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第2章
第99話 コマザ村、襲撃
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拳闘大会から1か月後。
国内最南端の村、
コマザ村が襲撃されたとの一報に城内は騒然になった。
俺はすぐさま千里眼でコマザ村を見た。
村は焼け、温室や家畜小屋などはことごとく破壊されていた。
至る所に村人の死体が転がっていた。
『マーハント、聞こえるか?』
ユウリナに頼んで、軍団長全員にはチップを埋め込んである。
脳内チップ経由で、
旧【腐樹の森】近くの駐屯地にいたマーハントに呼びかける。
『はい、オスカー様』
『至急全軍を率いてコマザ村へ迎え』
『了解しました』
ザサウスニアの襲撃。そうとしか考えられない。
村内の兵は?
もう一度千里眼で見てみる。
コマザ村の駐屯地には常時50名の兵を配置しておいた。
だめだ、全て焼かれている……全滅だ。
くそ、なぜ気が付かなかったんだ……。
「ダカユキー、50名完全装備で中庭に待機」
「はっ!」
『ネネル!! すぐに全軍で王都へ来てくれ!』
『わかったけど……何があったの?』
『コマザ村が襲撃された』
『……ッ!! ザサウスニア?』
『だとしたら戦争だな……』
コマザ村はおれが育った村だ。
孤児院もあるし、知り合いだって……。
気が付けば痛いほど拳を握りしめていた。
『ユウリナ、今すぐありったけの機械蜂を南の国境付近に飛ばして、
監視を始めてくれ』
『了解。事情は聞いタわ。
とりあえず40匹ヲ送る。今からもっと量産シとく』
その後、俺は輸送用馬車の手配をラムレスに指示し、
マイヤーに500人分×3日間の食料を手配させ、
アーカム家が運営する大病院に負傷者の受け入れ準備と、
従軍医術師の手配をお願いした。
コマザ村は焦土と化していた。
目につく全ての物が炭となり、いまだ至る所で炎が燻ぶっている。
マーハント軍は生存者探し、
ネネル軍には王都や周辺の村からの物資運搬、
そして広範囲を空から哨戒させた。
ユウリナの機械蜂が国境付近にあらかた散らばり、
視界のディスプレイで選択すると蜂からの映像がリアルタイムで見れた。
全ての映像を確認したが、ザサウスニア帝国の影は見当たらなかった。
俺は無言のまま荒れ果てた道を歩いた。
小さな頃の記憶が蘇る。
まっすぐ行けば村で一番大きな通りに出る。
あの頃は鍛冶屋、革屋、八百屋、宿屋なんかが並んでたっけ……。
道端で燃えている炎を魔剣フラレウムで吸収して歩く。
黒い炭の塊が至る所に転がっている。村人だ。
血の気が引いていく。
耳も水の中にいるみたいに音が籠って聞こえる。
俺の視界の至る所で兵士が生存者を探していた。
右側ではまだ燃えている家の炎をクロエが片っ端から凍らせている。
左側では一人の兵士が死体の前で泣いていた。
見覚えがあると思ったらアルトゥールだった。
知り合いだろうか。
悪いがこちらも気持ちに余裕がないので素通りした。
しばらく歩き、孤児院だった建物についた。
俺が育った場所だ。
使いたくなかった。
だがそうも言っていられない。
俺は千里眼で半壊した建物を透視した。
案の定、倒壊した瓦礫の下に複数の子供の死体を見つけた。
頭が真っ白になる。
そして……見つけてしまった。
いないでほしいと願ったが、現実は残酷だった。
幼少期の俺を育ててくれたサユちゃんの死体がそこにはあった。
「オスカー様、危ないです」
キャディッシュか誰かの声がしたが、構わず瓦礫の中を進んだ。
体のほとんどを瓦礫に潰され、肩から上しか見えなかった。
30代になってもサユちゃんは美人のままだった。
顔の半分が炭になっていても美人のままだった。
俺の初恋の人。
涙で視界がぼやけ、嗚咽が止まらなかった。
俺は真っ黒に焼け爛れたサユちゃんの手を握り、
日が暮れるまでその場を離れられなかった。
国内最南端の村、
コマザ村が襲撃されたとの一報に城内は騒然になった。
俺はすぐさま千里眼でコマザ村を見た。
村は焼け、温室や家畜小屋などはことごとく破壊されていた。
至る所に村人の死体が転がっていた。
『マーハント、聞こえるか?』
ユウリナに頼んで、軍団長全員にはチップを埋め込んである。
脳内チップ経由で、
旧【腐樹の森】近くの駐屯地にいたマーハントに呼びかける。
『はい、オスカー様』
『至急全軍を率いてコマザ村へ迎え』
『了解しました』
ザサウスニアの襲撃。そうとしか考えられない。
村内の兵は?
