【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一

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第四章

第165話 タシャウス王国編 ドラグルを乗せて

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ダリナは語る。



「私……私の家系は……何代も前から早死にする運命なんです。



母は私を産んで1年経たずに死にました。19歳でした。



うちの家系はみんな20歳前後で死んでしまうんです。



……きっとご先祖様が何かの呪いにかけられたんだろうって」



予想外の言葉にソーンは面食らった。



「……今、ダリナは何歳になった?」



「……15歳です」



呪いではない……病気だ。ソーンには分かった。



世界中の医術を見てきた感想だ。



「医術師には?」



「見てもらいましたが、異常はないと……」



なんと残酷な運命か……。



「帰ったらわしからオスカー様に聞いてみよう。



あのお方は不思議な力を持っておる。



きっと何か解決策を見つけて下さるはず」



ダリナは視線を下に落とした。



「ありがとうございます。



でも……いいんです。私もう受け止めてますから。



ルガクト様もネネル様も、私の家系の事知っていて……



だから、私だけ早送りの人生を許されているんです。



12歳で軍にも入れましたし……



今回も、広い世界を見てきなさいってネネル様が言って下さったんです。



だから……みんなより少し短い人生だけど、



私は……幸せです」



ソーンは目を瞑った。



何とかできぬものか……。



その時、食堂に甲冑を着けた兵士が入ってきた。



6人ほどいる。レジュ自治区の兵だ。



「我々は青砂街道で起きた殺人事件を追っている。



有翼人の女と剣士を見たものはおらんか!」



「部屋へ戻るぞ」



二人はさりげなく食堂を後にし、階段を上がる。



部屋に入ると魔人の少年は既に目を覚ましていて、



窓の外をおびえた様子で覗いていた。



「あ、起きた」



「あ……あなたはあの時の……」



ソーンは口に手をやり、静かにと囁いた。



「た、助けてくれてありがとう。ここはどこ?



あの兵士達は? 俺もう行かなくちゃ……」



少年は不安そうだった。



「まあ、落ち着け。ここはレジュ、



あの兵士はおぬしとわしらを探している。



そう言えば、おぬし名前は?」



「俺は……ドラグル」



「そうか。わしはソーン。こっちはダリナじゃ」



「よろしくね、ドラグル」



ドラグルはダリナに少し緊張している。



「よく聞くんじゃ二人共。



じきに下の兵たちがここまで来る。



ダリナ、お前はドラグルを乗せて屋上から空へ逃げるんじゃ。



合流場所はタシャウス北門前のブエナ遺跡、わかったな?」



「は、はい。けどソーンさんは?」



「わしの事は心配するな」







ソーンたちは二手に分かれた。



厨房の裏口から外に出たソーンは細い路地へと入っていった。



町の至る所から兵士の気配がする。



「おい、そこの男、止まれ」



後ろから兵士の声が響く。角を曲がった際に素早く人数を確認。



8人以上……。ちと厳しいか。



ソーンは外套の金具を取り外し掌に載せた。



金具は形を変え、機械蜂になる。



「あの塀がよさそうじゃな……」



速足で進んでいると、このあたりに住んでいる若い夫婦が、



ソーンを見て「ひい」と言い路地に引っ込んだ。



「すまんの。早くここから離れるんじゃ」



狭い路地の崩れ掛けた塀を通り過ぎた所で、



機械蜂をその場に待機させる。



ソーンが次の角を曲がった時、



爆発音が上がった。



角から顔を出して確認すると塀が崩れ道が塞がっていた。



「ふむ、上出来じゃ」



ソーンは素早く身を翻し、路地に消えた。









「すっげー! 有翼人はいいなー。いつもこんな景色見てるんだろ?」



ダリナの背中に乗っているドラグルは眼下の青砂街道を見て、



興奮した様子だった。



「ドラグルはどこで生まれたの?」



「俺? 俺はカサスのはずれの農村生まれだ」



「カサス生まれなの? じゃあキトゥルセン連邦の人間じゃない」



「……いやでも生まれてすぐにタシャウスの貴族に引き取られたんだ。



だから親の顔も知らない……生きてるのか死んでるのかも」



少しテンションが下がった。



「そう……タシャウス人なんだ……。私たちもそこに行くのよ」



「ほんとに? 何しに行くんだ?」



「ガシャの根が祭られてる寺院に行くの」



「ああ、バシューダン寺院ね。観光かー。



皆あそこ行くんだよな」



小さな村が3つ過ぎ去る。



「……ねえ、ドラグルはなんであそこにいて、誰から逃げてたの?」



少しの沈黙のあと、幾分小さくなった声でドラグルは口を開いた。



「俺……魔人なんだ。体を石化出来る……石人間だ」



「うん、見てた」



「子供だからさ、ああいう輩によく狙われるんだよ。



どっかに高く売れるんだろ、どうせ」



ドラグルは自嘲気味に吐き捨てた。



「能力使うとすぐ強烈な睡魔が襲ってくるんだ。



寝てる間に捕まったら知らない間に売られちゃうからさ、



あんまり能力使いたくないんだよな」



「……そう」



ダリナは思い返していた。



あの夜盗を相手した時、ドラグルは何の迷いもなく全員を殺した。



ああいった場面に慣れているとかの問題じゃない。



兵士の心を持っていないとできない芸当だ。



しかし、そんなことは直接言えない。



「ねえダリナ、重くない? 休憩しようよ。



あそこの川のほとりとかでさ」



「え、いいよ。もう少し飛べるし……」



「だめだめ。さっきより高度が落ちてるし、



俺、ダリナの事好きになっちゃったからもっと話したいんだ」



頭が真っ白になった。今何を……。



「ななななにを言ってるのののよ! 



もう、私の方がお姉さんなんだからからかわないでよ!」



ダリナは顔を真っ赤にしながら平静を装った。



「ん? なんかすごい身体熱いけど大丈夫?」



「え! だ、大丈夫よ! か、顔が近い!」

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