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05 - 一学年 二学期 冬 年末年始篇 -
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年越しと初詣を終わらせて帰って来たのは深夜3時頃。
勿論、両親は寝てて、静かに家に帰って来た。大倉を連れて。
「布団出すから、ちょっと待ってて」
「うん」
イブの日に泊まった大倉が、またいつでも泊まりに来て大丈夫なように大倉専用の布団が出来た(因みに真琴専用の布団もある)。
こう、短期間でまた大倉が家に来るとは思わなかった。
布団を敷いて、ちょっと寛ぐ。
初めての着物に、初めての深夜のお出かけ。しかも好きな人と。緊張しないわけがなくて。
取り敢えず、着物脱いで(大変だった)、軽くシャワー浴びて、ちょっと寛いで、寝る体制に入る。
はぁー…年明けたんだよな…。
なんか、まだ実感湧かないな。
本当に、どんな年になるのかな、今年は。楽しいといいな。
「…航、寝た?」
「ん?ううん。寝てない」
「……変な事言うてええ?」
「うん?」
また変な事?今度は何だ?この前は…そうだ、手、握られたんだ。
あれ、何だったんだろう…。ただ、手を握られただけで、数分したら「ん、ありがと」って言って離されたんだよね。
「あの、さ」
「うん?」
変な事言う時の大倉は、いつも何処か緊張してる雰囲気がして、とても不思議だ。
今は電気消してるから顔は見えないけど、きっと顔も緊張してるんだろうな。
これも、ここ最近よく見る顔で、前だったら見れなかった顔だ。
最近は本当に、笑ったり怒ったり緊張したり。
色んな顔を見せてくれるようになった。
転校して来た時よりも、確実に仲良くなってると思う。
「…そっち行っても、ええ?」
「………え?」
…何を言っているんだろうか?大倉さん(あれ、デジャヴ)。
いや待て。今なんて言った?
『…そっち行っても、ええ?』って言った?えーっと…、
「……なんで?」
「…やっぱあかん?」
「…いや、あの…い、いいけ、ど…」
「え。ええの?」
「いい、けど…なんで?」
「なんで」
「そう。なんで…?」
うん、なんで?
って、聞かない方がよかった、とか?
あれ?でも、待って。俺たちは友達で、大倉には好きな人が居て、俺は大倉が好きで、大倉には好きな人が居るから俺の失恋は確定してて、でもやっぱ好きで。
ごめん…頭が働かない。
「…航」
「え、はい」
「電気、点けてもろてもええ?」
「あ、うん」
電気点けたら布団の上に正座してる大倉が居た。
何故か俺もベッドの上に正座した。
「…あのな」
「うん」
「あの…、俺な」
「う、ん」
「……好きやねん」
「…………え?」
「俺、航の事好きやねん」
「…う、そでしょ?」
「ほんま。嘘つかん」
「………、」
……え?ちょっと、待って?
大倉が、俺の事、好き…なの?
いや、いやいやいや、う、嘘でしょ?
え、じゃあ…大倉の好きな人って…俺の事だったの…?
「……っ!!!!」
そう理解した瞬間、身体中が真っ赤になるくらいに、一気に熱が走った。
「っ、ま、ちょ、ええ?」
「多分、初めて会うた時から好きやってん」
「ま、」
「だから、委員会の相手誰がええかって聞かれて航の名前出してん」
「ちょ、」
「一緒に過ごすようになってな、どんどん好きになってってな」
「あの、」
「ほんまは言うつもりなかってんけど、なんかもう…今言わなあかんような気がしてな」
「待って!!」
「え?」
お願い、待ってくれ。
俺の感情が追いつかない。
そ、そんな事ある?
なに、大倉俺の事好きだったの?まじで?え、まじて?
え、じゃあ俺勝手に失恋してたけど、失恋してなかったの?取られたくないとか思ったけど、その相手って俺だったの?なにそれ…なにそれ…!
やばい。今、今大倉の顔見れない。絶対顔真っ赤。無理。恥ずかしすぎる、色々と。
「航?」
「ぁ、ま、待って」
「なぁ、なんでそんな顔赤いん?」
「っ!ま、て」
「待たん。なんで?教えて?」
「ぁ、の…」
俺のベッドに乗り上げた大倉が、どんどん俺に近づいてくる。
ダメ、無理。まじで無理。顔見れない。そして自分の顔も見せられない。
「航」
「っ、ぁ」
「お願い。手、退けて」
「む、りっ」
「無理ちゃう」
自分の顔を隠してた手を、ゆっくりと、大倉に退かされた。
パッて上向いたら、蕩けた顔した大倉がそこに居て、確実に俺の返事なんか聞かなくても、俺の気持ちを分かってる顔してる。
「航、教えて?」
「ぁ、」
「俺の事、どう思ってる?」
「ぁ、の…っ」
てか、なんで大倉こんな甘いの。
今までと全然違うんだけど。違いすぎるんだけど。どういうこと?!
「こーう」
「おっ、…まえっ!」
「んはっ。真っ赤。かわええね、航」
「お前っ、ほんと…なんなんだよっ!」
「好きやで、航」
「っ、ぅ」
「めっちゃ好き」
「ぁ、ぅ…っ」
お願いします。お願いしますから、勘弁してください、大倉さん。
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