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第三章
67話 夜の焚火
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原石探しを終えて元の場所に戻った後は、川遊びなどをして過ごしていると、日が暮れて夜となった。
夕食のバーベキューを終えた五人は、焚火でマシュマロを焼いたり、花火で遊んだりして、まったりしながら過ごす。
「何だか、いいわね。この雰囲気」
美咲と真琴が花火を持って燥いでいる横で、残りの三人がマシュマロを焼きながら駄弁っていた。
「分かる。飲み会の終盤の空気みたいな?」
夕食のバーベキューが盛り上がった後、辺りには穏やかな空気に包まれた。
「そんな空気知らないわよ……」
「飲み会?」
「智香は、そこに食いつかないの」
飲み会に興味を示した智香だが、麻衣はお酒の話に行かないよう、即座に止めた。
「けど今日は何だか、すっごく充実した一日って感じ。こんな楽しめるなんて思わなかったわ。美咲、今日は誘ってくれてありがとね」
「喜んでくれて何より。でも、まだまだ終わってないよ」
美咲はポケットから取り出した爆竹を麻衣達が囲む焚火の中へと投げ込んだ。
直後、激しい破裂音と共に、焚火から火花が飛び散る。
「きゃああああああ!!!」
三人は慌てて焚火の近くから逃げ出した。
十分な距離まで離れたところで麻衣が怒り出す。
「何すんのよ! せっかく感謝したのに」
「へいへいへーい、閉店モードはまだ早いですぜ」
美咲は新しく取り出した爆竹に火をつけ、麻衣の方へと投げる。
「ひゃあああっ。止めてってっ」
飛んできた爆竹を麻衣は慌てて避ける。
「没収よ没収! 美咲は爆竹禁止」
「欲しいなら捕まえてごらん。べろべろばー」
美咲は挑発するようにお尻を向けて叩く。
「むうう。奪い取ってやるわ」
麻衣は挑発に乗って、美咲の方へと駆け出す。
「しゅばっ」
美咲は走って来る麻衣の足元に向け、鼠花火を投げた。
「ひゃっ」
鼠花火は地面で高速回転させながら火花を飛ばし、麻衣はビックリして飛び退いた。
「あはははは!」
指をさして笑う美咲に、麻衣はムッとする。
「もう怒ったわよ」
麻衣は本気になって美咲を追いかけ始めた。
追いかけっこする二人を尻目に、優奈と智香は焚火の前へと戻って座る。
すると、真琴もそこに腰を下ろした。
「美咲の奴、テンション上がってんな」
「今日は色々楽しいことあったからね」
「あたしも今日は楽しかった。お店で遊ぶのもいいけど、やっぱり山や川で遊ぶのも好きだな」
田舎出身の真琴は自然での遊びに懐かしさを感じて、しみじみと、そう思った。
皆の満足そうな様子を見て、優奈は嬉しく思う。
自然の中でも遊びは、現代っ子には見向きもされないかもしれないと危惧していたが、そんなことはなかった。
情操教育にも良い為、自然公園を作ったことは大成功と言える。
しかし続けて真琴が言う。
「けど、虫が一匹もいないのが、すっげー違和感。外でこんな火焚いたら普通、大量に集まって来るぞ」
「真琴ちゃん的には虫はいた方がいい?」
「んー……あー……総合的に考えたら、いない方がいいかな。集られると鬱陶しいし」
「ははは、集られるのは嫌だよね」
「食べ物につくと気分台無しだしな。虫取り出来ないのはちょっと残念だけど、いない方がメリット大きいよ」
田舎育ちの真琴でも虫はいない方がいいとの判断だった。
優奈は要望があれば検討するつもりだったが、虫取りをやりたがっていた真琴ですら、そのような意見だったので、今後も作らないと決めた。
「いなくて良かったとか言って油断してたら、座ってる下からムカデ出て来たりしてな」
真琴がそう言うと、智香が身体をビクッとさせる。
