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第三章
第133話 古代浮遊遺跡
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ザサウスニアの遥か上空。
巨大な雲の中にそれはあった。
朽ち果てた町は森に覆われ、
そこには独自に進化した白い羽の生えた昆虫や、
地上では見かけない変わった小動物が生息していた。
雲の隙間から見えるのは、
何万年も前から空をさまよっている、古代浮遊遺跡だ。
長方形の巨大なタンクのような物が4本並んだ土台の上に、
森が広がっており、その中心に崩れかけた都市の遺跡が見える。
一番長いところで4キロ、幅も2キロ弱はあるだろう。
森の中の川や池には小魚が光り、
その上を小指竜の群れが旋回し、獲物を狙っている。
池のほとりには複数の煙が上がっていた。
黒い甲冑を着けた有翼人兵たちだ。
焚火を囲んで野営している。
旗には〝ハイガー旅団〟のマーク。
「だー! 危なかったー!!!」
石段に座っていたザヤネが急に叫んだ。
「駄目だったか?」
水を持って来たのはリアムだ。
肩で息をするザヤネは眉間にしわを寄せ、厳しい表情だ。
「なんて奴なの……普通自分に能力使う? しかも全力で……」
「〝穴〟は無事なのか?」
「うーん、わかりません。これ結構集中しないと出来ないからまた今度ですね……」
ザヤネはリアムから水を受け取った。
「まあいい。簡単にやれるとは思っていないからな」
「え、ちょっと、リアムさん、それどういう意味ですか?
私じゃ雷魔を相手できないと?
むこうはギカク化もコントロールできないんですよ?
私の方が強いに決まってるじゃないですか!
大体コレやれって言ったのはリアムさんですよね?
キトゥルセンの方が後々優勢になるから魔戦力削るって。
私は言われたことやってるだけなのになんで……
何を笑ってんですか!」
リアムは苦笑しながらザヤネを宥めた。
「よく喋るな、ザヤネ。
不安だからよく口が動くんだろ」
「あ、ムカつく。もう私次の料理当番やりませんから」
頬を膨らませたザヤネに「それとこれとは話が別だ」
とハイガーが言った。
「お前のおむつを替えてやったのは誰だ?
俺とリアムさんがお前を引き取らなかったら死んでたんだぞ?
昔は可愛かったのに……いつの間にこんなわがまま娘になっちまったんだ?」
ザヤネは顔を赤くしながらも
「それは知ってるけどさ……お、おむつとか……
二十歳の女の子にそういう事言わないでしょ普通……」とつぶやいた。
ネネルに消されたはずの右手はなぜか黒い手袋に覆われて復活していた。
「それにしても結局キトゥルセンの魔戦力は1つも始末できなかったな。
私もオスカー王子の暗殺に失敗してしまったし……
戦力を調節するという生半可な姿勢じゃ通用しない相手だったということか」
リアムは近くの丸太に腰を下ろした。
「それにしちゃリアム様、あまり焦ってないように見えますよ」
ハイガーは部下から焼き魚を受け取った。
「まあな。目的は双方の戦力を削る事。どっちが勝つかは重要ではない」
「確かにザサウスニアの残る魔戦力はあの〝ゴッサリア・エンタリオン〟ですからね。
下手したら彼一人でキトゥルセンを滅ぼせるかも」
「……なんかその名前聞いた事あるなぁ……」
ザヤネは首をひねった。
「有名な魔剣使いだ。数年前、我が騎士団も2名やられ、
以後手を出せていない。
彼は〝境壊〟を会得している。とても厄介だ」
「へー珍しい。私がやりたくなっちゃった」
「一見キトゥルセンが優勢に見えるが、
まだまだ戦況は分からないということだよ」
「〝あいつ〟もいますしね」
ハイガーは後ろを指さす。
朽ちた古代の町の中心にはすり鉢状の大きな穴が開いていた。
穴の淵にはハイガーの部下たちが配置されている。
その穴の底には古代文明の拘束具を付けられた巨大な腐王がいた。
「連戦連勝のキトゥルセン軍だが……
こいつを軍の真ん中に落としたら、一体どうなるんだろうな」
「……リアムさん、悪い顔してるぅー」
ザヤネはリアムの腕を突っついた。
