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第四章
107話 隠し部屋発見
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優奈の部屋。
寮の部屋は基本的に内鍵以外ないので、勝手に入ることが出来た。
部屋にやってきた四人は家探しを始める。
「あんまり調べるところはなさそうですが……」
未久が殺風景な部屋を見渡す。
移住して間もない下級生達の部屋と比べても物が少なかった。
「とりあえず、細かいところまで手分けして探しましょ」
四人はそれぞれに別れて探し始める。
麻衣は一先ず勉強机の中を探す。
(何だか悪いことしてる気分)
無断で友達の部屋に入るのは、よくあることであったが、今回は家主がいない中で勝手に部屋を漁っているので、明らかに悪いことであった。
(そう言えば、町に来た最初の頃に、盗んだりとか悪いことしたら必ずバレるって先生に言われたっけ。管理者さんと優奈が繋がっているなら、バレるのは時間の問題ね。その前に何としても証拠を見つけないと)
麻衣が気張って探していると、近くのコンポの前に居た未久が呟く。
「物が少ないのに、オーディオだけ異様に立派……。ここに何かあるのかも」
大きく立派なコンポが殺風景な部屋には合っておらず、不自然に見えたことから、未久は怪しんでいた。
「あー……それ、優奈が自分の録音した歌を流すのに使ってるの」
「自分の歌を……?」
「ナルシストなのよ」
麻衣はそう言って、勉強机の上にあるフォトボードを指さす。
そこにはポーズを取って写っている優奈の写真が何枚も貼り付けてあった。
「何ていうか、凄いですね……」
未久は苦笑いをする。
ファッションショーのこともあった為、疑う余地なく納得した。
続けて写真を見ていると、未久は優奈達が三人で写った写真を見つける。
「本当に仲良しなんですね」
「ええ。裏があるのかもしれないけど、それでも大切な友達よ」
「はい……。怪しんではいますけど、私も糾弾したい訳じゃないです。ただ、知って安心したいだけです」
「一生暮らす場所だもんね。もしもズルしてたら、説教して正さなきゃ」
疑いはしても、誰も優奈を嫌ってはいなかった。
四人はただ知りたいだけである。
そうやって真面目に話していると、麻衣の視界に智香が映る。
箪笥を調べていた智香だが、その手には真っ白の布があった。
「智香あんた、こんな時に」
麻衣が呆れて言うと、智香は慌てて優奈のパンツを箪笥に突っ込む。
「ち、違うよ。優奈ちゃんのことだから、こういうところに何かあるのかなって思って」
「……あり得るわね。何か見つかった?」
「ううん。今のところ何も。でも、すっごい綺麗に整えられてるよ」
「それは智香がズボラ過ぎるだけじゃないの?」
「あはは」
引き出しの中は普通に整えられているだけで、怪しいところは何もない。
衣類を畳むこともしない智香は笑って返事を誤魔化した。
その時、クローゼットの中から結衣が顔を出す。
「何か変なところあった」
三人は即座に調べるのを止め、結衣の下へと駆け寄る。
中を覗くと、クロゼットの奥の壁がズレており、扉のようになっているところが見て取れた。
「扉?」
麻衣が恐る恐る手を伸ばし、扉を開ける。
すると、扉の先に小部屋が現れた。
「「……」」
四人は深刻な表情で顔を見合わせる。
このようなところは他の部屋にはない。
勝手に作れるものでもないので、この部屋の存在は管理者と優奈の繋がりを証明しているに等しかった。
「中を調べてみましょうか」
麻衣が中へと踏み込み、他の三人も後に続く。
中は一般家庭の浴室程度の大きさの小部屋。
壁に向けて椅子とパソコン台が置かれており、台の上にはモニタがずらりと並んでいた。
モニタには町の各所の映像が映し出されている。
「これ、監視カメラの映像?」
「今まで私達、ずっと監視されていたみたいですね」
麻衣達は青褪める。
結託していることを疑ってはいたが、実際に目にした証拠は生々しく恐ろしい物だった。
未久がモニタの前のキーボードを触ると、画面が切り替わる。
だが、切り替わった画面は町ではなかった。
「ん? 男子がいるわね。どっかの学校の教室かしら?」
