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06 - 一学年 三学期 冬 -
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しおりを挟む晴れてなのか分かんないけど、大倉とお付き合いというものを始めて、早いもので一ヶ月が経った。
大倉に好きと言われたのが、元旦で、まだまだ寒い季節だったのが、気付いたら春らしい暖かい季節になろうとしている。三学期はとうに始まっていて、大倉は相変わらずよく呼び出されている。
今日も今日とて、お昼に呼び出され、今教室に居ない。
「航ちゃんつらくないの?」
「へ?なにが?」
「大倉くんのこと」
「んー?」
真琴にはちゃんと報告してある。
と言うか報告したら「やっとか。よかったねぇ」と言われ、驚かれることもなく、どちらかと言うと「何でそんな達観してるの?」とこっちが驚いた。
そして、俺も大倉も何故か怒られて、大倉の方から「付き合おう」って言われて、ちゃんとお付き合いする事になった。
どこまで真琴はすごいんだ!と思ったのは内緒。
「だって、呼び出されてるのって告白でしょ?」
「うん」
「嫌じゃないの?」
「んー…別に?」
「なぜ」
「んー…」
別に、大倉が呼び出されるのは今に始まった事じゃないし…大倉がモテるのは分かりきってる事だし…呼び出されて告白されるのが日常化してると言うか…うん。だから別に、嫌とかはない。
ただ、毎回本当に可哀想だなぁとは思うけど。
告白って、伝えるのも断るのも体力いるんだなって、なんとなく分かったし。
「…なんか、熟年夫婦みたいだね」
「は?」
「大倉くんの事信用してるんだねぇ」
「ん、まぁ…」
信用…と言うのだろうか…。
ただ、俺が少し冷めてるからとも言えるけど。
まぁ…信用してなかったら、今頃ソワソワしてるんだろうけど。
「ただいまぁ…、」
「あ、おかえり。お疲れ」
「うん」
疲れた顔して大倉が帰って来た。
今の時期、3年生からの呼び出しが多い。
もうすぐ卒業するからだと思うけど、1年からしたら3年の事断るのは精神的にも疲れるらしい。ほんと、お疲れ様。
「っ、ちょ…大倉、」
「…少しだけ」
「…うん」
俺の隣に座った大倉は、周りから見えないようにしながら俺の手をぎゅってしてくる。
大倉曰く、俺の手を握ると癒されるんだとか。
そう言われても、俺自身がどう大倉を癒してるのかは分からないから、効果があるのかはほんとサッパリ。
でも、大倉が少しでも楽になるなら…恥ずかしいけど、うん。拒否する事はない。ただ、めちゃくちゃ恥ずかしいけど!
「今日一緒に帰ろうな」
「うん」
「あ、うち来る?」
「ええの?」
「うん。母さんも会いたがってた」
「んはっ。じゃあお邪魔するわ」
「うん」
なんだかんだで、仲良くしてます。
付き合うとか初めてだし、何をどうしたら良いのか分かんないけど、俺らは俺らでそれなりにお付き合いをしていこうと思ってる。
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