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第一巻 第四章 「その闘技場、激闘につき」
第四章 第三節 ~ リオナ VS ミラ③ ~
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「ゴポッ……」
「リオナさんっ⁉」
一瞬、試合も決闘も何もかもを忘れ、ミラはリオナに駆け寄った。
リオナが崩れ落ちるように倒れ込んで来て、慌ててその身体を抱きとめる。
「リ、リオナさん! しっかり‼‼」
リオナの口から鮮血が溢れてくる。
出血量が尋常ではない。
このまま放置すれば、最悪命の危険すら有り得た。
(……≪新月≫の効果は能力の弱体化だけですから、ダメージは無いはず……。それなのに、どうしてリオナさんは……いえ、そんなことより、早く魔法を……‼)
ミラが≪新月≫の魔法を解除する。
暗闇が掻き消え、周囲の喧騒が直に届く。
しかし、周りの有象無象の声などウサ耳に届いていない様子で、ミラは必死にリオナに呼びかけた。
「リオナさん! しっかりしてくださいっ‼ 今回復しますからっ‼‼」
そうは言っても、ミラのポーチに回復アイテムは無い。
一体どうすれば……と考えて、
(そ、そうだ! ギルド近くにある薬屋さん……あそこならっ‼‼)
「リオナさん、少しだけ待っていてください! すぐに〝回復ポーション〟を取って来て治療を……っ‼‼」
そう言い残し、薬屋に向けて足を踏み出そうとした――
その瞬間だった。
薬屋に向かおうと背を向けたミラの隙を突き、リオナが彼女の身体に絡み付いて動きを封じたのだ。
突然の出来事に、ミラは目を白黒させている。
「……え? え? リ、リオナさん? な、何やって……」
「………………」
「ちょ、早くしないと、リオナさんが大変なことに……っ‼‼」
「……フッフッフ……残念だったなあ、ミラ? この通り、オレはピンピンしてるぜ?」
そうして豪快に笑うリオナが、悪戯っぽくチロリと舌を出す。
その先っぽが少し噛み千切られていて、赤くぬめぬめした液体を滴らせていた。
「なっ⁉ ま、まさか、自分で舌を……っ⁉」
「フッ……油断大敵だぜ?」
リオナが自らの身を犠牲にした結果、彼女はミラの動きを完全に封じることに成功していた。
関節を決め、決して逃げられないよう手足を抑え込んでいる。
ミラが必死に暴れ出すも、リオナの拘束が緩むことはなかった。
ミラはリオナの腕の中でジタバタともがきながら、ウサ耳を逆立たせて叫んだ。
「ひ、卑怯です卑怯なのです卑怯なのですよっ! わざと致命傷を受けているように見せかけて、私が油断したところを狙おうなんてっ!」
「戦場じゃあ、気を抜いたヤツが負けるんだぜ?」
「正論ですけどっ! わ、私、本気で心配したんですからねっ⁉」
「何だ、心配してくれたのか?」
「そ、それは、まあ、しましたけど……じゃなくてっ‼‼」
顔を真っ赤にしてリオナに吠え掛かるミラ。
しかし、彼女を背後から抑え込んでいるリオナが怯んだ様子は全くなかった。
ケラケラと悪戯が成功した子供のような笑い声を上げるだけである。
それでも、思い切り声を出したお陰で、いくらか冷静な思考が戻って来た。
「……しかし、ここからどうするおつもりです? 魔法を解除しても、≪新月≫の効果は暫く持続します。弱体化したリオナさんの攻撃力では、私にダメージを与えることはできませんよ?」
「ふむ……」
リオナにとっての問題はそこだった。
取り敢えずミラの動きを封じたはいいものの、攻撃に移る手段が無い。
デバフの効果が切れるまで待っているのも手だが、そのうちに彼女は拘束から抜け出してしまうだろう。
そうなったら、敏捷性に優れた彼女をもう一度捕まえるのはほぼ不可能に近い。
奇襲が効くのも一度きり。
この状況は、リオナにとってまたとない千載一遇のチャンスなのである。
(……ここで決めなきゃ、勝ちの目は無い。どうにかして戦闘不能か、或いは行動不能に追い詰めねえとな)
無論、そんな方法、リオナはとうに思いついている。
「……なら、こういうのはどうだ?」
リオナは怪しげに口の端を吊り上げると、ミラの身体を抑え込んでいた右手を回し、彼女の慎ましやかな胸の膨らみへと指を這わせた。
「ひゃあっ⁉」
「おお……!」
スラリと長い五本の指で、ミラの胸を揉みしだく。
発達途中の僅かにしこりが残る感触と共に、健康的で張りのある肌の滑らかさが服の上からでも手に伝わって来る。
