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第12話 国王の葬儀と壁ドン
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午前中に国王の葬儀をした。国を挙げて大々的にやるものだと思っていたら、
周辺諸国との現状を鑑みて、ジェリー・キトゥルセンはまだ死んでいない、
という事にするらしい。隠蔽というやつだ。
病気で療養中という事にし、もし諸外国の要人が訪れても、
謁見させないという事で方針が決まった。だから俺は王子のままだ。
真実を知るのは城の人間と王都にいる貴族のみ。
葬儀は王都ノーストリリアの外縁の森にてひっそりと行われた。
王族の墓地なので一般人は立ち入り禁止だ。
三つの墓石を前にラムレスを始め多くの者が涙を流した。
葬儀が終わった後、ラムレスからなぜ王の死を偽装するのか、説明された。
「我が王国はご承知の通り7つの国と接しています。
現在の所、どの国とも概ね良好な関係が維持出来ていますが、
この戦乱の世、何がきっかけで事態が急変するか分かりません。
特に南の、半島に蓋をしているザサウスニア帝国とは過去に因縁があり、
表面上は貿易をしつつも、お互い間者を送り合う間柄。
王が死に、失礼な言い方かもしれませんが、
寒村に隠していた落とし子が15歳で急に王位を継いだ国など、
敵国にとっては絶好の攻め時です。
せめて後3年、オスカー様が成人されるまでは、
この状態を続けさせて頂きたいと思っております」
「いいよ、了解。その辺の事はラムレスに任せる。信頼しているぞ」
「ああ……何と有難きお言葉。
オスカー様は理解力があって助かります。とても15とは思えません」
「人は外見ではないよ、ラムレス」
「確かにそうですね」
「そうだ、自由に使える予算ってあるの? ちょっと作ってほしいものがあるんだけど」
「ええ、一定額は確保していますが……」
「城の床は冷えるだろう? 夏も一瞬だし、城中に絨毯を敷いてはどうかなと思って」
「絨毯ですか。確かに暖炉を焚いても足元は冷えますが……」
「そうでしょ? 立ってるだけの時とかみんな辛いんじゃないかなと思って。
それに冷えは万病のもと。肩こり腰痛、女性は妊娠率の低下など悪い事ばかりだ」
「ああ、何とお優しいお方でしょう。……しかし絨毯は高価なものでして刺繍や色がつきますと……」
「いや、王の間のような豪華なものじゃなくていいんだ。毛皮で作れない?」
「毛皮というと白鹿や牙猪のような?」
「そう。50cm×50cmに切った毛皮を縫い合わせるんだ。
白鹿と牙猪を交互に縫い合わせれば白とこげ茶のモザイク柄でお洒落じゃない?
それなら安くできるんじゃないかな?」
「確かに、いい案ですな。毛皮職人に依頼すればすぐに完成しますぞ!」
「じゃあよろしく」
自分の部屋に戻ろうとしたらネネルとばったり会った。
負傷した左の翼は包帯で巻かれていた。
「あ、あんた、話は聞いたわ……。お父様亡くなったのね。
何と言っていいか……残念ね」
「ありがとう、ネネル。俺は大丈夫だよ」
「事情も聞いたから安心して。誰にも言わないから。
……まぁ、元気出しなさいよ。わ、私もいるんだし」
目が泳いでいる。耳が赤い。
「ん? しばらくいるのか?」
「ええ、この翼じゃ当分飛べないから国に帰れないし、
その……城主であるあんたがいいって言えばだけど、
あの、その……いてあげないこともないというか……」
最後の方はごにょごにょと聞き取れない。
「もちろん、ネネルなら大歓迎だ。一生いてもらっても構わないよ」
ここで爽やか王子スマイル。どお? 今歯が光ったでしょ?
「な、何言ってんのよ! い、一生なんて……ばかばか!」
ネネルは顔を真っ赤にして自分の部屋に走り去っていった。
「まって!」
俺は追いかけてネネルの腕を掴んだ。驚いた顔で振り返る。
「俺の名前はオスカーだ。あんたって呼ばれるのは好きじゃない」
少女漫画か! クサ過ぎ、恥ずかしい。でもちょっと乗ってきた自分がいる。
「……わ、わかったわ。わかったから手を離して」
「だめだ、今俺の名前を呼べ」
あ、壁ドンしてみよ。
「なななななんでよ! 今度でいいじゃな……きゃ!」
俺は壁にネネルを押し付け、顔の横に手を置いた。
「言え。言わないと離さない」
あれ、俺Sなのか? ぞくぞくするぞ。 オラぞくぞくすっぞ!