そこは休み時間の教室で、子供達がワイワイとお喋りなどをしていた。
「……ここ。私が前にいたクラスです」
その教室は未久が嘗て通っていた学校の教室だった。
映っている子供達は未久の元クラスメイトである。
その時、画面に一人の女の子が近づいてくる。
「未久ちゃん、テストどうだった?」
「百点だったよ」
画面から聴こえた返事は未久の声だった。
「すごーい。私はね……」
女の子と未久の声との会話が続く。
未久の声は聞こえるが、姿は見えない。
また、女の子は画面に目線を向け、まるで画面先に喋りかけているように話していた。
「な、何なんですか、これ……」
実際の未久は喋ってもいないし、その会話をした記憶もない。
訳が分からず困惑していると、結衣が手を伸ばして、キーボードを触った。
すると、画面横に文字列が出てくる。
それは町にいる女の子達の名前だった。
自分の名前を見つけた結衣は、そこを押す。
すると、部屋が映った。
「私の部屋……」
そこは結衣が元居た自宅の部屋だった。
「! ねぇ、あれ見て」
麻衣が指した画面の先にあったのは鏡だった。
鏡にはベッドに座った結衣の姿が映っている。
「目で見ている視点っぽいわね」
「これ、いつの映像ですか? 私、さっきの会話した覚えありません」
「ロボットとか? そっくりの」
「あり得ますね。一体、何故そんなことを……」
名前の一覧をスクロールしていくと、麻衣と智香の名前もあった。
自分のところが気になった麻衣は、自分の名前を押してみる。
すると、画面が真っ暗になって、何も映し出されなかった。
「んん?」
何度か押すが、ブラックアウトしたまま変わらない。
「ねぇ、これ何かな?」
麻衣が押している名前の端を智香が指さす。
麻衣の名前が記された、その横には「措置完了」という文字があった。
麻衣がその文字を押してみると、画面につらつらと文字が出てきた。
偽装措置:自動車事故による事故死。
その下には場所や日時などが詳細に記されていた。
「事故死……?」
次に智香が自分のところの措置完了ボタンをを押す。
偽装措置:熱中症による病死。
同じく、その下には詳細が記されている。
そこで未久が言う。
「そういえば、町に移住の準備をする時に貰った注意書きに、いなくなっても大丈夫なように工面するから心配ないって書いてありました」
「あ、そっか。地上では死んだことにされるって訳ね。別にいいけど、優奈がこんなことまで関わってたなんて」
「関わるというより優奈さんがやってたという感じがしないですか?」
「やってたって、そんなんじゃ優奈が……」
「黒幕、という可能性も十分あると思います。だって、この町はあまりにも優奈さんの好みに寄ってるじゃないですか。管理者が優奈さんの命令に従って動いていると考えても違和感ありません」
「この町を作ったのが優奈……?」
まだ推測の域を出なかったが、この状況を見ては、それも有り得ると麻衣達は思ってしまった。
麻衣が思わず、ふらついて下がると、それに反応したかのように横の扉が開いた。
そこは何もない箱のような空間、エレベーターだった。
「まだ何かあるっていうの……?」
――――
所変わって小学校の体育館。
そこでは理沙達によるバンド演奏が行われていた。
「フー! センキュー!!」
優奈の歌う曲が終わり、観客に向かって手を振る。
ライブは大盛況で、みんな大盛り上がりしていた。
休憩タイムとして、優奈達は一旦ステージ裏に下がる。
「めっちゃ盛り上がってるね。やっぱ、美人効果凄いわ」
「お客さん沢山集まったけど、この後、歌い辛い……」
「それそれ、落胆されたら落ち込んじゃうよね」
ファッションショーからの流れが出来たことで、予想以上にお客が集まってしまい、理沙達は気後れしていた。
「皆も可愛いから大丈夫だよ」
「キザー。その顔で言われると嫌味としか取れないけど、優奈さん本気で褒めてくれるから許しちゃう。じゃ、役割交代して行きますか」
「ごめん。私、ここで抜けていいかな? ちょっと急用で」
「うんこ?」
「違うけど、同じくらい緊急。ほんと悪いけど、私のところはロボットに入ってもらって」
「えー、しょうがないなぁ」
「本当にごめん。後で必ず埋め合わせするから」
「気にしないで。いってらっしゃい」
