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四章 椿蓮
八十三話 コドン村調査
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「…やっぱりな」
理由は分からないが、王は一刻も早く術を発動させようとしている。襲撃したのが王国軍だとバレるのも時間の問題のはずだが、それを気にせず来るというのはつまり、もう国を捨てる気なのだろうか。
「何者だっ!」
村へ近づくと、兵士が剣を構えてこちらを向いた。横の数人も集まってくる。
なんにしろ…ここを早く済ませて城下町に行かないとだな。
ユメはその頃、コドン村を回り込んで城下町へ向かっていた。クロメに状況を報告し終わり、あとやる事は城下町の偵察。何かが起こるかも知れないとはいえ、魔王軍が急に城下町へ乗り込むのは騒ぎになる。
「クロメ! 城下町に着いたわ」
「ありがと! 城の周りの警備がどれくらいいるか調べてくれる?」
「わかった。すぐに連絡する」
城下町の門を走って抜ける。石畳の道は城門まで真っ直ぐに続き、何時でも人で賑わっている。
しかし、今日はいつもより人が少ない気がする。
「すみません、今日人少ない様に思えるのですが、何かありましたか?」
「そりゃあ、今日は収穫祭だもの。皆第1闘技場に行ってるからね」
「収穫祭…? そういえば」
年に二度行われる収穫祭は大規模なもので、城下町以外にも沢山の街から人が来る。闘技場に市場が開かれ、食材や工芸品等が売られる。
「…王様は来るのですか?」
「勿論、最後に閉催式があるだろう? 滅多に見られないからね、新国王も」
「…ありがとうございます」
今は午後4時半。閉催式はいつも大体6時近く。閉催式は大量に人が集まる。城下町の人だけでなく、単に見に来る人だっている。命を集めようとするなら絶好の機会だ。
城の周りには兵士が警備しているが、今日は半分以下に少ない。門の周りもいつもなら10人以上で固めているはずだが、今日はたったの4人。収穫祭とは言えここまで警備を緩くしていただろうか。
「とりあえずはクロメに連絡ね…」
「これで、全員か?」
ツバキら剣を地面に突き刺した。もう悲鳴や打撃音は聞こえなくなっていた。前回よりも数が多かったが、全体的に警戒が薄く、指揮していた奴もあっさりと捕まった。
「おい、聞いてるんだが」
「…」
指揮をしていた男は他と同じ鎧に赤線が入った鎧を着ており、縄に縛られたままずっと黙っている。
「…喋らないなら他のやつにするか」
そう言って剣を振り上げると、男は慌てて口を開いた。
「全員だ…!」
「それで、何しに来た? 王国軍」
「な…っなぜ…」
「リーダーの割にはすぐ引っかかるんだな」
「…! くそっ…」
「それで、何の目的なんだ? 言わないなら殺す」
「…単に、この村の住民を殺してこいとだけだ。それ以外はない」
「それで十分だ。…十分分かった。他の兵士も殺してはいない。全てが終わったら解放してやるよ。それまでは大人しくしてろ」
「どういう事だ?」
「お前達、王に騙されてるぞ」
「騙され…? 何をだ」
「あまり喋っていられない。じきに分かるさ」
怪我人の集められた広場でコドン村の住人に、怪我人を手当てしてからすぐにここから離れるように告げた。
そしてツバキはコドン村を後にし、城下町へ急いで向かった。
理由は分からないが、王は一刻も早く術を発動させようとしている。襲撃したのが王国軍だとバレるのも時間の問題のはずだが、それを気にせず来るというのはつまり、もう国を捨てる気なのだろうか。
「何者だっ!」
村へ近づくと、兵士が剣を構えてこちらを向いた。横の数人も集まってくる。
なんにしろ…ここを早く済ませて城下町に行かないとだな。
ユメはその頃、コドン村を回り込んで城下町へ向かっていた。クロメに状況を報告し終わり、あとやる事は城下町の偵察。何かが起こるかも知れないとはいえ、魔王軍が急に城下町へ乗り込むのは騒ぎになる。
「クロメ! 城下町に着いたわ」
「ありがと! 城の周りの警備がどれくらいいるか調べてくれる?」
「わかった。すぐに連絡する」
城下町の門を走って抜ける。石畳の道は城門まで真っ直ぐに続き、何時でも人で賑わっている。
しかし、今日はいつもより人が少ない気がする。
「すみません、今日人少ない様に思えるのですが、何かありましたか?」
「そりゃあ、今日は収穫祭だもの。皆第1闘技場に行ってるからね」
「収穫祭…? そういえば」
年に二度行われる収穫祭は大規模なもので、城下町以外にも沢山の街から人が来る。闘技場に市場が開かれ、食材や工芸品等が売られる。
「…王様は来るのですか?」
「勿論、最後に閉催式があるだろう? 滅多に見られないからね、新国王も」
「…ありがとうございます」
今は午後4時半。閉催式はいつも大体6時近く。閉催式は大量に人が集まる。城下町の人だけでなく、単に見に来る人だっている。命を集めようとするなら絶好の機会だ。
城の周りには兵士が警備しているが、今日は半分以下に少ない。門の周りもいつもなら10人以上で固めているはずだが、今日はたったの4人。収穫祭とは言えここまで警備を緩くしていただろうか。
「とりあえずはクロメに連絡ね…」
「これで、全員か?」
ツバキら剣を地面に突き刺した。もう悲鳴や打撃音は聞こえなくなっていた。前回よりも数が多かったが、全体的に警戒が薄く、指揮していた奴もあっさりと捕まった。
「おい、聞いてるんだが」
「…」
指揮をしていた男は他と同じ鎧に赤線が入った鎧を着ており、縄に縛られたままずっと黙っている。
「…喋らないなら他のやつにするか」
そう言って剣を振り上げると、男は慌てて口を開いた。
「全員だ…!」
「それで、何しに来た? 王国軍」
「な…っなぜ…」
「リーダーの割にはすぐ引っかかるんだな」
「…! くそっ…」
「それで、何の目的なんだ? 言わないなら殺す」
「…単に、この村の住民を殺してこいとだけだ。それ以外はない」
「それで十分だ。…十分分かった。他の兵士も殺してはいない。全てが終わったら解放してやるよ。それまでは大人しくしてろ」
「どういう事だ?」
「お前達、王に騙されてるぞ」
「騙され…? 何をだ」
「あまり喋っていられない。じきに分かるさ」
怪我人の集められた広場でコドン村の住人に、怪我人を手当てしてからすぐにここから離れるように告げた。
そしてツバキはコドン村を後にし、城下町へ急いで向かった。
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