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season 2

04 京輔side

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◇◆◇




「親父、突然呼び出さないでよ」
「すまんな」
「別にいいけど」
「いいのか」
「いつものことじゃん」
「そうか…?」




新人の坂本くんが入って、みんなで一から教えよう!ってなってるのに突然親父から呼び出された。
なんでも、お店の規模を少し拡張したいらしい。
確かに今のお店の敷地は余ってはいる。
余ってる敷地は駐車場にしてるけど、正直車で来る人なんかあまりいないから、無駄だよなぁとは思ってた。

最近、新規のお客さんも増えてきたし、席数少ないからお断りすることも増えてきた。
それに、バイトも雇うようになって、席数増やしてもいいかなとは思ってたけど。
ほんと、いつも突然なんだよ、親父は。




「で、どうだ?」
「なにが?」
「梨恵ちゃんだよ」
「梨恵がなに?」
「仲良くしてるか?」
「もちろん!ずっと仲良いよ!」
「ならよかった」




梨恵を最初に見た時は、クールビューティーな子だなぁって思って、年齢聞いたらまだ17歳で。
流石に高校生は雇えないって思った。
朝昼はカフェみたいな感じだけど、夜は居酒屋になるし、梨恵は学校に通ってたから夜からしか入れないだろうし、きっと辛いだろうなって。
だから断ったのに親父が採用しちゃって。
俺は店長だけど、一応最重要責任者は親父だから、親父の言葉は蔑ろに出来ないし。

でも、そのおかげで今こうしてしあわせだから、文句も言えない。
ていうかいまだに、親父が俺のタイプ知ってたのが気に食わない。
俺自身も知らなかったのに…。




「早く孫が見たいなぁ?」
「もうちょっとダメー」
「でも、そのためにバイト雇おうとしてるんだろ?」
「まぁ、そうなんだけど。当分はまだ2人きりがいい」
「そうだよなぁ…お前も梨恵ちゃんもまだ若いしなぁ」
「そうだよ。梨恵はまだ二十歳だよ?子供はあと5年はいいかな」
「…そんなに待たないとダメなのか」
「うん。待ってて」
「わかった…。ところでだな」
「うん?」
「榊原って覚えてるか?」
「榊原…ってあの榊原さん?」
「そうだ、あの榊原だ」
「榊原さんがどうしたの?」
「実はな…、」




榊原さんは親父の大学時代の知り合いで、今でも仲良い1人。
俺も子供の頃は色々とお世話になって、仲良くさせてもらってる。




「榊原の娘さんが職を探してるみたいなんだ」
「へぇ」
「なんでも、結婚してたんだが最近離婚して戻ってきててな、子供がいるらしいんだが養育費のために働きたいらしい」
「……またウチで雇えって?」
「話が早いな」
「無理。ダメ」
「何故だ?!」
「前いた高鍋さん覚えてるだろ?」
「あー…」




梨恵がまだバイトの頃、親父の会社に勤めてた人の娘がウチで働いてた。
愛想はよかったけど、本当にそれだけ。
仕事はちゃんとしてたけど、男の客が来るとそこに付きっきりになって、自分に靡かないと冷たい態度になって、大変だった。
梨恵が来てからはちゃんと教えたりしてたから改心したのかな、とか思ってたけど違った。
あの、酔っ払い酒ぶっかけ事件の時に、わざとなのはすぐにわかった。

それから数日後に告白されたけど、思いっきり振ってやった。
だってその頃には梨恵のこと好きだったし、好きな子に意地悪する奴嫌いだし。
したら辞めたけど、別にどうでもいい。
それに、梨恵が苦しむ姿なんか見たくないから、だからバイトも雇ってなかったし。

自分で言うのもなんだけど、俺はそこそこモテる。
梨恵が来る前、何人か面接したりしたけど、大体の女の子は俺に色目を使う子がいて、不採用にしてた。
だから俺に色目を使わなかった梨恵が新鮮ではあったんだ。




「でも今回は大丈夫だと思うぞ」
「その根拠は?」
「恋より仕事。彼氏より息子ってタイプなんだ」
「そうなの?」
「おう。年もな、お前の一個上だ」
「へぇ」
「それに、梨恵ちゃんにとったらいい相談相手になるかも知れないぞ」
「んー…悦子さんがいるしなぁ…」
「悦子ちゃんはおばさんじゃないか。年近い人がいた方がいいだろ?」
「まぁ…」




そう言われると確かに…とはなるけど…。
んー…?




「会うだけ会ってみてくれ」
「…梨恵も一緒でいい?」
「それは勿論」
「じゃあ、会うだけ会ってみる」
「よろしく頼む」




親父との話も終わって、会社の近くにあるケーキ屋でみんなの分のケーキ帰ってお店に帰った。




「ただいまぁー」
「あ、京輔さんお帰りなさい」
「梨恵ー!!ただいまぁー!!」
「うぐっ…!」




裏口から入ったら目の前に梨恵。俺の愛しい奥さん。俺のかわいい奥さん。大好きな奥さん。
はぁー…癒される。好き。大好き。結婚して。あ、もう結婚してた。それくらい大好き。
俺もう、梨恵いないと生きていけない。梨恵のいない人生なんて考えられない。ほんと好き大好き。




「ちょ、っくるしい!」
「あぁ!ごめん!会えたのが嬉しくて!」
「…わ、私も嬉しいけど、流石に苦しい」
「ごめんね?」
「大丈夫」




腰に腕を回したまま、おでこをくっつけて梨恵の顔を覗き込むと、ほんのり真っ赤な顔が見れてしあわせ。

クールビューティーなのに可愛くて、冷めてるように感じるのに愛情深くて。
あんまり好きって言ってくれないけど、それでも最近は態度でわかるようになってきた。




「あ、ねぇ梨恵」
「ん?」
「親父がさ、親父の旧友の娘さん雇ってくれって」
「え?」
「今度梨恵も一緒に会ってくれない?」
「いいけど…」
「大丈夫。俺は何があっても梨恵から離れないから」
「うん…」




そうだよなぁ…そりゃ、トラウマにもなるよなぁ…。

あの時まだ、働き始めて半年も経ってなかったし。
それでお客さんに怒鳴られて酒ふっかけられて。
早く助けなかった自分に嫌悪。
あと、俺に声かけなかった高鍋さんに激怒。

でもそれがきっかけで梨恵のこと好きになったんだよなぁ…。
泣いて震えてる梨恵見て、俺が守ってあげたいって、そばにいてあげたいって、ずっと一緒にいたいって思ったんだよなぁ。
それが今じゃ奥さんだからね!俺の最愛の奥さんだからね!しあわせだよね!


と言うことで、来週榊原さんの娘さんに会うことになった。



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