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第二章 忘れ去られた王国
第12話 復活の冒険者ギルド
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王国近くの森で食料を確保することに成功し、ラクスベルク王国のかつて栄えていた文化を知ることができ、俺達の気持ちはとても高揚していた。この瓦礫だらけの忘れ去られた王国を、かつてのような活気あふれる場所にするため、そして恐ろしい強敵アーカス王子に対抗する活動拠点とするため、まずは『冒険者ギルド』の再建に取り掛かることにした。
「これは……何から手を付ければ良いんだろう」
ゴードンさんに案内されやってきた冒険者ギルドの跡地は、栄えていた頃の面影はほとんど無く、風化した木の板や苔むした石が無造作に転がっているだけだった。
「最初から全てを完璧に戻すことは不可能だ。まずはここにある物を使って最低限のものを作ろう。一口に冒険者ギルドと言っても、その役割は大きく分けて三つある。1つ目は冒険者の情報や職業に関する窓口、次に2つ目はクエストに関する窓口、そして三つ目は情報に関する窓口だ。最後にそれらを統括するギルドマスター率いる運営がいて、初めて冒険者ギルドとして成り立つんだ」
「冒険者ギルドも私達の世界にあったゲームと似てるわ。本当にゲームの世界みたい」
「もしかするとアオイの世界にあるゲームとこの世界には何か関係があるかも知れないね。案外俺の前世の子がいた世界がアオイの世界だったりして」
「前世の子? ラルフは自分の前世がわかるの?」
「うん、ちょっとだけね。こことは違う世界で、亡くなった子どもの魂が生まれ変わったのが俺でこの世界では『夢を見る子』と呼ばれているんだ。といっても何か特別な能力とかがあるわけではなくて、前世の子の一番楽しかった記憶を夢の中で見るだけなんだけどね。俺の場合は白い部屋で女の人に『勇者様の物語』って題名の本を読んでもらう夢なんだ」
「『勇者様の物語』? 初めて聞く名前の本ね」
「なぁラルフちょっといいか?」
冒険者ギルドの話から脱線していたアオイと俺にゴードンさんが話しかけてきた。
「ごめん! 冒険者ギルドの話からずいぶんそれちゃったね」
「ああ、別にそれは良いんだ。それよりその夢を見る子というのは、我々の王国では『女神に愛された子』と呼んでいたものかもしれないな。セルリタの女神様に何か関係することはないか?」
「そういえばセルリタの女神様の加護があるとは言われていた」
「やはり、恐らく名前が違うだけで同じものだろうな。付け加えるならその女神に愛された子の中にはごく稀に、とてつもない能力を秘めて生まれてくる子がいるという噂もあった。あくまで噂話の範囲で私も実際に会ったことはないがな。さぁお話はこれくらいにして、まずはこの跡地周辺を片付けよう」
自分自身にも関係する話だったのでもう少し話を聞いてみたかったけど、今はそれより冒険者ギルド復活の方が大事だった。片付けをしながら近くを探索していると、組み合わせれば机や椅子になりそうな木をいくつか見つけたので集めてくることにした。
「ゴードンさん、この木って机とか椅子に使えないかな?」
「使えそうではあるが、あいにく組み立てるのに使えそうな道具はないからな」
「ウゴォォオ!」
「フー!」
「チュー!」
「フシュウウウ!」
組み立てをどうするか悩んでいると、ファイスさん達が何かを訴えかけてきた。
「はっはっは! そいつは頼もしいな。では任せるとしよう!」
「ゴードンさん、皆はなんて?」
「彼らは自分たちに全部任せて欲しいと言っていたよ。とても頼りになるな」
俺達が他の場所の片付けを続けている中、ファイスさん達がそれぞれ慌ただしく動いているのが見えた。しばらくしてから様子を見てみると、そこには不格好ながらもしっかりした作りの机と椅子が三つずつ作られていた。
「えっ!? これ皆が作ったの!? 凄い立派な机と椅子だよ!」
「本当ね! どうやったのかしら?」
「あたいもびっくりしちゃった!」
俺とアオイとリンが驚きの声をあげると、皆とても誇らしげだった。
その後ゴードンさんに詳しく話を聞いてみると、ファイスさんが木を運び、アレン兄さんが歯で木をかじり形を整え、それをロザリーさんが口から出した糸でくっつけて組み立てていたらしい。一方サクリさんは直接手伝おうことが出来ないので、近くで応援していたということだった。各々が特技を活かしながら作り上げたその机と椅子は、これからずっと大事にしていこうと思ったのと同時に、俺も負けていられないなと思った。
「皆ありがとう。まだまだこれからという感じではあるが、おかげで冒険者ギルドに必要な三つの窓口が完成した。最初のうちは私が全て担当するとして、代わりに窓口業務をやってくれるような人物を探してくることができればよいのだが、まずは情報を集めるとして……。ここから一番近い町は確か『ハーニルの町』だったな」
「ハーニルの町?」
「そこならあたい知ってるよ! 魔族も人間もたくさん住んでいる賑やかな町だって聞いたことがある!」
