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06 - 一学年 三学期 冬 -
04
しおりを挟む持って来たお茶をテーブルに置いて、大倉に手を握られて横に座らせられた。
広い部屋に似つかわしくないほどの距離に大倉がいる。
そして、何故か互いに沈黙。嫌な沈黙ではないけど、めちゃくちゃ緊張する。
「…航、こっち向いて」
「へ?」
言われるのが早かったのか、頬を持たれるのが早かったのか。
次の瞬間には、もう目の前に大倉の顔があった。
そして、唇が温かくて、キスされてるんだと分かるまでに時間がかかった。
「っ、お、おくら」
「ふふ。初ちゅーやね?」
「ぅっ、」
なんだ…なんなんだ…なんでこんなに、カッコいいんだ、大倉は。
ドキドキがすごい。ドキドキのせいで死ねるかも知れないと思うとか初めてだ。
俺は、今までに付き合った事なんかないし、告白だってされたのも、誰かに好きだと言ったのも初めてで、全部が初めての事でどうしたらいいのか分かんないし。
でもなんか、大倉は慣れてるって言うか、経験者な雰囲気出てて。
「お、大倉って」
「うん?」
「ちゅ、中学の時…つ、き合ってた人とか、居たの?」
「…気になる?」
「そ、そりゃ…まぁ…」
「…居ったよ」
「…、そうなんだ」
「うん。でも1ヶ月で別れたけど」
「…それは、早いの?」
「早いんちゃうかな?多分」
「へ、へぇ…そうなんだ」
そっか…付き合ってた人居たんだ。
いや、うん。そうだよな、あれだけモテてるんだもん、居ても可笑しくないよな。
ただ…付き合ってたのは、女の人なのかな…?それとも男の人?
正直、大倉ってその…どうなんだろう?
俺は、気付いたら女の人と付き合うとか考えられない自分が居たから、もしかしたら?って薄々思ってたくらいで。
でも、大倉は多分そうじゃないと思う。
普通に女の子が好きなんだと思うけど。でもそしたら、どうして俺なんだろう?の疑問が生まれてくる。
どうしたって俺は男だし、可愛くもなければ綺麗でもない。ごくごく普通の日本男児だ。
「他にも聞いたい事はある?」
「え?」
「何でもええよ。何でも答える」
「………」
「航には、隠し事したくないねん」
「おおくら、」
「その代わり、航も答えてな?」
「そ、それは!もちろん!」
俺だって大倉に隠し事なんかしたくない。
話すなら腹割って話したい。
好きな人だし、親友だとも思ってるから。
それから、互いに質問大会が始まった。
好きな食べ物、好きな場所、嫌いな食べ物、嫌いな場所、趣味とか色々。
大倉は、子供口らしく、好きな食べ物はカレーとから揚げ。嫌いな食べ物は柔らかいにんじん。好きな場所は静かなところ(だから図書委員頼まれた時すぐにオッケー出したらしい)、嫌いな場所はうるさいところと匂いがきついところ(デパートの一階にある化粧品売り場が一番苦手って言ってた)。
「航はラーメン好きなんや」
「うん。ラーメンなら毎日食べれる」
「体に悪いで?」
「だから、母さんに禁止されてるんだよ」
「なるほど」
大倉との他愛もない会話がただただ楽しかった。
たまに、握られてる手に力を込められて、緊張が蘇って来たりはしてたけど。
こうして、楽しい週末を過ごした。
この2日間は、ただ大倉をさらに好きになった2日間で。あと、大倉をさらに知れた2日間でもあった。
もうすぐ春がやって来る。
2年になったら、また大倉と同じクラスになれるかは分からない。
なれなかったとしても、きっとこのまま変わらず、大倉と毎日過ごすんだろうな、と何の根拠もなく思った。
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