24 / 26
番外篇
ある日のひだまり 梨恵side
しおりを挟むとある日のひだまりでの出来事。
「京輔さん!」
「え?なに?」
「これ!このメニューダメって言ったよね?!」
「えー?なんでー?」
「なんで?!なんでって聞く?!」
「いいじゃん!梨恵スペシャル!」
新年度になり、メニューに新しいものを加えようということで京輔さんが考えたのが、『梨恵スペシャル』だった。
内容は『春の野菜を使ったサラダ、鰆の香草焼き、菜の花のおひたし、炊き込みご飯、ジャガイモのおみそ汁』のセット。
何が梨恵スペシャルで、どう考えても梨恵スペシャルではないのは確かなのだ。
前にも同じようなこと考えてて、その時は私の好きな料理のセットを考えてたけどそれも断固拒否してお蔵入りにした。
今回は、特に私の好きなものでもないし、私が作る料理でもない。
なのになぜ、『梨恵スペシャル』なのか…。
「だってさぁ、梨恵は俺の奥さんでしょ?」
「まぁ、そうだね」
「だったら奥さんの名前使ったセット作ってもいいじゃんって」
「よくない!絶対によくない!!」
「えー?」
そんなの恥ずかしいに決まってる。
なんで私の名前?!お店の名前で出せばいいじゃない!そんなの、恥ずかしいに決まってる!!
常連さんがきたら確実にニヤニヤされるだろうし、新規のお客さんは「これなに?誰?」って確実になる。
その度に説明しなくちゃいけないこっちの身にもなって欲しい。
「梨恵ちゃん、諦めな」
「正行さん…」
「京輔はそれだけ梨恵ちゃんが好きなんだよ」
「…そんなので好きを感じたくないのですが」
「まあまあ」
正行さんは京輔さんに甘すぎるんだ。
親戚だから仕方ないかもしれないけど、それでも甘すぎる。
だからいつも悦子さんに怒られるんだ!
なんて、八つ当たりもいいところだけど、八つ当たりしないとやってられない。
「じゃあ、梨恵も俺の名前でなんか考えてよ」
「はい?」
「京輔スペシャル!考えて!」
「え、やだよ」
「即答?!」
やだよ、そんなの。
最近若い女性もお年を召した女性もみんな京輔さんを見にき来てるのはわかってるし、もし京輔さんの名前のセット作ったらそれしか売れなくなるよ?いいの?ダメだよね?他にも色々メニューあるのにそればっか売れるってダメじゃない?
だったらそれ一本でやれよって思われちゃうよ?そんなのダメでしょ?何考えてんの?
「…そこまで言わなくてもいいじゃん」
「京輔、梨恵ちゃんはきっと嫉妬してるんだよ」
「はぁ…っ?!」
「え…そうなの…?!」
「ちがっ!もうっ!正行さんも京輔さんも嫌い!!」
「えええええ?!り、梨恵?!ごめん!梨恵ごめん!!嫌いって言わないでぇぇぇ!!!
「あっはっはっはっ!」
「叔父さん笑い事じゃないから!梨恵本当にごめん!!」
もう!ほんっと、正行さんも京輔さんも嫌いだ!
その後、遅番だった悦子さんに2人ともしっかりと叱られてた。
「女の子を揶揄うんじゃない!」とか「京輔くんも梨恵ちゃんが大事ならもうちょっと考えなさい!」とか、色々。
悦子さんも、私の名前のセットに思うところがあったらしい。
そりゃそうだよ。
従業員の名前が入ったセットを繰り返しの時毎回言わないといけないんだから。しかもなんでその名前なのか聞かれた時も説明しなきゃいけなくなるんだから。
「梨恵ぇ…本当にごめんね?」
「………」
「嫌い?俺のことまだ嫌い?」
「………」
「梨恵ぇー…」
「アイス」
「えっ?」
「アイス、たっかいアイス買ってくれるならいいよ」
「!!買う!何個でも買う!ずっと買う!」
「ずっとはいいよ」
はぁ…結局私も京輔さんに甘いんだよなぁ…。
でも、だからってやっぱり『梨恵スペシャル』はあり得ない。
今後も出してきそうだけど、全力で拒否していこうと思います。
END
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~
蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。
なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?!
アイドル顔負けのルックス
庶務課 蜂谷あすか(24)
×
社内人気NO.1のイケメンエリート
企画部エース 天野翔(31)
「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」
女子社員から妬まれるのは面倒。
イケメンには関わりたくないのに。
「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」
イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって
人を思いやれる優しい人。
そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。
「私、…役に立ちました?」
それなら…もっと……。
「褒めて下さい」
もっともっと、彼に認められたい。
「もっと、褒めて下さ…っん!」
首の後ろを掬いあげられるように掴まれて
重ねた唇は煙草の匂いがした。
「なぁ。褒めて欲しい?」
それは甘いキスの誘惑…。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
【R18】青き竜の溺愛花嫁 ー竜族に生贄として捧げられたと思っていたのに、旦那様が甘すぎるー
夕月
恋愛
聖女の力を持たずに生まれてきたシェイラは、竜族の生贄となるべく育てられた。
成人を迎えたその日、生贄として捧げられたシェイラの前にあらわれたのは、大きく美しい青い竜。
そのまま喰われると思っていたのに、彼は人の姿となり、シェイラを花嫁だと言った――。
虐げられていたヒロイン(本人に自覚無し)が、竜族の国で本当の幸せを掴むまで。
ヒーローは竜の姿になることもありますが、Rシーンは人型のみです。
大人描写のある回には★をつけます。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる