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第二章
24話 告訴状
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「あーあ、やっちまったな。すっきりはしたけど、これからどうするんだ?」
フラムが近付いてきて凛に言った。
「何度でも追い払ってやるわ。そうすれば、そのうち、あっちも私と何て結婚する気なくなるでしょ」
穏便に対応することを諦めた凛は、もう武力行使も厭わない姿勢であった。
「うーん、どうなんだろうな……」
「何? 何かあるの?」
「いや、向こうも強硬姿勢に出てきたら、どうなるんだろうと思って。噂だけど、この街のマフィア、暗殺者を抱えてるところもあるらしいから」
「マジ? でも、流石に殺しに来たりはしないでしょ。目的は私の取り込みなんだから」
「そうだよな。あいつらがマフィアと関わり持ってるとも限らないし。ちょっと考え過ぎだったかも」
店に暴漢を嗾けられたこともあって、フラムは不安になっていた。
「安心してちょうだい。たとえ全面戦争になったとしても、勝てる見込みは十分あるから」
凛だけでなく、玖音も十分過ぎる程の戦力である。
有り余る武力を持っている為、どんな状況になっても凛は負ける気がしなかった。
しかし、相手からの次の一手は、予想外の形でやってきた。
”告訴状。被告訴人・篠崎 凛はミハエル・ウェルダムに暴行を加える行為に及んだ為、被告訴人を暴行罪で厳罰に処することを求めて、ここに告訴いたします”
数日後、凛の下に届いたのは告訴状の手紙だった。
「何よ、これー!!!」
凛はもう物理的に戦う気満々だったが、ロバートが仕掛けてきたのは法による反撃だった。
「不味いことになりましたね。目撃者も多数いますから、言い逃れは難しいかと」
ルイスが苦々しい顔をしながら見解を述べる。
凛が手を出したのは事実なので、この告訴状には正当性があった。
「向こうから仕掛けてきたのに」
「セクハラを受けたという理由だけで打ち消すのは、ちょっと厳しいですね。暴漢を嗾けたことまで証明できれば、何とかなるかもしれませんが……」
凛は迂闊な行動をしてしまったことを後悔する。
先日のミハエルの態度から、暴漢との繋がりの証拠は徹底的に消しているであろうことは容易に想像できた為、証明は絶望的だった。
「おや? もう一枚あるようですね」
告訴状の封筒の中には、もう一枚紙が入っていた。
その紙には、話し合いには応じる旨と、その場を設ける日時と場所の指定が記載されていた。
「……最低過ぎる」
書かれてはいないが、明らかに縁談を受け入れさせる為の、告訴状を盾にした脅迫だった。
指定された日時。
凛は無視する訳にもいかなかったので、話し合いの場所であるロバートの邸宅を訪れた。
「和解する準備は整っています。こちらの要望は言わずとも分かっていますよね?」
「糞野郎。やり方が汚すぎるわ」
「欲しいものは、何が何でも手に入れる主義でしてね。気分を害することをして申し訳ありません。これでも凛さんと敵対するつもりは更々ありませんので」
あれだけのことをしておいてロバートは融和姿勢を取っていた。
「どこがよ。もう完全に敵対行為じゃない。こんなんで縁談とか、もう笑い話でしかないわ」
「ちょっとした喧嘩みたいなものと思ってください。貴方を潰すつもりなどなく、仲直りの用意までしているのですから」
婚姻を受け入れ、多額の資産を前にすれば、怒りは収まるだろうとの考えであった。
しかし、凛はお金に靡くような人間ではない。
「冗談じゃないわ。あんなことされて益々嫌になったわ。私の答えは変わらず、お断りよ」
「よろしいのですか? 断れば、貴方は犯罪者になってしまいますよ? 貴方が収監されれば、あの親子の会社も長くはもたないでしょう」
「卑怯者。でもね。私を舐めないでちょうだい。それでも戦う覚悟は持ってるわ」
どんな脅しが来ようとも、凛はそれを吹き飛ばせるだけの武力を持っている為、断固戦う姿勢を見せた。
「まぁまぁ、焦らず。今日は先日迷惑を掛けたお詫びに、持て成させていただこうと思っていますので、答えを出すのは、その後でも遅くはないでしょう。もう夜も遅いですから、今日はお泊りになって、よくよく考えてみてください」
