39 / 63
第三章
39話 宣戦布告
しおりを挟む
「さぁ、やって参りました久々の飛び入り挑戦者。入場してもらいましょう。選手・玖音と調教師の篠崎凛!」
凛と神獣姿の玖音が会場に入場してくる。
普段は盛り上がるところであったが、玖音の神々しいまでの美しい姿を受け、観客からはどよめきが起こる。
「彼女が選んだのは、なんと勝ち抜きランカー戦! 久々の参加者は、道場破りだった!? 一体、彼女らは、我々にどんな戦いを見せてくれるのでしょうか」
MCが紹介を行うと、ワンテンポ遅れて会場が沸き上がる。
怖ろしくも美しいモンスターが道場破りとのことで、観客達の期待指数は爆上がりであった。
対戦相手である熊のモンスター・ブラッドベアが入場し、最初の試合が始まる。
「実に美しいモンスターですね。見たことない種類のモンスターですが、如何見ますか?」
「実力は完全に未知数ですね。どこの協会にも所属していなかったとのことで、モンスターバトルの選手としては素人のようですが。あの出で立ち、ただ者ではないでしょう」
解説者達が話す中、ブラッドベアが玖音へと飛び掛かって来る。
食らいつこうとしたその瞬間、玖音が振り払うように素早く爪で引っ掻くと、ブラッドベアの巨体が吹っ飛んだ。
大きく飛ばされ、場外に倒れる。
あっという間の決着であった。
一瞬で決着が着き、会場は静まり返る。
僅かな静寂が続いたところで、審判が判定を告げると、会場全体が一気に沸き上がった。
クールに佇んで歓声を浴びる玖音だが、その表情は満更でもない様子だった。
その後も玖音は、順調に勝ち進んで行く。
「やっぱり余裕ね。優勝賞金、結構高額だし、これからはモンスターバトルで稼ぐのもいいかも」
試合の合間、凛達は控室で休憩していた。
「出るのは今回限りじゃ」
「えー、こんなに割がいいのに?」
「今回は卑劣な輩が許せぬから出ただけで、これもある意味不正じゃぞ?」
「そりゃ、そうだけどねー」
雑談をしていると、施設側の扉が開いた為、神獣姿の玖音は慌てて口を閉じる。
入って来たのは、ベルガモンスターバトル協会の会長だった。
凛達は身構え、緊張した空気となるが、会長はニコニコとした笑顔で手揉みをしながら話し始める。
「もー、凄腕のモンスターテイマーでしたのなら、先に言ってくださいよー。その若さで、こんなにも素晴らしいモンスターを従魔にしているなんて、さぞ名のあるテイマーなのでしょうね」
「……何しに来たのよ」
「それは勿論、先程の失礼な態度をお詫び致したいと思い、伺わせていただきました。先程は、誠に申し訳ありませんでした」
玖音の活躍を受け、清々しい程の掌返しをしてきた。
「それは八百長や工作を認めるってこと?」
「そうですね。お恥ずかしい限りですが、貴方の指摘通り、故意に勝敗を操作しておりました」
あっさりと認めた為、凛達は思わず面食らう。
だが、そんな凛達に会長は言葉を続けた。
「それで、ですね。凛様にお願いがあるのですが、勝ち抜き戦最後の試合で、負けて頂けないでしょうか」
「はぁ?」
「勿論、優勝賞金と同額の賞金はお渡しします」
会長の頼みとは、よりにもよって八百長の協力要請であった。
「馬鹿じゃないの。そんなのに協力する訳ないじゃない」
「では、賞金を更に二十パーセント、いえ、三十パーセント上乗せしましょう」
「どれだけ積まれてもお断りよ」
「ですよね……。では、勝っていただいて構いません。その代わり、このベルガの新たなスターとなっていただきたい」
「それも嫌よ。モンスターバトルの選手になる気はないわ。私が参加した理由は、貴方達のやったことが許せなかったから。貴方が手塩にかけて育てた無敗の王者を、ぎったんぎったんに叩きのめして、二度と八百長なんてしようと思わせないようにしてあげるわ」
凛が宣戦布告すると、笑顔だった会長の顔が怒りの形相に変わる。
「下手に出ていれば、調子に乗りおって! 後悔することになるぞ」
「できるものなら、やってみなさい」
「覚悟しておけ!」