理沙達は優奈を残し、ステージへと戻った。
(さて。どう対応したものかね)
――――
寮の部屋は基本的に内鍵以外ないので、勝手に入ることが出来た。
部屋にやってきた四人は家探しを始める。
「あんまり調べるところはなさそうですが……」
未久が殺風景な部屋を見渡す。
移住して間もない下級生達の部屋と比べても物が少なかった。
「とりあえず、細かいところまで手分けして探しましょ」
四人はそれぞれに別れて探し始める。
麻衣は一先ず勉強机の中を探す。
(何だか悪いことしてる気分)
無断で友達の部屋に入るのは、よくあることであったが、今回は家主がいない中で勝手に部屋を漁っているので、明らかに悪いことであった。
(そう言えば、町に来た最初の頃に、盗んだりとか悪いことしたら必ずバレるって先生に言われたっけ。管理者さんと優奈が繋がっているなら、バレるのは時間の問題ね。その前に何としても証拠を見つけないと)
麻衣が気張って探していると、近くのコンポの前に居た未久が呟く。
「物が少ないのに、オーディオだけ異様に立派……。ここに何かあるのかも」
大きく立派なコンポが殺風景な部屋には合っておらず、不自然に見えたことから、未久は怪しんでいた。
「あー……それ、優奈が自分の録音した歌を流すのに使ってるの」
「自分の歌を……?」
「ナルシストなのよ」
麻衣はそう言って、勉強机の上にあるフォトボードを指さす。
そこにはポーズを取って写っている優奈の写真が何枚も貼り付けてあった。
「何ていうか、凄いですね……」
未久は苦笑いをする。
ファッションショーのこともあった為、疑う余地なく納得した。
続けて写真を見ていると、未久は優奈達が三人で写った写真を見つける。
「本当に仲良しなんですね」
「ええ。裏があるのかもしれないけど、それでも大切な友達よ」
「はい……。怪しんではいますけど、私も糾弾したい訳じゃないです。ただ、知って安心したいだけです」
「一生暮らす場所だもんね。もしもズルしてたら、説教して正さなきゃ」
疑いはしても、誰も優奈を嫌ってはいなかった。
四人はただ知りたいだけである。
そうやって真面目に話していると、麻衣の視界に智香が映る。
箪笥を調べていた智香だが、その手には真っ白の布があった。
「智香あんた、こんな時に」
麻衣が呆れて言うと、智香は慌てて優奈のパンツを箪笥に突っ込む。
「ち、違うよ。優奈ちゃんのことだから、こういうところに何かあるのかなって思って」
「……あり得るわね。何か見つかった?」
「ううん。今のところ何も。でも、すっごい綺麗に整えられてるよ」
「それは智香がズボラ過ぎるだけじゃないの?」
「あはは」
引き出しの中は普通に整えられているだけで、怪しいところは何もない。
衣類を畳むこともしない智香は笑って返事を誤魔化した。
その時、クローゼットの中から結衣が顔を出す。
「何か変なところあった」
三人は即座に調べるのを止め、結衣の下へと駆け寄る。
中を覗くと、クロゼットの奥の壁がズレており、扉のようになっているところが見て取れた。
「扉?」
麻衣が恐る恐る手を伸ばし、扉を開ける。
すると、扉の先に小部屋が現れた。
「「……」」
四人は深刻な表情で顔を見合わせる。
このようなところは他の部屋にはない。
勝手に作れるものでもないので、この部屋の存在は管理者と優奈の繋がりを証明しているに等しかった。
「中を調べてみましょうか」
麻衣が中へと踏み込み、他の三人も後に続く。
中は一般家庭の浴室程度の大きさの小部屋。
壁に向けて椅子とパソコン台が置かれており、台の上にはモニタがずらりと並んでいた。
モニタには町の各所の映像が映し出されている。
「これ、監視カメラの映像?」
「今まで私達、ずっと監視されていたみたいですね」
麻衣達は青褪める。
結託していることを疑ってはいたが、実際に目にした証拠は生々しく恐ろしい物だった。
未久がモニタの前のキーボードを触ると、画面が切り替わる。
だが、切り替わった画面は町ではなかった。
「ん? 男子がいるわね。どっかの学校の教室かしら?」
そこは休み時間の教室で、子供達がワイワイとお喋りなどをしていた。
「……ここ。私が前にいたクラスです」
その教室は未久が嘗て通っていた学校の教室だった。
