旅して作ろう! 百合娘による女の子ハーレム ~異世界巡って、ご当地女の子集め~

白井よもぎ

文字の大きさ
上 下
19 / 63
第二章

19話 店長

しおりを挟む
 ファーベル社・工場前に建てられている直営店。
 そこのカウンターに凛は座っていた。

「まさか本当にやることになるとは」

 ロバートの誘いを断る言い訳に、店長をやると言った凛だったが、ルイスが名案だと本当に店長をやるよう頼んで来た。

「いつでも辞めていいからって言われて、引き受けたけど、うーん……どうせやるなら、もうちょっと女の子受けする店が良かったわ」

 直営店とのことで魔道具製品、所謂家電製品のお店なので、若い女の子はあまり来るようなところではない。
 凛もそんな店の店長をやっても楽しくない為、無理言って、店の一角にアクセサリーコーナーを設けたが、客足が少ないこともあって、女の子の来店はまだない。

「凛ー、できたやつ適当に陳列しといていいかー?」

 カウンターの裏から、アクセサリーが入った箱を持ったフラムが出てくる。

「ええ、見栄え良くね」

 フラムはそのままアクセサリーコーナーへ行き、箱の中のアクセサリーの陳列を始める。
 工場ではアクセサリーの生産などしていない為、お店のバックヤードに備え付けた工房で、フラムとクレアの二人が練習がてら制作していた。

 店舗ではまだ売れていないが、高額製品購入者への粗品としてや、営業の贈呈品に使えるので、沢山作っても無駄にはならない。


 客もおらず、暇を持て余す凛。
 カウンターの隅に視線を移すと、そこでは玖音がのんびりとしていた。

「玖音は何にもやらないつもり? 今は暇だからいいけど、忙しくなったら手貸してよね」
「その時は、工場から借りて来ればいいじゃろ」
「嫌よ。そっちには若い女の子いないじゃない」
「何言っとるんじゃ」
「私、同い年から年下の女の子が好きなの。ほら、見てごらんなさい。可愛い女の子だけの職場。正に楽園じゃない」

 本来、店員として工場の従業員を当てる予定であったが、凛は女の子だけの職場にしたかった為、手が回らなくなるまでは不要と、断っていた。

「知らんよ。一応言っておくが、儂は年上じゃぞ? 正確な歳は忘れたが、少なくとも三百年以上は生きておる」
「玖音はそうでしょうね。実年齢は私の守備範囲から外れてるけど、玖音は人間じゃないし、見た目と精神年齢が低ければイケるわ」
「馬鹿にしておるのかっ」
「ううん、褒めてる」
「どこがじゃ。……主は時々よく分からんの」

 凛の感性がズレているので、玖音どう反応すればいいのか分からなくなっていた。



 その時、店の入り口の扉が開き、一人の男性が入って来る。
 男性は高そうな衣装に身を包んでおり、そのファッションセンスからか、気障っぽい雰囲気を醸し出していた。

「いらっしゃいませー」

 店に入って来た男性は、凛の居るカウンターへと一直線にやって来る。

「お嬢さん。凛という子はどこだい?」
「私ですが」

 凛が自分だと答えると、男性は値踏みするように見てから名乗る。

「ふむ、悪くないな。僕はウェルダム商事の御曹司、ミハエル・ウェルダム。君の夫となる男だ」
「はぁああああ? 何言ってんの?」

 その男性客はロバートの一人息子・ミハエルだった。

「態々、君の為に挨拶しに来てやった。壮大に感謝するがいい」

 ミハエルは非常に偉そうな態度を取っていた。

「あの……ロバートさんの息子さんですよね? 嫁入りのお誘いは断ったはずですが」
「庶民の君が、この僕に釣り合わないと思うのは当然のことだ。だが、安心してくれたまえ。才能と美貌があれば、庶民の女でも受け入れる器が、僕にはある」

 とことんまで上から目線で話してくるミハエルに、凛は怒りも感じずに呆れ返ってしまう。

「そうじゃなくて、ただ結婚する気がないから、断ったんですけど」
「遠慮しなくていい。僕は君を受け入れると言っているのだ」
「いや、だから、お断りしますと言っているんです。お断り、願い下げ、断固拒否」
「おやおや、照れているのかい? 可愛い子猫ちゃんだ」

 ミハエルは凛の言葉を真に受けず、冗談交じりに凛のおでこを指でつっつく。
 凛は声にならない悲鳴を上げ、全身に鳥肌を立たせた。

「ふふふ、どうやら庶民の君には刺激が強かったようだね。今日はこのくらいにして、また日を改めて来るよ」

 凛の反応を受け、ミハエルは緊張していると勘違いし、見当違いの気遣いをしながら引き下がった。


 ミハエルが店から出て行くと、凛は溜め込んでいたものを出すかのように息を吐き出す。

「うへー、何なのあれ」

 ミハエルは非常に特徴的な性格で、これまで凛の会ったことのないタイプの人間だった。
 いくら断っても、違うように解釈され、暖簾に腕押しの状態。
 まだ短い会話しかしていないが、それだけでも厄介な相手であろうことが分かった。

「凛、結婚すんの?」

 フラムとクレアはバックヤードから顔を覗かせて、一連のやり取りを見ていた。

「する訳ない。あんなの論外でしょ」
「でも、したら玉の輿になれるぜ。あそこ、とんでもない金持ちだから」
「無理無理、どんなにお金積まれても、男と結婚なんてできないわ。もし、相手が可愛い女の子だったら、大歓迎だったけど」
「?? 凛って女だよな?」
「そうよ。女だけど女の子が好きなの。結婚するなら、フラムちゃん達みたいな可愛い女の子がいいわ」
「さっき話してたのガチな方だったんだ……。凛くらいの人なら、感性も違うんだろうな」

 フラムとクレアは驚いてはいるが、引いたりはしていない。
 色んな能力が人間離れしていて、元から一般人の枠から外れていたので、変わり者として受け入れられたのだった。

 そのやり取りを見ていた玖音が言う。

「主も難儀じゃの。若い女子が欲しいなら、土地神にでもなったらどうじゃ? 頼んでもいないのに、生贄で送られて来るぞ」
「それは、ちょっとそそるわね……」

 オキツネ村では生贄を懸命に阻止した凛だったが、自分が奉げてもらう立場になって考えると、魅力的に思ってしまうのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...