アネモネ

ぱる@あいけん風ねこ

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04 - 一学年 二学期 冬 クリスマス篇 -

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◇◆◇



何にもやる気が出ない。
宿題やらないとなのに、手につける気力がない。
今日はイブだと言うけど、俺には関係ないし、何だったらイブなんかなくなってしまえ、とさえ思ってる。

真琴から連絡来てる、なんだったら大倉からも連絡来てる。
でも。なんか返事するのも億劫になってる。てか、大倉にどう接したら良いのか分からなくなった。
だって、あいつは俺の事確実にただの友達だと思ってる。もしかしたら、ただのクラスメイトとしか思ってないかも知れない。

真琴に相談するか?とも思ったけど、言える訳がない。
きっと真琴は偏見は持たないと思うけど、そうそうに話せる内容でもない。

ただただ、自分の中で悶々としてるだけ。
大倉に言えるわけもない。真琴に相談出来るわけもない。
そうなったら、2人にどうやって連絡したり返信したら良いのか分からなくなった。気分的には消えたい。




「ちょ、ちょっと、航ちゃん!」
「んー…?」




自分の部屋でぐずぐずしてたら、なんか戸惑ってる?焦ってる?感じで、母さんが来た。




「なに」
「すっごくイケメンな大倉くんって子が来てるんだけど!」
「……はぁっ?!」




は…は…はぁっ?!
お、おおお、大倉が来てるって言った?な、なんで?!

パニックになりながら玄関まで急いだ。



階段を降りて目の前の玄関見たら、そこには本当に大倉が居て、マフラーしてて顔の下半分は見えないけど、俺の姿見た瞬間、目がへにゃって笑った。あ、可愛い。じゃなく!




「え、な、え?」
「良かった。生きてた」
「は?え?な、なんで?大倉が?」




その後すぐに母さんも降りて来て、俺を押し退けて大倉を家にあげてた。しかもめちゃくちゃ笑顔で(このイケメン好きめ!)




「………」
「………」




なんか、変な感じ。
大倉が俺ん家に居る。俺の部屋に、大倉が居る。なんだ、この状況。


大倉曰く、俺に連絡したのに既読にもならなくて、真琴に連絡したら真琴も既読にもならないから何かあったのかと心配になって、でも真琴は今おばあちゃん家に居て、俺ん家に来れないから、代わりに大倉に行ってくれって頼んだらしく、真琴に住所聞いて来たらしい。




「あー…ごめん?」
「んふ。何で疑問系なんよ」
「いや、なんとなく…」




あー…やばい。すっごいやばい。
まず、大倉の私服姿初めて見た。いつも制服姿しか見てないから、私服姿やばい。
あと、いつもよりもなんか雰囲気が柔らかい。目が優しい。
そして、なんで俺の隣に座ってるんですかね。
確かに狭いよ、俺の部屋。
でも、正面に座れるくらいの広さはあるよ。
それなのに、何で隣に座ってるんでしょうか、大倉さん。




「相澤」
「え、あ、はい」
「何があったか知らんけど、返事はしてくれへん?」
「あー…うん」
「俺も笠井くんも、心配するから」
「、うん。ごめん」
「で、何があったん?」
「え?!い、いや!な、なんもない!」
「ふーん?」




言えるわけないじゃん!
大倉の事好きな事に気づいちゃったなんて!
それで悶々としてて、2人からの連絡無視してたなんて、言えるわけないじゃん!




「て、て言うか、よく分かったな?俺ん家」
「まぁ。住所教えてもらったし」
「で、でも分かりづらかっただろ?」
「まぁ…でも、若葉公園の近くって教えてもらったし」
「そ、そっか」
「うん」




うー…話続かない。
俺、今までどうやって話してたっけ?
てか、俺こんな恋する乙女チックになるとか、なんなんだよ!
緊張しすぎだろってくらいに、心臓がうるさい。
これ、大倉にバレるんじゃないか?ってくらい、心臓がバクバク言ってる。




「相澤」
「っ!はい!」
「んはっ!」
「え?」
「くくっ。なん、さっきから」
「え、え?」
「緊張してるん?」
「え?!あ、い、いやっ」




落ち着け、俺…落ち着け。
俺と大倉は友達。ただの友達。
大倉の事は好きじゃない。好きじゃないんだ。




「今日って、イブやんな」
「そ、そうだな…」
「…ええな」
「え?」
「相澤と、イブ過ごすのもええな」
「っ、そ、そう?」
「うん」




な、にを言っているんですか、大倉さん。
そんな、本当に嬉しそうな顔で、声で、言わないでくれ、頼むから。
お前、好きな人居るんだろ…勘違いしてしまうような事、言わないでくれ。


沈黙がつらい。どうしたら良いのか分からない。
どうしよう、どうしよう…て思ってたら、ちょうど良いタイミングで母さんがやって来た。




「大倉くん、夕ご飯食べて行かない?」
「え?」
「ちょ、母さん!?」
「ちょうどイブだし、良いじゃない!こんなイケメンの子とイブ過ごせるなんてしあわせだわ~」
「ふふ。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」
「え、ちょっ、大倉?!」
「うふふ。お母さん頑張っちゃう!」

 


それだけ言って、ウキウキしながら部屋から出て行った母さんの背中を、「何考えてるんだ、この母親は!」と思いながら睨んだ。




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