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第二章
15話 営業
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次に訪れた企業の社長室。
ルイス達と対面するそこの企業の社長だが、強引にアポを取ったせいか、機嫌が悪そうな顔をしていた。
「用件は手短に頼むよ」
「は、はい」
その態度だけで、契約の見込みが極めて薄いと、ルイスはこれまでの営業経験から察してしまう。
だが、凛の指示がある為、最善は尽くさなければならない。
(ええっと、相手が興味のあることを……)
丁度、場所が社長室だった為、ルイスは何か話題に繋がる物がないかと、周りを見回す。
すると、壁に”兎人族保護協会”と書かれたエンブレムが飾ってあるのを見つけた。
「兎人族保護、ですか」
ルイスがポツリと呟くと、社長がピクリと反応する。
「君はもしや、兎人族が好きなのかね?」
「ええ、まぁ。可愛らしいですよね」
社長の問いかけに、ルイスは話を合わせる為にそう答えた。
すると、社長は身を乗り出して喋り始める。
「おぉ! 兎人族の魅力が分かるとは、なかなか見る目のあるお方のようだ。兎人族、特に若い女子はとてもキュートで愛らしい。この世界の宝と言っても、過言ではない存在でしょう。しかし、それ故に奴隷狩りや性犯罪の被害は多く、全く嘆かわしい限りです。か弱き彼女達に手を出すことなど言語道断。優しく愛でることが正しい接し方でしょう。貴方も、そうは思いませんか?」
「そ、そうですね。私も全面的に同意します」
「やはり貴方は話が分かる方だ」
ルイスの返事を聞いた社長は、満面の笑みとなり、兎人族についてペラペラと語り始めた。
――――
それからも社長のお喋りは止まることなく、時間が過ぎて行き、ルイスの隣に座っていた凛とフラムは暇そうに足をぶらぶらとさせていた。
ちなみに、子連れで営業するのは常識外れな行動とも思えるが、ここの国では十二歳から、大人と同じように働くことが多い為、不興を買うようなことはない。
社長が饒舌に話を続けていると、脇に控えていた秘書が口を開く。
「社長、そろそろ次の予定のお時間が」
「もうこんな時間か。そういえば、ルイスさんの用件は何でしたかな?」
社長は思い出したようにして訊ねて来た。
「あ、はい、我が社が開発した空気清浄機を、是非ご購入いただきたいと紹介を」
「分かった。購入しよう」
「え」
話の詳細も聞かず、購入を決められ、ルイスは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。
そんなルイスに目もくれず、社長は秘書に指示を出す。
「適当に必要な台数決めて、購入手続きしておいてくれ」
秘書に購入手続きを任せ、社長は席を立つ。
「では、予定が押しているので、これで失礼する。続きはまた今度、飲みながらでも」
社長はいい笑顔を見せて、上機嫌の様子で部屋から出て行った。
売買契約を無事結び、ルイス達はその企業の建物から出てくる。
だが、ルイスは釈然としない様子だった。
「全然、商品の説明をしてないのに何故……」
「ルイスさんを気に入ってくれたからよ。気に入った相手の頼みは聞きたくなるものじゃない。逆に不快にしてきた相手が勧めてきたものは、どんなに良い商品でも買いたくないものよ」
失敗する可能性が高いと思われた商談は、まずは話を聞くという凛のアドバイスが功を成し、逆転成功したのだった。
「そんなことで購入を決めていいんですかね。ちゃんと商品の良し悪しで決めるべきと思うのですが……」
「人間そんなもんよ。商品の良さは使って行くうちに分かるはずだから、今後ちゃんと評価されると思うわ」
凛の目論見通りに成功したが、職人気質だったルイスは、どうも腑に落ちない様子だった。
それからも凛の教え通りに商談を行い、続々と契約が取れて行った。
相手の話を聞くことから、どうしても商談時間が長くなる為、商談はルイス一人に任せ、凛とフラムはその間、商談先の建物の近くで、飲み物片手に時間を潰していた。
