【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一

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第四章

第208話 軍略会議

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ノーストリリア城 



大会議室には同盟の主要人物が揃っていた。



マルヴァジアの王、レオプリオ、



元ザサウスニアのばあちゃん大臣ニアなど、



連邦内全土から召集した主要メンバーに加え、



ミュンヘル王国の女王ルナーオ、



そして北ブリムス連合の代表ジュールベルトら数名が集まった。



他にはラムレスやバルバレス、



ギルなどいつものメンバーが顔を並べる。



大きな暖炉で薪がパチパチと音を立てている。



その前に大狼のギーと、生まれた子供達がもっふりと丸まっていた。



いいなぁ俺もそこに行きたい……。









「なし崩し的に開戦してしまいましたな……」



でっぷりとした腹を出したジュールベルトは嫌視たらしく俺を見た。



はぁ、こういうのめんどくさい。



「いずれは衝突していたでしょう。



早いか遅いかだけです」



ルナーオが毅然とした態度でフォローしてくれた。



可愛いし、いい匂い……。



「奇襲されるよりかはよっぽどいい」



レオプリオも追撃。いいぞもっとやれ。



「現在、南ブリムスとテアトラには間者を送っている段階です。



重要なのはそちらの諜報機関との情報共有ですな」



ラムレスが珍しく頼もしい。



下あごがぷるるんしてる。



「それは今、まとめている。



国がたくさんあると時間がかかるんだ」



ジュールベルトは不機嫌になった。



「それはお察ししますが、戦争は情報が全てです。



一刻も早い情報共有の枠組みをお願いします」











「間者は……こちらにもたくさん入っているでしょうな」



ユーキンは手を組んで顎を乗せた。



碇ゲン〇ウかよ。



「その刈り取りも重要だな。



必要とあらば【護国十二隊】も使え」



「それはありがたい。お任せ下さい」



〝ラウラスの影〟長官は目を光らせた。



「現在分かってる範囲での、敵の戦力はどのくらいなの?」



ニアが鋭い視線をバルバレスに寄越す。



「南ブリムスは10万ほど、シャガルム帝国が5万、



そしてテアトラは15万……ですな」



「こちらは?」



「我らキトゥルセン連邦で7万、北ブリムスが8万、ミュンヘル王国が4万」



「10万以上の差があるのね……」



会議室全体が重苦しい空気になる。



「南の方が人口が多いからしょうがない……」



誰かがか細い声で言った。



「戦術が重要になってきますな」



バルバレスは努めて明るく言った。



「数で負けていても、



キトゥルセンは我らザサウスニア帝国を打ち破った実績がある。



もちろんオスカー王子は勝算がおありなのでしょう?」



うーむむむ、なんてやりにくいババアなんだ。



しかし、ニアがいるからザサウスニア領は上手くいっている。



それを本人も知ってるからまったくもって図々しい。



「……まず、先日連弩の生産量を上げた。



剣と盾でぶつかり合う前に敵の数を半減出来れば勝機は十分にあるだろう。



それと炎を積極的に使う。



油樽と火矢をすべての軍に標準装備させ、



小型で移動性のよい攻城兵器に乗せて敵に軍列に撃ち込む。



海軍も増強中だ。最少人数で操舵でき、



尚且つ攻撃力を高めた大型の船を大量に作っている。



軍の準備は順調に進んでいるよ」



メイドのモカルとラヴィがお茶を注いでまわる。



ベテランのマイマと比べると、



並んだメンツにビビッて緊張してしまっているようだ。



可愛い。



……けどその紅茶はこぼすなよ?





その後の議題は軍の配置に関してだ。



セキロニア帝国にはアルトゥール軍、



ジョルテシアにはネネル軍を駐留。



ミュンヘル軍も南下を始めている。



それと国内および北ブリムス内の腐樹の森にマーハント軍を派遣。



腐王がいればザヤネを使う予定だ。



聖ジオン教の奴らは腐樹を神聖化していて、



度々戦争に魔物を投入してくる。



こちらの腐樹の森を利用してくる可能性もゼロではない。



同盟側の不安要素は事前に排除しておきたい。





ギバ一派はブロトール王国に続いて、



パルセニア帝国を掌握したとの新情報が入ってきた。



現在東の大国、シャガルム帝国と密に連絡を取り合っているらしい。



しぶとい奴らだ。



ユウリナを撃退するほどだから、



それなりの戦力を揃えなければ対処できない。



一応、ミルコップ軍、機械軍の一部、



マルヴァジア軍、カサス軍を国境に移動させることにした。





会議も中ほどまで進んだが、



どうも体調が芳しくない。



ガシャの根の影響だ。



「オスカー様、大丈夫ですか?」



隣のルナーオが声を潜めて覗き込んできた。



「ああ、ちょっと頭痛がしてね……」



ユウリナからもらった薬を飲む俺を、



ルナーオは心配そうに見ている。





北ブリムス連合軍は国境の要所に展開。



キトゥルセン軍は守りの薄い箇所を補助する形だ。



更に食料、各種戦争資源なども供給するということで話はまとまった。



後は魔戦力だ。



北ブリムス連合にも何人か魔人と魔剣使いがいる。



本当は指揮したいところだが、



対等な同盟関係だから俺の言う事など聞かないだろう。



「魔戦力の使い方は所有する各国の裁量に委ねるしかないんだな?」



「まあ、そうだな。魔剣使いも、魔人もみな我が強い。



命令なんか聞かんさ」



ジュールベルトは肩をすくめた。



「南の勢力には【千夜の騎士団】がいる。



最低でも10名の魔人……



さらに各国から回収していると噂の魔剣を合わせれば……」



どう対処するんだ? とジュールベルトの目は語っている。



「こちらも対策は練っている。



ユウリナの力を借りれば勝算はある」



「テアトラにも機械人が」



相変わらずニアは鋭い。



「聞いたことはある。



ユウリナ様なら何か知っているかも」



バルバレスが俺を見たので



「聞いておく」



とだけ答えた。



「ギル、戦争に回せる予算は十分か?」



書類の山の向こうから「なんとか」と聞こえてきた。



何か知らんが大変そうだ。



「資金繰りは任せたぞ。何かあった遠慮なく言ってくれ」



「分かりました」



その時、廊下側に座っていた何人かが同時に顔を上げた。



何やら外が騒がしい。



「なんだ?」



俺の背後にいたリンギオが「魔物だ……」と呟いた。



すぐに護衛の【護国十二隊】一番隊隊長のダカユキーが入ってきた。



「オスカー様、会議中失礼致します!



中庭に腐王が!」
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