「ふっ、そんなことはない。私はただ仕事をしてるだけだ」
浮遊遺跡に腐王の鳴き声が響く。
巨大な雲の中にそれはあった。
朽ち果てた町は森に覆われ、
そこには独自に進化した白い羽の生えた昆虫や、
地上では見かけない変わった小動物が生息していた。
雲の隙間から見えるのは、
何万年も前から空をさまよっている、古代浮遊遺跡だ。
長方形の巨大なタンクのような物が4本並んだ土台の上に、
森が広がっており、その中心に崩れかけた都市の遺跡が見える。
一番長いところで4キロ、幅も2キロ弱はあるだろう。
森の中の川や池には小魚が光り、
その上を小指竜の群れが旋回し、獲物を狙っている。
池のほとりには複数の煙が上がっていた。
黒い甲冑を着けた有翼人兵たちだ。
焚火を囲んで野営している。
旗には〝ハイガー旅団〟のマーク。
「だー! 危なかったー!!!」
石段に座っていたザヤネが急に叫んだ。
「駄目だったか?」
水を持って来たのはリアムだ。
肩で息をするザヤネは眉間にしわを寄せ、厳しい表情だ。
「なんて奴なの……普通自分に能力使う? しかも全力で……」
「〝穴〟は無事なのか?」
「うーん、わかりません。これ結構集中しないと出来ないからまた今度ですね……」
ザヤネはリアムから水を受け取った。
「まあいい。簡単にやれるとは思っていないからな」
「え、ちょっと、リアムさん、それどういう意味ですか?
私じゃ雷魔を相手できないと?
むこうはギカク化もコントロールできないんですよ?
私の方が強いに決まってるじゃないですか!
大体コレやれって言ったのはリアムさんですよね?
キトゥルセンの方が後々優勢になるから魔戦力削るって。
私は言われたことやってるだけなのになんで……
何を笑ってんですか!」
リアムは苦笑しながらザヤネを宥めた。
「よく喋るな、ザヤネ。
不安だからよく口が動くんだろ」
「あ、ムカつく。もう私次の料理当番やりませんから」
頬を膨らませたザヤネに「それとこれとは話が別だ」
とハイガーが言った。
「お前のおむつを替えてやったのは誰だ?
俺とリアムさんがお前を引き取らなかったら死んでたんだぞ?
昔は可愛かったのに……いつの間にこんなわがまま娘になっちまったんだ?」
ザヤネは顔を赤くしながらも
「それは知ってるけどさ……お、おむつとか……
二十歳の女の子にそういう事言わないでしょ普通……」とつぶやいた。
ネネルに消されたはずの右手はなぜか黒い手袋に覆われて復活していた。
「それにしても結局キトゥルセンの魔戦力は1つも始末できなかったな。
私もオスカー王子の暗殺に失敗してしまったし……
戦力を調節するという生半可な姿勢じゃ通用しない相手だったということか」
リアムは近くの丸太に腰を下ろした。
「それにしちゃリアム様、あまり焦ってないように見えますよ」
ハイガーは部下から焼き魚を受け取った。
「まあな。目的は双方の戦力を削る事。どっちが勝つかは重要ではない」
「確かにザサウスニアの残る魔戦力はあの〝ゴッサリア・エンタリオン〟ですからね。
下手したら彼一人でキトゥルセンを滅ぼせるかも」
「……なんかその名前聞いた事あるなぁ……」
ザヤネは首をひねった。
「有名な魔剣使いだ。数年前、我が騎士団も2名やられ、
以後手を出せていない。
彼は〝境壊〟を会得している。とても厄介だ」
「へー珍しい。私がやりたくなっちゃった」
「一見キトゥルセンが優勢に見えるが、
まだまだ戦況は分からないということだよ」
「〝あいつ〟もいますしね」
ハイガーは後ろを指さす。
朽ちた古代の町の中心にはすり鉢状の大きな穴が開いていた。
穴の淵にはハイガーの部下たちが配置されている。
その穴の底には古代文明の拘束具を付けられた巨大な腐王がいた。
「連戦連勝のキトゥルセン軍だが……
こいつを軍の真ん中に落としたら、一体どうなるんだろうな」
「……リアムさん、悪い顔してるぅー」
ザヤネはリアムの腕を突っついた。
「ふっ、そんなことはない。私はただ仕事をしてるだけだ」
浮遊遺跡に腐王の鳴き声が響く。
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