【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一

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第2章 

第93話 イース公国攻略編 準々決勝第一、第二試合

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準々決勝、第一試合
バルバレスvsミルコップ

両者がリングに出てきた。

見事な肉体が二つ。

同じくらいの体躯で一方は軍の総大将、もう一方は元国王。

ネームバリューじゃ事実上の決勝戦といったところだ。

観客の声援が凄まじい。

そう言えば実際二人の関係性ってどうなってんだろ。

仲いいのかな? 悪いのかな?

試合が始まるとバルバレスが距離を詰めていく。

それに対してミルコップは一定の距離を保ちたいようで後ろに下がる。

たまに不意打ちのミドルキック。

バルバレスもうまくガードしながら強烈なパンチを繰り出す。

お互いいいのが数発入っているが、ダウンまでには及ばない。

バルバレスの高精度な全力右フック対ミルコップの破壊力抜群ハイキック、

どちらも当たれば一発で試合が終わる。

二人とも警戒し合っているのでガードが堅い。

第1ラウンドが終わる直前、

組み合った一瞬の隙をついてバルバレスの強烈なアッパーが入った。

ミルコップ1ダウン。

第2ラウンドが始まるとすぐにミルコップが攻勢を仕掛けた。

不利な状況を覆そうと全力を出した感じだ。

顔面を狙ったワンツーにミドルキックを合わせたコンビネーションを繰り返し、

バルバレスを追い詰める。

何発もミルコップにカウンターが入るが、

どれもインパクトが弱いのでダメージは少ない。

反対に会場全体に肉を打つ音が響くほどの猛攻がバルバレスに襲い掛かる。

あとがないミルコップはリスクを取って前に出ている。

気持ちの差がこの瞬間の戦いに出ていた。

やがてバルバレスは耐えられず顔面に全力のハイキックを貰ってダウンした。

試合が再開しても勢いがついたミルコップの猛攻は止まらない。

バルバレスは血だらけでフラフラだった。

体力の消耗を抑えるため、

バルバレスはミルコップをグラウンドに引きずり込んだが、それが裏目に出た。

バルバレスはひっくり返され、

脳天に膝蹴りを5発も食らい2回目のダウンを期した。

誰もが立ち上がれず、もう試合は終わったと思っていたが、

バルバレスはカウント9でむくりと立ち上がり、

ファイティングポーズを取った。

第2ラウンドは大喝采のまま終わった。

第3ラウンド開始早々バルバレスのいいパンチがこめかみに入り、

ミルコップはふらついた。

すかさずグラウンドに引きずり込んだバルバレスはマウントを取り、

顔面に乱打を浴びせる。

最初は防いでいたミルコップも岩のような拳の威力に屈し、

クリンチで逃れた。

進展がないので審判のルガクトがブレイクさせ、

リングの中央で再び打ち合いが始まった。

今度はミルコップがピンチだった。

残る気力全てを込めた全力の拳で襲い掛かるバルバレスに成す術がない。

ボディに集中していた拳を防ぐためガードを下げていた隙を突かれ、

顔面にキレイな一発が入った。

ミルコップの巨体が地面に沈む。

何とか起き上がったミルコップは試合終了までの間に立て直し、

最後は壮絶な打ち合いのまま終わった。

判定はルガクトに託された。

「準々決勝、第一試合、勝者…………バルバレス・エメリア!!」

観客は拍手喝采、バルバレスもミルコップも血みどろで笑い合っていた。

勝負はほんとに僅差だったな。

ほぼ互角で、もう一回戦ったらミルコップが勝つかもしれない。

ていうかほんと戦うの好きね、こいつら。

でも二人とも清々しくて気持ちよさそうだった。



準々決勝、第二試合
ベミーvsミーズリー


この試合は拳の戦いだった。

前回の試合のダメージが残るベミーとほとんどないミーズリー。

一般人相手なら獣人の持つ身体能力の分、

ダメージもハンデになり得たかもしれないが、

数百、数千の軍の頂点に立つ将軍はもはや人間ではない場合が多いので、

ベミーの不利に変わりはなさそうだった。

試合が始まってすぐ、ミーズリーの強さに全員が唸った。

剣技でもそうだったが、目の良さと間合いの取り方が異次元なのだ。

まさかミーズリーも千里眼使えるわけじゃないよね? って疑うレベル。

加えて大きな体躯から繰り出される強烈な拳と足技で、

速さで翻弄するベミーの攻撃を躱しながら丁寧に一発ずつ入れていく。

わき腹を蹴られて吹っ飛んだベミーは起き上がれず早々にダウンを貰った。

試合は同じような展開で第3ラウンドまで進んだ。

年齢の経験が出た試合内容……今のベミーにはこの猪突猛進なスタイルしかなく、

徐々に削られてボロボロな姿は痛々しかったが、彼女は決して諦めなかった。

そして試合終了間際、

変わらず突っ込んだベミーは力尽きたのか、

途中で転んでミーズリーの足元まで転がった。

途中から手加減していたミーズリーはさすがにもう攻撃をしなかった。

ルガクトが試合を終わらせようと近づいた瞬間、

ベミーは急に立ち上がり、ミーズリーの腹に渾身の拳を叩き込んだ。

油断していたミーズリーはその威力で体が浮くほどで、たまらず膝をついた。

いたずらっぽい笑みを浮かべたベミーはそのまま大の字に倒れ、気を失った。

「準々決勝、第二試合、勝者ミーズリー・グランツ!!」

最後はまるで悪戯小僧だ。だが一矢報いたことには変わりない。

武人たちは卑怯とも思っていないだろう。

戦場だったらミーズリーは死んでいた。

ベミーの執念深さにミーズリーもしてやられたといった表情だった。

なんともベミーっぽい試合だったな。

けどベミーは正直〝狂戦士化〟があるから、

負けてもプライドは傷つかないのだろうな。

何と言ったってネネル、クロエのギカク化や、

ユウリナの戦闘形態時とほぼ同等だ。

その心の余裕が最後の悪あがきにつながったのかもしれない。

一度でいいからその4人のトーナメントが見てみたい。

……いやバカか、俺。

国が崩壊するわ。

やめよやめよ。

怖い怖い。
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