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第二章
55話 麻雀から外遊びへ
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三人はかちゃかちゃと麻雀を打つ。
特に会話もなく打っていると、理沙が不意に口を開く。
「この前、私の誕生日だったんだけど」
「そうなんだ。今度、何かプレゼントあげるよ」
理沙が言い終わる前に、優奈が素早く反応して言葉を返した。
「ほんと? 嬉しい」
話を遮られる形となったが、プレゼントをくれるとのことで理沙は喜ぶ。
しかし、そんな優奈の反応を見た麻衣が言う。
「たらしね」
「うはっ、確かに。今の遊んでる男っぽかった」
「うぐ」
理沙の言葉が優奈の胸に突き刺さる。
優奈は男から生まれ変わっただけに、そこは気にするところであった。
「優奈さんって地味にイケメンだよね。物知りだし、気遣いできるし、顔も整ってるし。これで男だったら私惚れてるわ」
「今の私に惚れてもいいんだよ?」
「あはは、それは遠慮しとく。って、そんな話がしたいんじゃなくて。くれるって言われた後で言い辛いけど、ここって誕生日でも何もないんだよ。誕生日プレゼントでも貰えるかなって期待してたのに、ほんと何にもなかった」
町での初めての誕生日とのことで、理沙は密かに期待していたが、その日は特に祝いの声をかけられることもなく、普段と何一つ変わらない一日だった。
「誕生日は過去に関することになるからねぇ。祝われることを良く思わない子もいるだろうから、管理者としては何もできないんじゃないかな」
優奈がそう言うと、麻衣がそれを補足するように言う。
「ここに来るのは大体親関係があれな人でしょ。私は祝われたくないとまでは思わないけど 碌でもない親だったわ」
「あぁ、うちも大体そんなもん。みんな苦労してるんだね」
理沙は納得する。
死別を除けば、町に居る子は皆、家族を捨てて移住をしてきている。
誕生日は親との関係性が強い事柄であるので、その日自体を好ましく思わない子もいたのであった。
その為、町で強制的に祝うようなことはなしにして、祝いたい子はそれぞれ個人間でやってもらうことにしていたのである。
「でも、それにしてはDQNネームの人この町にはいないわね。前のクラスでも一人や二人居たのに」
「そういえば居ないね。うちは真面目に振り切ってたから、そんな名前はつけられなかったけど」
「意外と名前はちゃんとつける親が多いのかしらね。私も名前は普通のつけられたし」
二人が不思議に思って喋っていると、その疑問に優奈が答える。
「移住する時に名前変えたんでしょ。町で新しい人生を送る為に」
「あ、そういうこと!」
二人は目から鱗が落ちたように納得した。
だが、それと同時にラウンジに居た女の子の数名が視線を露骨に外したりと、あからさまな反応を示す。
その反応で、麻衣達はこれは触れない方がいい話題であることを察した。
周りは自然と静まり、微妙な空気となる。
原因となった麻衣達が気まずい思いに困っていると、そこに美咲と真琴通りがかる。
「わ、いっぱいいる」
美咲はラウンジがいつもとは比べ物にならないほど賑わっていたことに驚いて声を漏らした。
その声で二人の存在に気付いた理沙が声を掛ける。
「あ、美咲さんに真琴さん。二人は麻雀出来る?」
「ん? 玩具のやつなら施設でやったことあるよ」
「おっ、それならいけるね。私ら今麻雀やってるんだけど、美咲さんも参加してよ」
「ごめんー。あたし達これから外で遊ぶから無理ー」
「外? え……今日、台風だよ?」
美咲がありえないことを言い出したことで、ラウンジに居た子達がざわめく。
「台風だからこそだよ。雨や風がばーって来る中を遊ぶのって、すんごい楽しそうじゃん。今日を逃したら、またいつ遊べるか分からない。期間限定の天然アトラクションやー」
美咲達は天候を逆手にとって遊ぼうとしていた。
町にはウイルスが存在しないので風邪を引くことはない。
仮に体調を崩したとしても、即座に完治させることができる。
だから、雨風に晒されることを気にしないのであれば、憚ることは他に何もなかった。
「それ面白そう。私も行こっかな」
「私も」
理沙が靡くと、他の子も次々と続いていく。
皆、期間限定という言葉には弱かった。
「よーし、じゃあみんなで行こー」
美咲の後に続くように、ラウンジからぞろぞろと女の子達が出ていく。
理沙ともう一人の子も席を立ち、テーブルには優奈一人が残された。
そこで麻衣が声を掛けてくる。
「残念そうね。外出たら最後はお風呂入ることになりそうだからいいんじゃない?」
「麻衣ちゃんは分かってないなぁ。勝って脱がせることに意義があるんだよ」
「ほんと分からないわ……」
麻衣は優奈の気持ちが理解できず、ただ呆れるのであった。
下へと降りた女の子達はロビーに出る。
「わほーい。突撃ー」
ロビーに出てすぐ、美咲と真琴は燥ぎながらダッシュで外へと出ていく。
他の子達もその後に続いてわらわらと走って行った。
遅れて麻衣と優奈もロビーにやってくる。
「燥いじゃって。みんなまだ子供ね」
麻衣は先程理沙に言われた言葉を微妙に気にしていた。
優奈は特には取り合わず、二人はそのまま外へと出る。
玄関出口から一歩出た直後、突風が二人を襲った。
二人のスカートが思い切り捲れ上がる。
「ぎゃー!」
麻衣は慌ててスカートの前を押さえてパンツを隠そうとする。
「麻衣ちゃん、カメラカメラ!」
「撮らせないわよ!? というか流石に壊れない? ちょっと戻って部屋に置いて来ようかしら」
「ちっちっち。未来の技術を舐めてもらっては困るよ。機械類の完全防水は当たり前。耐熱度も高くて火で炙って影響なし。そのうえ衝撃耐性までばっちりだから、並大抵のことでは壊れないよ。台風如きで壊れることは100%有り得ない」
「そんなに凄いんだ。それでも渡さないけど」
「ケチー」
「ケチで結構。というか、みんな全然気にしてないわね……」
他の女の子達はスカートが捲れることなど微塵も気にする素振りもなく、
それどころか衣服を脱ぎ去って燥いでいる子もいた。
「気にしてたら、こんなとこで遊べないよ」
「でしょうね……」
みんなの羞恥心がなくなっていることを改めて目の当たりにする。
「麻衣ちゃんもそんなこと気にしてないで楽しく遊ぼうよ。ほら、いい風だよ」
「女子としてどうかと思うけど……。でも確かにいい風ね」
外を吹き荒れている風は細菌や散塵が一切含まれていないので、地上の風よりも新鮮な気持ちよさを感じることができていた。
燥いでいた美咲が徐にポケットから風車を取り出す。
すると、その風車は台風の突風に吹かれて凄まじい勢いで回り始めた。
「わはー」
高速回転する風車によって、周りの子達の注目がそこに集まる。
「美咲さんそれ何ー?」
「風車ー。大和村で買ったやつ、遊べそうだと思って持ってきた」
「いいなぁ。私も買えばよかった」
「他のでも色々遊べるよ」
美咲は手に持っていた風車を短パンの脇に差し、ポケットからビニール袋を取り出した。
ビニール袋を広げると、中に突風を受けて一気に膨らむ。
その勢いで美咲の身体が引っ張られそうになる。
「おおっと。はい、これあげるー」
踏ん張って態勢を整えた美咲はそのビニール袋を理沙に渡す。
すると、理沙も膨らんだビニール袋に身体を引っ張られる。
「わわ、飛ばされそう」
頑張って踏ん張る理沙だが、その顔はとても楽しそうであった。
それを見た周りの子達が羨ましそうな顔をする。
「部屋にビニール袋あったっけ?」
「私、売店で何か買って袋貰ってこよっと」
女の子達の多くがビニール袋を手に入れるべく、寮の中へと戻って行った。