会長は激怒しながら控室から出て行った。
凛と神獣姿の玖音が会場に入場してくる。
普段は盛り上がるところであったが、玖音の神々しいまでの美しい姿を受け、観客からはどよめきが起こる。
「彼女が選んだのは、なんと勝ち抜きランカー戦! 久々の参加者は、道場破りだった!? 一体、彼女らは、我々にどんな戦いを見せてくれるのでしょうか」
MCが紹介を行うと、ワンテンポ遅れて会場が沸き上がる。
怖ろしくも美しいモンスターが道場破りとのことで、観客達の期待指数は爆上がりであった。
対戦相手である熊のモンスター・ブラッドベアが入場し、最初の試合が始まる。
「実に美しいモンスターですね。見たことない種類のモンスターですが、如何見ますか?」
「実力は完全に未知数ですね。どこの協会にも所属していなかったとのことで、モンスターバトルの選手としては素人のようですが。あの出で立ち、ただ者ではないでしょう」
解説者達が話す中、ブラッドベアが玖音へと飛び掛かって来る。
食らいつこうとしたその瞬間、玖音が振り払うように素早く爪で引っ掻くと、ブラッドベアの巨体が吹っ飛んだ。
大きく飛ばされ、場外に倒れる。
あっという間の決着であった。
一瞬で決着が着き、会場は静まり返る。
僅かな静寂が続いたところで、審判が判定を告げると、会場全体が一気に沸き上がった。
クールに佇んで歓声を浴びる玖音だが、その表情は満更でもない様子だった。
その後も玖音は、順調に勝ち進んで行く。
「やっぱり余裕ね。優勝賞金、結構高額だし、これからはモンスターバトルで稼ぐのもいいかも」
試合の合間、凛達は控室で休憩していた。
「出るのは今回限りじゃ」
「えー、こんなに割がいいのに?」
「今回は卑劣な輩が許せぬから出ただけで、これもある意味不正じゃぞ?」
「そりゃ、そうだけどねー」
雑談をしていると、施設側の扉が開いた為、神獣姿の玖音は慌てて口を閉じる。
入って来たのは、ベルガモンスターバトル協会の会長だった。
凛達は身構え、緊張した空気となるが、会長はニコニコとした笑顔で手揉みをしながら話し始める。
「もー、凄腕のモンスターテイマーでしたのなら、先に言ってくださいよー。その若さで、こんなにも素晴らしいモンスターを従魔にしているなんて、さぞ名のあるテイマーなのでしょうね」
「……何しに来たのよ」
「それは勿論、先程の失礼な態度をお詫び致したいと思い、伺わせていただきました。先程は、誠に申し訳ありませんでした」
玖音の活躍を受け、清々しい程の掌返しをしてきた。
「それは八百長や工作を認めるってこと?」
「そうですね。お恥ずかしい限りですが、貴方の指摘通り、故意に勝敗を操作しておりました」
あっさりと認めた為、凛達は思わず面食らう。
だが、そんな凛達に会長は言葉を続けた。
「それで、ですね。凛様にお願いがあるのですが、勝ち抜き戦最後の試合で、負けて頂けないでしょうか」
「はぁ?」
「勿論、優勝賞金と同額の賞金はお渡しします」
会長の頼みとは、よりにもよって八百長の協力要請であった。
「馬鹿じゃないの。そんなのに協力する訳ないじゃない」
「では、賞金を更に二十パーセント、いえ、三十パーセント上乗せしましょう」
「どれだけ積まれてもお断りよ」
「ですよね……。では、勝っていただいて構いません。その代わり、このベルガの新たなスターとなっていただきたい」
「それも嫌よ。モンスターバトルの選手になる気はないわ。私が参加した理由は、貴方達のやったことが許せなかったから。貴方が手塩にかけて育てた無敗の王者を、ぎったんぎったんに叩きのめして、二度と八百長なんてしようと思わせないようにしてあげるわ」
凛が宣戦布告すると、笑顔だった会長の顔が怒りの形相に変わる。
「下手に出ていれば、調子に乗りおって! 後悔することになるぞ」
「できるものなら、やってみなさい」
「覚悟しておけ!」
会長は激怒しながら控室から出て行った。
11
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる