54 / 79
09 - 二学年 一学期 夏 -
10
しおりを挟む◇◆◇
「…むりわかんないねたい」
「航ちゃん、ちゃんとやろうねぇ?」
「うぅー…」
夏休みも中盤にさしかかったある日。
ずっと放置してた宿題を片付けないとダメだと言われ、真琴と大倉と共に勉強中。
もう無理。ほんと無理。頭パージしそう。
「それ終わったら、かき氷食べて良いから」
「まじで!!?」
「まじまじ。だから頑張ろぉー」
「よっしゃ!頑張る!」
「航って単純やな」
だってかき氷!!
夏に食べる食べ物で1番大好きなかき氷!!
何味にしようかなぁ…ブルーハワイもいいけど、やっぱメロンか?
それとも練乳かかってるイチゴでもいいな…。
それか変わり種のレモンとか?…捨て難いな…。
「はいはい。かき氷はあと!今は宿題!やる!ほれ!」
「はぁーい…」
やっぱ真琴は母さんだ。俺の母さんよりも母さんだ!!
あ、因みにここ我が家。俺の部屋。
狭いから男3人も居るとむさ苦しい。
「まことー、もうやだぁー」
「はぁ…」
宿題し始めて1時間。俺もうそろそろ無理。溶ける。
暑いし、意味分かんないし、暑いし、眠いし、暑いし、かき氷食べたい!!
「今日亜希子ちゃんは?」
「母さんは父さんとデート」
「相変わらずラブラブな夫婦だねぇ」
「ほんと。俺の事少しは考えて欲しいよ」
いや、夫婦仲が良いのはいい事なんだけどね?でもさ、息子の前でイチャイチャはやめてほしいんだ。
親のそう言うのって見たくなくない?しかも俺、男だよ?嫌じゃん、そんなの見せられるの。
あと、『亜希子ちゃん』は俺の母さんの名前。
真琴は昔から母さんの事名前で呼んでる。それもなんか…なんかってなる。因みに父さんは『明仁』って名前で、2人はよく「2人とも『あき』って入ってるのよねぇ?あきくん」「そうだね?あきちゃん」と言い合っている。俺の前で。恥ずかしげもなく!
「てか、亜希子ちゃん居ないんじゃかき氷食べれないじゃん」
「……確かに!」
「なんで?」
「かき氷機どこにあるか分かんねぇ…」
「ああ…なるほど」
台所に入ってガサゴソすると、母さん怒るんだよ。
「ここは私のお城なの!勝手にいじらないで!」とかなんとか言って。
はぁ…楽しみに頑張ったのに…頑張ったのに…!!
「仕方ないからアイス買いに行く?」
「っ!!行く!すぐ行く!」
「んはっ。そんなに食べたかったん?」
「だってかき氷は夏のものだから!」
「…?別に、冬でも食べてええんやで?」
「いや、夏に食べるからいいんだよ!」
「ふーん…?」
何言ってんのこいつ?って顔しながら見てくる大倉は放っといて、早く買いに行こう!かき氷!!
ちょっとウキウキ気分で近くのコンビニに行く。
かき氷と言っても実際はシャーベットなんだけど。それでも良いんだ。かき氷みたいなものだから。
「…あ、ごめん。ちょっと電話」
「おー」
コンビニ着く手前で、大倉のスマホが鳴った。
俺と真琴は先にコンビニに入ってアイスのショーケースを物色する。
この棒アイスもいいよな…でもやっぱりカップアイスのがいいかな?でもなんか、棒アイスの方が量多く見えるんだよなぁ…どうしよう?
どれにするか悩んでたら、大倉が少し焦った顔してこっちに走ってきた。
「すまん」
「ん?どした?」
「…ちょっと帰らんとあかんくなった」
「へ?」
「何かあったの?」
「うん…父さんが事故に遭ったらしくて…」
「え?!ちょ、それ一大事!早く帰れ!」
「うん。ごめんな?」
「いいよ!あ、荷物どうする?」
「置いといてもらってええ?今度取りに行くから」
「分かった!」
そう言って大倉は、急いで家に帰って行った。
俺、よく考えたら大倉の家族の事何にも知らないんだよな。
お父さんが転勤で地方に行った事と、お母さんが弁護士さんで、こっちに本格的に拠点置いて働いてる事と、お兄さんが大阪の大学に通ってると言うことしか知らない。
それに、何回か大倉の家にも行ったけど、一度も会った事がない。
一応、一緒に住んでるらしいけど、2人とも帰って来た事なかったし、勿論お兄さんにも会った事ないし。
正直、大倉家はどうなってるんだ?と思わなくはなかった。
もしかしたら仲悪かったりするのかな?とも思ってた。
でも、今の感じだと違う気がする。
大倉、ちょっと焦った顔してたし。
「心配だね?」
「うん…」
その後、大倉から連絡はなく、もうすぐで夏休みも終わる時期になっていた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
ひとりぼっちの180日
あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。
何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。
篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。
二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。
いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。
▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。
▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。
▷ 攻めはスポーツマン。
▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。
▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる