【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一

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第五章 大陸戦争編

第214話 テアトラ合衆国編 魔人ジオー

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千里眼のサーモで見ると、赤い人型があった。



熱源。人だ。



すぐに透明化できる魔人だと気付いた。



同時に魔素も感じた。



ていうか今まで何で魔素を感じなかったんだ?



疲労してるからか?



確かに極度の緊張やら空腹やらで、



結構なストレスを感じてるが……。



いやいや、今は目の前の奴に集中しろ。



細身の男、ゆったりとした服を着ている。



手には短刀らしきもの……。



俺はフラレウムの剣先を向けた。



「誰だ」



そいつはゆっくり右に移動する。



「さあ、名もなき顔なき姿なき……



私は存在しない男です」



まるでからかっているような口調……



ふざけた野郎だ。



相手はこっちが見えていることに気が付いていない。



気付かせてはダメだな。



俺は声の主がどこにいるのか分からないふりをしながら、



きょろきょろ辺りを見渡す。



しかし、目の端でしっかりと男を追跡していた。



攻撃してくるのか来ないのか……



いや……でも、こいつの構えは隙を伺ってる感じだな……



もしかしたら魔剣か機械の武器かもしれない。



こりゃ先手必勝のほうがよさそうだ。



充分油断させた俺は急に男の方に向き直り、



フラレウムから火炎放射を出した。



もちろん多少ずらして殺さないように。



「うおおっ!! がっ! ぐああああっ!



な、なんてこった! お前、見える奴か!」



右腕だけ焼かれた透明男は、



その場に膝をつく。



「くそっ! いてえ! あちい!



くそっ! あああ……やりやがったな……」



悪態をつく痛そうな声だけが聞こえてくる。



「おい、正直に言え。お前は誰だ?



俺にはお前がはっきり見えてるんだ。



もう一本の腕も燃やすぞ」



透明男は痛くてすすり泣いている。



どうやら他の能力や武器なんかはなさそうだ。



「分かった分かった……言うから、



その剣を下げてくれ……」



「ダメだ。殺すぞ、早く言え」



荒い呼吸を飲み込み、男は観念した。



「俺は【千夜の騎士団】ジオー・ボシュロム。



魔人だよ……能力は、見ての通り透明化だ」



「能力を解け。姿を見せろ」



ジオーは能力を解いた。



現れたのは黒装束の若者だった。



俺と同じか少し上って感じか……。



目つきが鋭くてくせ毛、



特徴を言えばそのくらいしか浮かばない、



普通の若者だ。



火傷した腕は皮膚が剥がれて真っ赤になっていた。



額に脂汗が浮かび、涙を浮かべ、



傷みを堪えて全身を小刻みに震わせてる。



俺は腰のベルトや短刀などを捨てさせた。



「なぜ俺に声をかけたんだ?



その能力なら簡単に殺せたはずだ」



「初めはどっかの貴族の子供かと思ったんだよ!



いっちょ前に剣持ってて、



少しからかってやろうと……。



途中で魔素を感じて……違うってわかって。



でも弱い魔素だったから俺の能力なら負けないって……



まさか敵の大将がここにいるなんて誰も思わないだろ!」



コイツは……見た目よりも幼いな。



少し話しただけで分かるほど、



中身が実年齢に追い付いていないガキだ。



今までは千里眼を持つ者と運よく対峙しなかっただけだろう。



「そいつは不運だったな。



その能力を使って他に何ができる?



隠さず言え」



俺は熱した剣先を膝に押し当てた。



「ぎゃあっ!! やめろ!」



油断は出来ない。



痛みをもって恐怖を植え付け、反抗する気を削ぐ。



「言う、言うから」



ジオーは樹に手を当てた。



すると樹が消えた。



なるほど、触れたものも透明化できるのか。



しかし、樹の先端の枝が見えている。



ジオー曰く、範囲は2mくらいが限界らしい。



「よし、俺の姿を消せ。



そんでこの城を出る」



すっかり意気消沈し、



俺の捕虜になったジオーを案内役に、



明け方の敵城内を歩き出した。



しばらく質問攻めし、



この辺りの地理が大体つかめてきた。











  ↑南ブリムス連合



    ◎ガルガンチュア



   ▼ルガリアン城 ○パセオ



○ダグ  ▼バリストリング城



   聖ジオン教国 







今俺がいるルガリアン城の、



北には首都ガルガンチュア。



首都ならば〝ラウラスの影〟工作員が何十人も潜伏中だ。



合流できれば北に帰れるはず。



しかし、ここから一番近いのは南門らしい。



北門なら直接行けたのだが、



こりゃあ時間がかかるな……。





南門が見えてきた時、



ふいにひとつの機械蜂からの信号が途絶えた。



直前の映像を再生すると、



トンボのような影が映っていた。



機械蜂がやられたのか?



自動で画像処理が始まる。



これは……



機械……トンボ?



そこではっと気が付く。



テアトラにも機械人がいた事を。
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