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第五章 大陸戦争編
第230話 パルセニア帝国編 幹部会議
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パルセニア帝国 帝都ルーハイブ城
前パルセニア皇帝の首が酒に漬けられて、
王の間の壁際に飾られている。
王座に座っているのはギバ・グレイヤーだ。
足元には魔獣レギュールが寝そべっている。
分厚い木製の机にはシャガルムからの使者ダシュル、
そしてナルガセ、ラドー、ゴッサリアが座る。
机の上にはウルティア大陸の地図があり、
各国の戦力が木彫りの駒で置いてある。
「しかしアナタもやりますね。
この国の将軍をたぶらかし、
クーデターを起こさせ皇帝を殺害するとは」
ダシュルは長い前髪を指で直し、
ワインを一口飲んだ。
「それだけじゃねえ。
その将軍も殺して自ら皇帝の座に就いたんだ。
国盗りに関しちゃ俺たちの右に出る者はいねえ」
ラドーは得意げに言う。
「確かに……。
我が国の皇帝もアナタの噂は耳にしています」
男ながら妖艶な雰囲気のダシュルは、
これでもシャガルムの将軍だ。
シャガルムとパルセニアの同盟の証として、
5000の軍を率いてパルセニアに出向している。
「単純な武力だけではウルティア大陸を制すことは出来ない。
真の支配者は機転が利かないと……。
シャガルム帝国とは話が合うようで喜ばしいです」
ナルガセはワイングラスを掲げる。
「俺たちは、テアトラとキトゥルセンが潰し合い、
生き残った方を狩ればいい。
ま、精一杯戦ってもらおうじゃねえか」
ギバは愉快そうに笑った。
レギュールもあくびをする。
「ダシュル殿はどちらが勝つと?」
ナルガセの問いにダシュルは不敵な笑みを浮かべた。
「テアトラはゼニア大陸のオーク共と話をつけています。
彼らが上陸するのは北部だけ……。
結果は見えていますよ」
「そのオーク共はどうするんだ?
まさかおとなしくゼニア大陸に帰るとも思えんが」
ラドーは不躾な視線を向ける。
「そのための【千夜の騎士団】です。
彼らが殲滅してくれるでしょう」
「ならば最終的に我々が、
【千夜の騎士団】を狩らなければならないわけか……」
ナルガセの発言にダシュルは真顔になる。
「大丈夫だ。キトゥルセンと削り合う。
その頃には連中、半分くらいの数になってるだろうよ」
ギバは余裕そうだ。
「そうですね。うちにも魔戦力はいますし……、
ゴッサリア殿も過去に【千夜の騎士団】を、
二人殺っていると……。お噂は聞いてますよ」
ダシュルに名を呼ばれて、
つまらなそうにゴッサリアは顔を上げた。
「なんだゴッサリア。珍しく覇気がねえな。
娼館で病気でも貰ったか?」
ギバの冗談に笑ったのはラドーだけだ。
「今日は気分が乗らん……。
俺は先に帰るぞ」
ゴッサリアは険しい表情で部屋から出ていった。
ナルガセだけが、その背中を鋭い眼差しで追っていた。
「ふん、気難しい野郎だぜ」
そう言ってワインを飲み干したギバは、
後ろに控えている妻たちを呼び、
ワインを注がせた。
際どい衣装を着た妻たちの尻を撫でているギバに、
ダシュルは部下に剣を持ってこさせた。
「ギバ殿。遅くなりましたが、
今回の同盟を祝して、
私からささやかですが……贈り物です」
手渡されたのは一本の大剣だった。
「ほう、これは……」
「そちらは古代文明の遺物から作られた特別な剣です。
名を〝ヴィヴィリアン〟といいます。
持ち手の上部を強く握ってみて下さい」
ギバが剣を高く持ち上げ、
言われた通り、柄を強く握る。
すると徐々に刀身が赤く熱されてきた。
「熱剣……とでも言いますか。
甲冑くらいなら瞬時に溶かせますよ」
ギバは壁を刃先で撫でた。
固い石壁が赤く溶ける。
「こりゃあ面白れぇな」
「気に入って頂けたようで……」
「んじゃ、こちらも感謝の印として……
ナナミア、こっちに来い」
端の方にいたナナミアがおずおずと前に出てきた。
「俺たちの子供は元気か?」
「はい。健やかに育っています」
「そうかそうか」
ギバは満足そうに微笑む。