人間の根本にある欲望を直にくすぐるような魔性の誘惑に、リオナは思わず戦闘中であることすら忘れそうになった。
その一方で、リオナの左手はミラの太ももの付け根辺りをまさぐっていた。
冒険者らしく引き締まった筋肉の表面を撫で、女性的な肉感に富んだ内腿に指を沈ませる。
敏感な部分に触れたのか、抱き締めるミラの身体がピクリと震えた。
「や、あ……リ、リオナ、さ……何して……」
「フフ……ここか? それとも……ここがいいのか?」
「ひあ⁉ ちょ、リオナさん、ってば……ほ、ほんとに、それ以上は……!」
ミラが鼻にかかった甘い声を漏らす。
それが闘技場のリングに響き、周りの観客達(殆ど男性)が息を呑んで、食い入るように絡み合う二人を見つめていた。
その視線がミラの中の何かをくすぐったか、
「あ、ダ、ダメ、です……! 皆、見てます、からぁ……!」
「ほほう? つまり、誰も見てなきゃいいわけだな?」
「そ、そういう意味では……はぁんっ‼」
乱れた彼女の吐息がリオナのネコ耳に届く。
大きな赤い瞳から零れた雫が上気した頬を伝い、彼女の胸の膨らみを掴むリオナの手の甲を濡らした。
(あ、ヤベェ、コレ……止まらなくなりそう)
このままでは、由緒正しきこの闘技場に、かつてない大事件(意味深)を残してしまいそうだ。
そうなる前に、リオナは勝負を決めにかかることにした。
「ギブアップするなら、やめてやってもいいんだぜ?」
「ふ、くぅ……そ、そんなこと、絶対、しません……!」
「じゃあ仕方ないな」
リオナは鋭い犬歯の並ぶ口を開けると、ミラの人間の方の耳を甘噛みした。
くにっ、という柔らかな感触を、歯と舌と唇で味わう。
同時に、吸いつくように彼女の胸を揉みしだいていた右手を離し、彼女のふかふかのウサ耳に指を這わせて、その裏側を親指で撫で回し始めた。
「ひああああっ⁉ み、耳はぁ! 耳は、ダメ、ですうぅっ⁉」
「ふうん? そりゃ、どっちの耳のことだ?」
「ど、どっち、って……あ、あああぁぁっ‼」
ミラの嬌声がどんどん大きくなっていく。
このまま進めば戻れなくなりそうだったが、リオナも妙な気に当てられて、自制することを忘れていた。
その様は、正に獲物に襲いかかる獣が如く。
右手と左手と唇、三点に全神経を集中させ、ミラに極上の快楽を与え続ける。
彼女はもう自分の力で立つ力も残っていないようで、リオナに体重を預けていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「強情なヤツだな」
「ん……い、いくら、責められようと……私は、決して、屈しな、い……」
エ○ゲーとかでよく聞きそうな台詞がミラの口から漏れる。
そして、それはリオナの嗜虐心を焚きつけるのに十分過ぎる程の威力を備えていた。
「そうか。なら、何処まで耐えられるか試してやるよ」
リオナのウサ耳を撫でる手つきが変わった。
表面を撫でるだけの優しいタッチから、五指全てを使った複雑な動きへ。
親指と人差し指でウサ耳の付け根を挟み込みながら、コリコリと軟骨の辺りを刺激する。
残りの指は、耳に振れるか触れないかの距離で縁をそっとなぞり、細かな産毛の感触を楽しんだ。
「ん、く……は、あ……あ、あん……や、ぁ……!」
「うりうりうりうり! どうだ? そろそろ限界が近いんじゃないのか?」
「あ、ん……イヤ……リ、リオナ、さん……!」
リオナのテクニックは絶妙だった。
強過ぎず、弱過ぎず、微睡みのような曖昧な快楽を与えてくる。
満足する一歩手前のラインで停滞し、やめて欲しいという懇願と、もっとして欲しいという期待とで板挟みになったミラの感情は、もう爆発寸前だった。
ミラの膝がガクガクと震え始める。
口から唾液を零し、目の焦点が合っていない。
それでも、リオナは彼女の愛撫をやめなかった。
「フフ……どうした、最初の威勢は?」
「ふあ……あん! や、わ、私……もう……!」
「『もう』……何だ? ちゃんと口で言わねえと、わかんねーぞ?」
ミラは涙の浮かぶ目でリオナを見上げ、
「リ、リオナさん……お願い、もう……やめ……!」
「何だ、やめて欲しいのか? だったら、どうすればいいのか……わかってるだろ?」
リオナが意地悪な笑みを浮かべる。
ミラはリオナの腕をがっしりと掴み、震える声で言った。
「わ、わかりました……私の、負け、ですから……も、もう、だめええぇぇぇええっ‼‼」
一際大きな彼女の嬌声が響き渡り、その瞬間、この戦いの勝者が決まった。
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