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一章 魔王城へ

三話 コドン村とメグリ

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「…誰がそのまま連れてこいって言った」

俺が寝ている部屋のドアの前には3人の男ともう1人、布を巻いた女、多分メグリがいた。
メグリは床に座り込み、目を擦りながら声を上げて泣いている。

「うっ…ひぐ…なにも…ドア壊してまで連れてこなくて…ひっ…いいじゃないですかぁ…えぐっ…」

メグリは俺に気付いてない様子。
3人の男は互いに顔を見合わせる。

「おおせのままに、風呂場にいましたので」

「戻してこい。こいつの用事を終わらせてからにしろ」

そう言うとまた3人の男はメグリの手足を片手でひょいと持ち、ぶらんぶらんと揺らしながらドアから出ていく。時折壁に何かがぶつかる音とメグリの悲鳴が聞こえた。

【三話】

ベッドから出て、下の階にある応接間へ向かう。どうやらここは役場らしく、その寝室で寝かせられていたようだ。

「…と、このような事で」

村長から長々と説明を受けたが大して頭に入っていない。とりあえずここが異世界だというのが分かった。

「以上です、質問はありますか?」

「そこのソファの上にあるある木箱はなんだ」

俺が座っている大きなソファの左手、1人分のソファに大きな木箱が置かれていた。

「メグリですな」

「そうか」

「質問は?」

「ない」

その後、今後の予定を聞かされた。

「それで俺は明日攻めてくる敵を倒せばいいんだな?」

「その通りです、今から訓練所へ案内しますのでよろしくお願い致します」


深々とお辞儀をすると、周りの大人達も頭を下げた。そして屈強な男性が俺を案内する。
そこはそこまで広くなく、四隅に木の人形が置かれていた。

「ではツバキ君、早速やってみようか!」

バシバシと俺の肩を叩きながらキンと名乗る男はそう言う。
…ああ、こういう熱血系なんですねやっぱり。お決まりというかなんと言うか、〇ンスター〇ンターで慣れた。

「なにするんだ?」

「おう、じゃあそこにある四つの人形を軽く切ってくれ。なるべく浅く」

「…」
手元に戻るんだっけ。
落とした後想像すると、すぐに手元に落としたはずの剣が現れた。

「そういう事か」

取っ手を握って振りかぶり、剣を人形に投げつける。剣先は人形の首を切り、切断された頭部がゴロンとおちる。

「…す、すごいじゃないか! 」
「あと、もう少し軽くしてくれないかな…??」

汗臭い教官が近寄ってくるので、思わず後ずさりする。

「あー…こういう武器なんだよ」
「筋力やその他が向上してるから、投げやすいんだと思う」

首をピンポイントで切ったのがその証拠。
それから何度も投げたが、命中率は30発中29発、という所だ。
使い方を間違えている気もするが、まあいいか。

訓練は訓練と言うよりも能力の確認として使った。日が暮れたので、戻ろうとした所で気が付く。

「なあ、メグリと結局会ってないんだが」

「そういえばそうだな、じゃあ今からでも応接間に行くといい。まだ木箱の中にいるはずだ」

教官と別れ、応接間に向かう。
言われた通りにまだ木箱は椅子の上にあった。時々中からギュルルルと胃が収縮する音が聞こえる。
食事を貰ってこよう。

剣を持っているからか歓迎され、飯はタダで貰えた。それを持ってまた応接間へ戻る。
そして木箱の前で食べ始めた。俺が。

食べ終わると食器を片付け、ソファに腰掛ける。隣には俺を殺そうとしたメグリがいる。
今は殺せないし、多分メグリも俺を殺さない。

「…恨みます」
「私の方が優しくされるはずなのに。魔法以外は成績優秀なのに…」

「魔法は使えないんだな」

「時間を三秒戻す程度なら…」

「それだけか」

「はい」

その後沈黙が続く。

「…あの、食べ物を下さい」

木箱から声がする。
黙っていると、また声がした。

「村の人が持ってきてないのか」

「…皆さんは持ってくるのですが、私のプライドが邪魔したんです」
「でももう限界なんです」

「じゃあ出て来いよ」
「俺は今殺せねえから」

「本当ですか?」

「ああ」
股間の方が大事だ。

ガチャっと蓋が開き、メグリが出てきた。
クリーム色の服を着て、赤茶色の髪は森で見た時よりも整えられ、金の髪飾りがある。

「では失礼」

そう言って出て行った。
数分して、さっきのが嘘のような明るい顔で帰ってくる。そして「あの時はごめんなさい!」と言って謝り、また出て行った。

「軽っ」
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