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第四章
第170話 十神教と産業計画
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ソーンの容態は安定していた。
機械蜂の治療でだいぶ良くなっていたが、
しばらくは入院することになるだろう。
ガシャの樹の研究者であるヤホン氏は、
亡命という形で受け入れた。
これからじっくりと話しをしてもらおうと思う。
実は数日前、タシャウスの王、テミスと宰相のハンドロが、
ガラドレスに来訪した。
ソーンたちのおかげで内紛寸前だった王室を、
まとめ上げることが出来たと感謝された。
厄介な妃の弟を排除するにあたって、
キトゥルセンが国王派のバックについたというのが決め手になったらしい。
バックに着いた覚えはないのだが……
まあなんか話が行き違ったのかな?
結果的にタシャウス王国とは友好条約を結べた。
同盟の一歩手前だ。
交流の無かった国といきなり条約締結は凄いことだ。
やっぱソーンは信頼できるなぁ。
転んでもただでは起きない男。さすがです。
その日の円卓会議には
ラムレス、モルト、ギル、ユーキンなんかのいつものメンバーに加え、
今回はウルエスト領からシーロとマリンカ、ケモズ領からウテル、
イース領からギャイン、マルヴァジア領からレオプリオ、
カサスから大臣のロンデム、ザサウスニア領の大臣ニアが参加した。
「では次年度の産業計画をオスカー様から」
ラムレスが山のような書物の間から声を上げる。
コホンと喉を鳴らし、俺は立ち上がった。
「今季からは一気に国土が広がり、人口も増えた。
しかしまだ戦争の傷は癒えていない。
冬ももうすぐそこまで来ているし、
ブリムス同盟の動向にも注意を向けねばならない。
ここにいる各領主、大臣のあなた達に、
この国の命運がかかっている。
今後もよろしく頼む」
みんなが真面目な顔で頷く。
「……では産業計画に移ろう。
まず鉄鋼業だが、国内のめぼしい鉱山およそ100か所を選定しておいた。
ここを順次開発してゆく。ガラスや金、銀、鉄、石灰、宝石類などが出るはずだ」
「人員はいます。計画通り進むかと」
ギルが補足してくれた。相変わらず儲け話になると目が光るな。
「そして銀行業を本格的に拡大させる。ジェリー商会主導で全国展開させる。
保険という制度を広く普及させる計画だ」
「これは画期的な制度ですな。いやはや楽しみです」
レオプリオは資料を読んで興奮している。うん、ありがとう。
「新聞、雑誌、製本などの産業は現在順調に広まっているが、
今後は規模を拡大、国外にも積極的に輸出させる。
そして各情報媒体に民間商会などの広告を掲載、
広告料を取り扱う商売をイース主導で広める」
ギャインはオレと目が合うと深く頷いた。
「あと建築関係だな。難民などもまだ多いので、
主要な町に国主導で建物を建てる。
賃料とって不動産運営だ」
「今度の王はご立派ですわね」
ザサウスニア領のばあちゃん大臣、ニアが澄ました顔で言う。
むむむ。これは本音か?皮肉か何かか?
