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season 2

05

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◇◆◇



京輔さんから新しい人のことを聞いて、会うのが少し怖いと思った。
前いたまどかさんにいい思い出がないから、もしまた同じような感じの人だったらどうしよう?って。

京輔さん曰く、一児の母で離婚したから子供育てるのに働きたいと。
歳は京輔さんの一つ上で、お義父さん曰く性格はすごくサバサバしてて姉御肌らしい。




「初めまして。榊原 多絵です」
「初めまして、荻原 京輔です。こっちは妻の梨恵です」
「初めまして。梨恵です」
「初めまして」




第一印象はとてもいい。
スラッとしてて背が高くて、確かに姉御!って言いたくなるようなタイプの人。




「失礼ですが、飲食店で働いた経験はありますか?」
「はい。大学生の頃は居酒屋で働いてました」
「それは、接客ですか?」
「そうですね。ホールを任されてました」
「なるほど」




その後、色々と質問して答えてもらって面接は終わった。
私的にはきてもらいたいと思った。
息子さんの写真も見せてもらったら、もうすっごく天使!
かわいすぎて私がふにゃふにゃになった。
息子さんはまだ3歳で、最近イヤイヤ期が終わりかけてるらしく、だからやっとお仕事出来るって言ってた。
それに、女手一つで育てないとダメだから、取り敢えず働きたいと。
元旦那さんはダメ夫で、養育費の支払い能力もないから当てにしてないらしい。
大変だな…ほんと。

でも、お母さんが子供を愛してる姿見ると安心する。
私みたいな子がいなくなればいいなって思ってるから。




「どうだった?」
「いいと思う!」
「そう?」
「うん。きっとすごく助けになってくれると思う」
「じゃあ、採用でいい?」
「うん」




こうして、ホールの人も確保できた。よかった。

あと、お店を拡張したいってお義父さんが話してたって聞いたけど、それはどうなるんだろ?
まぁ、近々の話ではないらしいからそれは追々かな。



数日後、多絵さんの出勤日になった。




「よろしくお願いします!」
「よろしくねぇ。そんなに難しいことはないから」
「はい!」




多絵さんは悦子さんが担当することになって、お店も前よりさらに明るくなった気がする。

坂本さんもだいぶ慣れてきて、今日は厨房にいる。
私は、朝限定で常連の雄三さんとカウンターに入ってお喋り中。




「梨恵ちゃんや」
「はい?」
「笑顔が増えたね」
「え?」
「あと、自然になった」
「そう、ですか?」
「うん。ワシは嬉しいよ。梨恵ちゃんはワシの孫みたいなもんだからな」
「雄三さん…」




朗らかに笑う雄三さんは、このお店の癒しだ。
バイトで入ってた頃も、学校が休みの日は朝から晩まで働いてたから、その時から優しく見守ってくれてた。

私の家族は、お互いの両親(私からしたら祖父母)と仲が悪くて、会ったことすらなかったから、おじいちゃんがいたらこんな感じなのかなぁとしか思えなかったんだけど、今は雄三さんが本当のおじいちゃんみたいな気がしてる。




「梨恵ー、休憩入ってー」
「はーい」




お昼も少し過ぎて、今日は早めに休憩。
今日の夜、団体さんの予約が入ってて、その準備をするため。




「京輔も休憩入りな」
「え、いいの?!」
「大丈夫だ。今日は比較的空いてるからな」
「助かる!」




なんと、正行さんの計らいで京輔さんとお昼が一緒になった。ちょっと嬉しい。




「梨恵!ご飯食べよう!」
「うん」




今日のお昼は坂本さんが作ったご飯。
まだ見習いだけど、やっぱ調理師学校に通ってるだけあって美味しい。
今は、このお店の味付けを覚えてる最中だ。




「はい、あーん」
「え、やだよ」
「やだじゃないよ!あーんだよ!」
「お家じゃないんだから!」
「大丈夫だって!みんな働いてるし!」
「えええええ…」




いや、毎回お家でもあーんしてるわけじゃないからね?!
基本、私を甘やかしたい京輔さんがら無理やりしてくる。
逆に私がするとすっごい照れて身体くねくねし出すくせに、自分がするのは恥ずかしくないとか、ほんと!私は恥ずかしいけどなんか悔しいからするのに!




