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第四章
90話 賑やかな大浴場
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その夜。
「「うぇーい」」
浴槽に飛び込む美咲と真琴の後に希海も続く。
食べ歩きで日が暮れるまで商店街を歩き回った八人は、そのまま寮の大浴場へと来ていた。
脱衣所から大浴場に入った優奈は周りを見回す。
そこには低学年から高学年まで沢山の女の子が裸で居た。
「パーラダーイス! 何と素晴らしい光景」
寮の人口が五倍に増えたので、お風呂で遭遇する子も五倍になっていた。
広いお風呂に、女の子達は燥ぎながら入っている。
「下級生の子に手出しするんじゃないわよ」
「自分からはしないよ。ただ、相手が求めてきたら吝かではない。これだけ人いるなら、同じ趣味の子が一人や二人いると思わない?」
「……いないことを願うわ」
優奈、麻衣、智香の後に続き、未久と結衣も大浴場へと入って来る。
二人はタオルで身体を隠し、人目を気にしているようで、明らかに公衆浴場になれていない感じだった。
「人前で裸になるの恥ずかしい? 麻衣ちゃんと智香ちゃんも最初はこんな感じだったね」
「最初はね。美咲達見てたら、すぐに慣れたわ」
「施設の子とかは皆で入るの慣れてるからね」
今日来たばかりでも、隠さずに走り回ってる子も少なくなかった。
「それにしても限度があるわ。二人とも聞いてよ。美咲なんか外でも、あんな感じで全裸で遊んだりするのよ」
「外で?」
未久と結衣は変質者を見るような目で、遊ぶ美咲を見た。
二人の反応を見て、優奈と麻衣が笑う。
「夏は暑いからね。男がいないから、外で脱いでも全然いいんだよ。授業中でも脱いでいいって先生が言うくらい許されてる」
「そう、なんですか……」
いくら許されることでも、まだ町に馴染んでいない二人には異様に思えた。
「二人も、そんなこと気にせずタオル取っちゃいなよ。隠さなくても誰も見やしないよ」
「誰も見ないことはないけど、これから毎日こうやって入るんだから、気にしてたら、やってられないわよ」
麻衣は優奈の下心に気付いていたが、隠すことが無意味であることも分かっていたので、話に乗って取ることを勧めた。
「はい……」
上級生に言われ、未久と結衣は渋々タオルを取った。
すると、優奈が二人の身体を舐めるような視線で見る。
「うん。それでいいよ。二人とも綺麗な身体してるじゃん」
セクハラめいたことを言う優奈の頭を麻衣が引っ叩く。
「そういう冗談は止めなさい。ほら、さっさと入るわよ」
優奈の手を引き、浴槽へと向かう。
冗談ということにしたのは麻衣の優しさだった。
優奈達は浴槽の隅辺りに五人で入る。
「お湯が常に循環してるから、先に身体洗ったりとかしなくていいんだよ」
「へー」
優奈は湯船に入りながら、下級生二人に解説をしていた。
「堅苦しいマナーやルールは技術力で極力取っ払ってるんだ。みんなが伸び伸びと暮らせるように。だから、これからは遠慮せずに自由に過ごしていいんだよ」
そう言った時、低学年の子の付き添いで入っていた家政婦ロボットが美咲達に言う。
「お湯が他の子にかかってます。遊ぶのは構いませんが、周りには気を付けてください」
「はーい……」
注意を受けた美咲達はバツの悪そうな顔をして少し大人しくなる。
「……迷惑にならない範囲で」
その様子を受け、優奈は先ほどの言葉に付け加えた。
同じく注意されていたところを見ていた麻衣が言う。
「怒られるくらい燥いじゃって。やっぱり、知ってる子が来てくれたのが嬉しいのかしらね」
嘗て一緒に暮らしていた希海達が来たことで、美咲はいつもよりテンションが高くなっていた。
「あの……五年生の人達は、いつからここで暮らしてたんですか?」
未久が不意に優奈達に尋ねてきた。
「ん? 七月前くらいじゃなかったっけ?」
「うん。最初はちゃんと生活できるか確認する為に、五年生だけ先に入れられたんだ」
「来たばかりの頃は商店街も作りかけで全然なかったわよね。作られてく様子を見るのも面白かったけど」
麻衣は昔を懐かしむように言う。
まだ数ヶ月前のことだが、子供の感覚では大分昔のことのように思えた。
「来たことを後悔してないですか?」
「全く。来て良かったとしか思わないわ。そのうち分かると思うけど、快適過ぎて、こっちで慣れたら戻れないわよ」
未久が後悔の有無を聞いて来た為、優奈は少し不安になる。
「もしかして未練ある?」
「ないです」
ハッキリと断言した未久。
その瞳に迷いは一切なかった。
「みんな色々あるけど、ここでは自由だから。同じ仲間として仲よくしよ」
優奈達が歓迎するが、未久は何処か複雑そうな顔をしていた。
その時、優奈達の耳に美咲の声が聴こえてくる。
「かかってきなさーい。相撲大会じゃー」
注意されて一度は大人しくなった美咲達だったが、今度は相撲を始めていた。
「全裸で相撲を!? 私もやる!」
優奈は勢い良く立ちあがって、美咲達のところへと水飛沫を上げながら駆け出して行った。
その突然の行動に未久と結衣は唖然とし、麻衣は呆れた顔で優奈の去り行く後姿を眺めていた。
苦笑いする智香に麻衣が小声で言う。
「優奈が変態なの下級生の子達にバレないか心配だわ」
「あはは、そうだね」
いくら麻衣が誤魔化そうとしても、優奈の行動があれではバレてしまうのも時間の問題であった。
裸で相撲を取る優奈を眺める二人。
麻衣は心配する目で見ていたが、隣の智香は何処か熱っぽい視線であった。
優奈を眺めていた智香がポツリと言う。
「何か最近ね。優奈ちゃんの裸、見ちゃうんだ」
「へ?」
「つい視線が行っちゃうの。身体のライン、綺麗だなーとか思ったりして」
「えぇ……。何よ、それ。おかしくなってるじゃない」
「やっぱり、おかしいのかな?」
「少なくとも普通ではないわね。お金に釣られてキスなんてしてるから」
初めは同性愛になど全く興味がなかった智香だったが、キスでの小遣い稼ぎを始めてから、無意識的に優奈を意識するようになっていた。
「どうしよう……」
「もう止めた方がいいわ」
「でも止めたら、お金ない時に困る」
「それで取り返しのつかないことになったら最悪でしょ。完全におかしくなる前に止めておいた方が賢明よ」
「うん……」
残念そうに俯く智香。
そんな智香を麻衣は不安げに見ていた。
「「うぇーい」」
浴槽に飛び込む美咲と真琴の後に希海も続く。
食べ歩きで日が暮れるまで商店街を歩き回った八人は、そのまま寮の大浴場へと来ていた。
脱衣所から大浴場に入った優奈は周りを見回す。
そこには低学年から高学年まで沢山の女の子が裸で居た。
「パーラダーイス! 何と素晴らしい光景」
寮の人口が五倍に増えたので、お風呂で遭遇する子も五倍になっていた。
広いお風呂に、女の子達は燥ぎながら入っている。
「下級生の子に手出しするんじゃないわよ」
「自分からはしないよ。ただ、相手が求めてきたら吝かではない。これだけ人いるなら、同じ趣味の子が一人や二人いると思わない?」
「……いないことを願うわ」
優奈、麻衣、智香の後に続き、未久と結衣も大浴場へと入って来る。
二人はタオルで身体を隠し、人目を気にしているようで、明らかに公衆浴場になれていない感じだった。
「人前で裸になるの恥ずかしい? 麻衣ちゃんと智香ちゃんも最初はこんな感じだったね」
「最初はね。美咲達見てたら、すぐに慣れたわ」
「施設の子とかは皆で入るの慣れてるからね」
今日来たばかりでも、隠さずに走り回ってる子も少なくなかった。
「それにしても限度があるわ。二人とも聞いてよ。美咲なんか外でも、あんな感じで全裸で遊んだりするのよ」
「外で?」
未久と結衣は変質者を見るような目で、遊ぶ美咲を見た。
二人の反応を見て、優奈と麻衣が笑う。
「夏は暑いからね。男がいないから、外で脱いでも全然いいんだよ。授業中でも脱いでいいって先生が言うくらい許されてる」
「そう、なんですか……」
いくら許されることでも、まだ町に馴染んでいない二人には異様に思えた。
「二人も、そんなこと気にせずタオル取っちゃいなよ。隠さなくても誰も見やしないよ」
「誰も見ないことはないけど、これから毎日こうやって入るんだから、気にしてたら、やってられないわよ」
麻衣は優奈の下心に気付いていたが、隠すことが無意味であることも分かっていたので、話に乗って取ることを勧めた。
