中2から高3まで性犯罪者に騙されたせいで壊れてしまったわたしの話

悪夢の始まり

「お疲れさま」

「また明日ね」

部活が終わり、学校の正門でみんなと別れた。わたしと同じ方向に帰る子はいない。

その日は朝から天気が悪くて、星も月も厚い雲に覆われて辺りは真っ暗だった。

いつも一緒に帰っていた詩織は、けっきょく部活を辞めてしまった。理由はどうあれ、今まで一緒に頑張ってきたんだから、せめて一度くらいは相談して欲しかった。

詩織とは小4で同じクラスになってからずっと仲良くしてきたけど、今まで一度も泣いたり落ち込んだりしてる姿を見たことがない。いつもニコニコ笑っていた。

あんなに明るかった詩織がまさか、あそこまでボロボロになってしまうなんて思わなかった。

やっぱり、ほっとけない。ちゃんと話をしなきゃ。

わたしはカバンからケータイを取り出して詩織に電話をかけた。

街灯がアスファルトに映し出す自分の影を見つめながらコールする。

同時に妙な気配を感じた。

風に揺らぐ草木の音に混じって、背後から聞き覚えのある着信音が近づいてきた。

アスファルトに擦れるスニーカーの音。

ドクンと、心臓が大きく鼓動した。


普段なら、きっと笑って振り向ける。


けれど、この日は違った。


不吉な予感がわたしに訴えかける。


一刻も早く、ここから早く逃げたほうがいいと．．．。