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season 2

06

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◇◆◇



そして、次の休みの日。
久しぶりに京輔さんとデートです。
朝一緒に起きて、朝ごはん食べて、少しゆっくりしてから出かける準備。
今日は電車移動だから、京輔さんも少しはゆっくり出来るかな?




「準備終わった?」
「うん」
「はぅっ…!!」
「え?京輔さん?」
「かわいい…ほんとかわいい好き。かわいいかわいすぎて外歩きたくない。閉じ込めたい。大好き」
「わかったから!早く行こう!」




もうっ!ほんと!もうっ!!!!

外に出て、勿論手を繋いで歩く。
最寄りの駅まではバスで行くから、バス停までゆっくり歩いて、その間も京輔さんはずっと「かわいい大好き」を連呼してた。




「梨恵、こっちきて」
「あ、うん」




最寄りの駅に着いて、電車に乗ったら世間も休日なだけあって、お昼の時間帯だけど電車の中は人だらけ。
出入り口付近に立って、他の人に押されないように京輔さんが守ってくれて、それだけできゅんとくる。かっこいい。




「苦しくない?大丈夫?」
「うん」
「流石、休日だね」
「そうだね……、」
「…ん?どした?」
「ううん。なんでもない」
「そ?」
「うん」




きゅんて来ちゃって、なんだかもっと近づきたくなって京輔さんの上着をぎゅってしてた。
上を向いたら優しい目で私のこと見てて、それにさらにきゅんてした。ほんとにかっこよすぎる、京輔さん。




「映画の時間は…12:30があるからそれでいい?」
「うん。ちょうどよかったね?」
「だね」




映画館もすごい人。
最近話題の映画がやってて、それを観る人でごった返してた。
私が観たい映画は、昔上映してた映画のリメイクで、そこまで人は多くない。
だからスムーズに入ることが出来た。

「飲み物買ってくるね」って言って売店に向かった京輔さんを近くで待つことになって、パンフレット売ってるかな?と考えながら待ってたら、声をかけられて。




「あれ?神崎さん?」
「……?」




旧姓で呼ぶ人なんか私の周りにいなくて、最初私のことだとは気づかなかった。
声のする方を見たら、高校の同級生がそこにいた。




「あ…織田さん…」
「えー!久しぶりじゃん!!」
「あ、うん…」
「相変わらず1人で観に来たの?」
「ぁ…いや、」




織田さん。私が最も苦手な人。
高校の時は1年の時にクラスが一緒で、私と違って今の言葉で言うと陽キャな人。
馬が合わないと言うか、何と言うか…。
人のこと気にしないデリカシーが若干ない人。

本人は悪気があって言ってるわけじゃないらしく、周りからはそれがいいと言う人と、私みたいに苦手な人で別れてた。




「えー、寂しくない?1人って」
「いや…、」
「相変わらず暗いねー、神崎さんって」
「………」




どうしたものか…。
あー…京輔さん早く来てくれないかなぁ…。
ほんと、この子苦手なんだよなぁ…。




「梨恵?どした?」
「あ…京輔さん」




どう対応したものかと悩んでたら、飲み物を買い終わった京輔さんがきた。
よかった…すごく安心する。




「え、誰?」
「…?そちらこそ、どちらさんですか?」
「京輔さん、あの…えっと、高校の同級生…」
「へぇ。初めまして、妻がお世話になってます」
「妻…?」
「あ、うん。結婚、したの」
「…まじで?!うっそ!信じらんない!」
「………」




ですよねぇー。私も信じらんないです。
誰よりも男っ気がなかった私が誰よりも先に結婚するなんて。




「えー!旦那さんめっちゃイケメンじゃん!ずるーい!」
「………」
「えー、どこで出会ったんですかぁ?」
「………」




ほんと、この子デリカシーないなぁ…。
京輔さんもめちゃくちゃ苦笑いしてるじゃん…。
どうやって切り抜けようかなぁ。




「君には関係ないですよね?」
「え?」
「僕と梨恵が出会ったきっかけなんて」
「…は?」
「もう時間ないので、失礼しますね。梨恵、行こう?」
「あっ、うん。織田さん、バイバイ」
「え、ちょっと?!」




京輔さんすごい。簡単に切り抜けられた。
そしてまたきゅんってした。かっこいい…。




「京輔さん、ありがとう」
「全然?デートの邪魔されたくないし」
「ふふ。うん」




きゅんってしたのと同時に、京輔さんに限っては浮気とか絶対にないなって確信が持てた。



映画も観終わって、時間は14:45分。
お腹はポップコーン食べたからあまり空いてないし、夕飯までには時間がある。
だからやっぱりぷらぷらすることにした。




「あ、これかわいい」
「なに?」
「このブレスレット」
「あ、ほんとだかわいい。しかもペア!買お!」
「え?ちょ、ええ?!」




紐状で交互に縫い合わせてあって、結んである部分に赤と青の留め具がされてて、紐の色が黒と白。
シンプルで、ずっとつけていられそうなもので、京輔さんも気に入ったらしい。




「あ、梨恵梨恵」
「え?なに?」
「マフラーも売ってる。お揃いのやつ」
「ええ?」




「これも買おう!一緒に!」って言われて、それも手に取って会計に向かう京輔さんに呆気に取られながら着いていく。
こういう時の行動力、本当にすごい。

レジに行ったら店員さんに「カップルでいいですね~」とか言われてめちゃくちゃ恥ずかしかった。
京輔さんは「えへへ~」とか言いながら照れ笑いしてて、なんかちょっとムカッてなった。




「はい、腕出して」
「………」
「へへ。お揃い!」
「…うん」




なんか…うん。京輔さんが嬉しそうだからいいや。
その笑顔見れるだけでしあわせだから。


夕飯は、ハンバーグで有名なお店に行って、お互いに違うの注文して食べ比べして、「今度お店でもハンバーグ出してみるかぁ」とか、「昼にハンバーガー出してみる?」なんて話しながら、頭の中では結局お店のことばっかなんだよなぁ、私たちなんて思ったり。
楽しかったな、すごく。



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