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第一章
第13話 新たな日常から非日常へ
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「部屋掃除終わりました」
「おうご苦労、じゃあ次は人参と芋の皮むきを頼む」
「はい」
耕助が冒険者ギルドに登録して約二十日が経が過ぎようとしており、現在は定宿にしている草原の星月亭からの依頼で下働きをしていた。
仕事内容は客室や食堂の掃除、皿洗いに野菜の皮むきや井戸からの水汲み等々の雑用で忙しく働いている。
耕助がここの仕事で気に入っている点は、通勤時間ゼロというのと賄いとして昼飯も出してもらえるところで既に何度か受けていた。
「しっかしコースケはよく働くななあ。ベルテも助かったと言ってたぞ」
夕食の仕込みをしながら話しかけてくるのは草原の星月亭の店主でベルテの父親であるジョナスで、笑顔が似合う娘とは真反対で厳つい顔をしており、似てない父娘だというのが耕助の感想だ。
「そうですか? 別に普通だと思いますけど」
手際よく芋の皮を剥きながら耕助は答える。
「今まで雇った冒険者に比べりゃ天地の差だよ。コースケは仕事は早いし丁寧ってのもあるが何より真面目なのがありがたい」
「当たり前のことだと思うんですけどね」
「……その当たり前ができるやつってのが意外と少ないんだよ特に最近はな」
ジョナスが大きくため息をつく。
「以前に雇った冒険者達はひでえもんだったんだぜ、すぐ手を抜いたりさぼろうとしたり……最悪なのは客の荷物を盗もうとした奴までいたからな」
「……冒険者の俺が言うのもどうかと思うけど、それなら地元の信頼できるのを雇った方がいいのでは?」
「国の方針という奴でな、うちみたいにある程度余裕があるところは出来る限り冒険者を雇えということで依頼を出してるんだよ。でもやっぱり五級だと駄目だな、せめてお前みたいな四級じゃないと」
耕助は既に四級になっているが、そもそも四級への昇進条件は簡単で、五級の仕事を失敗せず十回こなせればいいだけなのだ。
(つまり今のルトリーザにはその簡単なこともできない連中が多いってことか)
耕助は冒険者ギルドで、冒険者とは名ばかりの不穏な輩も多かったことを思い出す。
十年前に国家間の大規模な戦争は終わったが断続的な小競り合いは続いていた。それも最近ようやく落ち着いてきたのだが今度は戦争が終わることによって職を失った者がいて、特に戦争に携わってきた末端の兵士や傭兵の中には盗賊と大差ない連中も多くそれらが職を求めてルトリーザにやってきているのだ。
元々交易で大きな利を得ている国で交通の要所でもあるので入国を制限するのも難しく、いくら取り締まってもきりがない為治安の悪化は避けられなかった。
その為対策として国が力を入れ始めたのが冒険者で、厄介そうなのを冒険者としてまとめてしまいとりあえず仕事を与えればある程度大人しくなるだろうというのが目論見だった。
だが当然というべきかジョナスの言うようにまともに働かない者も多く、クレームが続出したようで五級冒険者は主に国が管理している依頼が中心になり、個人からの依頼はある程度まともに仕事を達成できる四級冒険者からにした結果、大分改善されたようだがいまだ試行錯誤の最中らしい……と、耕助はガルボから愚痴交じりに聞いていた。
この方針だがやろうとしていることは耕助も理解できるし一定の成果を出してはいるようだが、今後どうなるかは不透明だった。
「まあそれでも戦争していた頃よりかはなんぼかマシだがな。コースケ皮むきが終わったら……」
「おおコースケ、時間はあるか? 昨日のフィライトの続きをやろう」
ジョナスの言葉をさえぎる様に言いながら厨房に入ってきたのは初老の男性で名前はモルドバ、ジョナスの父親で草原の星月亭の先代亭主だった。
数年前まではジョナスと同じく厨房に立っていたのだが、足を痛め立ち仕事が難しくなったので息子夫婦に店主を譲ったのだが、頭も眼もしっかりしているので暇を持て余していた。
そんな中で趣味としてはまったのがフィライトと呼ばれるチェスに似たボードゲームで、ルールも似通っていたので耕助が興味を持って一人で指していたモルドバに話しかけたのがきっかけで勝負をするようになった。
モルドバはお世辞にも上手いとは言えない下手の横好きで、初心者である耕助とは丁度実力が折り合い頻繁に誘われているのだ。
「親父、コースケは仕事に来てるんで、親父の遊び相手じゃ……」
「じゃあ待っておるからな」
モルドバは口うるさい息子の追及をかわすかのようにそそくさと出て行く。
「悪いな、依頼内容に無い親父の相手までさせちまって」
「俺は構いませんよ、結構楽しいし」
やれやれと苦笑するジョナスだが、耕助は本心で言う。
モルドバは少し気難しいところはあるが根は結構優しく相手にするのに苦は無い。
(それにどこか爺さんに似てるんだよな……よく一緒に将棋を指したっけ)
耕助は十年以上前に亡くなった祖父を思い出しながら皮むきを急ぎ終えようとしていた。
このような感じで耕助はこの世界における日常を送っており、その感想は思ったよりも悪くなく何とかなっている、という感じだ。
色々と不安はあったがやはりライバの身体は基本能力が非常に高く、純粋な腕力だけでなく体力や器用さもあがっているようで苦労を苦労として感じないのだ。
仕事もとりあえず順調で僅かずつではあるが貯金も出来ているので労働の喜び、とまでは言わないがそこそこの充実感を感じて日々を過ごすことが出来ていた。
時々日常の一部となっていたゲームがやりたくて仕方なかったが、無いのだからどうしようもないので慣れるしかなく、何より懸念していた人間関係も今のところ良好でこんな日常も悪くない……そう思えてきたところだった。
フィライトを一勝一敗で終え、トータル戦績が五分のまま今日のところはお開きとなる。
指し終えた頃には日も暮れ始めて今日の仕事も終わりかと思い、厨房に向かったところ深刻そうな顔をしたジョナスがいた。
「どうかしたんですか?」
「いや……ベルテがまだ戻って無くてな」
看板娘であるベルテは昼過ぎに使いに出したというのだがとっくに戻ってきていいはずなのに、と心配顔なジョナス。既に日も落ちかけているので年頃の娘を持つ父としては当然の反応ではあった。
「昔に比べて治安はよくなっているんだが、やはり心配でな……」
「じゃあ俺が途中まで迎えに行きますよ。店は空けられないでしょうから」
本来なら自分が迎えに行きたかっただろうがこれから店が忙しくなる時間だ、困り顔のジョナスに耕助がそう申し出る。
「いいのか……すまんが頼む」
ジョナスから見て耕助が頼りになるとは思わないが、それでも娘一人よりは遥かにマシだろうという判断だ。
この時の耕助が申し出たのはあくまで念のためと言った感じで、使いに行った問屋に向かえば途中で行き合うだろう、そんな軽い気持ちで歩いていたところに眼の前に見慣れた猫がふらりと現れる。
「おお主よ、丁度いい所で」
「いつもどこ行っているんだお前は……」
最近のミケは一日中ほとんど出かけていて夜は寝に帰ってくるだけだ。それでいてしっかりと飯時だけには戻ってくるのだから耕助も呆れているのだ。
「遊んでいる訳ではないぞ、縄張り構築に必要なことだ……それよりも主よ、偶然見かけたのだが宿屋の娘が何者かに追われていたぞ」
ミケのいつもの口調に一瞬聞き逃しそうになるが、耕助も目の色を変える
「……場所はどこだ」
「案内しよう」
ミケを肩に乗せ耕助は音もなく、常人にはとても出せない速さで走り出した。
「詳細は解らぬが明らかに娘目的で追っていた。単なる物取り等ではなく、厄介ごとに巻き込まれている可能性が高いな」
「……となると大声を出して追い払う、みたいなのは難しいかもな」
手短にことの次第を聞くと、耕助は眉をしかめる。
