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四章 椿蓮
八十四話 城下町にて
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城下町に付いた頃にはもう空はきつね色に染まり、街も静かだった。
「ツバキ! 大丈夫だった?」
「ああ。コドン村は大丈夫だ。それより何か分かったか?」
「ええ。術を発動させようとしてる可能性はとても高い。今収穫祭が行われているんだけど、その閉催式に王が現れるらしいの」
「じゃあやるならそこか…」
「かと言って下手に動くのも危険だ。王が何か動きを見せたらすぐに出るぞ」
「わかった。魔王軍は少しづつ目立たない様に集まってきてる。1人で頑張りすぎないようにね」
閉催式まで残り1時間を切った。闘技場の方から微かに聞こえてくる賑やかな声は、王によってことごとく潰されるのだろうか。
「…なあ、メグリの両親は街へ出てるって言ったよな?」
「……!? そういえば…!」
「収穫祭に行ってるのか? だとしたら」
「ここにいるんだ…探しに行かなきゃ!」
ユメは闘技場の方へ駆け出した。そしてクロメに、メグリの両親がいることを伝えた。ツバキはそのあとを追い、王が動いた時何をすればいいのか考えつつ闘技場へ向かった。
術を発動するには大量の命が必要…。それで王様は村を襲って命を回収、更に城下町の人の命も狙っているわけで…。
「でも、まだ確定とは言えないから迂闊に動けないって事ですか」
メグリはクロメの横に立ち、情報部で交わされる言葉にじっと耳を傾けていた。
「その通りよ。少しづつしか動けないの。つまり…対策できるのはそれが起きる直前か起きてからなの」
ただでさえ魔物側には信頼がない。ここで間違えるとこの先の魔族界は完全なる敵対生物となってしまう。それを避けなければならないのはメグリも分かっていた。
「でも…やっぱり、私は…」
「わかってる。でもね、人間なら…ツバキなら出来るかもしれない。私にはあいつの考えてることが分かる」
「どうやって…」
「ツバキは1人で動こうとしてる。多分…1人で阻止しようとしてるの」
「そんな、いくらツバキさんだからってそれは無理ですよ! 1回戻らせましょう!」
「…それは……」
クロメはじっと考え込み、唇を震わせつつ言った。
「今の所……一番被害が抑えられるのはツバキに任せる事なの。迂闊に動けない私達だけど、本当は何かが起こる前にどうにかしたい。1人に背負わせるなんて道に反してるけど…これしかない」
「……」
言っていることは最もだった。ツバキさんが1人で動けばそれはただの反政府派の事件として処理される。ヘタに動けない魔王軍にとって、ツバキは1つの解決への糸口だ。問題は…
「でも……失敗したら」
「……うん」
1人を犠牲にして大勢を守る。それは当然なのだが、どうしても、どうしても心の奥に何かがつっかえる。大勢の人の命よりもツバキさんの命が大事だと思ってしまう。
「ツバキ! 大丈夫だった?」
「ああ。コドン村は大丈夫だ。それより何か分かったか?」
「ええ。術を発動させようとしてる可能性はとても高い。今収穫祭が行われているんだけど、その閉催式に王が現れるらしいの」
「じゃあやるならそこか…」
「かと言って下手に動くのも危険だ。王が何か動きを見せたらすぐに出るぞ」
「わかった。魔王軍は少しづつ目立たない様に集まってきてる。1人で頑張りすぎないようにね」
閉催式まで残り1時間を切った。闘技場の方から微かに聞こえてくる賑やかな声は、王によってことごとく潰されるのだろうか。
「…なあ、メグリの両親は街へ出てるって言ったよな?」
「……!? そういえば…!」
「収穫祭に行ってるのか? だとしたら」
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ユメは闘技場の方へ駆け出した。そしてクロメに、メグリの両親がいることを伝えた。ツバキはそのあとを追い、王が動いた時何をすればいいのか考えつつ闘技場へ向かった。
術を発動するには大量の命が必要…。それで王様は村を襲って命を回収、更に城下町の人の命も狙っているわけで…。
「でも、まだ確定とは言えないから迂闊に動けないって事ですか」
メグリはクロメの横に立ち、情報部で交わされる言葉にじっと耳を傾けていた。
「その通りよ。少しづつしか動けないの。つまり…対策できるのはそれが起きる直前か起きてからなの」
ただでさえ魔物側には信頼がない。ここで間違えるとこの先の魔族界は完全なる敵対生物となってしまう。それを避けなければならないのはメグリも分かっていた。
「でも…やっぱり、私は…」
「わかってる。でもね、人間なら…ツバキなら出来るかもしれない。私にはあいつの考えてることが分かる」
「どうやって…」
「ツバキは1人で動こうとしてる。多分…1人で阻止しようとしてるの」
「そんな、いくらツバキさんだからってそれは無理ですよ! 1回戻らせましょう!」
「…それは……」
クロメはじっと考え込み、唇を震わせつつ言った。
「今の所……一番被害が抑えられるのはツバキに任せる事なの。迂闊に動けない私達だけど、本当は何かが起こる前にどうにかしたい。1人に背負わせるなんて道に反してるけど…これしかない」
「……」
言っていることは最もだった。ツバキさんが1人で動けばそれはただの反政府派の事件として処理される。ヘタに動けない魔王軍にとって、ツバキは1つの解決への糸口だ。問題は…
「でも……失敗したら」
「……うん」
1人を犠牲にして大勢を守る。それは当然なのだが、どうしても、どうしても心の奥に何かがつっかえる。大勢の人の命よりもツバキさんの命が大事だと思ってしまう。
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