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season 2

03

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◇◆◇



坂本さんがくる初日は、みんなでお出迎えした。
いくら前職が飲食店関係で働いてたとしても、調理師学校に通ってるとしても、それぞれのお店にはそれぞれのルールもあるから、それを教えるのに最初の3ヶ月は付きっきりで教えることになってる。まぁ、研修期間だね。

主に厨房を任せるけど、たまにホールもやってもらう。
厨房は、基本修司さんが教えて、ホールは私が教えることになった。
勿論、今も絶賛ホールの新しいバイトさんも募集してる。




「で、これが夜のメニューになります」
「………大変ですね」
「覚えちゃえば大丈夫ですよ」




今日はホールの方を教えてる。
朝、昼、夜でメニューが変わるから、確かな品数は多いけど、本当に覚えちゃえばあっという間。
坂本さんは覚えがいい方だから、きっと大丈夫。




「そう言えば荻原さんって」
「はい?」
「店長と苗字同じですけど、ご兄妹なんですか?」
「あ、いえ。妻です」
「………妻?」
「はい。店長の妻です」
「…そうなんですか?!」
「はい」




うん、びっくりするよね。
京輔さんと私は、年離れてるし、側から見たら兄妹に見えるよね。
もうちょっと大人な雰囲気出した方がいいのかな…?

最近は新規で来るお客さんも増えて、たまに声かけられて同じようなこと言われるから同じように答えると驚かれるんだよね。




「え…いや、女性に聞くのなんですけど…荻原さんってお幾つですか?」
「二十歳です」
「二十歳…」
「去年結婚しました」
「…すご」
「すごいですか?」
「すごいですよ…。俺はまだ結婚とか考えられてないから…」
「坂本さん、彼女さんいらっしゃるんですか?」
「はい。地元にいます。幼馴染です」
「へぇー!そうなんですか!」




幼馴染との恋っていいな、ちょっと憧れる。
てことは、彼女さんは坂本さんの夢を応援してくれてるのかな?
もしかしたら、私たちと同じように夫婦で経営したいとか?




「将来、彼女と一緒にお店開きたいんです」




やっぱり!そうだったのかぁー。
だからこの店が理想って言ってくれたんだ。
ん?いやでも、それならさっき私が妻だって言って驚いたのはなんだ?




「え、じゃあ、このお店が理想っていうのは…」
「あー…店長と荻原さんが夫婦だって知ってさらに理想になりましたけど、最初は住宅街にありながらも地元の人に人気で、店長も優しそうな人だからいいなぁって。こんなお店持ちたいなぁって」
「このお店に来たことあったんですか?」
「はい。どんなお店だろうと思ってお客さんで来たことあります」
「そうなんですか!?」
「はい。その時、荻原さんいませんでしたけど」
「そうなんですね」




私が休みの日に来てたのか…なるほど。
確かにこのお店は地域密着型ではある。
お義父さんがここの地元の人で、昔から飲食店を経営したいと思ってたから始めたけど、思いの外本職の会社が忙しくてこっちまで手が回せなくて、京輔さんが店長になったようなものだし。
因みにお義父さんの会社は京輔さんのお兄さんが継ぐことになってる。




「いいですよね…地元の人たちが安心して寛げる空間って」
「そうですね。常連さんもみんないい人ばかりですし」
「…俄然やる気が出てきました」
「ふふ。頑張ってください」
「はい!」




坂本さん、いい人だなぁ。
彼女さん、絶対にしあわせだろうな、いいな。
あー、なんか京輔さんに会いたくなってきた。
今頃何してるのかな、京輔さん。



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