「はい……」
上級生に言われ、未久と結衣は渋々タオルを取った。
すると、優奈が二人の身体を舐めるような視線で見る。
「うん。それでいいよ。二人とも綺麗な身体してるじゃん」
セクハラめいたことを言う優奈の頭を麻衣が引っ叩く。
「そういう冗談は止めなさい。ほら、さっさと入るわよ」
優奈の手を引き、浴槽へと向かう。
冗談ということにしたのは麻衣の優しさだった。
優奈達は浴槽の隅辺りに五人で入る。
「お湯が常に循環してるから、先に身体洗ったりとかしなくていいんだよ」
「へー」
優奈は湯船に入りながら、下級生二人に解説をしていた。
「堅苦しいマナーやルールは技術力で極力取っ払ってるんだ。みんなが伸び伸びと暮らせるように。だから、これからは遠慮せずに自由に過ごしていいんだよ」
そう言った時、低学年の子の付き添いで入っていた家政婦ロボットが美咲達に言う。
「お湯が他の子にかかってます。遊ぶのは構いませんが、周りには気を付けてください」
「はーい……」
注意を受けた美咲達はバツの悪そうな顔をして少し大人しくなる。
「……迷惑にならない範囲で」
その様子を受け、優奈は先ほどの言葉に付け加えた。
同じく注意されていたところを見ていた麻衣が言う。
「怒られるくらい燥いじゃって。やっぱり、知ってる子が来てくれたのが嬉しいのかしらね」
嘗て一緒に暮らしていた希海達が来たことで、美咲はいつもよりテンションが高くなっていた。
「あの……五年生の人達は、いつからここで暮らしてたんですか?」
未久が不意に優奈達に尋ねてきた。
「ん? 七月前くらいじゃなかったっけ?」
「うん。最初はちゃんと生活できるか確認する為に、五年生だけ先に入れられたんだ」
「来たばかりの頃は商店街も作りかけで全然なかったわよね。作られてく様子を見るのも面白かったけど」
麻衣は昔を懐かしむように言う。
まだ数ヶ月前のことだが、子供の感覚では大分昔のことのように思えた。
「来たことを後悔してないですか?」
「全く。来て良かったとしか思わないわ。そのうち分かると思うけど、快適過ぎて、こっちで慣れたら戻れないわよ」
未久が後悔の有無を聞いて来た為、優奈は少し不安になる。
「もしかして未練ある?」
「ないです」
ハッキリと断言した未久。
その瞳に迷いは一切なかった。
「みんな色々あるけど、ここでは自由だから。同じ仲間として仲よくしよ」
優奈達が歓迎するが、未久は何処か複雑そうな顔をしていた。
その時、優奈達の耳に美咲の声が聴こえてくる。
「かかってきなさーい。相撲大会じゃー」
注意されて一度は大人しくなった美咲達だったが、今度は相撲を始めていた。
「全裸で相撲を!? 私もやる!」
優奈は勢い良く立ちあがって、美咲達のところへと水飛沫を上げながら駆け出して行った。
その突然の行動に未久と結衣は唖然とし、麻衣は呆れた顔で優奈の去り行く後姿を眺めていた。
苦笑いする智香に麻衣が小声で言う。
「優奈が変態なの下級生の子達にバレないか心配だわ」
「あはは、そうだね」
いくら麻衣が誤魔化そうとしても、優奈の行動があれではバレてしまうのも時間の問題であった。
裸で相撲を取る優奈を眺める二人。
麻衣は心配する目で見ていたが、隣の智香は何処か熱っぽい視線であった。
優奈を眺めていた智香がポツリと言う。
「何か最近ね。優奈ちゃんの裸、見ちゃうんだ」
「へ?」
「つい視線が行っちゃうの。身体のライン、綺麗だなーとか思ったりして」
「えぇ……。何よ、それ。おかしくなってるじゃない」
「やっぱり、おかしいのかな?」
「少なくとも普通ではないわね。お金に釣られてキスなんてしてるから」
初めは同性愛になど全く興味がなかった智香だったが、キスでの小遣い稼ぎを始めてから、無意識的に優奈を意識するようになっていた。
「どうしよう……」
「もう止めた方がいいわ」
「でも止めたら、お金ない時に困る」
「それで取り返しのつかないことになったら最悪でしょ。完全におかしくなる前に止めておいた方が賢明よ」
「うん……」
残念そうに俯く智香。
そんな智香を麻衣は不安げに見ていた。
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