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第二章 忘れ去られた王国
第8話 明かされる真実
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ラクスベルク城の広場に集まった俺達に、ゴードンさんは静かに話し始めた。
「まず君たちがここに来た理由だが、それは私が行った召喚魔法によるものなのだ。魔王様を殺した相手に対抗できる能力を持った者を召喚するための魔法だったのだが……」
「ちょっと待ってください! 魔王様が殺されたって本当ですか!? 一体誰が?」
「ああ、本当だ。それに魔王様を殺した人物は君たちもよく知っている、アーカス王子だ」
アーカスが魔王様を殺した? 俺達を襲ったときに話していた用事とは魔王様を殺すことだったのか?
「恐らくラルフ達を襲った後に魔王城へ行ったのだろう。城にある鏡に突然殺される魔王様が映し出されたときは私も信じられなかった。きっと最後の力を使い一部の者たちへ向けてメッセージを送ってくれたのだろう。とはいえその相手の顔までははっきりと見ることが出来なかったのだが、伝わってきた魔力がそこにいるサクリやファイスから感じられた魔力と同じだったところから、アーカスの仕業で間違いないだろう」
「ということはサクリさんやファイスさんがアンデッドになったのは、アーカスの仕業ってことですか?」
「そう考えて良いだろう。本来人間が魔力を扱うこと、ましてや死んだものをアンデッドとして生き返らせる高度な魔法を扱えることなどまず考えられないことなのだが、それが出来てしまうのがアーカスという人間なのだろう。そして死ぬより苦しい思いをさせると言ってアンデッド化させることを考えつくなんて、本当に恐ろしい話だ」
改めてアーカスの恐ろしさを実感する話だったけど、アーカスならやりかねないとも思った。それにアンデッドになったとはいえ、こうしてまた二人に会えたので今はそれで良かった。
「そして私はこの世界の終わりが近いと考え、魔王様を殺した相手に対抗できる者をここに召喚するために召喚魔法を使ったのだ。最初はアオイやラルフの様な人間やゾンビにゴーストと言った弱い魔族が来たのを見て失敗に終わったのだと落胆していたのだ。しかし先程の話を聞いて、ラルフ達とアオイはそれぞれアーカスやコウイチ達との因縁があること、彼の悪行を知っていることがわかり、私なりに納得したのだ」
今の話を聞いてここに呼ばれた理由についてわかったものの、新たな疑問が浮かんできた。
「ここに呼ばれた理由はわかりました。じゃあなんで魔王様が殺されてしまったのにゴードンさんや二人は暴れてしまうことがないんですか?」
「それはこの王国全体に張り巡らされている結界のおかげだ。この中にいる間は魔王様の力がなくても魔力が暴走することはない。詳しい話はもっと長くなるのだが、ラルフ達にはこのラクスベルク王国のことから話す必要がある。ここはかつてこの世界で最も栄えた魔族の一族、ラクスベルク一族が治めていた場所だった」
ゴードンさんは一呼吸置くと、遠くを見つめるような眼をした。
「かつてのラクスベルク王国というのは、今のこの状況からは想像できないくらい栄えていてな、土地は豊かで住人たちは活気に溢れており、ラクスベルク王家の方々も皆素晴らしい才覚をお持ちの方々だった。魔王様を遥かにしのぐ魔力をお持ちの方や力に優れた方や大変見た目が美しい方もいた。当時のセルリタの世界において、もっとも優れた一族であったことは間違いない。それに皆さま大変思慮深く、私のような執事にも優しく接してくれた」
ここまでの話を聞いていると、王国が廃れてしまうような要素は感じられなかった。
「だが、いつの頃からか一族の中で新たにお生まれになる方の中に、病弱であったり見た目が醜く歪んでしまう方、狂暴化してしまうという病気の方々が現れ始めた。なぜそのような方が増えたのか、この呪いを解決しようとしている間にもどんどん国は廃れ、一族の人数も徐々に減っていった。そのうち豊かだった土地までもが不毛の土地になり、今の様になってしまった。更に月日が経つにつれこの王国には誰も寄り付かなくなり、この風化した城と町と枯れ果てた大地だけが残った。かつては豊穣の森と呼ばれていた国を囲んでいた森は、今は枯れ果てた大地と呼ばれるようになってしまった」
「枯れ果てた大地は聞いたことがある! 確かラントリールやカラストルからずっと離れた場所にあって、人間も魔族も一度入ってしまったら戻ってこれない恐ろしい場所って」
「そんな風に言われているのだな」
「そういえば今はもう王家の人はいないんですか?」