表情が読み取れない。怖い。
「……食料はガラス温室を量産して、
酢漬け、オイル漬け、燻製や塩漬け、乾燥などの加工食品の量産。
本格的な冬が来る前に準備を終わらせろ」
「はい、仰せのままに」
ラムレスが書類の向こう側から声を上げた。
食い物の話だけ返事しやがって。
昨晩も厨房でマイヤー達と酒盛りしてただろ。
「あとは……イースとケモズの港で造船を開始する。
ウテル王、任せました」
「はい、お任せ下さい」
ああ紳士。そしてまとも。
「それと新製品、持ってきてくれ」
部屋にメイドのモカル、リンギオとキャディッシュが入ってきた。
みんな茶色のベストを着けている。
モカルは五着ほどの試作を円卓の上に置いた。
「ダウンベストだ。布と革の間に羽毛を入れた。
とんでもなく軽くて暖かいぞ。
これはファウスト商会主導で開発してゆく。
始めは兵士、それから一般国民に普及させていくつもりだ」
みんなが手に取り「ほう」とか「ふむ」とか「おお」とか言う。
「どうだ三人とも。着てみた感想は」
「暖かいです」
モカルは緊張した表情だ。
「動きやすいな。戦闘時も邪魔にならない」
リンギオは無表情で言い放つ。ああ……こいつは人が多い所が苦手だった。
「有翼人用に翼を考えての形、感動しました。
これは素晴らしい服ですね。
シーロ様もマリンカ様も着てみて下さい」
キャディッシュ……喜劇役者みたいな手の動きはなんだ。
この太鼓持ち野郎め。
会議は一番重要な十神教の話題に移った。
正式に聖地や寺院、階級などが決まった。
十神教の階級
【十神】 ユウリナ
【聖人】 オスカー、ネネル、クロエ、リリーナ。魔戦力
【神獣】 カカラル
【大神官】 一地方を統べる統治責任者。主に国の長や種族長。シーロ、ギャイン、ウテル、レオプリオ、マーハント、バルバレス、ミルコップ、ベミー、ミーズリーなど。教徒というより俺が信頼出来て国民からの支持が多い人物。
【神官】各寺院の責任者。
【僧侶】布教や葬儀、説法などを説く、信者との距離が一番近い役職。各寺院に十人ほど。
【一般教徒】
聖地はノーストリリアの大寺院〝ユウリレリア〟
これから宗教都市として改造してゆく。あとグルメ都市としても。
それ以外は連邦内に47の寺院を作る計画だ。
教徒は赤と灰色の法衣を着て、神書を片手に各寺院を巡礼して回る。
神書を要約するとこんな感じだ。
〝古代人が作りし火と鉄の力を継承する十人の神を崇め、
魔戦力を教義の柱と捉え、信者と空と大地を守る守り神として称える。
神書の教えを守り寺院にて礼拝をし続ければ、
魂の位を上げることができ、幸福が待っている。
また、死んでも十神の待つ世界、『ルクセリウス』に行ける〟
布教の一環として十神教徒は通行税や宿泊費が安くなり、
寺院での配給飯などが無料で受けられるようにした。
その効果もあり、現在、爆発的に信者が増えている。
ちなみに教祖様であるユウリナは、
現在マハルジラタン諸島に向かう船の中だ。
機械蜂の治療でだいぶ良くなっていたが、
しばらくは入院することになるだろう。
ガシャの樹の研究者であるヤホン氏は、
亡命という形で受け入れた。
これからじっくりと話しをしてもらおうと思う。
実は数日前、タシャウスの王、テミスと宰相のハンドロが、
ガラドレスに来訪した。
ソーンたちのおかげで内紛寸前だった王室を、
まとめ上げることが出来たと感謝された。
厄介な妃の弟を排除するにあたって、
キトゥルセンが国王派のバックについたというのが決め手になったらしい。
バックに着いた覚えはないのだが……
まあなんか話が行き違ったのかな?
結果的にタシャウス王国とは友好条約を結べた。
同盟の一歩手前だ。
交流の無かった国といきなり条約締結は凄いことだ。
やっぱソーンは信頼できるなぁ。
転んでもただでは起きない男。さすがです。
その日の円卓会議には
ラムレス、モルト、ギル、ユーキンなんかのいつものメンバーに加え、
今回はウルエスト領からシーロとマリンカ、ケモズ領からウテル、
イース領からギャイン、マルヴァジア領からレオプリオ、
カサスから大臣のロンデム、ザサウスニア領の大臣ニアが参加した。
「では次年度の産業計画をオスカー様から」
ラムレスが山のような書物の間から声を上げる。
コホンと喉を鳴らし、俺は立ち上がった。
「今季からは一気に国土が広がり、人口も増えた。
しかしまだ戦争の傷は癒えていない。
冬ももうすぐそこまで来ているし、
ブリムス同盟の動向にも注意を向けねばならない。
ここにいる各領主、大臣のあなた達に、
この国の命運がかかっている。
今後もよろしく頼む」
みんなが真面目な顔で頷く。
「……では産業計画に移ろう。
まず鉄鋼業だが、国内のめぼしい鉱山およそ100か所を選定しておいた。
ここを順次開発してゆく。ガラスや金、銀、鉄、石灰、宝石類などが出るはずだ」
「人員はいます。計画通り進むかと」
ギルが補足してくれた。相変わらず儲け話になると目が光るな。
「そして銀行業を本格的に拡大させる。ジェリー商会主導で全国展開させる。
保険という制度を広く普及させる計画だ」
「これは画期的な制度ですな。いやはや楽しみです」
レオプリオは資料を読んで興奮している。うん、ありがとう。
「新聞、雑誌、製本などの産業は現在順調に広まっているが、
今後は規模を拡大、国外にも積極的に輸出させる。
そして各情報媒体に民間商会などの広告を掲載、
広告料を取り扱う商売をイース主導で広める」
ギャインはオレと目が合うと深く頷いた。
「あと建築関係だな。難民などもまだ多いので、
主要な町に国主導で建物を建てる。
賃料とって不動産運営だ」
「今度の王はご立派ですわね」
ザサウスニア領のばあちゃん大臣、ニアが澄ました顔で言う。
むむむ。これは本音か?皮肉か何かか?