助けるのは決まっているが問題はどうやって助けるかで、事情は解らないが武装した複数人に追われているとのことだし時間も無さそうなので取れる手段は少ない。
一番無難なのは治安維持のために都市を見回っている衛兵を呼ぶことだろうが、呼びに行く時間の間ベルテが無事かどうかは解らないので論外だろう。
ならばあとは自分の手で撃退するという手段しかなく、出来る出来ないで言えばまったく問題ないだろうがこれについては少し躊躇いがあった。
勿論ベルテは助けたいが、せっかく安定した日常を送れそうになっているところで揉め事に巻き込まれたくないという気持ちもあるのだ。
「見つけたぞ……間に合ったがこれは追い詰められているな」
ちょっとした葛藤をしながら日も暮れて人気のない路地を走っていると、目標を見つけたミケが冷静に指摘する。
ベルテとそれを追う武装した集団がいてミケの言葉通りおそらくあと少しで追い詰められるところだ。そして辺りは人気が無く助けを呼べそうもない――ある意味で都合のいい区画でもあった。
「ここなら当事者以外の眼はない……ならば是非も無しというところか」
迷う時間は無く、耕助は決断する。
「一瞬でいい、物音でも鳴き声でも気を逸らしてくれ」
優先すべきはベルテの身の安全で戦いに巻き込んだり、人質に取られる訳にはいかない。
「心得た」
意をくんだミケは肩から降りて走っていき、耕助は軽く深呼吸をして自分の身にかけている【偽装】を解除する。
足元から現れた白煙に耕助の姿が一瞬見えなくなり、煙が晴れたそこに現れたのはこの世界には存在しないニンジャ姿だ。
「この姿なら何かあったとしてもライバとして押し通せる……か?」
楽観的かもしれないがそう皮算用しながら耕助は跳躍して辺りを見下ろせる屋根の上に飛ぶ。
そしてベルテは壁際にと追い込まれタイミングよくミケが大きな物音を出したと同時に、耕助は目にも止まらない速さで飛び込みベルテを抱えて再び跳躍し近くの建物の屋根へと着地する。
耕助はベルテを抱えたまま追手の男達を見下ろし、この世界で二度目の実戦をすることになった。
「おうご苦労、じゃあ次は人参と芋の皮むきを頼む」
「はい」
耕助が冒険者ギルドに登録して約二十日が経が過ぎようとしており、現在は定宿にしている草原の星月亭からの依頼で下働きをしていた。
仕事内容は客室や食堂の掃除、皿洗いに野菜の皮むきや井戸からの水汲み等々の雑用で忙しく働いている。
耕助がここの仕事で気に入っている点は、通勤時間ゼロというのと賄いとして昼飯も出してもらえるところで既に何度か受けていた。
「しっかしコースケはよく働くななあ。ベルテも助かったと言ってたぞ」
夕食の仕込みをしながら話しかけてくるのは草原の星月亭の店主でベルテの父親であるジョナスで、笑顔が似合う娘とは真反対で厳つい顔をしており、似てない父娘だというのが耕助の感想だ。
「そうですか? 別に普通だと思いますけど」
手際よく芋の皮を剥きながら耕助は答える。
「今まで雇った冒険者に比べりゃ天地の差だよ。コースケは仕事は早いし丁寧ってのもあるが何より真面目なのがありがたい」
「当たり前のことだと思うんですけどね」
「……その当たり前ができるやつってのが意外と少ないんだよ特に最近はな」
ジョナスが大きくため息をつく。
「以前に雇った冒険者達はひでえもんだったんだぜ、すぐ手を抜いたりさぼろうとしたり……最悪なのは客の荷物を盗もうとした奴までいたからな」
「……冒険者の俺が言うのもどうかと思うけど、それなら地元の信頼できるのを雇った方がいいのでは?」
「国の方針という奴でな、うちみたいにある程度余裕があるところは出来る限り冒険者を雇えということで依頼を出してるんだよ。でもやっぱり五級だと駄目だな、せめてお前みたいな四級じゃないと」
耕助は既に四級になっているが、そもそも四級への昇進条件は簡単で、五級の仕事を失敗せず十回こなせればいいだけなのだ。
(つまり今のルトリーザにはその簡単なこともできない連中が多いってことか)
耕助は冒険者ギルドで、冒険者とは名ばかりの不穏な輩も多かったことを思い出す。
十年前に国家間の大規模な戦争は終わったが断続的な小競り合いは続いていた。それも最近ようやく落ち着いてきたのだが今度は戦争が終わることによって職を失った者がいて、特に戦争に携わってきた末端の兵士や傭兵の中には盗賊と大差ない連中も多くそれらが職を求めてルトリーザにやってきているのだ。
元々交易で大きな利を得ている国で交通の要所でもあるので入国を制限するのも難しく、いくら取り締まってもきりがない為治安の悪化は避けられなかった。
その為対策として国が力を入れ始めたのが冒険者で、厄介そうなのを冒険者としてまとめてしまいとりあえず仕事を与えればある程度大人しくなるだろうというのが目論見だった。
だが当然というべきかジョナスの言うようにまともに働かない者も多く、クレームが続出したようで五級冒険者は主に国が管理している依頼が中心になり、個人からの依頼はある程度まともに仕事を達成できる四級冒険者からにした結果、大分改善されたようだがいまだ試行錯誤の最中らしい……と、耕助はガルボから愚痴交じりに聞いていた。
この方針だがやろうとしていることは耕助も理解できるし一定の成果を出してはいるようだが、今後どうなるかは不透明だった。
「まあそれでも戦争していた頃よりかはなんぼかマシだがな。コースケ皮むきが終わったら……」
「おおコースケ、時間はあるか? 昨日のフィライトの続きをやろう」
ジョナスの言葉をさえぎる様に言いながら厨房に入ってきたのは初老の男性で名前はモルドバ、ジョナスの父親で草原の星月亭の先代亭主だった。
数年前まではジョナスと同じく厨房に立っていたのだが、足を痛め立ち仕事が難しくなったので息子夫婦に店主を譲ったのだが、頭も眼もしっかりしているので暇を持て余していた。
そんな中で趣味としてはまったのがフィライトと呼ばれるチェスに似たボードゲームで、ルールも似通っていたので耕助が興味を持って一人で指していたモルドバに話しかけたのがきっかけで勝負をするようになった。
モルドバはお世辞にも上手いとは言えない下手の横好きで、初心者である耕助とは丁度実力が折り合い頻繁に誘われているのだ。
「親父、コースケは仕事に来てるんで、親父の遊び相手じゃ……」
「じゃあ待っておるからな」
モルドバは口うるさい息子の追及をかわすかのようにそそくさと出て行く。
「悪いな、依頼内容に無い親父の相手までさせちまって」
「俺は構いませんよ、結構楽しいし」
やれやれと苦笑するジョナスだが、耕助は本心で言う。
モルドバは少し気難しいところはあるが根は結構優しく相手にするのに苦は無い。
(それにどこか爺さんに似てるんだよな……よく一緒に将棋を指したっけ)
耕助は十年以上前に亡くなった祖父を思い出しながら皮むきを急ぎ終えようとしていた。
このような感じで耕助はこの世界における日常を送っており、その感想は思ったよりも悪くなく何とかなっている、という感じだ。
色々と不安はあったがやはりライバの身体は基本能力が非常に高く、純粋な腕力だけでなく体力や器用さもあがっているようで苦労を苦労として感じないのだ。
仕事もとりあえず順調で僅かずつではあるが貯金も出来ているので労働の喜び、とまでは言わないがそこそこの充実感を感じて日々を過ごすことが出来ていた。
時々日常の一部となっていたゲームがやりたくて仕方なかったが、無いのだからどうしようもないので慣れるしかなく、何より懸念していた人間関係も今のところ良好でこんな日常も悪くない……そう思えてきたところだった。
フィライトを一勝一敗で終え、トータル戦績が五分のまま今日のところはお開きとなる。
指し終えた頃には日も暮れ始めて今日の仕事も終わりかと思い、厨房に向かったところ深刻そうな顔をしたジョナスがいた。
「どうかしたんですか?」
「いや……ベルテがまだ戻って無くてな」