「本当に凄いや。こんなに契約取れたの初めて」
フラムは尊敬の眼差しを凛に向けている。
「哲学の授業で習ったことを応用しただけよ。良好な人間関係を築く為の心得だから、営業にも使えると思ってね」
謙遜する凛だが、その顔は非常に嬉しそうだった。
「凛さんって、もしかして凄いエリートなんです?」
「そう見える? 自慢になっちゃうけど、結構いいところ通ってたのよ」
「すげー! あたしも凛さんみたいにないたい。あっ、なりたいです」
「タメ口でいいわよ。歳は殆ど同じくらいでしょ」
慣れない感じで敬語を使っていたので、凛はタメ口で話すよう言った。
フラムはドワーフ族故に少し小柄であったが、年齢は凛の一、二歳ほど下なだけだった。
「そ、そう? じゃあ、そうさせてもらうよ。敬語って、喋り辛くて喋り辛くて」
フラムは肩の力が抜けたように気を楽にして喋り始める。
「けど、乱暴な喋り方でごめんな。父ちゃんや会社のみんなこうだったから、これが普通になっちゃって。凛みたいに女の子らしい人が羨ましいよ」
「フラムちゃんはフラムちゃんの魅力があるから、そんな羨むことないわ。そのままでも十分可愛いと思うわよ」
「嘘だぁ。学校行ってた時は、男女ってよく言われてたぐらいなのに。休み時間の時だって、男子と混ざって外で遊んでたんだぞ」
「活発で男っぽいのはマイナスなんかじゃないわ。ボーイッシュって言って、かなり人気のあるジャンルなのよ。可愛い女の子なのに活発でガサツ、そのギャップがいいの。フラムちゃんなんて、もうボーイッシュのド直球だから、めっちゃめちゃ可愛いわ」
凛はこれでもかと本音で褒めちぎる。
「ちょ、ちょっと止めろよっ。あたしなんて全然可愛くなんてないからっ」
言われ慣れていないせいか、フラムは顔を赤くしながら否定する。
しかし、その顔は満更でもない様子だった。
そうしていると、商談を終わらせたルイスが建物から出てくる。
「あ、父ちゃん。どうだった?」
フラムが尋ねると、ルイスは手で丸を作って笑顔を見せた。
契約は十分取れたとのことで、三人は工場へと帰り、今度は納品する商品の製造に移ることとなった。
ルイス達と対面するそこの企業の社長だが、強引にアポを取ったせいか、機嫌が悪そうな顔をしていた。
「用件は手短に頼むよ」
「は、はい」
その態度だけで、契約の見込みが極めて薄いと、ルイスはこれまでの営業経験から察してしまう。
だが、凛の指示がある為、最善は尽くさなければならない。
(ええっと、相手が興味のあることを……)
丁度、場所が社長室だった為、ルイスは何か話題に繋がる物がないかと、周りを見回す。
すると、壁に”兎人族保護協会”と書かれたエンブレムが飾ってあるのを見つけた。
「兎人族保護、ですか」
ルイスがポツリと呟くと、社長がピクリと反応する。
「君はもしや、兎人族が好きなのかね?」
「ええ、まぁ。可愛らしいですよね」
社長の問いかけに、ルイスは話を合わせる為にそう答えた。
すると、社長は身を乗り出して喋り始める。
「おぉ! 兎人族の魅力が分かるとは、なかなか見る目のあるお方のようだ。兎人族、特に若い女子はとてもキュートで愛らしい。この世界の宝と言っても、過言ではない存在でしょう。しかし、それ故に奴隷狩りや性犯罪の被害は多く、全く嘆かわしい限りです。か弱き彼女達に手を出すことなど言語道断。優しく愛でることが正しい接し方でしょう。貴方も、そうは思いませんか?」
「そ、そうですね。私も全面的に同意します」
「やはり貴方は話が分かる方だ」
ルイスの返事を聞いた社長は、満面の笑みとなり、兎人族についてペラペラと語り始めた。
――――
それからも社長のお喋りは止まることなく、時間が過ぎて行き、ルイスの隣に座っていた凛とフラムは暇そうに足をぶらぶらとさせていた。
ちなみに、子連れで営業するのは常識外れな行動とも思えるが、ここの国では十二歳から、大人と同じように働くことが多い為、不興を買うようなことはない。
社長が饒舌に話を続けていると、脇に控えていた秘書が口を開く。
