能につき」

第二章 第六節 ~ 寄り道 ~

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     ☯

 その後も大したアクシデントはなく、並みいるモンスターを撃退して、順調にフロアを上がっていった。
 途中の第5層でモンスターの立ち入れない〝聖域〟があった為、一同は持参したお弁当で腹ごしらえを済ませてから、攻略を再開した。

 昼食後はリオナを先頭にして攻略を続けることになった。
 強敵の現れない現状にしびれを切らした彼女が、「退屈だ! 替われ!」と強引にパーティーリーダーの座をミラから奪ったのだ。
 あきれていたミラだったが、意地を張る場面でもないので、渋々リオナに先頭を譲った。

 ダンジョンマップはミラが持っていたのだが、リオナはミラの指示も聞かぬまま、迷いなく正しいルートを突き進んで行った。
 何度かわざと見えているわなを踏むという悪戯いたずらがあったものの、次々と上階への階段を発見していく。
 探索は順調だった。

 第8層へ続く階段に辿たどり着いた頃、

「……う~ん、ポンポン進んで行くのは面白いんだけど、何かこう、もっと刺激が欲しくなってきたねえ……」

「……戦闘になる度に隠れているリィさんと違って、戦っている私達はいつも緊張感にあふれているんです! こちらはもうお腹いっぱいですよ……」

「そうは言ってもねえ……ダンジョンってのは、もっとドキドキとワクワクとロマンとお金と出会いを求めるものじゃあないのかい?」

「まあ、中にはそういう方もいらっしゃいますが……。今回の私達の目的は、当面の活動資金とそれなりの経験を積むことですから、そんな不必要に危険を冒す必要は……」

「なら、ちょっくら別ルートを歩いてみるか?」

 ミラとリィの話を聞いていたリオナが、ミラの持つマップをひったくりながら言った。

「別ルート、ですか?」

「ああ。例えば、ここ。こっちの分かれ道を左に進むと行き止まりに辿り着くが、そこでなかなかいいモンが見つかるかもしれないぜ?」

「……そうですか? この辺りは、既に多くの冒険者パーティーが探索した後なんです。宝箱の類はもう開けられて……」

「いいねえ! 行ってみようよ! ただ最短ルートを辿るだけってのも退屈だし!」

 リオナの提案に乗ったリィが尻尾を振って駆け出す。
 大きなバックパックを背負った背中がどんどん小さくなっていった。

「お、乗り気だな!」

「あ! ちょっと、勝手に……っ!」

 共に駆け出す二人の背に制止の声をかけるも、好奇心に溢れる彼女達が足を止めるはずもない。
 下層と言えど、ダンジョンのマップは広大で複雑だから、一度はぐれてしまえば、合流できるかどうか怪しかった。

「うぅ……やっぱりこうなるのですか……」

 散歩中に犬のリードを手放してしまった飼い主のような気持ちになりながら、二人の尻尾を見失わないように、ミラも慌てて駆け出した。

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