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第五章 大陸戦争編

第244話 ノーストリリア城でリモート会議

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ノーストリリア城の俺の部屋は塔の上階にある。



同じ階のもう一つは護衛兵の待機部屋だ。



リンギオとソーンは今そちらに行ってもらってる。



ソファに座り紅茶を一口。



目の前に展開されている、



空中投射された複数の画面には、



キトゥルセン連邦内の大臣や将軍などが映っている。



窓の外には満月。風がガタガタとガラス窓を鳴らしている。



「それとチェロキー湖戦線からの情報ですが、



未確認の魔剣使いが現れたとのことです」



焚火の近くなのか、バルバレスの顔は赤く照らされている。



「被害は?」



「魔剣の能力により、同盟の兵士、約4000が犠牲に」



多いな……。



「どんな能力か分からないか?



ユウリナ、機械蜂の映像は?」



数秒後、画面が一つポップアップされた。



「これは……なにが起こったんだ……」



真っ白い大地に、武器や甲冑がたくさん落ちている。



昼間の映像だった。



ミルコップが唸るのも無理はない。



甲冑の一つに機械蜂が寄る。



倒れている兵士の顔には、



大量の白い粒が浮き出ていた。



「これは塩ネ。



多分テアトラの将軍が持つ、



〝魔剣ゾルティアート〟



塩ヲ操る能力ヨ」



「塩……じゃあ人体の塩分を全て吸い出されて……



殺されたってことか? 4000人の軍が丸々……」



「そウよ」



「何という恐ろしい魔剣だ……」



レオプリオが呆然と言う。



「それと、敵の機械兵、通称ゴーレムの件ですが……



確認されたゴーレムは全部で27体。



これにより北ブリムス同盟軍は一気に押し返され、



戦線はタシャウス王国まで後退した模様です」



画面にゴーレムの映像。



そうそう、厄介なんだよな、コレ。



「こちらの神官……ユウリナ様が操る機械兵42体、



狂戦士化できる【十牙】の獣人4名、



捕虜の魔人ザヤネ、それとネネル将軍を派遣、



既に半数のゴーレムは破壊したとの報告が入っています」



「そうか、それは予想以上の戦果だ。



マーハント、ザヤネの様子は?」



「今のところ従順そのものです。



部下たちとも打ち解けてきたようで」



「油断はするな。引き続き頼むぞ」



「ちょっといい?」とネネルが割って入ってきた。



「地図だとジョルテシアは侵略されてないようだけど」



オレンジ色の敵勢力圏の中に、



ポツンと水色のジョルテシア連邦が島のように浮いている。



ジョルテシアにはネネルの姉が嫁いでいる。



心配なのだろう。



「厳しい山岳地帯なので地上軍は侵攻できないのだろう」



バルバレスが解説してくれた。



関連情報がパパッと出てくる。



「避難はしないのか」



「有翼人なのだからいざと言う時は飛んで逃げれる」



「しかしその先は?



生活するには拠点が必要だろう」



何人かの大臣がザワザワと話し始めた。



「移動するにも十万を超す難民が発生しますから、



受け入れの調整もあるでしょうし……」



いや、侵攻されるのは時間の問題だ。



「担当は誰だ?」



「北ブリムスの……



だめだ、三日前に死亡してます」



「他は?」



「我々が受け入れます」



声を上げたのはルナーオだった。



「食料も国費も兵士もまだ余裕があります。



手続きはお任せ下さい」



頼もしすぎる。



「助かる、ありがとう、ルナーオ女王。



そちらはどうだ?」



「こちらは第二軍をセキロニア付近、



第三軍をジャベリン自治区周辺に布陣させています。



第四軍は要請通り、シャガルムに向けて進軍中です」



ルナーオの声には芯が通っていた。



もう立派な女王だ。



地図に詳細が出る。



第二軍の将軍はウェイン、



第三軍の将軍はキョウ、



第四軍の将軍はバステロと表記されている。



それぞれが7000~10000の軍勢だ。



部屋の扉がノックされた。



入ってきたのは夜食を持ってきたマイヤーだ。



玉子と生ハムのサンドウィッチとオニオンスープ。



いい匂いだなー。



「ありがとう、マイヤー。



体調は大丈夫か?」



マイヤーは先日妊娠が分かったばかりだ。



「ええ、ご心配なさらず。



後で一緒にお風呂入りましょうね」



「ちょっ……声入るって」



「ん? オスカー様、今なんと?」



「あ、いやなんでもない、ラムレス」



ていうかラムレス、お前厨房にいないか?



口元が汚れてやしないか?



マイヤーはうふふっと笑うと部屋から出ていった。



「一つよろしいでしょうか」



画面の一つが大きくなる。



〝ラウラスの影〟長官のユーキンだ。



「テアトラに潜入した工作員から興味深い報告が」



映像が出る。



そこは岩山の街道らしき場所だった。



四足歩行の地竜のような魔物に鞍をつけ、



武装した防護服姿の兵士が上に数人乗っている。



それがずらりと彼方まで隊列を組んで伸びていた。



とんでもない数だ。



他にも犬のような魔物も複数確認できる。



あれが前線に到着したら……。



「確認できたのは北上している部隊と、



山間の平原で飼育されている箇所の2か所です」



ユーキンの報告書をよく読むと、



この映像を送ってきた工作員はダリナとドラグルだった。



二人は死んだことにしているので、



俺含め数人しか知らない偽名で記載されていた。



ちょっと感動。



二人でしっかり生きて、



しっかり職務を全うしている。



「最優先で叩く必要があるな。



……俺が行こう、全て燃やし尽くす」



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