旅して作ろう! 百合娘による女の子ハーレム ~異世界巡って、ご当地女の子集め~

白井よもぎ

文字の大きさ
上 下
13 / 63
第二章

13話 工業都市ビフレフト

しおりを挟む
当然のことというか、いわばオリエンテーションのようにわたしは由良さんにくっついていく形となっている。

この家にあるのは、紀州藩お抱えの名工として知られる"南紀重國"の刀。
影打のため銘は切られていないが、初代の作に比定される名刀だそうだ。

ただし、普通の刀ではない。

いわゆる妖刀であり、この家の主が代々厳重に保管してきたものを、同じく瀬乃神宮が封印を担ってきたのだという。

妖刀ではあるがその強すぎる力のため逆にあやかしを寄せ付けず、鎮壇具として機能してきた歴史をもっている。

由良さんは、その封印のための結界を更新しにやってきたついでに、ご当主が所蔵する他の刀の手入れも引き受けていたのだ。

渡り廊下の先の離れは、むしろ蔵のような造りだった。
漆喰で固めた土壁、それと同じ分厚さの重たげな外扉、その内側には琥珀色に年経た木扉があり、古くなったしめ縄が張られている。

「ほいたら、あんじょうお頼み申します。客間でお茶用意しとるさかいよ」

ご当主は由良さんとわたしに丁寧な礼をして、母屋へと戻っていった。
親しみやすいのに、なんともいえない品のある立ち居振る舞いにほれぼれとしてしまう。

由良さんの結界更新の作業は、わたしには正直よくわからなかった。
けれど説明してもらったところをまとめると、だいたいこうだ。

まず、瀬乃神宮の作法は神も仏も一緒に祀っていた古い時代のもので、祝詞もあげれば真言も唱えるという、むしろ修験道なんかに近いスタイルなのだという。

結界というものはひとつひとつはそんなに強くないため、何重にも張ることと、定期的に更新が必要なこと。

由良さんは土蔵の前で拝礼し、小さく唱えごとをしながら装束の袖の中でいくつかの印を組んでいるようだった。

これは祭式を執り行う前、術者自身にかける結界のようなもので、"如来の甲冑"と表現していた。
もちろん、わたしにも術がかかるようにしてくれている。

ここの結界は主にしめ縄が中心で、平たくいえばこれを新しいものに張り直すのが眼目だった。
ただし、旧のものを取り外すために仮の結界をあらかじめ張って、その中で作業をするという入念さだ。

たいして役に立たないわたしだけど、しめ縄の端っこを持ったりして手伝いらしきことをしてみる。

ひと通り結界の更新が済むと、由良さんはいよいよ土蔵の中へと立ち入っていく。
中は外見から想像するよりも狭く、真ん中に小さな祭壇のようなものが設けられ、周囲を五色の糸を撚り合わせた縄が巡っている。

その中心には細長い木箱が安置され、外からの明かりで、

「於南紀重國造之 影打」

と墨書された文字が浮かび上がっていた。

妖刀、と聞いていたので何やらおどろおどろしい気を放つものかと身構えていたけれど、特になんということも感じない。

由良さんは壇の水瓶に生けられていた槇を新しいものに取り替え、拝礼して短い祝詞のようなものを唱えると、それでお仕事は終わってしまった。

やや拍子抜けして木扉を閉じ、蔵を後にする。

「あかり先生がてっとうてくれて助かったわあ。しめ縄、一人やと難儀やねん」

由良さんが屈託なくそう言い、お浄めの海塩を軽くかけてくれる。
わたしも由良さんにお塩をかけ返しながら、「てっとうて」が「手伝って」の意味だと遅れて気付いた。

母屋へと戻りながら、ご当主に終了の報告をすべく客間に向かう。
しかし、そちらの方向からなにやら人の争うような声が聞こえてきて、由良さんと顔を見合わせた。

近づくにつれてよりはっきりと怒声がわかり、客間の奥からいくつもの足音がドスドスと響いてきた。
ガララッと乱暴に障子が開け放たれスーツ姿の男が3人、憤然と出てきて、由良さんとわたしを押しのけるようにして玄関口へと降りていった。

「ご当主!なんもないか!」

由良さんが客間に駆け込み、お爺ちゃんの安否を確認する。

「おお、気づかいないよ。えらい騒がせてしもたなあ」

ご当主ののんびりした声にほっとしたのも束の間、客間に入ったわたしはその光景に肝を冷やした。

畳には抜き身の刀が幾本も突き立てられており、その向こうには傍らに鞘に収められた日本刀を携えたご当主が端座している。

平気な顔で「いまお茶いれるさかい」という彼を制して、話を聞くところによるとこうだ。

以前から度々、古美術商を名乗る男たちの出入りはあったらしい。
しかし最近になって、ご当主が祀る南紀重國を譲ってほしいという業者が現れ、かなりしつこく訪問を受けていたそうだ。

さっきの男たちがそうで、一般には知られていないはずの結界文化財としての価値に精通していることをほのめかしていたという。

当然譲れるようなものではないことを承知で、男たちは高額の条件を提示するなどなりふり構わない手段に出、やがてあからさまな恫喝を行うようになってきた。

さっきの抜き身の刀は男たちの過ぎた脅しに対して、ご当主が次々に突き立てていったものだという。
この人もただの好々爺というわけではなく、尋常じゃない肝の座り方をしているようだ。

「あの刀がらみやと警察にもいわれへんさかい、トクブンの刑部さんに相談しますわえ」

トクブンが"特務文化遺産課"であることはすぐわかった。
普通なら警察の案件だろうに、ずいぶん特殊な事情なのだと改めて思い知らされる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...