もう一度千里眼で見てみる。
コマザ村の駐屯地には常時50名の兵を配置しておいた。
だめだ、全て焼かれている……全滅だ。
くそ、なぜ気が付かなかったんだ……。
「ダカユキー、50名完全装備で中庭に待機」
「はっ!」
『ネネル!! すぐに全軍で王都へ来てくれ!』
『わかったけど……何があったの?』
『コマザ村が襲撃された』
『……ッ!! ザサウスニア?』
『だとしたら戦争だな……』
コマザ村はおれが育った村だ。
孤児院もあるし、知り合いだって……。
気が付けば痛いほど拳を握りしめていた。
『ユウリナ、今すぐありったけの機械蜂を南の国境付近に飛ばして、
監視を始めてくれ』
『了解。事情は聞いタわ。
とりあえず40匹ヲ送る。今からもっと量産シとく』
その後、俺は輸送用馬車の手配をラムレスに指示し、
マイヤーに500人分×3日間の食料を手配させ、
アーカム家が運営する大病院に負傷者の受け入れ準備と、
従軍医術師の手配をお願いした。
コマザ村は焦土と化していた。
目につく全ての物が炭となり、いまだ至る所で炎が燻ぶっている。
マーハント軍は生存者探し、
ネネル軍には王都や周辺の村からの物資運搬、
そして広範囲を空から哨戒させた。
ユウリナの機械蜂が国境付近にあらかた散らばり、
視界のディスプレイで選択すると蜂からの映像がリアルタイムで見れた。
全ての映像を確認したが、ザサウスニア帝国の影は見当たらなかった。
俺は無言のまま荒れ果てた道を歩いた。
小さな頃の記憶が蘇る。
まっすぐ行けば村で一番大きな通りに出る。
あの頃は鍛冶屋、革屋、八百屋、宿屋なんかが並んでたっけ……。
道端で燃えている炎を魔剣フラレウムで吸収して歩く。
黒い炭の塊が至る所に転がっている。村人だ。
血の気が引いていく。
耳も水の中にいるみたいに音が籠って聞こえる。
俺の視界の至る所で兵士が生存者を探していた。
右側ではまだ燃えている家の炎をクロエが片っ端から凍らせている。
左側では一人の兵士が死体の前で泣いていた。
見覚えがあると思ったらアルトゥールだった。
知り合いだろうか。
悪いがこちらも気持ちに余裕がないので素通りした。
しばらく歩き、孤児院だった建物についた。
俺が育った場所だ。
使いたくなかった。
だがそうも言っていられない。
俺は千里眼で半壊した建物を透視した。
案の定、倒壊した瓦礫の下に複数の子供の死体を見つけた。
頭が真っ白になる。
そして……見つけてしまった。
いないでほしいと願ったが、現実は残酷だった。
幼少期の俺を育ててくれたサユちゃんの死体がそこにはあった。
「オスカー様、危ないです」
キャディッシュか誰かの声がしたが、構わず瓦礫の中を進んだ。
体のほとんどを瓦礫に潰され、肩から上しか見えなかった。
30代になってもサユちゃんは美人のままだった。
顔の半分が炭になっていても美人のままだった。
俺の初恋の人。
涙で視界がぼやけ、嗚咽が止まらなかった。
俺は真っ黒に焼け爛れたサユちゃんの手を握り、
日が暮れるまでその場を離れられなかった。
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