表情が読み取れない。怖い。
「……食料はガラス温室を量産して、
酢漬け、オイル漬け、燻製や塩漬け、乾燥などの加工食品の量産。
本格的な冬が来る前に準備を終わらせろ」
「はい、仰せのままに」
ラムレスが書類の向こう側から声を上げた。
食い物の話だけ返事しやがって。
昨晩も厨房でマイヤー達と酒盛りしてただろ。
「あとは……イースとケモズの港で造船を開始する。
ウテル王、任せました」
「はい、お任せ下さい」
ああ紳士。そしてまとも。
「それと新製品、持ってきてくれ」
部屋にメイドのモカル、リンギオとキャディッシュが入ってきた。
みんな茶色のベストを着けている。
モカルは五着ほどの試作を円卓の上に置いた。
「ダウンベストだ。布と革の間に羽毛を入れた。
とんでもなく軽くて暖かいぞ。
これはファウスト商会主導で開発してゆく。
始めは兵士、それから一般国民に普及させていくつもりだ」
みんなが手に取り「ほう」とか「ふむ」とか「おお」とか言う。
「どうだ三人とも。着てみた感想は」
「暖かいです」
モカルは緊張した表情だ。
「動きやすいな。戦闘時も邪魔にならない」
リンギオは無表情で言い放つ。ああ……こいつは人が多い所が苦手だった。
「有翼人用に翼を考えての形、感動しました。
これは素晴らしい服ですね。
シーロ様もマリンカ様も着てみて下さい」
キャディッシュ……喜劇役者みたいな手の動きはなんだ。
この太鼓持ち野郎め。
会議は一番重要な十神教の話題に移った。
正式に聖地や寺院、階級などが決まった。
十神教の階級
【十神】 ユウリナ
【聖人】 オスカー、ネネル、クロエ、リリーナ。魔戦力
【神獣】 カカラル
【大神官】 一地方を統べる統治責任者。主に国の長や種族長。シーロ、ギャイン、ウテル、レオプリオ、マーハント、バルバレス、ミルコップ、ベミー、ミーズリーなど。教徒というより俺が信頼出来て国民からの支持が多い人物。
【神官】各寺院の責任者。
【僧侶】布教や葬儀、説法などを説く、信者との距離が一番近い役職。各寺院に十人ほど。
【一般教徒】
聖地はノーストリリアの大寺院〝ユウリレリア〟
これから宗教都市として改造してゆく。あとグルメ都市としても。
それ以外は連邦内に47の寺院を作る計画だ。
教徒は赤と灰色の法衣を着て、神書を片手に各寺院を巡礼して回る。
神書を要約するとこんな感じだ。
〝古代人が作りし火と鉄の力を継承する十人の神を崇め、
魔戦力を教義の柱と捉え、信者と空と大地を守る守り神として称える。
神書の教えを守り寺院にて礼拝をし続ければ、
魂の位を上げることができ、幸福が待っている。
また、死んでも十神の待つ世界、『ルクセリウス』に行ける〟
布教の一環として十神教徒は通行税や宿泊費が安くなり、
寺院での配給飯などが無料で受けられるようにした。
その効果もあり、現在、爆発的に信者が増えている。
ちなみに教祖様であるユウリナは、
現在マハルジラタン諸島に向かう船の中だ。
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