「……私もちょっと取ってくるわ」
麻衣も寮の中へと走ったのだった。
特に会話もなく打っていると、理沙が不意に口を開く。
「この前、私の誕生日だったんだけど」
「そうなんだ。今度、何かプレゼントあげるよ」
理沙が言い終わる前に、優奈が素早く反応して言葉を返した。
「ほんと? 嬉しい」
話を遮られる形となったが、プレゼントをくれるとのことで理沙は喜ぶ。
しかし、そんな優奈の反応を見た麻衣が言う。
「たらしね」
「うはっ、確かに。今の遊んでる男っぽかった」
「うぐ」
理沙の言葉が優奈の胸に突き刺さる。
優奈は男から生まれ変わっただけに、そこは気にするところであった。
「優奈さんって地味にイケメンだよね。物知りだし、気遣いできるし、顔も整ってるし。これで男だったら私惚れてるわ」
「今の私に惚れてもいいんだよ?」
「あはは、それは遠慮しとく。って、そんな話がしたいんじゃなくて。くれるって言われた後で言い辛いけど、ここって誕生日でも何もないんだよ。誕生日プレゼントでも貰えるかなって期待してたのに、ほんと何にもなかった」
町での初めての誕生日とのことで、理沙は密かに期待していたが、その日は特に祝いの声をかけられることもなく、普段と何一つ変わらない一日だった。
「誕生日は過去に関することになるからねぇ。祝われることを良く思わない子もいるだろうから、管理者としては何もできないんじゃないかな」
優奈がそう言うと、麻衣がそれを補足するように言う。
「ここに来るのは大体親関係があれな人でしょ。私は祝われたくないとまでは思わないけど 碌でもない親だったわ」
「あぁ、うちも大体そんなもん。みんな苦労してるんだね」
理沙は納得する。
死別を除けば、町に居る子は皆、家族を捨てて移住をしてきている。
誕生日は親との関係性が強い事柄であるので、その日自体を好ましく思わない子もいたのであった。
その為、町で強制的に祝うようなことはなしにして、祝いたい子はそれぞれ個人間でやってもらうことにしていたのである。
「でも、それにしてはDQNネームの人この町にはいないわね。前のクラスでも一人や二人居たのに」
「そういえば居ないね。うちは真面目に振り切ってたから、そんな名前はつけられなかったけど」
「意外と名前はちゃんとつける親が多いのかしらね。私も名前は普通のつけられたし」
二人が不思議に思って喋っていると、その疑問に優奈が答える。
「移住する時に名前変えたんでしょ。町で新しい人生を送る為に」
「あ、そういうこと!」
二人は目から鱗が落ちたように納得した。
だが、それと同時にラウンジに居た女の子の数名が視線を露骨に外したりと、あからさまな反応を示す。
その反応で、麻衣達はこれは触れない方がいい話題であることを察した。
周りは自然と静まり、微妙な空気となる。
原因となった麻衣達が気まずい思いに困っていると、そこに美咲と真琴通りがかる。
「わ、いっぱいいる」
美咲はラウンジがいつもとは比べ物にならないほど賑わっていたことに驚いて声を漏らした。
その声で二人の存在に気付いた理沙が声を掛ける。
「あ、美咲さんに真琴さん。二人は麻雀出来る?」
「ん? 玩具のやつなら施設でやったことあるよ」
「おっ、それならいけるね。私ら今麻雀やってるんだけど、美咲さんも参加してよ」
「ごめんー。あたし達これから外で遊ぶから無理ー」
「外? え……今日、台風だよ?」
美咲がありえないことを言い出したことで、ラウンジに居た子達がざわめく。
「台風だからこそだよ。雨や風がばーって来る中を遊ぶのって、すんごい楽しそうじゃん。今日を逃したら、またいつ遊べるか分からない。期間限定の天然アトラクションやー」
美咲達は天候を逆手にとって遊ぼうとしていた。
町にはウイルスが存在しないので風邪を引くことはない。
仮に体調を崩したとしても、即座に完治させることができる。