「ううう~……オ、オスカー……」
湯気出てない? 顔から。 そのくらいネネルは真っ赤だった。
「よし。呼んでくれてありがとう。これからよろしくな」
手を離すと「……あ、あうぅ~~~」と顔を隠しながら自分の部屋に帰った。
分かりやすすぎる。もう、これイケるだろ。
王子の肩書、強し。
でももう少しからかうのもありだな。
周辺諸国との現状を鑑みて、ジェリー・キトゥルセンはまだ死んでいない、
という事にするらしい。隠蔽というやつだ。
病気で療養中という事にし、もし諸外国の要人が訪れても、
謁見させないという事で方針が決まった。だから俺は王子のままだ。
真実を知るのは城の人間と王都にいる貴族のみ。
葬儀は王都ノーストリリアの外縁の森にてひっそりと行われた。
王族の墓地なので一般人は立ち入り禁止だ。
三つの墓石を前にラムレスを始め多くの者が涙を流した。
葬儀が終わった後、ラムレスからなぜ王の死を偽装するのか、説明された。
「我が王国はご承知の通り7つの国と接しています。
現在の所、どの国とも概ね良好な関係が維持出来ていますが、
この戦乱の世、何がきっかけで事態が急変するか分かりません。
特に南の、半島に蓋をしているザサウスニア帝国とは過去に因縁があり、
表面上は貿易をしつつも、お互い間者を送り合う間柄。
王が死に、失礼な言い方かもしれませんが、
寒村に隠していた落とし子が15歳で急に王位を継いだ国など、
敵国にとっては絶好の攻め時です。
せめて後3年、オスカー様が成人されるまでは、
この状態を続けさせて頂きたいと思っております」
「いいよ、了解。その辺の事はラムレスに任せる。信頼しているぞ」
「ああ……何と有難きお言葉。
オスカー様は理解力があって助かります。とても15とは思えません」
「人は外見ではないよ、ラムレス」
「確かにそうですね」
「そうだ、自由に使える予算ってあるの? ちょっと作ってほしいものがあるんだけど」
「ええ、一定額は確保していますが……」
「城の床は冷えるだろう? 夏も一瞬だし、城中に絨毯を敷いてはどうかなと思って」
「絨毯ですか。確かに暖炉を焚いても足元は冷えますが……」
「そうでしょ? 立ってるだけの時とかみんな辛いんじゃないかなと思って。
それに冷えは万病のもと。肩こり腰痛、女性は妊娠率の低下など悪い事ばかりだ」
「ああ、何とお優しいお方でしょう。……しかし絨毯は高価なものでして刺繍や色がつきますと……」
「いや、王の間のような豪華なものじゃなくていいんだ。毛皮で作れない?」
「毛皮というと白鹿や牙猪のような?」
「そう。50cm×50cmに切った毛皮を縫い合わせるんだ。
白鹿と牙猪を交互に縫い合わせれば白とこげ茶のモザイク柄でお洒落じゃない?
それなら安くできるんじゃないかな?」
「確かに、いい案ですな。毛皮職人に依頼すればすぐに完成しますぞ!」
「じゃあよろしく」
自分の部屋に戻ろうとしたらネネルとばったり会った。
負傷した左の翼は包帯で巻かれていた。
「あ、あんた、話は聞いたわ……。お父様亡くなったのね。
何と言っていいか……残念ね」
「ありがとう、ネネル。俺は大丈夫だよ」
「事情も聞いたから安心して。誰にも言わないから。
……まぁ、元気出しなさいよ。わ、私もいるんだし」
目が泳いでいる。耳が赤い。
「ん? しばらくいるのか?」
「ええ、この翼じゃ当分飛べないから国に帰れないし、
その……城主であるあんたがいいって言えばだけど、
あの、その……いてあげないこともないというか……」
最後の方はごにょごにょと聞き取れない。
「もちろん、ネネルなら大歓迎だ。一生いてもらっても構わないよ」
ここで爽やか王子スマイル。どお? 今歯が光ったでしょ?
「な、何言ってんのよ! い、一生なんて……ばかばか!」
ネネルは顔を真っ赤にして自分の部屋に走り去っていった。
「まって!」
俺は追いかけてネネルの腕を掴んだ。驚いた顔で振り返る。
「俺の名前はオスカーだ。あんたって呼ばれるのは好きじゃない」
少女漫画か! クサ過ぎ、恥ずかしい。でもちょっと乗ってきた自分がいる。
「……わ、わかったわ。わかったから手を離して」
「だめだ、今俺の名前を呼べ」
あ、壁ドンしてみよ。
「なななななんでよ! 今度でいいじゃな……きゃ!」
俺は壁にネネルを押し付け、顔の横に手を置いた。
「言え。言わないと離さない」
あれ、俺Sなのか? ぞくぞくするぞ。 オラぞくぞくすっぞ!
「ううう~……オ、オスカー……」
湯気出てない? 顔から。 そのくらいネネルは真っ赤だった。
「よし。呼んでくれてありがとう。これからよろしくな」
手を離すと「……あ、あうぅ~~~」と顔を隠しながら自分の部屋に帰った。
分かりやすすぎる。もう、これイケるだろ。
王子の肩書、強し。
でももう少しからかうのもありだな。
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