「まだ一人ご存命なのだが……。ではラクスベルク王家最後の生き残りであり、ラクスベルクの国王ガラトス・ラクスベルク様がいる場所へ案内しよう」
ゴードンさんは城の奥から繋がる地下へと俺達を案内した。全体的に薄暗くじめじめした雰囲気の城の中でもより一層空気の悪い場所で、こんな場所に国王様がいるなんて信じられなかった。地下に進んでいくと少し開けた空間があり、ゴードンさんはその先の檻を指さした。
「この奥の……檻の中にいるのが、ガラトス様だ」
檻の隅には獣の様な恐ろしい唸り声をあげている、今まで見たことがない魔族がいた。その身体は大量の漆黒の毛で覆われていて、その中から鋭い牙と目が覗いていた。
「ガラトス様は一族の間で発生した呪いの全てを、一身に受けてお生まれになったような方だった。言葉を覚えることも普通に生活することも出来ずに暴れ回り、先代の国王様も手を焼いていた。先代も病弱故に早くに亡くなってしまい、誰も止めることが出来なくなってしまい、数少ない国の生き残りも皆この世を去る中、私自身も命の限界が来ていた。私は最後の魔力を使い、自らをゴーストとして最後までガラトス様を見守ることにしたのだ。幸いと言うべきか、ガラトス様は一族の特徴である長い寿命だけはしっかりと受け継がれていて、もう300年ほど生きておられる」
「300年……」
魔族の中でも特に魔力が強い魔族は、基本的に人間よりは寿命が長く200歳くらいまでは生きられると聞いたことがあるけど、それ以上というのは聞いたことがなかった。
「私がゴーストになってからもガラトス様は日々暴れ続けた。この王国には初代国王様が作った強力な結界があり、いくら暴れても結界の外へ出ることは出来ず、また王家に関係するものの力がなければこの場所を見つけることも中に入ることも出来ない。結界があるおかげなのか何も食べてはいないのに、ずっと生き続け暴れ続けていた。そんなある日……10年ほど前だったか、急にガラトス様が暴れるのをぴたりと止めた時があった。その時に自らこの強力な力で守られた檻の中に入ったのだ。その翌日からは再び暴れるようになってしまったのだがな」
ゴードンさんが話し終えると俺達は再び広場に戻った。この王国がどうしてここまで廃れてしまったのか理由がわかり、なんとも言えない寂しい気持ちが心の中に広がっていた。これからどうしていくか話す必要があったけど、今日はとりあえずゆっくり休むことになった。
「誰かー! 誰か助けてー!!」
広場に集まり皆で休憩していると、遠くの方から馴染みのある声が聞こえてきた。
「まず君たちがここに来た理由だが、それは私が行った召喚魔法によるものなのだ。魔王様を殺した相手に対抗できる能力を持った者を召喚するための魔法だったのだが……」
「ちょっと待ってください! 魔王様が殺されたって本当ですか!? 一体誰が?」
「ああ、本当だ。それに魔王様を殺した人物は君たちもよく知っている、アーカス王子だ」
アーカスが魔王様を殺した? 俺達を襲ったときに話していた用事とは魔王様を殺すことだったのか?
「恐らくラルフ達を襲った後に魔王城へ行ったのだろう。城にある鏡に突然殺される魔王様が映し出されたときは私も信じられなかった。きっと最後の力を使い一部の者たちへ向けてメッセージを送ってくれたのだろう。とはいえその相手の顔までははっきりと見ることが出来なかったのだが、伝わってきた魔力がそこにいるサクリやファイスから感じられた魔力と同じだったところから、アーカスの仕業で間違いないだろう」
「ということはサクリさんやファイスさんがアンデッドになったのは、アーカスの仕業ってことですか?」
「そう考えて良いだろう。本来人間が魔力を扱うこと、ましてや死んだものをアンデッドとして生き返らせる高度な魔法を扱えることなどまず考えられないことなのだが、それが出来てしまうのがアーカスという人間なのだろう。そして死ぬより苦しい思いをさせると言ってアンデッド化させることを考えつくなんて、本当に恐ろしい話だ」
改めてアーカスの恐ろしさを実感する話だったけど、アーカスならやりかねないとも思った。それにアンデッドになったとはいえ、こうしてまた二人に会えたので今はそれで良かった。
「そして私はこの世界の終わりが近いと考え、魔王様を殺した相手に対抗できる者をここに召喚するために召喚魔法を使ったのだ。最初はアオイやラルフの様な人間やゾンビにゴーストと言った弱い魔族が来たのを見て失敗に終わったのだと落胆していたのだ。しかし先程の話を聞いて、ラルフ達とアオイはそれぞれアーカスやコウイチ達との因縁があること、彼の悪行を知っていることがわかり、私なりに納得したのだ」
今の話を聞いてここに呼ばれた理由についてわかったものの、新たな疑問が浮かんできた。
「ここに呼ばれた理由はわかりました。じゃあなんで魔王様が殺されてしまったのにゴードンさんや二人は暴れてしまうことがないんですか?」
「それはこの王国全体に張り巡らされている結界のおかげだ。この中にいる間は魔王様の力がなくても魔力が暴走することはない。詳しい話はもっと長くなるのだが、ラルフ達にはこのラクスベルク王国のことから話す必要がある。ここはかつてこの世界で最も栄えた魔族の一族、ラクスベルク一族が治めていた場所だった」
ゴードンさんは一呼吸置くと、遠くを見つめるような眼をした。
「かつてのラクスベルク王国というのは、今のこの状況からは想像できないくらい栄えていてな、土地は豊かで住人たちは活気に溢れており、ラクスベルク王家の方々も皆素晴らしい才覚をお持ちの方々だった。魔王様を遥かにしのぐ魔力をお持ちの方や力に優れた方や大変見た目が美しい方もいた。当時のセルリタの世界において、もっとも優れた一族であったことは間違いない。それに皆さま大変思慮深く、私のような執事にも優しく接してくれた」
ここまでの話を聞いていると、王国が廃れてしまうような要素は感じられなかった。
「だが、いつの頃からか一族の中で新たにお生まれになる方の中に、病弱であったり見た目が醜く歪んでしまう方、狂暴化してしまうという病気の方々が現れ始めた。なぜそのような方が増えたのか、この呪いを解決しようとしている間にもどんどん国は廃れ、一族の人数も徐々に減っていった。そのうち豊かだった土地までもが不毛の土地になり、今の様になってしまった。更に月日が経つにつれこの王国には誰も寄り付かなくなり、この風化した城と町と枯れ果てた大地だけが残った。かつては豊穣の森と呼ばれていた国を囲んでいた森は、今は枯れ果てた大地と呼ばれるようになってしまった」
「枯れ果てた大地は聞いたことがある! 確かラントリールやカラストルからずっと離れた場所にあって、人間も魔族も一度入ってしまったら戻ってこれない恐ろしい場所って」
「そんな風に言われているのだな」
「そういえば今はもう王家の人はいないんですか?」
「まだ一人ご存命なのだが……。ではラクスベルク王家最後の生き残りであり、ラクスベルクの国王ガラトス・ラクスベルク様がいる場所へ案内しよう」
ゴードンさんは城の奥から繋がる地下へと俺達を案内した。全体的に薄暗くじめじめした雰囲気の城の中でもより一層空気の悪い場所で、こんな場所に国王様がいるなんて信じられなかった。地下に進んでいくと少し開けた空間があり、ゴードンさんはその先の檻を指さした。
「この奥の……檻の中にいるのが、ガラトス様だ」
檻の隅には獣の様な恐ろしい唸り声をあげている、今まで見たことがない魔族がいた。その身体は大量の漆黒の毛で覆われていて、その中から鋭い牙と目が覗いていた。
「ガラトス様は一族の間で発生した呪いの全てを、一身に受けてお生まれになったような方だった。言葉を覚えることも普通に生活することも出来ずに暴れ回り、先代の国王様も手を焼いていた。先代も病弱故に早くに亡くなってしまい、誰も止めることが出来なくなってしまい、数少ない国の生き残りも皆この世を去る中、私自身も命の限界が来ていた。私は最後の魔力を使い、自らをゴーストとして最後までガラトス様を見守ることにしたのだ。幸いと言うべきか、ガラトス様は一族の特徴である長い寿命だけはしっかりと受け継がれていて、もう300年ほど生きておられる」
「300年……」
魔族の中でも特に魔力が強い魔族は、基本的に人間よりは寿命が長く200歳くらいまでは生きられると聞いたことがあるけど、それ以上というのは聞いたことがなかった。
「私がゴーストになってからもガラトス様は日々暴れ続けた。この王国には初代国王様が作った強力な結界があり、いくら暴れても結界の外へ出ることは出来ず、また王家に関係するものの力がなければこの場所を見つけることも中に入ることも出来ない。結界があるおかげなのか何も食べてはいないのに、ずっと生き続け暴れ続けていた。そんなある日……10年ほど前だったか、急にガラトス様が暴れるのをぴたりと止めた時があった。その時に自らこの強力な力で守られた檻の中に入ったのだ。その翌日からは再び暴れるようになってしまったのだがな」
ゴードンさんが話し終えると俺達は再び広場に戻った。この王国がどうしてここまで廃れてしまったのか理由がわかり、なんとも言えない寂しい気持ちが心の中に広がっていた。これからどうしていくか話す必要があったけど、今日はとりあえずゆっくり休むことになった。
「誰かー! 誰か助けてー!!」
広場に集まり皆で休憩していると、遠くの方から馴染みのある声が聞こえてきた。
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