上 下
26 / 26
番外篇

いつの間にか 修司side

しおりを挟む



これは、まだ京輔くんと梨恵ちゃんが付き合ってることを知らなかった俺の話。



今日は珍しく遅番で、出勤時間15分前にお店に到着した。
裏口から入って、更衣室に繋がってる事務所に入ろうとしたら、後ろから悦子さんに引き止められた。




「修司くん!」
「え?あ、悦子さん、おはよ…うわっ!」
「今はダメなの!」
「は?」




腕引っ張られて、悦子さんに「今はダメ!ダメなの!」と言われて、そのまま厨房に連れてかれた。

何が何だか分からないまま厨房に連れて行かれ、何処か興奮してる悦子さんと、その悦子さんを見て若干呆れ顔の正行さんがいた。




「え、ダメなの?なんで?」
「なんでもよ!」
「はぁ?」




いやいや、俺もうすぐで出勤時間なんですけど?!と思いながら事務所に行かせてくれない悦子さん。
行かせてくれない理由も教えてもらえず、とにかく今はダメと言われる。




「いや、もう出勤の時間…」
「…そうね。じゃあ、あと10分は我慢して」
「はぁ…?」




仕方なく10分間だけ行くのを我慢した。
何故だ?と言うか、京輔くんと梨恵ちゃんいないな。
もしかして、事務所で大事な話とかしてるのかな?だから入っちゃダメとか?

そんなこと考えながら10分経ってて、流石にあと5分で着替えてタイムカード押すとか、かなりギリギリだったから、悦子さんの静止を振り切って事務所に向かった。

ちょっと急足で向かって事務所のドアを開けたら、そこには信じられない光景があった。




「………え?」
「しぃーっ」




ドアを開けたその先には、京輔くんの肩に頭を乗せて眠ってる梨恵ちゃんがいて、京輔くんは俺を見た瞬間、口に指を当てて「しぃー」のポーズ。
またもや何が何だか分からないまま、取り敢えず梨恵ちゃんを起こさないように静かに歩いて、更衣室に入った。

着替えてる最中考えるのは、さっきの光景。
京輔くんの肩に頭預けて寝てる梨恵ちゃん。
そんな梨恵ちゃんに寄り添ってる京輔くん。
どう言うこと?何があったの?え、どう言うこと?!
と、頭の中はパニック状態。

もしかして…2人は付き合ってるのか…?いやでも、梨恵ちゃんって、高校生だよな…?京輔くんの年齢は…俺の3つ下だから22歳。ギリセーフなのか?いやでも梨恵ちゃんって、まだ17歳だよな…?
そんな事考えながら着替えて、結局タイムカード押したのは、出勤時間1分前だった。
因みに、着替えて事務所に出たら誰もいなかった。




それから数日後。今日はお店が1か月に一度ある休みの日で、朝から暇してたから久しぶりに買い物行くかーと街に出た。

周りはカップルだったり家族連れだったりで賑わってる。
俺は1人寂しく買い物。

そんな時、少し前に見知った人がいた。
そう、京輔くんと梨恵ちゃんだ。
何人か挟んで見える2人は、距離が近くてやっぱ付き合ってんのかな?と思いながらじーっと見てたら、目の前にいた人が曲がって2人の背中がはっきり見えた。
その時、2人の手元を見たら繋がれてて、それでようやく確信した。付き合ってるんだって。

別に、付き合い始めた事は言う必要もないし、多分きっと、言いづらいんだと思う。
でもちょっと寂しい。
別に、梨恵ちゃんの事好きとかそう言うのじゃなくて、俺的には梨恵ちゃんは妹みたいな感じだったから、妹が取られた感じ。
実際、俺妹いないけど。弟いるけど。

でも、チラッと見えた2人の顔は、幸せそうで、すごく笑顔で、ああよかったなって。




「あー…俺も彼女欲しい…恋愛したい…」




1人寂しくゴチて、2人とは違う方向に向かった。




後日、出勤した時に京輔くんに「梨恵ちゃんと付き合ってるんだな」と言ったら、めちゃくちゃ真っ赤な顔してびっくりしてた。でも、すっごい幸せそうな顔して「うん」と言った京輔くんに、心から祝福の言葉を贈った。



ちくしょう。俺はまだまだ独り身だよ。寂しいよ…誰か俺と付き合って…!!



その数年後、最愛の彼女が出来ることは、この時の俺はまだ知らない。




END






しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~

蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。 なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?! アイドル顔負けのルックス 庶務課 蜂谷あすか(24) × 社内人気NO.1のイケメンエリート 企画部エース 天野翔(31) 「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」 女子社員から妬まれるのは面倒。 イケメンには関わりたくないのに。 「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」 イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって 人を思いやれる優しい人。 そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。 「私、…役に立ちました?」 それなら…もっと……。 「褒めて下さい」 もっともっと、彼に認められたい。 「もっと、褒めて下さ…っん!」 首の後ろを掬いあげられるように掴まれて 重ねた唇は煙草の匂いがした。 「なぁ。褒めて欲しい?」 それは甘いキスの誘惑…。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。 あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。 そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。 翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。 しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。 ********** ●早瀬 果歩(はやせ かほ) 25歳、OL 元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。 ●逢見 翔(おうみ しょう) 28歳、パイロット 世界を飛び回るエリートパイロット。 ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。 翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……? ●航(わたる) 1歳半 果歩と翔の息子。飛行機が好き。 ※表記年齢は初登場です ********** webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です! 完結しました!

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。

石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。 すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。 なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。

処理中です...