だから、雨風に晒されることを気にしないのであれば、憚ることは他に何もなかった。
「それ面白そう。私も行こっかな」
「私も」
理沙が靡くと、他の子も次々と続いていく。
皆、期間限定という言葉には弱かった。
「よーし、じゃあみんなで行こー」
美咲の後に続くように、ラウンジからぞろぞろと女の子達が出ていく。
理沙ともう一人の子も席を立ち、テーブルには優奈一人が残された。
そこで麻衣が声を掛けてくる。
「残念そうね。外出たら最後はお風呂入ることになりそうだからいいんじゃない?」
「麻衣ちゃんは分かってないなぁ。勝って脱がせることに意義があるんだよ」
「ほんと分からないわ……」
麻衣は優奈の気持ちが理解できず、ただ呆れるのであった。
下へと降りた女の子達はロビーに出る。
「わほーい。突撃ー」
ロビーに出てすぐ、美咲と真琴は燥ぎながらダッシュで外へと出ていく。
他の子達もその後に続いてわらわらと走って行った。
遅れて麻衣と優奈もロビーにやってくる。
「燥いじゃって。みんなまだ子供ね」
麻衣は先程理沙に言われた言葉を微妙に気にしていた。
優奈は特には取り合わず、二人はそのまま外へと出る。
玄関出口から一歩出た直後、突風が二人を襲った。
二人のスカートが思い切り捲れ上がる。
「ぎゃー!」
麻衣は慌ててスカートの前を押さえてパンツを隠そうとする。
「麻衣ちゃん、カメラカメラ!」
「撮らせないわよ!? というか流石に壊れない? ちょっと戻って部屋に置いて来ようかしら」
「ちっちっち。未来の技術を舐めてもらっては困るよ。機械類の完全防水は当たり前。耐熱度も高くて火で炙って影響なし。そのうえ衝撃耐性までばっちりだから、並大抵のことでは壊れないよ。台風如きで壊れることは100%有り得ない」
「そんなに凄いんだ。それでも渡さないけど」
「ケチー」
「ケチで結構。というか、みんな全然気にしてないわね……」
他の女の子達はスカートが捲れることなど微塵も気にする素振りもなく、
それどころか衣服を脱ぎ去って燥いでいる子もいた。
「気にしてたら、こんなとこで遊べないよ」
「でしょうね……」
みんなの羞恥心がなくなっていることを改めて目の当たりにする。
「麻衣ちゃんもそんなこと気にしてないで楽しく遊ぼうよ。ほら、いい風だよ」
「女子としてどうかと思うけど……。でも確かにいい風ね」
外を吹き荒れている風は細菌や散塵が一切含まれていないので、地上の風よりも新鮮な気持ちよさを感じることができていた。
燥いでいた美咲が徐にポケットから風車を取り出す。
すると、その風車は台風の突風に吹かれて凄まじい勢いで回り始めた。
「わはー」
高速回転する風車によって、周りの子達の注目がそこに集まる。
「美咲さんそれ何ー?」
「風車ー。大和村で買ったやつ、遊べそうだと思って持ってきた」
「いいなぁ。私も買えばよかった」
「他のでも色々遊べるよ」
美咲は手に持っていた風車を短パンの脇に差し、ポケットからビニール袋を取り出した。
ビニール袋を広げると、中に突風を受けて一気に膨らむ。
その勢いで美咲の身体が引っ張られそうになる。
「おおっと。はい、これあげるー」
踏ん張って態勢を整えた美咲はそのビニール袋を理沙に渡す。
すると、理沙も膨らんだビニール袋に身体を引っ張られる。
「わわ、飛ばされそう」
頑張って踏ん張る理沙だが、その顔はとても楽しそうであった。
それを見た周りの子達が羨ましそうな顔をする。
「部屋にビニール袋あったっけ?」
「私、売店で何か買って袋貰ってこよっと」
女の子達の多くがビニール袋を手に入れるべく、寮の中へと戻って行った。
「……私もちょっと取ってくるわ」
麻衣も寮の中へと走ったのだった。
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