【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一

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第2章 

第71話 ケモズ共和国攻略編 生命の部屋

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戦闘用の人型機械の先頭にいるのはこの船の管理者か。

「イキノイイノガ沢山イマスネ」

機械たちは入ってくるなり端々にまで広がり、子アルウネアを狩り始めた。

当然、機械に毒は効かない。

保守機械は細い鉄製ワイヤーに仕留めた子アルウネアの腹を通していく。

「うわ……残酷なことするなぁ」

キャディッシュがドン引くのも分かる。まだ生きている子アルウネアもいて、

機械たちに引きずられながらピクピクと足を動かしていた。

「一旦退くぞ!」

後ろからレーザーが飛んでくる。

三つ巴の混戦。この中で一番非力なのは人間だ。

せっかく隊列を組んで戦いを有利に進めていたところなのに……。

隣を走る兵士の頭がレーザーで消し飛んだ。

「クロエッ!!」

「分かってる!」

最後尾のクロエが振り返り手をかざす。

パキパキと周囲の空気が凍り、数秒で区画を分断する氷の壁が出現した。

「相当分厚くしたけど、あんまり長くはもたないよ」

「わずかな時間でも稼げればいい。ありがとう、クロエ」

かなりの力を使ったようで、ふらつくクロエはリンギオの肩を借りて進んだ。



たどり着いた区画は大きなガラス管がズラリと並んだ異質な部屋だった。

「何だここは……?」

ベミーは興味津々で落ち着きがない。

「何かを育てていたのか……?」

「ソンナ感ジネ」

千里眼で追手を見てみる。氷の壁は破られていた。

しかし、アルウネア達を襲っているので歩みは遅かった。

アルウネア達は逃げながらも数体の保守機械を破壊している。

だが確実にこちらに向かって来ている保守機械もいる。

……まだ少しは時間がありそうだ。

「ユウリナ、あと何体破壊出来る?」

「残リエネルギーハ11%……2体ハ確実ニ破壊出来ルワ」

厳しい。クロエも回復してないし。……隊を二手に分けるか。

「ここは俺に任せて、全員進んでくれ」

「な、何をおっしゃる……! あなたが死んだらこの国は終わりなんですよ!」

「俺はこんなところでは死なない」

声を上げたキャディッシュと、俺は数秒睨み合った。

やがて目を瞑ったキャディッシュはため息交じりに首を振った。

「分かりました。何か策がおありですね? 

ただせめて誰かを傍に置いて下さい。じゃないと我々が安心できません」

「ああ。じゃあユウリナ、クロエ、キャディッシュはルレ隊と共に王女の救出に向かってくれ。

ユウリナ、場所は分かるか?」

「マークシテルワ」

ルレ隊は20人を切った。

キャディッシュもぼろぼろだし、ユウリナとクロエは体力が尽きようとしている。

「ベミー、頼んだぞ。お前が頼りだ」

「言われなくても分かってるよ。王女は親友なんだ」

ベミーは頼られている事が嬉しいようで、へへん! と鼻を擦った。

一番ダメージが少ないリンギオを残し、残りはこの区画の外に出発した。

ユウリナは去り際、リンギオに保守機械から姿が見えなくなるマントを手渡された。

見た目はカーキ色の分厚い布だが、素材は金属だという。

話を聞くと探知波を妨害する、いわばステルス迷彩のようなものらしい。

俺には? あ、ないの? 一つしか作れなかった? 魔剣扱えるくせに強欲だって?

それを言われちゃあなんも言えません。

それともう一つ。保守機械の腕を改造したレーザー兵器もリンギオに渡した。

ユウリナ曰く、パッと作ったから1発しか撃てないとのこと。

いいなぁ、リンギオ。ス〇ークかよ。


俺とリンギオはこの区画を少し歩き、使えそうなものを物色した。

その間も定期的に千里眼で追手を確認していた。

もう後数分で侵入してくるだろう。

ここはどうやら何かの実験施設だったみたいだ。

廃墟と化しているが実験施設あるいは工場だったことが容易に想像できる。

一ヵ所だけ新しい壁に覆われた部屋があった。

千里眼で見てみると大きなガラス管が十本ほど並び、

水で満たされた中には、角の生えた大きな人型の化け物が眠っていた。

指がぴくぴくと動いている。

どうやらシステムが生きているようで、機械の照明や維持機械が駆動していた。

ここで人工生命体を作り続けてるのか……?

この船の管理者は一体何をするつもりなんだ……。

その部屋は開けないことにした。


俺たちは一段高い何かの装置の上に上った。

そろそろ保守機械がやってくる。

アルウネア達と削り合ってくれたので結構数が減っていた。

やはり退いたのは正解だったな。

「で、王子。作戦は? 国の指導者が自ら捨て駒になるなんて前代未聞だぞ」

リンギオはステルス迷彩を着込んだ。

人間に効力は無いので、野暮ったいコートを着ただけに見える。

「勝算はあるから捨て駒じゃないよ。作戦は……これだ!」

俺はフラレウムを足元の黒い装置に突き刺した。
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