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最終章 大黒腐編

第306話 魔物使い

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「来るぞ、屈め!」



バシャァァァ!っと頭上の鉄骨が溶け、



近くに落下してきた。



「隠れても無駄だぞ、護衛共!!」



敵はライベック。



酸を操る魔剣アッシャードを持つ、



テアトラの将軍だ。



「キャディッシュ、離れた方がいい。



俺は反対側に行く」



「分かった。僕がおとりになろう。



その隙に矢で狙ってくれ……



アーシュ……アーシュは?」



キャディッシュは周りを見渡す。



「さっき通路に入っていった。



心配するな、



そう簡単に死ぬやつじゃない」



「分かってるけど、ここ最近様子が変だ」



「魔物の感覚が分かると言っていた。



何か考えがあるのかもしれん」



近くに酸の水球が当たり、



飛沫が近くまで飛んできた。



ジュワァァァと、



何かの機械が溶ける。



ここは古代文明遺跡の中で、



どうやら何かの工場跡のようだった。



よく分からない機械が、



たくさん置いてあるので、



それらが遮蔽物となり、



ライベックから姿を隠せている。



天井も4,5階ほどしかないため、



戦場で見せた、



酸の雨を降らせることは出来ないのであろう。



ライベックは酸の水球を撃ってくるだけだった。



それでもかなりの脅威だ。



「まったく……



誰が来るのかと楽しみにしていたら、



魔人でも魔剣使いでも機械人でもない、



ただの護衛達だったとは!!



俺も運がないな」



ライベックの声は楽しそうに弾んでいる。



運がないと言いつつ楽しそうではないか、



と思いながらリンギオは冷静に矢の狙いをつける。



機械類の僅かな隙間から、まずは一発。



放たれた矢は酸の水球に防がれた。



「そこかァ!」



リンギオは溶ける前にその場から移動した。



キャディッシュが、



陽動として飛び回ってくれているおかげで、



上手く隠れることが出来た。



リンギオは真横の崩れている大穴を見る。



しばらくするとアーシュが現れた。



その後ろには魔物の群れ。



ダンゴムシのような形のチグイの群れだ。



犬のようなタイプも混じっている。



アーシュはリンギオを見つけると、



声を出さずに「後ろに下がって」と手で合図した。



『キャディッシュ、下がれ。



アーシュが魔物の群れを率いて戻ったぞ』



『魔物の群れ!?彼女は魔物を操れるのか?』



『知らんが現実にそうなっている。



巻き込まれる前に早く退いた方がいい』



薄暗い空間を、



もぞもぞとライベックに向かって魔物の群れが移動する。



視界の悪さも相まって、



途中までは気付かれなかったが、



さすがに古代文明の機械類を、



力尽くで押しのけて進むので大きな音が出る。



「なんだ?魔物か!?」



自分に向かってきていると分かったライベックは、



周りに酸を放出、群れを一掃する。



しかし、気付けばかなりの大軍が、



自分を包囲していると分かると、



ライベックの顔から笑みが消えた。



「うおおおおお!!」



四方八方に酸を撒き散らし、



魔剣の力をフルに出す。



三人は遠巻きにその様子を見ていた。



「とんでもない大軍だ」



「600匹はいる……」



キャディッシュの言葉に、



アーシュは淡々と答えた。



ライベックはしばらく奮戦していたが、



やがて魔素が尽き、魔物の群れに飲まれた。























倒れた〝黒樹〟の傍にて、



バルバレス軍は目の前の巨人オークに苦戦していた。



近くにいる巨人オークは全部で5体。



20mをゆうに超える巨体で、



腐樹の木々をなぎ倒しながら、



友軍を棍棒で叩きつぶしている。



木々の影に隠れながら、



油を仕込んだ火矢を撃ち込ませるが、



巨人とは思えない機敏さで動くため、



払い落とされるか、



躱されて上手くいかなかった。



弓兵部隊が振り下ろされた棍棒で潰される。



巻き上げられた土や血飛沫、



そして怒号と悲鳴で前線は恐怖に飲まれている。



「将軍はどこに行ったんだ!」



「もうだめだ、逃げよう!」



「ここは終わりだ!」



兵達の士気が一気に落ちる。



その時、後方から騎馬部隊が駆けてきた。



300騎はいるだろうか。



先頭には将軍、バルバレスの姿があった。



「退くなっ!



敵は手強いが、アレを倒せば戦局は一気に傾くぞ!!」



騎馬部隊は最大速力で腐樹の間を縫いながら、



巨人オークの足元を駆け抜けた。



一時置いて、



巨人オークが叫び声を上げながら、膝を折る。



足元をすり抜けた時、



同時にアキレス腱を斬りつけていたのだ。



「今だ!歩兵は巨人の上に乗り攻撃せよ!」



部隊長の号令により、



わらわらと巨人オークの上に集まった、



50を超える歩兵たちは、



それぞれの武器を突き立て、



遂に難敵を討ち取った。















上空ではホノア・ベツレム率いる有翼人部隊が、



巨人オークに向かって矢を放っていた。



しかし、顔を狙って放たれた矢は、



兜で防がれ致命傷は与えられない。



「隊長! 矢は効きません!



あいつら思いのほか素早くて、



何人か近づきすぎて叩き落とされました」



「……火の用意を」



「しかし、既に火は試し、



失敗に終わっていますが……」



「もう一度だ。私が何とかする」



ホノアの命で数名が巨人オークの背中を斬りつける。



甲冑を着けているのでダメージは与えられないが、



背後に敵がいるというプレッシャーは与えられる。



巨人オークはうるさそうに後ろに向かって剣を振り回した。



その隙を狙い、ホノアは最大速力で巨人の目を狙った。



一瞬で血しぶきが上がり、



巨人は悲鳴を上げ、



目を抑えながらやみくもに暴れ出した。



「放て!」



視界を失った巨人オークに、



ホノアの合図で火矢が撃ち込まれた。



火だるまとなった巨人オークは、



よたよたとさ迷い、



オーク軍の後列に派手に突っ込み、息絶えた。
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