「今晩、この女を貸し出そう。
キトゥルセンの女さ。
調教済みだ。楽しんでくれ」
ナナミアはダシュルに微笑んだ。
前パルセニア皇帝の首が酒に漬けられて、
王の間の壁際に飾られている。
王座に座っているのはギバ・グレイヤーだ。
足元には魔獣レギュールが寝そべっている。
分厚い木製の机にはシャガルムからの使者ダシュル、
そしてナルガセ、ラドー、ゴッサリアが座る。
机の上にはウルティア大陸の地図があり、
各国の戦力が木彫りの駒で置いてある。
「しかしアナタもやりますね。
この国の将軍をたぶらかし、
クーデターを起こさせ皇帝を殺害するとは」
ダシュルは長い前髪を指で直し、
ワインを一口飲んだ。
「それだけじゃねえ。
その将軍も殺して自ら皇帝の座に就いたんだ。
国盗りに関しちゃ俺たちの右に出る者はいねえ」
ラドーは得意げに言う。
「確かに……。
我が国の皇帝もアナタの噂は耳にしています」
男ながら妖艶な雰囲気のダシュルは、
これでもシャガルムの将軍だ。
シャガルムとパルセニアの同盟の証として、
5000の軍を率いてパルセニアに出向している。
「単純な武力だけではウルティア大陸を制すことは出来ない。
真の支配者は機転が利かないと……。
シャガルム帝国とは話が合うようで喜ばしいです」
ナルガセはワイングラスを掲げる。
「俺たちは、テアトラとキトゥルセンが潰し合い、
生き残った方を狩ればいい。
ま、精一杯戦ってもらおうじゃねえか」
ギバは愉快そうに笑った。
レギュールもあくびをする。
「ダシュル殿はどちらが勝つと?」
ナルガセの問いにダシュルは不敵な笑みを浮かべた。
「テアトラはゼニア大陸のオーク共と話をつけています。
彼らが上陸するのは北部だけ……。
結果は見えていますよ」
「そのオーク共はどうするんだ?
まさかおとなしくゼニア大陸に帰るとも思えんが」
ラドーは不躾な視線を向ける。
「そのための【千夜の騎士団】です。
彼らが殲滅してくれるでしょう」
「ならば最終的に我々が、
【千夜の騎士団】を狩らなければならないわけか……」
ナルガセの発言にダシュルは真顔になる。
「大丈夫だ。キトゥルセンと削り合う。
その頃には連中、半分くらいの数になってるだろうよ」
ギバは余裕そうだ。
「そうですね。うちにも魔戦力はいますし……、
ゴッサリア殿も過去に【千夜の騎士団】を、
二人殺っていると……。お噂は聞いてますよ」
ダシュルに名を呼ばれて、
つまらなそうにゴッサリアは顔を上げた。
「なんだゴッサリア。珍しく覇気がねえな。
娼館で病気でも貰ったか?」
ギバの冗談に笑ったのはラドーだけだ。
「今日は気分が乗らん……。
俺は先に帰るぞ」
ゴッサリアは険しい表情で部屋から出ていった。
ナルガセだけが、その背中を鋭い眼差しで追っていた。
「ふん、気難しい野郎だぜ」
そう言ってワインを飲み干したギバは、
後ろに控えている妻たちを呼び、
ワインを注がせた。
際どい衣装を着た妻たちの尻を撫でているギバに、
ダシュルは部下に剣を持ってこさせた。
「ギバ殿。遅くなりましたが、
今回の同盟を祝して、
私からささやかですが……贈り物です」
手渡されたのは一本の大剣だった。
「ほう、これは……」
「そちらは古代文明の遺物から作られた特別な剣です。
名を〝ヴィヴィリアン〟といいます。
持ち手の上部を強く握ってみて下さい」
ギバが剣を高く持ち上げ、
言われた通り、柄を強く握る。
すると徐々に刀身が赤く熱されてきた。
「熱剣……とでも言いますか。
甲冑くらいなら瞬時に溶かせますよ」
ギバは壁を刃先で撫でた。
固い石壁が赤く溶ける。
「こりゃあ面白れぇな」
「気に入って頂けたようで……」
「んじゃ、こちらも感謝の印として……
ナナミア、こっちに来い」
端の方にいたナナミアがおずおずと前に出てきた。
「俺たちの子供は元気か?」
「はい。健やかに育っています」
「そうかそうか」
ギバは満足そうに微笑む。
「今晩、この女を貸し出そう。
キトゥルセンの女さ。
調教済みだ。楽しんでくれ」
ナナミアはダシュルに微笑んだ。
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