「あ、わ、悪い」
「もー。想像させないでよー」
智香は驚いてしまったことを誤魔化すように照れ笑いする。
とても可愛らしい反応だったが、真琴は智香を驚かせてしまったことへの恐怖で表情が硬くなっていた。
そこで、追いかけっこをしていた麻衣と美咲が戻って来る。
「ぜぇぜぇ……もう無理。ただでさえ遊び疲れてるのに……」
息を切らせた麻衣は焚火の前で座り込む。
「あたしも疲れたー」
美咲も焚火の近くで寝転ぶ。
「だったら追いかけっこなんてさせないでよ……」
「あ、星が満天」
夜空を見上げた美咲が、麻衣の恨み言をスルーして言った。
すると、他の子達も空を見上げる。
そこには点々と輝く数多の星々があった。
「ほんとだ。綺麗ね」
「君の方が」
「優奈は黙ってなさい」
「はい……」
皆で寝転び、夜空を見上げる。
「空って見てると怖くね? 急に重力が無くなって、上に落ちそうな気がしてくる」
「分かる。吸い込まれそうになるわよね」
「だよな。ここだと落ちたところで天井だけど」
「ほんと、本物の夜空にしか見えないわ」
そこで美咲が言う。
「空も草木も動物も偽物なんだよね。みんなも偽物だったりして」
その言葉で、皆の表情が強張る。
「ロボットってこと? ちょっと、怖いこと言わないでよ」
「マジで一瞬冷っとしたわ。急にホラーな感じにするなよ」
怖がらされた皆は口々に美咲を非難する。
だがそんな中、よく偽装ロボットで裏工作していた優奈は別の意味で冷や汗を流していた。
皆は改めて夜空を見上げる。
「今日は、ほんと遊んだよな。マジ楽しかった」
「お、閉店モードですかい?」
美咲がポケットから爆竹を見せる。
「今度やったら本当に、どつくわよ」
麻衣に牽制され、美咲は出した爆竹を元に戻す。
「まぁ、夏休みはまだ始まったばかりだから、これから沢山遊ぼうぜ」
「そそ、夜も始まったばかり」
「今日は流石に……」
「「あはははは」」
まだまだ夏休みは始まったばかりである。
これからも夏休みを満喫しようと心に決めた五人であった。
夕食のバーベキューを終えた五人は、焚火でマシュマロを焼いたり、花火で遊んだりして、まったりしながら過ごす。
「何だか、いいわね。この雰囲気」
美咲と真琴が花火を持って燥いでいる横で、残りの三人がマシュマロを焼きながら駄弁っていた。
「分かる。飲み会の終盤の空気みたいな?」
夕食のバーベキューが盛り上がった後、辺りには穏やかな空気に包まれた。
「そんな空気知らないわよ……」
「飲み会?」
「智香は、そこに食いつかないの」
飲み会に興味を示した智香だが、麻衣はお酒の話に行かないよう、即座に止めた。
「けど今日は何だか、すっごく充実した一日って感じ。こんな楽しめるなんて思わなかったわ。美咲、今日は誘ってくれてありがとね」
「喜んでくれて何より。でも、まだまだ終わってないよ」
美咲はポケットから取り出した爆竹を麻衣達が囲む焚火の中へと投げ込んだ。
直後、激しい破裂音と共に、焚火から火花が飛び散る。
「きゃああああああ!!!」
三人は慌てて焚火の近くから逃げ出した。
十分な距離まで離れたところで麻衣が怒り出す。
「何すんのよ! せっかく感謝したのに」
「へいへいへーい、閉店モードはまだ早いですぜ」
美咲は新しく取り出した爆竹に火をつけ、麻衣の方へと投げる。
「ひゃあああっ。止めてってっ」
飛んできた爆竹を麻衣は慌てて避ける。
「没収よ没収! 美咲は爆竹禁止」
「欲しいなら捕まえてごらん。べろべろばー」
美咲は挑発するようにお尻を向けて叩く。
「むうう。奪い取ってやるわ」
麻衣は挑発に乗って、美咲の方へと駆け出す。
「しゅばっ」
美咲は走って来る麻衣の足元に向け、鼠花火を投げた。
「ひゃっ」
鼠花火は地面で高速回転させながら火花を飛ばし、麻衣はビックリして飛び退いた。