「社長、そろそろ次の予定のお時間が」
「もうこんな時間か。そういえば、ルイスさんの用件は何でしたかな?」
社長は思い出したようにして訊ねて来た。
「あ、はい、我が社が開発した空気清浄機を、是非ご購入いただきたいと紹介を」
「分かった。購入しよう」
「え」
話の詳細も聞かず、購入を決められ、ルイスは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。
そんなルイスに目もくれず、社長は秘書に指示を出す。
「適当に必要な台数決めて、購入手続きしておいてくれ」
秘書に購入手続きを任せ、社長は席を立つ。
「では、予定が押しているので、これで失礼する。続きはまた今度、飲みながらでも」
社長はいい笑顔を見せて、上機嫌の様子で部屋から出て行った。
売買契約を無事結び、ルイス達はその企業の建物から出てくる。
だが、ルイスは釈然としない様子だった。
「全然、商品の説明をしてないのに何故……」
「ルイスさんを気に入ってくれたからよ。気に入った相手の頼みは聞きたくなるものじゃない。逆に不快にしてきた相手が勧めてきたものは、どんなに良い商品でも買いたくないものよ」
失敗する可能性が高いと思われた商談は、まずは話を聞くという凛のアドバイスが功を成し、逆転成功したのだった。
「そんなことで購入を決めていいんですかね。ちゃんと商品の良し悪しで決めるべきと思うのですが……」
「人間そんなもんよ。商品の良さは使って行くうちに分かるはずだから、今後ちゃんと評価されると思うわ」
凛の目論見通りに成功したが、職人気質だったルイスは、どうも腑に落ちない様子だった。
それからも凛の教え通りに商談を行い、続々と契約が取れて行った。
相手の話を聞くことから、どうしても商談時間が長くなる為、商談はルイス一人に任せ、凛とフラムはその間、商談先の建物の近くで、飲み物片手に時間を潰していた。
「本当に凄いや。こんなに契約取れたの初めて」
フラムは尊敬の眼差しを凛に向けている。
「哲学の授業で習ったことを応用しただけよ。良好な人間関係を築く為の心得だから、営業にも使えると思ってね」
謙遜する凛だが、その顔は非常に嬉しそうだった。
「凛さんって、もしかして凄いエリートなんです?」
「そう見える? 自慢になっちゃうけど、結構いいところ通ってたのよ」
「すげー! あたしも凛さんみたいにないたい。あっ、なりたいです」
「タメ口でいいわよ。歳は殆ど同じくらいでしょ」
慣れない感じで敬語を使っていたので、凛はタメ口で話すよう言った。
フラムはドワーフ族故に少し小柄であったが、年齢は凛の一、二歳ほど下なだけだった。
「そ、そう? じゃあ、そうさせてもらうよ。敬語って、喋り辛くて喋り辛くて」
フラムは肩の力が抜けたように気を楽にして喋り始める。
「けど、乱暴な喋り方でごめんな。父ちゃんや会社のみんなこうだったから、これが普通になっちゃって。凛みたいに女の子らしい人が羨ましいよ」
「フラムちゃんはフラムちゃんの魅力があるから、そんな羨むことないわ。そのままでも十分可愛いと思うわよ」
「嘘だぁ。学校行ってた時は、男女ってよく言われてたぐらいなのに。休み時間の時だって、男子と混ざって外で遊んでたんだぞ」
「活発で男っぽいのはマイナスなんかじゃないわ。ボーイッシュって言って、かなり人気のあるジャンルなのよ。可愛い女の子なのに活発でガサツ、そのギャップがいいの。フラムちゃんなんて、もうボーイッシュのド直球だから、めっちゃめちゃ可愛いわ」
凛はこれでもかと本音で褒めちぎる。
「ちょ、ちょっと止めろよっ。あたしなんて全然可愛くなんてないからっ」
言われ慣れていないせいか、フラムは顔を赤くしながら否定する。
しかし、その顔は満更でもない様子だった。
そうしていると、商談を終わらせたルイスが建物から出てくる。
「あ、父ちゃん。どうだった?」
フラムが尋ねると、ルイスは手で丸を作って笑顔を見せた。
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