看板娘であるベルテは昼過ぎに使いに出したというのだがとっくに戻ってきていいはずなのに、と心配顔なジョナス。既に日も落ちかけているので年頃の娘を持つ父としては当然の反応ではあった。
「昔に比べて治安はよくなっているんだが、やはり心配でな……」
「じゃあ俺が途中まで迎えに行きますよ。店は空けられないでしょうから」
本来なら自分が迎えに行きたかっただろうがこれから店が忙しくなる時間だ、困り顔のジョナスに耕助がそう申し出る。
「いいのか……すまんが頼む」
ジョナスから見て耕助が頼りになるとは思わないが、それでも娘一人よりは遥かにマシだろうという判断だ。
この時の耕助が申し出たのはあくまで念のためと言った感じで、使いに行った問屋に向かえば途中で行き合うだろう、そんな軽い気持ちで歩いていたところに眼の前に見慣れた猫がふらりと現れる。
「おお主よ、丁度いい所で」
「いつもどこ行っているんだお前は……」
最近のミケは一日中ほとんど出かけていて夜は寝に帰ってくるだけだ。それでいてしっかりと飯時だけには戻ってくるのだから耕助も呆れているのだ。
「遊んでいる訳ではないぞ、縄張り構築に必要なことだ……それよりも主よ、偶然見かけたのだが宿屋の娘が何者かに追われていたぞ」
ミケのいつもの口調に一瞬聞き逃しそうになるが、耕助も目の色を変える
「……場所はどこだ」
「案内しよう」
ミケを肩に乗せ耕助は音もなく、常人にはとても出せない速さで走り出した。
「詳細は解らぬが明らかに娘目的で追っていた。単なる物取り等ではなく、厄介ごとに巻き込まれている可能性が高いな」
「……となると大声を出して追い払う、みたいなのは難しいかもな」
手短にことの次第を聞くと、耕助は眉をしかめる。
助けるのは決まっているが問題はどうやって助けるかで、事情は解らないが武装した複数人に追われているとのことだし時間も無さそうなので取れる手段は少ない。
一番無難なのは治安維持のために都市を見回っている衛兵を呼ぶことだろうが、呼びに行く時間の間ベルテが無事かどうかは解らないので論外だろう。
ならばあとは自分の手で撃退するという手段しかなく、出来る出来ないで言えばまったく問題ないだろうがこれについては少し躊躇いがあった。
勿論ベルテは助けたいが、せっかく安定した日常を送れそうになっているところで揉め事に巻き込まれたくないという気持ちもあるのだ。
「見つけたぞ……間に合ったがこれは追い詰められているな」
ちょっとした葛藤をしながら日も暮れて人気のない路地を走っていると、目標を見つけたミケが冷静に指摘する。
ベルテとそれを追う武装した集団がいてミケの言葉通りおそらくあと少しで追い詰められるところだ。そして辺りは人気が無く助けを呼べそうもない――ある意味で都合のいい区画でもあった。
「ここなら当事者以外の眼はない……ならば是非も無しというところか」
迷う時間は無く、耕助は決断する。
「一瞬でいい、物音でも鳴き声でも気を逸らしてくれ」
優先すべきはベルテの身の安全で戦いに巻き込んだり、人質に取られる訳にはいかない。
「心得た」
意をくんだミケは肩から降りて走っていき、耕助は軽く深呼吸をして自分の身にかけている【偽装】を解除する。
足元から現れた白煙に耕助の姿が一瞬見えなくなり、煙が晴れたそこに現れたのはこの世界には存在しないニンジャ姿だ。
「この姿なら何かあったとしてもライバとして押し通せる……か?」
楽観的かもしれないがそう皮算用しながら耕助は跳躍して辺りを見下ろせる屋根の上に飛ぶ。
そしてベルテは壁際にと追い込まれタイミングよくミケが大きな物音を出したと同時に、耕助は目にも止まらない速さで飛び込みベルテを抱えて再び跳躍し近くの建物の屋根へと着地する。
耕助はベルテを抱えたまま追手の男達を見下ろし、この世界で二度目の実戦をすることになった。
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