映っている子供達は未久の元クラスメイトである。
その時、画面に一人の女の子が近づいてくる。
「未久ちゃん、テストどうだった?」
「百点だったよ」
画面から聴こえた返事は未久の声だった。
「すごーい。私はね……」
女の子と未久の声との会話が続く。
未久の声は聞こえるが、姿は見えない。
また、女の子は画面に目線を向け、まるで画面先に喋りかけているように話していた。
「な、何なんですか、これ……」
実際の未久は喋ってもいないし、その会話をした記憶もない。
訳が分からず困惑していると、結衣が手を伸ばして、キーボードを触った。
すると、画面横に文字列が出てくる。
それは町にいる女の子達の名前だった。
自分の名前を見つけた結衣は、そこを押す。
すると、部屋が映った。
「私の部屋……」
そこは結衣が元居た自宅の部屋だった。
「! ねぇ、あれ見て」
麻衣が指した画面の先にあったのは鏡だった。
鏡にはベッドに座った結衣の姿が映っている。
「目で見ている視点っぽいわね」
「これ、いつの映像ですか? 私、さっきの会話した覚えありません」
「ロボットとか? そっくりの」
「あり得ますね。一体、何故そんなことを……」
名前の一覧をスクロールしていくと、麻衣と智香の名前もあった。
自分のところが気になった麻衣は、自分の名前を押してみる。
すると、画面が真っ暗になって、何も映し出されなかった。
「んん?」
何度か押すが、ブラックアウトしたまま変わらない。
「ねぇ、これ何かな?」
麻衣が押している名前の端を智香が指さす。
麻衣の名前が記された、その横には「措置完了」という文字があった。
麻衣がその文字を押してみると、画面につらつらと文字が出てきた。
偽装措置:自動車事故による事故死。
その下には場所や日時などが詳細に記されていた。
「事故死……?」
次に智香が自分のところの措置完了ボタンをを押す。
偽装措置:熱中症による病死。
同じく、その下には詳細が記されている。
そこで未久が言う。
「そういえば、町に移住の準備をする時に貰った注意書きに、いなくなっても大丈夫なように工面するから心配ないって書いてありました」
「あ、そっか。地上では死んだことにされるって訳ね。別にいいけど、優奈がこんなことまで関わってたなんて」
「関わるというより優奈さんがやってたという感じがしないですか?」
「やってたって、そんなんじゃ優奈が……」
「黒幕、という可能性も十分あると思います。だって、この町はあまりにも優奈さんの好みに寄ってるじゃないですか。管理者が優奈さんの命令に従って動いていると考えても違和感ありません」
「この町を作ったのが優奈……?」
まだ推測の域を出なかったが、この状況を見ては、それも有り得ると麻衣達は思ってしまった。
麻衣が思わず、ふらついて下がると、それに反応したかのように横の扉が開いた。
そこは何もない箱のような空間、エレベーターだった。
「まだ何かあるっていうの……?」
――――
所変わって小学校の体育館。
そこでは理沙達によるバンド演奏が行われていた。
「フー! センキュー!!」
優奈の歌う曲が終わり、観客に向かって手を振る。
ライブは大盛況で、みんな大盛り上がりしていた。
休憩タイムとして、優奈達は一旦ステージ裏に下がる。
「めっちゃ盛り上がってるね。やっぱ、美人効果凄いわ」
「お客さん沢山集まったけど、この後、歌い辛い……」
「それそれ、落胆されたら落ち込んじゃうよね」
ファッションショーからの流れが出来たことで、予想以上にお客が集まってしまい、理沙達は気後れしていた。
「皆も可愛いから大丈夫だよ」
「キザー。その顔で言われると嫌味としか取れないけど、優奈さん本気で褒めてくれるから許しちゃう。じゃ、役割交代して行きますか」
「ごめん。私、ここで抜けていいかな? ちょっと急用で」
「うんこ?」
「違うけど、同じくらい緊急。ほんと悪いけど、私のところはロボットに入ってもらって」
「えー、しょうがないなぁ」
「本当にごめん。後で必ず埋め合わせするから」
「気にしないで。いってらっしゃい」
理沙達は優奈を残し、ステージへと戻った。
(さて。どう対応したものかね)
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