「そういや、母さんが会いたがってたよ」
「そうなの?」
「うん。一緒にお買い物行きたいんだって」
「そっか。あとで連絡しとかなきゃ」
「その買い物、俺も一緒に行くからね?」
「そうなの?」
「うん。荷物持ちと車出せって言われた」
「そっか」
「俺たちだけでも最近出かけられてないのになぁ…」
「仕方ないよ」
「…今度の休み、デートしない?」
「え?」
「梨恵、観たい映画あるって言ってたじゃん。それ観に行こうよ」
「…うん」
「ふふ。楽しみだなぁ」
「うん」




京輔さんは、前と変わらず私のことを好きでいてくれてる。
もちろん、私も京輔さんのことが好き。
何だったら前よりもさらに好きになってる。

当分子供はいいやって言う京輔さんに、私も同意してる。
付き合って1年で結婚したから、2人だけの時間がまだまだ足りない。
京輔さんはあと5年は子供作らないって言ってて、私もそれに賛成した。
お義父さんとお義母さんには申し訳ないけど。




「梨恵ー」
「んー?」
「ぎゅーっ」
「ふふ。相変わらず甘えん坊」
「仕方ない。梨恵のこと大好きだからそばにいるとくっ付きたくなる」
「うん」
「好きだよ、梨恵」
「うん。私も、好きだよ」
「っ!!やばい!」
「え?」
「久しぶりに聞いた…っ嬉しい!!」
「…うん」




京輔さんと出会って、愛を知って、好きの感情も教えてもらって、私は本当にしあわせ者だ。
京輔さんがいるからなんでも乗り越えられるし、京輔さんといるから前を向いていられる。
京輔さんがいないと、私絶対に生きていけない自信がある。
京輔さんに出会えて、本当によかった。


夜に備えての準備は滞りなく進んだ。
坂本さんも多絵さんも、新人ながらにいい働きっぷりを見せてくれて、つっかえることなく団体のお客さんを最後までお見送り出来た。




「じゃあ、明日はお休みなのでみなさんゆっくりしてください」
「お疲れ様でした」
「お疲れ様」




前から決まってた休日ではあるけれど、団体のお客さんを相手にしたあとだから、みんな充実した顔して笑顔で帰って行った。
私も京輔さんとお家に帰る。




「梨恵、帰ったら今度のデートのプラン考えよう?」
「うん」




手を繋いで駐車場までの道のりをゆっくり歩く。
季節は冬になろうとしてた。




「で、映画の後はどこ行く?」
「どこ行こうか?」




帰ってきて早々、軽くご飯作って食べて、今度のデートのプラン話。
映画はマストで、その後どうしようかって。
お昼くらいから映画観て、終わるのは夕方ちょっと前くらいだけど夕飯までは時間がある。
だからその間どうしようって。

お買い物もいいけど、それはお義母さんと出かける時のために取っておきたいし…かと言ってぷらぷらしてるのも時間が勿体無いし…悩む。




「でもたまにはぷらぷらするのもいいんじゃない?」
「そうかなぁ」
「そうだよ。ぷらぷらして、欲しいものあったら買えばいいし」
「んー…」
「母さんはきっと、梨恵のもの買いたいだろうし」
「え?」
「前言ってたんだよ。娘が出来たら服買いたいって。しかもお揃いの」
「ええ?」
「いい歳して何言ってんだかなぁ」
「ふふ。お義母さんらしいじゃん」
「そうだけど…俺だって梨恵とお揃いの服持ってないのに…」
「寝巻きはお揃いじゃん?」
「それ寝巻きじゃん!普段着でお揃いは持ってない!」
「…それは流石にバカップルすぎない?」
「そんなことない!俺の梨恵って自慢したい!」
「そっ、!」




ほんと…真剣な顔で言うのやめて欲しい。
言われた方はどれだけ恥ずかしいかわかってるのかな?!

確かに普段着のお揃いは持ってないけど…やっぱバカップルだよ、それ。
恋人同士なら百歩譲って許せるとしても私たち夫婦だよ?恥ずかしいじゃん…!




 「ダメ?お揃い…」
「ぅ…、」
「アウターがダメならインナーでもいいからさぁ?」
「………」
「それかマフラーとかでもいいよ?そこから始めよう?」
「始めようって…」
「慣れてきたらアウターでもインナーでもお揃いにすればいいし!ね?」
「ええー…」
「いいでしょ?お願い!」
「んー…じゃあ、マフラーくらいなら」
「っ!やったぁぁぁ!ありがとう!梨恵ありがとう!大好き!」
「………」




私も大概甘いよなぁ、ほんと。
お願いされたら断れないし、その上目遣いでお願いされると…ご飯お預け食らってる時のワンちゃんみたいな顔されたら、断れないんだよ。
これも、好きが故の悩みだよなぁ…しあわせな悩みだけど。



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