「あはははは!」
指をさして笑う美咲に、麻衣はムッとする。
「もう怒ったわよ」
麻衣は本気になって美咲を追いかけ始めた。
追いかけっこする二人を尻目に、優奈と智香は焚火の前へと戻って座る。
すると、真琴もそこに腰を下ろした。
「美咲の奴、テンション上がってんな」
「今日は色々楽しいことあったからね」
「あたしも今日は楽しかった。お店で遊ぶのもいいけど、やっぱり山や川で遊ぶのも好きだな」
田舎出身の真琴は自然での遊びに懐かしさを感じて、しみじみと、そう思った。
皆の満足そうな様子を見て、優奈は嬉しく思う。
自然の中でも遊びは、現代っ子には見向きもされないかもしれないと危惧していたが、そんなことはなかった。
情操教育にも良い為、自然公園を作ったことは大成功と言える。
しかし続けて真琴が言う。
「けど、虫が一匹もいないのが、すっげー違和感。外でこんな火焚いたら普通、大量に集まって来るぞ」
「真琴ちゃん的には虫はいた方がいい?」
「んー……あー……総合的に考えたら、いない方がいいかな。集られると鬱陶しいし」
「ははは、集られるのは嫌だよね」
「食べ物につくと気分台無しだしな。虫取り出来ないのはちょっと残念だけど、いない方がメリット大きいよ」
田舎育ちの真琴でも虫はいない方がいいとの判断だった。
優奈は要望があれば検討するつもりだったが、虫取りをやりたがっていた真琴ですら、そのような意見だったので、今後も作らないと決めた。
「いなくて良かったとか言って油断してたら、座ってる下からムカデ出て来たりしてな」
真琴がそう言うと、智香が身体をビクッとさせる。
「あ、わ、悪い」
「もー。想像させないでよー」
智香は驚いてしまったことを誤魔化すように照れ笑いする。
とても可愛らしい反応だったが、真琴は智香を驚かせてしまったことへの恐怖で表情が硬くなっていた。
そこで、追いかけっこをしていた麻衣と美咲が戻って来る。
「ぜぇぜぇ……もう無理。ただでさえ遊び疲れてるのに……」
息を切らせた麻衣は焚火の前で座り込む。
「あたしも疲れたー」
美咲も焚火の近くで寝転ぶ。
「だったら追いかけっこなんてさせないでよ……」
「あ、星が満天」
夜空を見上げた美咲が、麻衣の恨み言をスルーして言った。
すると、他の子達も空を見上げる。
そこには点々と輝く数多の星々があった。
「ほんとだ。綺麗ね」
「君の方が」
「優奈は黙ってなさい」
「はい……」
皆で寝転び、夜空を見上げる。
「空って見てると怖くね? 急に重力が無くなって、上に落ちそうな気がしてくる」
「分かる。吸い込まれそうになるわよね」
「だよな。ここだと落ちたところで天井だけど」
「ほんと、本物の夜空にしか見えないわ」
そこで美咲が言う。
「空も草木も動物も偽物なんだよね。みんなも偽物だったりして」
その言葉で、皆の表情が強張る。
「ロボットってこと? ちょっと、怖いこと言わないでよ」
「マジで一瞬冷っとしたわ。急にホラーな感じにするなよ」
怖がらされた皆は口々に美咲を非難する。
だがそんな中、よく偽装ロボットで裏工作していた優奈は別の意味で冷や汗を流していた。
皆は改めて夜空を見上げる。
「今日は、ほんと遊んだよな。マジ楽しかった」
「お、閉店モードですかい?」
美咲がポケットから爆竹を見せる。
「今度やったら本当に、どつくわよ」
麻衣に牽制され、美咲は出した爆竹を元に戻す。
「まぁ、夏休みはまだ始まったばかりだから、これから沢山遊ぼうぜ」
「そそ、夜も始まったばかり」
「今日は流石に……」
「「あはははは」」
まだまだ夏休みは始まったばかりである。
これからも夏休みを満喫しようと心に決めた五人であった。
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