凛の態度が頑なだったので、ロバートは早々に話を打ち切り、メイドに手配させて、凛を客室へと案内させた。
フラムが近付いてきて凛に言った。
「何度でも追い払ってやるわ。そうすれば、そのうち、あっちも私と何て結婚する気なくなるでしょ」
穏便に対応することを諦めた凛は、もう武力行使も厭わない姿勢であった。
「うーん、どうなんだろうな……」
「何? 何かあるの?」
「いや、向こうも強硬姿勢に出てきたら、どうなるんだろうと思って。噂だけど、この街のマフィア、暗殺者を抱えてるところもあるらしいから」
「マジ? でも、流石に殺しに来たりはしないでしょ。目的は私の取り込みなんだから」
「そうだよな。あいつらがマフィアと関わり持ってるとも限らないし。ちょっと考え過ぎだったかも」
店に暴漢を嗾けられたこともあって、フラムは不安になっていた。
「安心してちょうだい。たとえ全面戦争になったとしても、勝てる見込みは十分あるから」
凛だけでなく、玖音も十分過ぎる程の戦力である。
有り余る武力を持っている為、どんな状況になっても凛は負ける気がしなかった。
しかし、相手からの次の一手は、予想外の形でやってきた。
”告訴状。被告訴人・篠崎 凛はミハエル・ウェルダムに暴行を加える行為に及んだ為、被告訴人を暴行罪で厳罰に処することを求めて、ここに告訴いたします”
数日後、凛の下に届いたのは告訴状の手紙だった。
「何よ、これー!!!」
凛はもう物理的に戦う気満々だったが、ロバートが仕掛けてきたのは法による反撃だった。
「不味いことになりましたね。目撃者も多数いますから、言い逃れは難しいかと」
ルイスが苦々しい顔をしながら見解を述べる。
凛が手を出したのは事実なので、この告訴状には正当性があった。
「向こうから仕掛けてきたのに」
「セクハラを受けたという理由だけで打ち消すのは、ちょっと厳しいですね。暴漢を嗾けたことまで証明できれば、何とかなるかもしれませんが……」
凛は迂闊な行動をしてしまったことを後悔する。
先日のミハエルの態度から、暴漢との繋がりの証拠は徹底的に消しているであろうことは容易に想像できた為、証明は絶望的だった。
「おや? もう一枚あるようですね」
告訴状の封筒の中には、もう一枚紙が入っていた。
その紙には、話し合いには応じる旨と、その場を設ける日時と場所の指定が記載されていた。
「……最低過ぎる」
書かれてはいないが、明らかに縁談を受け入れさせる為の、告訴状を盾にした脅迫だった。
指定された日時。
凛は無視する訳にもいかなかったので、話し合いの場所であるロバートの邸宅を訪れた。
「和解する準備は整っています。こちらの要望は言わずとも分かっていますよね?」
「糞野郎。やり方が汚すぎるわ」
「欲しいものは、何が何でも手に入れる主義でしてね。気分を害することをして申し訳ありません。これでも凛さんと敵対するつもりは更々ありませんので」
あれだけのことをしておいてロバートは融和姿勢を取っていた。
「どこがよ。もう完全に敵対行為じゃない。こんなんで縁談とか、もう笑い話でしかないわ」
「ちょっとした喧嘩みたいなものと思ってください。貴方を潰すつもりなどなく、仲直りの用意までしているのですから」
婚姻を受け入れ、多額の資産を前にすれば、怒りは収まるだろうとの考えであった。
しかし、凛はお金に靡くような人間ではない。
「冗談じゃないわ。あんなことされて益々嫌になったわ。私の答えは変わらず、お断りよ」
「よろしいのですか? 断れば、貴方は犯罪者になってしまいますよ? 貴方が収監されれば、あの親子の会社も長くはもたないでしょう」
「卑怯者。でもね。私を舐めないでちょうだい。それでも戦う覚悟は持ってるわ」
どんな脅しが来ようとも、凛はそれを吹き飛ばせるだけの武力を持っている為、断固戦う姿勢を見せた。
「まぁまぁ、焦らず。今日は先日迷惑を掛けたお詫びに、持て成させていただこうと思っていますので、答えを出すのは、その後でも遅くはないでしょう。もう夜も遅いですから、今日はお泊りになって、よくよく考えてみてください」
凛の態度が頑なだったので、ロバートは早々に話を打ち切り、メイドに手配させて、凛を客室へと案内させた。
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