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しおりを挟む最近、なんかお付き合い始めた頃よりも、瑛ちゃんが優しくて。と言うか甘やかされてる気がする。
映画デートから数日、あの時がきっかけなのか、瑛ちゃんは手を繋ぐと、よく手の甲を撫でてくるようになった。それも、僕の反応を楽しむかのように。
いいけどさ、恥ずかしいんだよね。すごく。
「んじゃ、ちょっと行ってくる」
「うん。いってらっしゃい」
今日は瑛ちゃんの入ってる委員会の集まり。
瑛ちゃんが終わるまで、教室で待ってることにした。
授業中は、ヒーターついてるのに、放課後になると切られちゃうからちょっと寒い。
でも瑛ちゃんと一緒に帰りたいから、我慢する。
そしてこんな日に限って、また手ぶくろ忘れた。
「…さむっ、」
本でも読んでようかな、と思ったけど、寒い。
でもひまだなぁ…あと30分あるなぁ…。
中学に入った時、瑛ちゃんと同じクラスで、初めて席替えした時に隣に瑛ちゃんが座ったのがきっかけで仲良くなって。
すきになるのに時間は掛からなかった。
男女関係なく優しくて、男女関係なく人気者で。
そんな瑛ちゃんに恋する人はたくさんいた。
たぶん、男の子も瑛ちゃんをすきになってたと思う。僕みたいに。
瑛ちゃんとどんどん仲良くなるにつれて、すきになっていって、別に告白するつもりなんかなかったんだ、最初は。
中学の3年間、心の中で思い続けて、僕も瑛ちゃんも男だから告白なんかできないってずっと思ってて。
高校に行ったら忘れるんだ、って思ってた。
思ってたんだけど、まさか同じ高校になるとは思ってなかった。
中学の時、瑛ちゃんがどこの高校に行くかなんて知らなかったし、聞けなかったし。
ただ、噂では都内に行くって聞いてたから、そうなんだろうなって思って、聞いて「そうだよ」とか言われたら泣きそうだったから聞かなかったんだけど…。
「…ふふ。まさか同じ学校だったとはなぁ」
偶然だと思うけど、やっぱうれしくて。
また、瑛ちゃんと同じ景色が見れるんだって。そう思ったら心が温かくなって。
最初は、すきの気持ちがバレないように必死だった。
ただの友達、ただの幼馴染、ただの同級生って心の中でずっと唱えてたのに、2年になってクラスが一緒になって、さらに瑛ちゃんと距離が近くなってからは無理だった。
すきすぎて、一緒にいるのがつらくなって。ならもういっその事、瑛ちゃんに気持ち伝えて振ってもらった方がいいって思って告白したんだ。
そしたら、照れくさそうな顔して「俺もすきだよ」って言ってくれて。
「…うれしかったなぁ」
あの時ほど、うれしすぎて大泣きしたことはないなぁ。
「なにが?」
「っ!!え、瑛ちゃん!!」
「お待たせ」
「う、うん」
びっくりした…。独り言に返事されるとは思わなかった…と言うか瑛ちゃん帰ってきたの気づかなかった…。
「で、なにが?」
「え?」
「うれしかったって、なにが?」
「あ…いや…あの…うん…」
「なに?」
「…え、瑛ちゃんが僕のこと、その…すき、って言ってくれたの、うれしかったなぁ…と」
「…そっか」
「うん」
うわー…はずかしい。すごくはずかしい。やばい。いま絶対顔赤い。
「てか、郁人やっぱ手、冷たい」
「ぁ、うん…寒くて」
「ごめんな?待たせて」
「大丈夫」
そう言って、僕の手をぎゅってしてくれる瑛ちゃん。
ああ…あったかいなぁ…本当にしあわせだなぁ…ずっと、離したくないなぁ。
「帰ろっか」
「うん」
瑛ちゃん、すきだよ。
ずっと、だいすきだよ。
◇◆◇
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