「交易が盛んな町のはずだから、人材の情報以外にも食料や道具もたくさん手に入りそうだ。ただ、魔族の者たちは魔力の暴走があるはずだから、それがどの程度影響しているかは気がかりだな。転職の儀式も含め、皆が出来る限りの準備を整えた後、私の方から正式にクエストの依頼をしよう」
まだまだ規模は小さいし、かつて栄えていた頃に比べれば程遠いものだとは思うけど、冒険者ギルドを復活させることができた。そして次の目的地もハーニルの町に決まり、俺達は冒険に出る準備の一つ、転職の儀式を受けることにした。
「これは……何から手を付ければ良いんだろう」
ゴードンさんに案内されやってきた冒険者ギルドの跡地は、栄えていた頃の面影はほとんど無く、風化した木の板や苔むした石が無造作に転がっているだけだった。
「最初から全てを完璧に戻すことは不可能だ。まずはここにある物を使って最低限のものを作ろう。一口に冒険者ギルドと言っても、その役割は大きく分けて三つある。1つ目は冒険者の情報や職業に関する窓口、次に2つ目はクエストに関する窓口、そして三つ目は情報に関する窓口だ。最後にそれらを統括するギルドマスター率いる運営がいて、初めて冒険者ギルドとして成り立つんだ」
「冒険者ギルドも私達の世界にあったゲームと似てるわ。本当にゲームの世界みたい」
「もしかするとアオイの世界にあるゲームとこの世界には何か関係があるかも知れないね。案外俺の前世の子がいた世界がアオイの世界だったりして」
「前世の子? ラルフは自分の前世がわかるの?」
「うん、ちょっとだけね。こことは違う世界で、亡くなった子どもの魂が生まれ変わったのが俺でこの世界では『夢を見る子』と呼ばれているんだ。といっても何か特別な能力とかがあるわけではなくて、前世の子の一番楽しかった記憶を夢の中で見るだけなんだけどね。俺の場合は白い部屋で女の人に『勇者様の物語』って題名の本を読んでもらう夢なんだ」
「『勇者様の物語』? 初めて聞く名前の本ね」
「なぁラルフちょっといいか?」
冒険者ギルドの話から脱線していたアオイと俺にゴードンさんが話しかけてきた。
「ごめん! 冒険者ギルドの話からずいぶんそれちゃったね」
「ああ、別にそれは良いんだ。それよりその夢を見る子というのは、我々の王国では『女神に愛された子』と呼んでいたものかもしれないな。セルリタの女神様に何か関係することはないか?」
「そういえばセルリタの女神様の加護があるとは言われていた」
「やはり、恐らく名前が違うだけで同じものだろうな。付け加えるならその女神に愛された子の中にはごく稀に、とてつもない能力を秘めて生まれてくる子がいるという噂もあった。あくまで噂話の範囲で私も実際に会ったことはないがな。さぁお話はこれくらいにして、まずはこの跡地周辺を片付けよう」
自分自身にも関係する話だったのでもう少し話を聞いてみたかったけど、今はそれより冒険者ギルド復活の方が大事だった。片付けをしながら近くを探索していると、組み合わせれば机や椅子になりそうな木をいくつか見つけたので集めてくることにした。
「ゴードンさん、この木って机とか椅子に使えないかな?」
「使えそうではあるが、あいにく組み立てるのに使えそうな道具はないからな」
「ウゴォォオ!」
「フー!」
「チュー!」
「フシュウウウ!」
組み立てをどうするか悩んでいると、ファイスさん達が何かを訴えかけてきた。
「はっはっは! そいつは頼もしいな。では任せるとしよう!」
「ゴードンさん、皆はなんて?」
「彼らは自分たちに全部任せて欲しいと言っていたよ。とても頼りになるな」
俺達が他の場所の片付けを続けている中、ファイスさん達がそれぞれ慌ただしく動いているのが見えた。しばらくしてから様子を見てみると、そこには不格好ながらもしっかりした作りの机と椅子が三つずつ作られていた。
「えっ!? これ皆が作ったの!? 凄い立派な机と椅子だよ!」
「本当ね! どうやったのかしら?」
「あたいもびっくりしちゃった!」
俺とアオイとリンが驚きの声をあげると、皆とても誇らしげだった。
その後ゴードンさんに詳しく話を聞いてみると、ファイスさんが木を運び、アレン兄さんが歯で木をかじり形を整え、それをロザリーさんが口から出した糸でくっつけて組み立てていたらしい。一方サクリさんは直接手伝おうことが出来ないので、近くで応援していたということだった。各々が特技を活かしながら作り上げたその机と椅子は、これからずっと大事にしていこうと思ったのと同時に、俺も負けていられないなと思った。
「皆ありがとう。まだまだこれからという感じではあるが、おかげで冒険者ギルドに必要な三つの窓口が完成した。最初のうちは私が全て担当するとして、代わりに窓口業務をやってくれるような人物を探してくることができればよいのだが、まずは情報を集めるとして……。ここから一番近い町は確か『ハーニルの町』だったな」
「ハーニルの町?」
「そこならあたい知ってるよ! 魔族も人間もたくさん住んでいる賑やかな町だって聞いたことがある!」
「交易が盛んな町のはずだから、人材の情報以外にも食料や道具もたくさん手に入りそうだ。ただ、魔族の者たちは魔力の暴走があるはずだから、それがどの程度影響しているかは気がかりだな。転職の儀式も含め、皆が出来る限りの準備を整えた後、私の方から正式にクエストの依頼をしよう」
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